「あの……どうしt」
「やっっっっぱり!!!!」
「やっぱ一緒やん!!!!!!」
「………え……いっしょ………??」
*********
彼女、
お笑い好きで、オシャレ好きで、バスケが好きで、流行に敏感で、ちょっとお馬鹿な大阪のJK。
が、高校2年生の秋。
彼女の世界は一変したのだ。
その日も、いつもとなんら変わらない普通の日のはずだった。いつも通り朝起きて、いつも通りメイクして朝ご飯食べて自転車飛ばして駅まで行って満員電車に乗って。
奇跡的に席が一つ空いていて、ルンルン気分で座ったのだ。いつも絶対座れんのに!ラッキー!
で、学校の最寄りに着くまで寝ようと思って目を閉じた。
……どれほど経ったのであろうか。
ふと何かが頬を掠めた感覚がして意識が浮上する。
寝ぼけ眼を擦りながらなんとか脳を覚醒させると___
見渡す限りの緑、緑、緑。
それから、川の流れる水音に、ぴよぴよチュンチュンと囀る小鳥の声。
運良く確保したはずの席は無くなって、代わりに太い樹木に凭れかかって座っていた。
………えっどこここ。
森?………………奈良??(違う)
森=奈良ではないのよ。
謝りなさい、奈良県民に。
……うんまぁ奈良ではないとして。とりあえず明らかに電車の中ではなかった。
えー、どうしよ?ICOCAまだピッてしてへんねんけど!無賃乗車ちゃう?!(そこじゃない)
と、
___ゴーン……
背後から唐突に鐘の音。
振り返るとそこには、
……おおう。教会発見。
……どうしよう。
………なんだろうあの建物。
ポン
ポン
ポン
チーン
(………………よっしゃ決めた!とりあえず入るか!!)
思考時間、3秒。即決。
ここがどこだか知らないし、なぜこんなことになったかもわからないが、困っているなら人に聞けばいいのだ。
そう、関西人はスーパーフレンドリー。知らん人でもガンガン話しかける。まあここ森ん中だしあの教会に人おんのか知らんけど。
で、たどり着いた教会らしき建物の前。
門が開いていなかったので、とりあえず押してみようと手を伸ばしたところ、
「何をなさっているのです?貴方」
「えっ、あ、よかった人おった
……ってまってまって痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!腕!!!!腕もげる!!!!!!あかん!!!!!!」
「年端のいかぬ少女といえども、不法侵入は見過ごせませんわね」
明らかに日本人ではない修道服の女にニッコニコ笑顔で腕を掴まれた(なお握力はゴリラ)
*********
なんとか誤解を解いて事の顛末を話し終えると、先程から腕だけはどうしても離さなかった修道服の女が、目をぱちくりさせて漸く腕を離した。
そして、神妙な面持ちで話を始める。
曰く、この教会のような建物はカトリックの女子校であるということ。
曰く、彼女はこの学園の学園長であるということ。
曰く、『日本』などという国はこの世界には存在しないということ。
曰く、この世界には魔法が存在するということ。
曰く、
__ここが、ツイステッドワンダーランドという世界だということ。
魔法という言葉に一瞬テンションが上がったが、まぁそれどころではなく。
『日本』が存在しない?帰れない?
