視点・解説

維新内対立招いた吉村代表の「独走」 市民置き去りにしない議論を

野平悠一

 大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会代表)がめざす3度目の大阪都構想の住民投票。府議会は24日、都構想案を協議する法定協議会の設置案を継続審査とした。維新大阪市議団の中で慎重論が根強く市議会への提出が見送られたため、府議会側も足並みをそろえた形だ。維新内で何が起きているのか。維新取材を担当する記者が報告する。

繰り返し呼ぶ「仲間」 記者が感じた焦り

 吉村氏はここのところ、維新市議団のことを「仲間」と繰り返し呼ぶようになった。そこには同じ都構想を目指す仲間なのだから判断を尊重してもらいたいという歯がゆさや、党内をまとめられないことへの焦りといった複雑な感情の入り交じりを感じる。

 吉村氏にとって身内の反発は想定外だったのだろう。だが、思い返せばどれも自分でまいてきた種だ。

都構想案を協議する法定協の設置をめぐり、強い結束を誇ってきた大阪の維新が揺れています。党内の反発を招いてきた「種」とは何なのでしょうか。

 今年1月に出直し選を仕掛ける意向を固めた際、党内への事前の相談はほとんどなく、多くの議員にとって寝耳に水だった。再選しても来年4月には再び知事選がある。党内からも「なぜ今なのか」「なぜ待てないのか」との慎重意見が相次いだが、反対を押し切って強行した。

 「信を得た」と語る吉村氏の心中に「選挙が終われば慎重派の議員もついてくるはずだ」との慢心はなかったか。党内には「吉村氏は聞く耳を持たなかった」との不信感が広がっていた。

 さらに追い打ちをかけたのは、吉村氏の「国政進出」発言だった。再選からわずか1週間後、吉村氏が党の幹部会合で都構想が住民投票で可決した後の国政進出に意欲を示した。肯定的に受け止めた議員は限られた一方、多くの議員はまたしても唐突な判断に驚かされ、「無責任」と口にする議員もいた。市議団のさらなる硬化を招くであろうことは想像できたはずだ。

本拠地・大阪 出直し選後も合意形成できず

 維新は本拠地・大阪で築いた強固な地盤と議員団の結束が力の源泉となってきた。だが今、その根幹が崩れかねない事態にまで発展している。党内をまとめきれなければ吉村氏の責任問題に発展することは免れないだろう。

 最終的に都構想の是非を判断するのは大阪市民だ。この約10年で2度も難しい選択を強いられた。封印したはずの都構想を再び持ち出し、約28億円の公費を費やして出直し選に打って出ながら、党内の合意形成すらままならない。そんな状況で再び住民投票という負担をかけようというのか。吉村氏の「独走」で置き去りにされているのは、市民も同じだ。

【動画】大阪府議会は都構想の制度設計を行う「法定協議会」の設置議案を継続審査と決めて閉会した。3度目の住民投票の実現はどうなるのか記者が報告する=徳永猛城、佐藤慈子撮影

大阪都構想をめぐる主な経緯

【2月】

 8日 吉村、横山両氏が都構想再挑戦の是非を問うとして臨んだ大阪府知事・大阪市長の出直しダブル選で再選

 15日 吉村氏が党役員会で都構想可決後の自身の国政進出に意欲を示す

 22日 吉村、横山両氏が維新市議団と意見交換。法定協議会設置に理解を求める

 24日 維新府議団が法定協の設置議案に賛成する方針を確認

 26日 市議団が法定協への態度を保留し、市内全24区で市民対話を実施する方針を確認

【3月】

 4日 松井一郎元代表が市議団と会食。市議団の対応に理解を示す

 6日 吉村、横山両氏が府議団幹部と意見交換。法定協の設置議案を府単独で提出する方針を決定

 8日 横山氏が27日閉会の市議会への設置議案の提出見送りを表明

 9日 吉村氏が府議会に法定協の設置議案提出

 19日 府議団が法定協設置議案を継続審査とする方針に転換

 24日 府議会で法定協の設置議案が継続審査に

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