第五回 プロデューサーの膝争奪戦
頭空っぽにして読むと良い感じです。
プロデューサーの膝争奪戦、私はP膝と略して呼んでます。
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P「ん、雨......?」
肩に何かが触れた。
思わず肩を見ると水滴のようなものが付いていたが、何か少し違う気がする。
千雪「これ、みぞれじゃないです......?」
P「ああ、みぞれ......って、勢いが結構激しくなってきたぞ......!」
みぞれに納得していると、どんどん勢いが増してきた。
こうなったら雪と言うよりほぼ雨だ。
P「このままじゃ風邪引いちゃうし......千雪、どこかで雨宿りするか?」
千雪「でも、事務所までもう少しですし......プロデューサーさん、事務所まで競争しませんか?」
P「え?千雪──」
千雪「よーい、どーんっ......!」
全力疾走とは言わないが、そこそこの速さで走り出した千雪。
ただ、あまりにも急な発進だったので遅れてしまった。
P「あぁ、待ってくれ千雪───、滑るから気を付けてくれ──!」
────────
P「まさかみぞれが降って来るなんてな......」
千雪「そうですね......。天気予報では今日は少し暖かいはずだったんですけど......」
何とか事務所に着いた俺たちは濡れてしまったコート類を干し、部屋が温まるまで二人でソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
P「にしても、結構降って来たな。ほとんど雨だ」
窓の外に見えるみぞれの勢いはまったく止みそうにない。
千雪「そうですね......あの」
P「どうした?」
千雪「これは、風の噂で聞いたんですけど」
P「うん......うん?」
何やら、不穏な空気になってきた。
千雪もさきほどまでと打って変わってもじもじしているし、俺の風の噂と言うのも変な話だ。一体どこで噂になっているというのだろう。
千雪「最近......プロデューサーさんが、色んな子に身体を貸しているとお聞きして......」
P「ま、待て待て、待ってくれ!誤解だ!」
慌ててコーヒーをテーブルに置き、両手で全力の否定をする。
一体誰がそんな噂を流しているんだ。曲解されすぎてほとんど原型を留めていないじゃないか。
P「千雪。怒らないから、誰から聞いたか教えてくれないか?」
千雪の両肩を掴んで問い詰めるが、千雪は両手をぶんぶんと知らないジェスチャーをする。
千雪「ご、ごめんなさい......私も誰が言ったかは覚えてなくて......!」
P「そうか......肩、痛かったよな。すまん」
千雪「いえ、全然......!──ところで、誤解と言うのは......?」
そうだ。
噂を流している犯人を見つけるのも大事だが、この誤解を解いていかなければならない。
P「あ、ああ。実は───」
過去の出来事(膝の上に乗ってきたり、膝枕をしたこと)を人物についてある程度ぼかしながら話した。
千雪「なるほど......それでプロデューサーさんが身体を貸しているなんて噂が......」
P「ああ、わかってくれてよかったよ......」
千雪「確かに......理解はしました」
よかった......あれ、今、千雪は何て言ったんだ?
理解『は』......?