「……え…?」
学園長が気まずそうに眉を下げる。
いくらポジティブシンキング関西人といえども、彼女はまだ17才の子供だ。
こんな状況を飲み込むには時間がかかる。
ぐるぐるぐるぐる考える。
どうなるのか、どうすればいいのか。
だけど、こんなことをしていたってなにも変わらないのだ。帰れんならしゃーない。腹を括ってこれから先のことを考えなければならない。
「あの……行く宛ないんで、しばらくここに置いてくれませんか?」
「……ええ、構いませんよ。言われなくともそうするつもりでしたから。」
首を縦に振ってくれた学園長に、いささか安堵した。と、同時に、あることを思い出した。
「……前例のないことです。こちらも戸惑うことは多々あるでしょうし、貴方にも大きな負担がかかるでしょう。ですから、何かあr」
「あっ!!!!!!」
「?!」
「待ってここ学校なんですよね?!え、てことは異世界来ても勉強せなあかんの?!?!うわーーーーー解放された思ったのに!!!!!なんやねんもーちょい異世界特典あってもええやん?!?!?!」
忘れるなかれ、彼女は大阪の女である。ミナミの女である。こんな事でへこたれるタマなどではない。性根がおそろしく逞しいのだ。
「……全く」
ギャーギャー騒ぎながら頭を抱える目の前の少女を見て、学園長は思わず笑みを溢した。
突然異世界に飛ばされて、身寄りもなくて、この世界の常識も分からなくて、だと言うのにこの子は。
この調子ならどうやらそれ程心配しなくても大丈夫そうだと、ホッと胸を撫で下ろした。
その後の話はとんとん拍子で進んだ。
ただ、1つだけ問題があった。
彼女は異世界人なので戸籍がなかったのである。
戸籍がない=在学ができない。それは困る。ならば養子縁組でもすれば良いではないか。オッケー、貴方は本日より学園長の娘です。書類上の名前はルフェーブルになります。言いにくい?綴りが難しい?文句は受け付けません、お静かになさい!森に放り出してしまいますよ!!
そうして彼女、岩鬼百合はこの世界の一員となったのだ。
ユリ・ルフェーブルとして、新たな人生の幕を開けた。
無事戸籍もでき、衣食住も保証され、学園にも通い出したユリ。
周囲の優しさに答えられるよう真摯に勉学にも励み……と、言いたいところだが、在学中の彼女はそれはそれはもう問題児であった。
お嬢様言葉?丁寧な敬語?
あかん絶対ムリ。関西人は上京しようが何年関西住んでなかろうが一生関西弁喋るねんで?てかそもそもお嬢様言葉とか1個もわからへん詰んだ助けて
高級コース料理にテーブルマナー?
いやそういう堅苦しいのしんどいよ、とりあえずマクドのエビフィレオが食べたい。
え、ないんですか??えまってもしかしてこの先一生食べられへん?!イヤや!!!そんなん死んでまうッ…!!!!!
ハンカチに手袋、淑女の振る舞い?
………ごめんなさいあたし学校にハンカチ持ってったことほぼないですホンマにすいませんいつも髪の毛直すフリして頭で拭いてました。声デカいのは生まれつきやから勘弁してください。
豪華絢爛、煌びやかな舞踏会?
窮屈すぎて3秒で脱走する自信あんねんけど。てかなんで夜やるん………?眠たいやん……??寝っ転がりながら水曜日のダウンタウンを見て爆笑していたあの夜が恋しいよぅ……。
服装は清楚にスカートで、メイクは薄く可愛らしく?
いや友達に誕プレでもらったCHANELの赤リップ絶対捨てへんからな?!ギラギララメのグリッターもカラーマスカラも捨てへん!!メイクはキラキラのが可愛いもん!!これは譲らん!!!!
毎日どこかしらで学園長の怒号が響き、校内を走り回って逃亡するユリの姿が目撃される。
これが学園の常となっていた。
そして同時に学園長の眉間のシワも増えていく。
清楚でお淑やかな少女たちの中に、ゴリゴリ方言のお転婆JK。
学園からすれば彼女はただ規律を乱すだけの問題児であったが、世間知らずの思春期の少女たちにとっては、一概に悪だとは言えなかった。
思い切り走り回ること。
大口開けて笑うこと。
栄養バランスを気にせず食べること。
好きなお洒落を楽しむこと。
大人たちに反抗すること。
全部全部、やったことのないことで、楽しいことで。
初めの頃1人で学園長と逃走劇を繰り広げていた彼女の周りには、いつの間にか沢山の少女たちが集まっていて、みんなでちょびっとだけ悪さをして、またみんなで怒られて。
