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ガールズちゃんねる「安倍首相 辞任の意向固める」スレッドから形成、作成は佐野幸恵助教・礪波亜希准教授(筑波大学)による
ガールズちゃんねる「安倍首相 辞任の意向固める」スレッドから形成、作成は佐野幸恵助教・礪波亜希准教授(筑波大学)による

女性は政治に関心がない、は本当か。「ガルちゃん」で可視化された「意外な関心事」

女性は政治に関心はない、は本当なのか

先日、前東京都知事で政治学者である舛添要一氏が以下のようなツイートを行った。

「今日お昼に出演したAbema的ニュースショー、ねおさんが番組中に、私の写真を撮って流してくれました。私のYouTube、実はフォロワーの99%が男性、女性は1%のみ。政治の話ばかりだからでしょう。ルーティンを流せとねおさんのアドバイスです。面白いかな?」
https://twitter.com/MasuzoeYoichi/status/1340629476061794304

このツイートに見られる「私のYouTube、実はフォロワーの99%が男性、女性は1%のみ。政治の話ばかりだからでしょう」という言葉は「女性に(少なくとも舛添氏の考えるような形では)政治的関心がない」ことを意図しているのだろう。

舛添さんのような考え方をする人は少なくない〔PHOTO〕Getty Images
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しかし、女性は政治に関心を持たないのだろうか? フェミニズムやジェンダーと言った「女性の問題」に限らず、環境運動、平和運動など、私の専門とする社会運動にも多くの女性が参加してきたから、そうとも言えない。

ただ、その関心の持ち方には性差があるようだ。先行研究は、福祉や環境保護といった政治的イッシューに女性の関心が集まり、防衛、財政といった分野においてはそうでもないことを明らかにしている(Kaufmann 2002, 2006)。また当然といえば当然かもしれないが、ジェンダー関連に関する政策も女性のほうがより重要視している(岩本 2007)。

同じ政治的関心と言えど、女性ならば暮らしやライフスタイルにより近いほうが関心があって当たり前――先行研究が示すように、私もこのように考えていた。

しかし、その考えを改める出来事があった。

Twitter上で社会運動における性被害を訴えたアカウントに掲載された以下の女性の告白を見たときだ。

「(新聞社の)男性記者からなぜデモに参加するのかと言われ、いろいろと自分の考えを述べたのですが、実際に掲載された記事を見ると、まったく答えてもない内容に恣意的に変えられており、その内容というのは『若い女性として、これから将来子どもを産むかもしれない私だからこそ、生まれてくるいのちを守れる社会にしたい』というものでした」
https://twitter.com/agstsexism_jp/status/1301826236004491264/photo/1

実際に、メディアで女性の社会運動従事者が語る政治のことばは、ここまで恣意的に変えられたものは多くないとしても、確かに「暮らし」や「ライフステージ」に着目したものが多いようにも思う。

実際は他にもいろいろな問題に関心を持っているにもかかわらず、社会的な要請によりこうした語りを行っている可能性はないか。こうした形での関心の公言そのものが、ジェンダーロールの踏襲の延長線上にあるとも言えるのではないか。

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女性政治家に課せられたジェンダーロール

その可能性は、社会運動に参加する人々だけでなく、女性議員にも当てはまる。坂本(2018)は、どのような政治家が「男女共同参画社会の実現」を目的とする政策を推進するのかを、地方議会選挙の選挙公報を用いて分析した。

その結果、やはりというか、男性と女性で言えば女性候補者がこうした政策を積極的に推進する。しかし、共産党の女性議員はあまり推進しない。リベラルというか左派に属する共産党議員なら男女共同参画を主張するだろうと考えがちだが、実際はそうでもない。坂本はこの実態に対して、党内における女性議員比率の多さが、共産党の政治家に対し「女性」の政策を選挙におけるアピール手段として意識させなくなっているのではと考察している。女性政治家がマイノリティである状況であればあるほど、彼女たちが「女性」関連政策について言及することになるわけだ。

菅内閣のたった2人の女性閣僚の1人、橋本聖子氏は五輪の他、女性活躍、男女共同参画を担当〔PHOTO〕Getty Images

女性に「福祉」や「男女共同参画」に関心を持たせ、主張させるのは、それが男性もいる場での「望ましい」態度なのかもしれない。だとしたら、「女性が多数を占める場」であればまた異なる政策選好や関心が見られるのではないか。もしかするとそのほうが、彼女たちの政治関心のリアリティに近づけるのではないか。そう考えていたところに、筑波大学の礪波亜希准教授と佐野幸恵助教から「『ガールズちゃんねる』における政治的関心」を研究しないかという誘いを受けた(ガールズちゃんねるを「女性が多数を占める場」として捉えていいのか……という懸念はあったが、この懸念自体もまた私自身のジェンダーバイアスに依拠していたという点は、後で詳述する)。

「ガルちゃん」で政治のトピックは少なくない

ガールズちゃんねる」とは、通称「ガルちゃん」でお馴染みの「女子の女子による女子のためのおしゃべりコミュニティ。女子の好きな話題にみんなでコメント、みんなで投票して盛り上がれる匿名掲示板」であり、基本的には「女性向け」であることを前提として運営されている。もちろん性別を問わず自由に書き込むことができ、話題のノリとしては「義実家」ネタや「ママ友」ネタなど、いわゆる「5ちゃんねる(2ちゃんねる)」の「既婚女性板」や「発言小町」に似ているが、書き込みに「+」「−」をつけられる独自の投票システムがある。