千雪「理解はしました......けど、ズルいです」
P「ず、ズルいって......何が?」
千雪「私も、プロデューサーさんのお膝に乗ってみたいです。あと、膝枕も」
透き通った目でなんてことを言うんだ。
ただ、このままでは千雪の圧に押し切られてしまいそうだ。なんとか回避しなければ......。
P「ち、千雪。さっきも行ったと思うけど、あれは理由があって......」
千雪「むぅ......。理由なしには私を膝に乗せられないっていうんですか?」
P「いや、乗せられないとかじゃなくて......あんまりこういうことは人目を憚られるというか......」
千雪「じゃあ、今が一番丁度いいと思いますよ?」
P「丁度いいって、誰かに見つかったりでもしたら......あ」
そうか。
千雪がどうして急にこの話題を持ち出して来たのか、気づくには遅すぎた。
千雪「ふふっ、ようやくお気づきになられました?」
P「......いつから狙ってたんだ?」
千雪「それは......秘密です♪でも、今日急なみぞれが降ってきて......少し早まりましたけど、チャンスだーって思いました。みぞれって雪になっちゃうことも多くて......電車とか、バスとかで来てる子たちは帰りのことも考えると、お家を出るのは控えたほうがいいですもんね?」
なんて計画性だ。ここまでしていたら、もはや気象を操っていると言われても信じてしまいそうだ。
P「......分かった。ここまでされたら仕方ない、誰かが来る前にその......しようか」
千雪「やったぁ♪......それじゃあ噂の『アレ』、お願いします......!」
P「『アレ』......って、何だ?」
噂のアレ......?特にこれまで何かをやってた記憶は無いけど......。
千雪「え?お膝ぽんぽんして「おいで」って言ってくれるって聞いてたんですけど......」
絶対に犯人を突き止めなければいけない。次の被害者を出さないためにも。
......いや、この場合の被害者は俺になるのか?
P「そんなのやってないぞ......?」
千雪「今までやってなかったら、やってくれないんですか......?」
千雪、これが最後かもしれないからかやけにぐいぐい来るな......。
仕方ない。心残りがあってまたこんな状況を作り出されても大変だし、ここは叶えるしかない。
P「わかったよ。──ほら、おいで千雪」
千雪「......し、失礼します」
やってくれと言った張本人がめちゃくちゃ緊張してるじゃないか。
おそるおそる千雪が俺の膝の上に乗ってくる。
P「ち、千雪、あんまり動かないでくれると助かる......」
千雪「え?あっ、す、すみません......!!」
やはりというか、硬くて座りずらいのかもぞもぞと千雪が動く。
すると、俺のふとももに直接刺激が来るわけだが......これがかなり危ない。もちろん、気持ち的なものでだ。
ただ、膝の上に乗った千雪は何も言わない。向こうを向いている訳なので、どんな表情をしているかもわからない。
P「......それで、計画通り俺の膝に乗れた訳だけど......お尻が痛くなったりしてないか?」
千雪「あ、いえ......ただ」
P「ただ?」
千雪「その、後ろから離されると......プロデューサーさんの息が耳にかかってくすぐったくて......」
P「それは......すまん」
千雪の耳に息がかからないように上を向いたまま2、3分が経過しただろうか。
先に根をあげたのは千雪だった。俺の足が痺れを感じてきたかなといったところで、千雪が立った。
P「千雪、もういいのか?」
千雪「はい......。静かになったら、プロデューサーさんにご無理を言ってお膝に乗せてもらっていたのが申し訳なくなってきて......」
P「はは......」
冷静になるのに随分とかかったな。と思ったが口には出さないでおく。
よく見ると千雪の顔はかなり赤くなっていて、相当恥ずかしくなってきていたことが見てとれる。
千雪「あの......また、こうしてお膝をお借りしてもいいでしょうか......?もちろん!誰も居ないときがあればですけど......」
申し訳なくなってきてたんだよ......な?
やっぱり、俺の膝にはアロマ的な何かがあるのだろうか。
P「うーん......わかった。誰も居ないときだけ、な」
まあ、そうそう誰も居ない状況なんて無いだろうし。
こうして条件を付けてれば断りやすくなるかもしれないし、ただ拒否をするよりも印象も悪くならずに済む。
千雪「やったぁっ♪じゃあ、また今度よろしくお願いしますね」
P「ああ。ん、また今度......?」
千雪「......今日の私のお話、覚えてますか?今日お膝をお借りできたのはみぞれのおかげでしたけど......『少し早まった』んです」
そういえばそんなことを言っていた気がする。
ということは元々膝を貸してもらう作戦があったということだし、しかもこの言い方だとそう遠くないうちに計画していそうだ。
P「......千雪には敵わないな」
千雪「うふふっ。また、よろしくお願いしますね。プロデューサーさん♪」