彼女のおかげで学園が何倍も賑やかになった。学生たちが、学生らしくなった。みんながよく笑うようになった。
彼女は、そう。
___この世界の、太陽であった。
……ああもう、この子は本当に。
お転婆で問題児で仕方のない子で、それで、
……人を良い方向に変える力がある、不思議な子。
だから学園長は、将来の夢に迷う彼女に、教師の道を進めたのだ。
貴方のような人が増えますように。
貴方という存在が、この世界のミライを少しでも変えますように。
そう、願いを込めて。
*********
「だァーーーかーーーらーーーー!!!!!!何回同じこと言わすねん!!!!」
「ですから、その…そう言われましても、相手方がですね、どうしてもあなたの手助けが必要だと……」
「ちゃうちゃうちゃうもうこの際それはどーーーでもええわ!!!!お前!!最初ホリデー期間の2日間だけ言うたやんな?!?!」
「そ、そうでした?いやぁ最近ボケなのかなんなのか物忘れが酷くって……」
「よっしゃ決めた!!!!お前は!!!!今から!!!!焼き鳥やボケ!!!!!!」
「エッ!!!!ほら落ち着きましょう?!あ、ちょっと!!!!上司に魔法を向けるのは良くないのでは?!?!」
「喧しいわアホ!!!!」
「アッーーーーーー!!!!!!」
………そう、願いを込めたはずなのだが。
「……グスッ…………ヒドイ……ヒドイですよルフェーブル先生………」
「ええ歳した大人がメソメソすな気色悪い」
「ウッ……辛辣…………」
「知らん!クソ野郎!!」
この世界の太陽は何処へやら。
学園長室のど真ん中で、ユリ・ルフェーブルはディア・クロウリーを踏みつけている。
それもピンヒールで。その顔まさに般若の如し。
「………えーっ……と、あの。………これは一体…」
「「あ」」
「これはこれは監督生さん!あの、できればですね、助けていただきたアッスミマセン嘘です!嘘ですからマジカルペン向けないで!」
職員室に書類を提出しに行った監督生は、その帰り道に偶然通った学園長室でとんでもない現場に遭遇してしまった。
………学園長が踏まれている、それもピンヒールで。
………えっ、なにごと????
目が点になっている監督生のもとに、めちゃくちゃ圧の強い顔をしたユリがずいっと詰め寄る。
思わず後ずさる監督生。
だがしかし、逃さないユリ。
あっという間に壁際まで追い詰められる監督生。
「なぁユウくん聞いてや?!コイツ明日から1週間出張行けって今言うねんで?!どう思う?!
いや明日からって何?!?!泊まりがけの出張ならもっと前から告知しておくべきやろがい!ホンマにありえへん!!クソッ!!!!!!」
「そっ……れは、学園長が悪い……ウグッ……」
ぐわんぐわん肩を揺らされながらもなんとか返事をする監督生。
保身ではなく普通に本心でユリの肩を持った。いやそれはマジで学園長が悪い、学園長が悪いよ。
ちなみにあのCMソング合唱事件以降、監督生はユリに大変よく懐いている。
同じ故郷の人間がいて安心したのが半分、そしてユリの親しみやすく人間らしい魅力に惹かれたのが半分、それから関西人ポイントが+500点。
古代呪文語の授業後には積極的にユリのもとへ質問に行くし、校内でユリを見かければ彼女へ駆け寄って他愛無い話をしに行く。
ユリもユリでコイツ私のことむっちゃ好きちゃう?なんなん?と不思議に思いつつ、まぁおんなじ故郷のヤツおって安心したんやろなと鬱陶しがらずに監督生との話に花を咲かせている。違いますそれ関西人ポイントです。
「そんなッ………監督生さんまで………グスッ………」
「おいメソメソすなカラス、元はと言えばお前のせいや全部。全ッッッ部な!!!!
てか、そもそも!!出張はこの前の2日間だけって話だったやん?!どうしても言うて泣きついてくるから、仕方なく、仕方な〜〜〜く行ってんやんかあの時。あの出張のせいで入学式出れんかったのまだ根に持ってるからなホンマに。入学式。なぁ?入学式!」
なるほど。やはり彼女は入学式にいなかったから見覚えがなかったのか。
「……おいおいおい何逃げようとしてんねん話終わってへんぞ。なぁ????2度はない言うたよな????それが???今度は????明日から1週間?????
