“日本語ゼロ”の子どもが次々と転入 国の基準は“時代遅れ”? 現場が語る切実な声と教育の質の行方
支援の充実と学びの質の両立を
こうした課題を踏まえ、文部科学省の有識者会議では、基礎的な日本語や生活習慣を学べる場を地域に作るなど「初期指導の重要性」が示された。一方で、これまで外国人の子どもが少なくノウハウがない自治体も多く、翻訳アプリなどAIも活用しながら、全国どこでも対応できる体制づくりが求められている。 松本文科相は、日本語支援の充実と教師の負担軽減が大切だとしたうえで、「日本語指導が必要な児童生徒への支援と同時に、日本人生徒の学びの質に影響が出ないようにする視点も重要だ」と話した。
日本での進学・就職めざす外国人留学生の今
兵庫県・姫路市にある私立姫路女学院は、外国人留学生の育成モデルづくりに挑戦している学校のひとつだ。 2024年4月、インドネシアから入学した2人の留学生。1年10カ月ぶりに再会した彼女たちは、学業や課外活動に励み、日本語も大幅に上達していた。 姫路女学院はインドネシアにある中学校に教師を派遣して日本語教育などを行ってきた。さらに、国や自治体の支援も受けて、高校3年間を日本で過ごした留学生の日本での就職までを一貫して支える取り組みを進めている。 この取り組みの第1期生で現在高校2年生のプテリ・アレタさんはダンス部の中心メンバーとして活躍。振り付けをチェックするなど部員を引っ張る存在に。もう一人のチェルシー・カワングさんは「将来は金融系の仕事に就きたい」と日本で働く具体的なキャリアを描き始めていた。
“親の都合で来日した高校生”が最も苦労する現実
一方で、皆が日本での進学や就職を明確に目指して来日するわけではない。 外国人児童の学習支援について研究する群馬大学の結城恵教授は、「親の都合で高校生ぐらいで来日した生徒が最も苦労する」と話す。 また、保護者が低賃金労働に従事している場合は、子ども自身がキャリアを描けないケースも多いという。子どもが日本語を話せず、学校の授業についていけなくても、親が問題ないと思っている場合も多いからだ。結果的に子どもも同じ道を辿り、生活保護に繋がることもあるという。そのため、教授はこう強調する。「負の連鎖を生まないためには、日本語教育と同時にキャリア教育も必要。子どもたちが自分の可能性をイメージできることが重要だ」
外国人が増える地域で必要なのは「長期の視点」
これからは、これまで外国人住民が少なかった地域にも、多くの外国人人材が入ってくることが予想される。その中で大切なのは、学校や自治体がしっかり対応できる体制を整えること。そして、短期的な労働力の確保にとどまるのではなく、次の世代の子どもたちが日本社会で活躍しながら共生できるよう、長期的な視点で支援していくことだ。 少子高齢化とともに地域社会の多様化が進む中、持続可能な共生社会をどのように築いていくのかが、今まさに問われている。 (フジテレビ社会部文部科学省・こども家庭庁担当 松川沙紀)
松川沙紀