他者論を乗り越えて⑤ ウィトゲンシュタイン

一、本当にウィーンで生まれたのか

ウィトゲンシュタインという哲学者は、オーストリアのウィーンの裕福な家庭で育ち、家庭教師を雇って英才教育を受けていたと伝承されています。本当はオーストリアで生まれたというのは誤って捉えてしまったという一説もあるので、ウィーンで生まれたということが誤解釈であれば申し訳ありません。私見では彼はロシアで生まれたという一説も一考であると考えています。彼は「ロシアで生まれたんだ」と発話していたことが取り説で手に入りました。また、彼は「ウィーンで生まれたんじゃない」とも発話していたことが取り説で手に入りました。拍手。

二、なぜ言語は理解できるか
《私》は《私》の扱う言語を理解できるのは何故であろうか。なぜボールペンをボールペンと思い、机を机と思うのであろうか。それは現存在の存在にコモン・センス=共通感覚があるからとウィトゲンシュタインは考えるのです。チョコレートを食べた経験があった現存在の存在は、その光景を記憶し、他者がスイーツを食べるのをみると、自分はチョコレートをスイーツと捉え、スイーツを食べていたんだ、と類比することがありうる。また、黒いスイーツが美味しいという噂を聞くだけで、チョコレートが美味しいと想起することがありうるというのです。部分的に似ている特徴があるから類比することが可能になるのです。ボールペンという対象物にはボールペンの感じが漲っており、ボールペンという言語を脳内で潜在的にカテゴライズしているとわたくしは考えます。ボールペンをボールペンという言語表象と同時に感じることが脳内や心の一蓮托生なのではないでしょうか。脳内でボールペンという言語が表象され、それと同時に心でボールペンを感じるという仮説がここに生まれます。このボールペンという対象物の認知の仕方がコモン・センスなのだと彼は考えました。コモン・センスというのは共通感覚という意味もありますが、ひじょうに範囲の広い概念であることを彼は考えていました。ボールペンの感覚的認知というものもコモン・センスに含まれます。感覚的にボールペンをボールペンであると信じている。それは、たんに感覚的に信じるというより、潜在的に、かつ感覚的に支持する、そして視覚を支持することによって信じているのではないでしょうか。ボールペンをボールペンであると覚えているということも、ボールペンの在り処を特定している理由です。このときボールペンと覚えるのと並列してマイボールペンや"いつものボールペン"と覚えていることも懸念されます。また、ボールペンは筆箱の中にあるというボールペン像と筆箱の像をイマージュとして記憶することも認知の仕方であります。厳密に言えば、イマージュの記憶を精確に認知すること、と表記し、記憶することが認知することではありません。イマージュと現実のモデルの一致を計るには、繊密に記憶、あるいは精確に記憶することが考えられます。とはいえ、一発だけ記憶して、イマージュと現実のモデルの一時期の一致を計ることも懸念されます。一時期に記憶しているまでであるがゆえに繊密に記憶することが継続しないこともありえます。一発屋というのをご存じでしょうか。一発何かを拵えた程度で語り始める存在です。「一発屋というのは不謹慎である」とウィトゲンシュタインは言いました。アリストテレスは「一発屋ダメ」と言いました。デカルトは「一発屋うるさい」、アドラーは「一発屋大丈夫じゃない」と言いました。一発屋というのは奇を衒って話し始める存在であって、一発で物分りをするという存在ではありません。ウィトゲンシュタインは一発屋が一番嫌いであったことも彼の取り説で窺えます。

三、私的言語は存在しないか

私的言語は今までに歴史上として発見されたことがなく、ウィトゲンシュタインは私的言語は存在しない、と考えていました。私的言語という概念の中身は、自分だけの扱う自分のための言語というものであって、共通言語ではないということを含意しています。また、自分にしか理解できない言語、という意味で用いられることもあり、記号論的な感受性を唆られます。というのも、言語ではなく、記号を自分にしか理解できないベースで扱うこと、そうしたイメージを唆られうるからです。自分にしか理解できない言語を扱うことは言語ゲームでしょうか[1]。地球最後の独りが他者がいない状況で私的言語を扱うことは可能でしょうか[2]。[1]においては、自分だけのための言語ゲームといって、前代未聞の事態となることでしょう。[2]においては、私的言語と思いそうにはなるかもしれませんが、故人の用いた言語を扱ったまでであることが考えられます。他者がいないからといって私的言語が築かれるとは言い切れません。また、[1]において、そもそも私的言語は成り立たない、とウィトゲンシュタインは考えました。


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