素直にハイ承知しました言うわけないやろアホか!!!!!!お前は!!!!今から!!!!焼き鳥!!!!!!」
「ギャーーーーッ!!!!離して!!!!離してくださいルフェーブル先生!!!!!!」
恐ろしい顔で学園長を羽交い締めしマジカルペンを握るユリ、半泣きになりながら抵抗する学園長、そしてユリに肩を揺さぶられ気分が悪くなり床にしゃがみ込む監督生。
カオスである。
____その時。
「学園長?!なにごとですか?!」
スパァァァァァンッ!
気持ちのいい音がして学園長室の扉が開けられた。
「「……あ」」
…………訪れる静寂。
「…………ハァ………何をしているんだお前は」
「あらやだデイヴィス・クルーウェル先生やないですか如何されましたぁ??アハハハハ」
現れたのは、ダルメシアン柄を身に纏う美しい人。
先程までの焦った表情は、瞬く間に不機嫌な呆れ顔へと変化していった。
「それで誤魔化し切れるわけないだろう駄犬が」
「せやんな、知っとる知っとる……エッゴメンまってマジカルペン私に向けんといて?!?!」
そして不機嫌丸出しのまま、真っ直ぐにユリにマジカルペンを向ける。
「あかんってデイヴィス私防御魔法下手なん知ってるやろ?!?!
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬムリムリムリムリムリ!!」
「ステイだ、言い訳は聞いてやr…おいコラ待て本当に待て暴れるなおい!お前魔法のコントロールド下手くそだろうがッ!ステイッ!!おいバカ!!ステイだッ!!!こちらにマジカルペンを向けるな!!!!」
「攻撃は最大の防御です!!!
行けッ!!死なばもろとも!!!」
「わぁぁぁぁ先生たち落ち着いてください!!!!」
「…………で、学園長室がえらく騒がしいから何か事件でもと思ったが。お前今度は一体何をしたんだ。」
煩わしそうに衣服の埃を払うデイヴィス・クルーウェル。
その毛皮は自信の現れ。立ち姿は相変わらず美しく様になっている。
「ちゃうねん今回は!いや今回はホンマに私何一つ悪くないねん全部コイツが悪いねんて!!!!信じて!!!!!!」
「落ち着け」
「えっと、僕もユリ先生擁護派というか……
今回の件は100%学園長が悪いなって、僕も思います………」
で、彼の足元には正座をさせられているユリと、なぜか巻き込まれいっしょに正座をさせられている監督生。
そして、
「うっうっ………ルフェーブル先生私のこと焼き鳥にするって……グスッ……「おい被害者ヅラすな、タレと塩どっちがお望みや」スミマセンデシタ」
逆さ向きで縛り上げられ、天井から吊るされている学園長。もちろんユリの仕業。
「ハァ、仔犬まで……。
なんだ、言い訳くらいは聞いてやろう。」
天井から吊るされる上司に一切触れず話を進めるクルーウェルも大概である。
「いやあのな、ホンマに聞いて?!学園長がな?あーーーーまってあかん思い出したらまた腹立ってきた!いや学園長がさ?!___」
「____な?!な?!わかるやろ?!今回は正当な主張やねんて!!焼き鳥にしたなってもしゃーないやんか、なぁ?!」
「……ハァ……………」
事の顛末をユリから聞かされたクルーウェルは2度目のため息をつく。さっきよりデカい。
なんか途中焼き鳥はタレか塩どちらが美味いか、いや意外と柚子胡椒が美味いみたいな話に大脱線したが、事情は粗方理解した。
それは、学園長が悪い(大声)
「かと言って生徒の前で学園長を踏みつけるのは別問題だがな」
「ゔッ………それはそやけどさぁ〜………」
「ク、クルーウェル先生…ッ!そうでしょう?!ルフェーブル先生ったら酷いんです、私をピンヒールでぐりぐりと(泣)」
「おい嘘泣きなんはわかってんねんホンマにええ加減にせえよ自分」
逆さ吊りにされながらここぞとばかりにおんおん泣くクロウリー。
監督生は思った。
この人なんでまだ焼き鳥にされてないんだろう。
「学園長、貴方もしっかりしてください。
ずさんな管理はミスを引き起こしかねませんし、教員や相手方の反感を買わないためにも、こういった重要な事の伝達はキチンと行うべきです。」
「いやぁ………それは………アハハ、申し訳ない………それはそうとそろそろ、あの、縄………」
おぉ、クルーウェル先生正論。
