他国に抜け駆けしてイランと交渉し、日本のタンカーだけホルムズ海峡を通過させてもらうなどといった恥ずかしいことをしてはいけない
◆トランプも市場の言うことだけは聞く ドナルド・トランプ米大統領がイランの発電所への攻撃を5日間延期するとの発言を受けて、原油の先物価格は下落し、株価も上がった。 【画像】親日家で東日本大震災では炊き出しも…イランのアラグチ外相 ただトランプ氏がイランとの協議を行っていると述べたのに対し、イラン側は否定しており先行きは不透明なままだ。「トランプに市場がかき回されている」という批判がある一方で「トランプも市場の言うことだけは聞く」という見方もある。 トランプという人は「ネゴシエーション=交渉」と「ディール=取引」の人なので、あまり決めつけずに冷静に見た方がいいと思う。 ◆「日本だけタンカーを通して」はやめた方がいい こうした中、イランのアッバス・アラグチ外相が共同通信とのインタビューで、日本船籍のタンカーのホルムズ海峡通過を認める用意があり、すでに日本政府と協議に入ったことを明らかにしたことが波紋を呼んでいる。 野党党首やテレビのコメンテーターが「イランと交渉して、日本だけでもタンカーを通してもらえ」と騒いでいるが、これはやめた方がいいと思う。 茂木敏充外相は22日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で、イランとの協議を否定した上で、「ホルムズ海峡にたくさんの国のタンカーがいるわけで、日本としては、みんなが通れる状態を作ることが重要」と述べて日本の「抜け駆け」を否定した。 これはなかなか立派な態度で、「抜け駆け」を主張する人たちは反省した方がいい。日本が「ペルシャ湾への艦船の派遣は憲法の制約でできませんが、日本のタンカーだけはイランと交渉して通してもらいました」と言ったら他国の人たちはどう思うだろうか。 ◆アメリカとイランは同等なのか 今回の米国のイラン攻撃についての報道や国会審議の中で米国とイランを同等に扱っているようなものが散見されるがいかがなものかと思う。 米国は先制攻撃をしてそれは国際法違反なのでけしからん、一方のイランは罪のない湾岸諸国を「反撃」と称して攻撃しており、これはこれでけしからん、どっちも悪い、という論調だ。だが我々はもう少しイランがどういう国かということを考えなければいけない。 イランは1978年のイスラム革命で宗教指導者が国のトップとなり、それまでの立憲君主制からイスラム共和制に変わった。そして翌79年にイスラム強硬派の学生がテヘランの米大使館を一年以上占拠した。 その後は核開発を行い、ミサイルで近隣諸国を威嚇し、さらにハマス、ヒズボラ、フーシといったイスラム過激派のテロ集団への軍事的、財政的支援を続けてきた。 これは米国及びその友好国にとっては脅威であり、今回の米国の攻撃も「先制攻撃」という見方がある一方で、このイランの脅威を取り除く=「反撃」という意味合いもある。 ◆日本とイランは友好的だが… 日本とイランが長い間、友好的な外交関係を続けてきたのは事実で、今回のアラグチ発言もそこから来ているし、茂木外相もアラグチ氏とは「長い付き合い」だという。 だが同時にイランは日本の同盟国である米国が北朝鮮、キューバなどと共に「テロ支援国家」に指定しており、トランプ政権ならずとも米国が常に「攻撃対象」と想定している国であることを忘れてはいけない。 誇り高きペルシャの民に敬意は払うが、現在は専制国家であり、我々民主国家とは価値観が大きく違うという事もまた事実だ。 ◆オタオタするとイランの思う壺 先週も書いたが、石破茂前首相が15日のフジ番組でイランへの攻撃が国際法違反でないことを高市首相が首脳会談でトランプ氏に確認する必要があると指摘し、高市首相が米国のイラン攻撃への法的評価を控えている事に対し橋下徹元大阪府知事が「高市さんは逃げている」と批判した。 これらの主張は国益を毀損するだけだ。それは「各国に抜け駆けしてイランと交渉して日本のタンカーだけホルムズを通してもらえ」という主張もまた同じである。 では日本はどうすればいいのか。確かに中東からのエネルギー供給が滞るリスクはある。だが日本には250日分の石油の備蓄がある。それからエネルギーの多様化を長年やってきたから原発や再エネもある。天然ガスの輸入は豪州、マレーシア、米国に次いで中東カタールからの輸入は全体の10%にすぎない。 よしんば本当に石油が足りなくなっても日本は代替手段に頼るだけの経済力を持っている。だからオタオタするとイランの思う壺だ。 ◆現場に行かないと相手にされない その上で日本がやるべきことは、高市首相が日米首脳会談でトランプ米大統領に伝えたように、できることをやるということだ。もちろん憲法の制約でできないことはやらないでいい。それはトランプ氏も理解している。 具体的には茂木氏がフジ番組で述べたように停戦後に日本が高い能力を持つ機雷掃海を海自の艦船を派遣して行うということだろう。これは湾岸戦争での経験もあるし自衛権の発動でもなくハードルは低い。 日本は国力に応じた国際貢献をする義務がある。財政面でももちろんだが、やはり現場に赴くことをしないと国際社会からは相手にされないだろう。高市首相はそのことをよくわかっていると思う。
平井文夫