カッコいい。目上の人相手であろうがダメなことはダメだときちんと言える、そういうとこ大好きです。
一方どさくさに紛れて縄を解くことを要求する学園長。
監督生は思った。
この人本当になんで今まで焼き鳥にならずに生きてこれたんだろう。
「お前もお前だユリ。どうせゴネたって出張は覆せないとわかっていたはずだろうが。」
「いやわかってる!わかってるけどさぁ〜……腹立つもんは腹立つやんかぁ……」
「まぁ気持ちはわからんでもないがな。
やるならバレないようにやれといつも言っているだろ。全く、お前は詰めが甘すぎるんだ。」
「エックルーウェル先生?」
「ゔ〜……それもわかってます………
でも考えるより先に手が出てまうのはもうしゃーないねん……大阪人のサガや………」
ユリ先生美しい見た目に反してだいぶ武闘派だよな。意外だ。……いや意外じゃないか、そういやこの人そういう人だわ。
「自ら手を下さずとも躾の方法などいくらでもある」
「クルーウェル先生なんでさっきから私に手を下すことは止めないんですか?!」
「あ〜〜〜もう嫌や!全部嫌やぁ…!!
このカラス焼き鳥にしてもどうせ明日は行かなあかんねやろ?!?!
デイヴィス変わってよ〜〜〜〜!!!!」
「無茶言うな駄犬。お前をご指名なのは変わらん。潔く諦めろ。」
「嫌やホンマに行きたくな"い"ッ!!!!明日からインフルかかりたいッ…!!(泣)(泣)(泣)」
……………そろそろ足が痺れてきたなぁ。
まだしばらく続きそうなこのカオスな空間に、監督生は遠い目をした。
*********
「…………………」
ダンッ
「…………………」
ダンッ!
「……………あの、先生。大丈夫ですか?」
時は流れ、学園長ピンヒール事件から1週間後の体育館。
「………………」
ダンッ!
体育館中を包むのは異様な静寂と、そこに響く規則的な音。
「お疲れーっす!…………って、え?何すかこの空気」
「あぁ、エース。来たか。」
「いや、ハイ、えジャミル先輩、え????
いやおかしいでしょ、何かあったんすか?」
「あ〜………うん。アレだ。ユリ先生が、」
「エッ何こわッッッ?!エッ?!?!ユリちゃん何してんの?!?!」
バスケ部員たちの視線の先には、無言でただひたすら壁にバスケットボールを打ち付けるユリの姿。
「いや、なんか、出張先で大変な目に遭って心が折れたらしい」
「えぇ〜………あのユリちゃんがこんなになるとかどんなだよ…………」
「なんでも前日に出勤を知らされたらしくて、しかもそれが魔法省での1週間泊まり込みの仕事だったらしく……」
それはそれはもう散々な目に遭った。
まず、前提として彼女は魔法が苦手である。だって基本テキトー大胆まいっかの精神で生きてるので。魔力量の調節?知らん。打てたらええねん魔法なんか。あかんかったらそん時はしゃーなし腕力で解決。
というかそもそも魔法に初めて触れたのがトリップした17歳の頃なので、人より17年もの遅れがあるのだ。苦手で当然だ。
それが、魔法省の業務で魔法は必須である。
1週間、毎日、最も苦手とする緻密な魔法。
しかも周りの魔導士はできて当然という態度。とにかく優秀でお役人気質の人が多いため、できなければ論理的に詰めてくる。
ムリ。魔力調整?できんもんはできひんねん。
そして魔法省はお役所仕事なので、とにかく書類仕事が多い。書類のミスなど以ての外。ひたすら黙々と机に向かい見落としがないよう神経を張り詰め作業。
ムリ。だってユリ、昔から座学が大嫌い。文字を読むと眠くなる。だがしかし業務中に寝ようもんなら大問題である。政府の公式な機関でのお仕事なので。
そして極めつきは言葉遣い。お役所仕事で早口関西弁が許されるわけがない。全部公的な言葉遣いに直さなければならなかったのだが、それがまぁ苦痛も苦痛。
生まれてこの方「承知致しました」とか「竣工する」とか使ったことないねんけど???お嬢様言葉から逃げ切ったユリでも、これは不可避だった。
そんで役人は話が通じない。頭おかしい。アイツら頭固すぎる。意味がわからない。意見全部論破してくる。でも手を出したら大問題なので我慢するしかない(当たり前)
しかも慣れない場所で寝泊まりして慣れない食事に慣れない生活リズム。
ダンッ!
「………………あかーーーーん!!!!
もう出張なんか2度と行ってやらへん!!!!!!なんやねんアイツら理詰めしてくるわ論破してくるわ言葉遣い固いわ!データが正確性がて!やかましいわッ!!!!
お仕事は、パッションやろがいッ!!!!」
なるべくユリを刺激しないよう遠巻きに見ていたバスケ部員たちが、一斉にユリに振り向いた。
お仕事ってパッションなんだ………
「ほんでなんやねん!社食の食事薄味すぎるやろ!!!!あとベッド硬すぎ!!お役人は頭だけじゃなくて寝床も硬いんですかーーーッ?!」
さっきまでの静けさはどこへやら。
バスケットボールをぶん回しながら大声で悪口を叫ぶユリ。
「よかった………!アレでこそユリ先生だ!」
「うんまあ、うん。良い……のか?ユリちゃんめちゃくちゃキレてるけど」
「静かなユリ先生などユリ先生ではないだろう!ユリ先生はうるさくてなんぼだ!」
「まぁそれはそう。それはそうっすね。」
悪口じゃないです。褒め言葉です。
「もうバスケせなやってられへん!!
よっしゃアンタら!!!決めた!!今日は試合や!!!!私もやる!!!!」
「エッ先生試合出るんすか?!」
「出る!バスケでストレス全部発散したる!!あのゴールを学園長の顔やと思ってやったる!!」
「あれぇ、ベラせんせぇ今日はバスケいっしょにやんの?」
「おーフロイド!今来たん?はよ着替えて来や、もう試合始めるよ!私も出るしな!!」
「え〜!やったぁ!せんせぇバスケ上手いから大好き♡」
「よっしゃ!ほなそうと決まればチーム分けや!!
はい私に挑みたいヤツ手ぇ上げて!!」
********
ユリ・ルフェーブル(27)
NRCの古代呪文語教師。バスケ部顧問。
本人もトリップ前の中学時代からバスケをやっている。
10年前のある日電車で寝たら異世界に来てしまった。最初は色々不安だったけど、異世界ライフも楽しいしまぁいっかって感じ。心残りといえばICOCAピッてしてないことくらい。無賃乗車に怯えている。
ちなみに出身は大阪府堺市(ローカルすぎる設定)。
本名は岩鬼百合。
ユリって呼んで〜って言うのは単純にルフェーブル言いにくすぎるから。10年経ってんのに未だに綴り間違える。書けない。
監督生
関東出身の男子高校生。
お笑いが好きだった。人生初ナマの関西人に大興奮。ユリ先生大好き。関西弁がカンペキすぎる。それを抜きにしても授業が面白くて面倒見が良いユリ先生普通にめちゃくちゃ大好き。
デイヴィス・クルーウェル
被害者。
ユリがNRCに来てからというもの彼女に振り回されまくってる。週3で説教してる。なんだあのド失礼な女は。
ユリのことは躾のしがいがあると思っているが、躾に成功したことはない。
でもなんだかんだユリに目をかけている。
奈良県民の方へ。
申し訳ありませんでした。
なんか何ヶ月かぶりにふとpixiv見たら意外と閲覧数増えてて、続き途中まで書いてたしせっかくやし書き切ろ〜ってなりました。
本当にみなさんありがとうございます。
なんか褒められててヤル気湧いて来たからまた続き書きたいな(単純)
次は誰と絡ませようかな………
ちなみにベラは、模様綺麗だけど凶暴な魚らしいです。種類によるらしいけど。詳しくは知らん。