「コロナで本性出た人、まわりにいる?」というスレッドの一部〔PHOTO〕「ガールズちゃんねる」より
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同サイトは2020年3月に約100万ページビューを集め、合計で1億5500万コメントを獲得しているが、実はこの掲示板、「政治」に関するトピックも少なくない。例えば12月23日時点の人気トピックには、芸能関連、対人関連のトピックのほか、「男女平等・女性の社会進出」「安倍前首相、不起訴 桜問題、公設第1秘書を略式起訴」なども見られる。私たちは今のところ、この言説空間を対象に女性の政治関心を分析しようという研究プロジェクトを継続して行っている。

詳細な研究成果は既に公表されているので、関心のある方は論考を見ていただければと思う。少しこちらでもまとめておくと、この論文で私たちが最初に着手したのは、安倍首相の辞任に関するユーザーたちの態度に関する分析だ。

安倍首相辞任における意外な関心事

安倍首相が辞任を表明した日(8月28日)のガールズちゃんねるにおけるコメントを見ると、ユーザーは安倍首相を支持しており、辞任表明に対して「悲しさ」や「共感」を示していることが明らかになった。スレッド「安倍首相 辞任の意向固める」には、9月17日時点で3万9,177件のコメントが寄せられ、1,085,375件のリアクションが寄せられている。

例えば、最もポジティブな反応(+)が高かったコメントは「安倍さん...(泣き顔を示す絵文字のマーク)」で11,267件、2番目は「歴代で一番好きだった。悲しい」である。一方、最もネガティブな反応(−)が高かったコメント(2,093)は、第2次安倍政権にまつわるスキャンダルのうち3つに言及した「森友と昭恵とマスクで大嫌いになったから良かったと思ってる」である。他にも、元防衛相で自民党総裁候補の石破茂氏を指す「石破」をはじめ、「日本」「マジで」「コロナ」「中国」「韓国」などがトレンドワードとして挙げられていた。

ガールズちゃんねる「安倍首相 辞任の意向固める」スレッドから形成。作成は佐野幸恵助教・礪波亜希准教授(筑波大学)による
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つまり、ユーザーの間で安倍首相の人気は明らかであるが、その背景には「すべての女性が輝く社会づくり」に代表されるような女性政策ではなく、国や韓国に対する姿勢があったようだ。世論調査とは裏腹に、ガールズちゃんねるユーザーは安倍総理の外交面での強さを評価しているとも言える。ユーザーからは、中国や韓国に対して「強い」と評価する声が寄せられている。これは、自民党総裁選の候補者中、最もガールズちゃんねるで「受け」が悪かった、石破氏の親中・親韓といった姿勢にも現れている。

ガールズちゃんねるを通じて明らかになった知見は、日本の女性が比較的ソフトで、生活に近いイッシュー、あるいは女性関連の政策を支持しているという既存の調査結果とは少し異なる。ガールズちゃんねるのユーザーは、外交などのいわゆるハードな政治的課題に関心がないわけではないし、なんなら安倍首相や自民党総裁選といったような、「暮らし」「福祉」からアプローチしてもいいような政治的トピックについても、「防衛」や「国際関係」の面から解釈していたことがわかる(あるいは、先行研究の知見を踏まえると、女性や福祉政策と同様に「日本と中国・韓国との関係を生活の危機として捉えている」ということなのかもしれないが)。

「大人の/男性の操り人形だ」

このデータの解釈に対してはいろいろなところで意見を募ってきたが、この「反応」にもやはり、ジェンダーロールの踏襲が現れていた。例えば「多くのユーザーはネカマなんじゃないの?」というものだ。実は、私もガールズちゃんねるの研究の誘いを受けたとき、「ユーザーにはネカマも多いだろうし、どれくらい実態を反映してるのか……」と感じないわけではなかった。

しかし、例えば『プレイボーイ』の読者というときに我々は男性をイメージするが、「本当にプレイボーイの読者は男性なのか、男性のふりしてる女性もいるのでは?」という疑問はまず提示しない。この不均衡が示すのは、女性のメディア受容者を不当に矮小化しているということだ。共著者からこうしたご指摘をいただいて、自分にもメディアの担い手である男女に対するまなざしの偏りがあるのでは、と反省した。

このような「実は、この主張は本人たちの選好を本当に反映したものではないのでは?」という批判に関しては、社会運動でも同様に存在する。例えば若者、女性の社会運動が盛り上がると、必ず「大人の/男性の操り人形だ」と言うオーディエンスが出てくる(近年の事例としてこのようなものがある:グレタ・トゥーンベリ氏をめぐる陰謀論)。

グレタさんが注目されはじめた当初も、「大人が裏で操っているのではないか」という憶測が飛び交った〔PHOTO〕gettyimages
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「操り人形」と「ネカマ」は質的に異なるにしても、女性/若者の政治における主体性を認めない点で共通している。もちろん今後、どの程度のユーザー層が女性かという実質的な調査を行う必要はあるが、女性の政治的関心をめぐる我々の議論と、そこで示唆されている女性の主体性について、無意識のジェンダーロールを踏襲しない受け止め方が重要になるのだろう。

【参考文献】
岩本実砂子(2007)「誰がどのような政策を支持しているのか――『選択的夫婦別姓制度』を中心に」川人貞史・山元一編『政治参画とジェンダー』東北大学出版会, pp.301-320.
Kaufmann, K. M. (2002) “Culture Wars, Secular Realignment, and the Gender Gap in Party Identification,” Political Behavior, 24, pp. 283-307.
Kaufmann, K. M. (2016) “The Gender Gap, ” PS: Political Science & Politics, pp.447-453.
坂本治也(2018)「地方議会選挙と女性政策 : 選挙公報を用いた試論的分析」『関西大学法学研究所「地方議会研究の新展開」関西大学法学研究所研究叢書第58冊』pp.19-48.
Tonami, A., Sano, Y., and Tominaga, K. (2020) “Are Women Japan’s Hidden Conservatives?” Tokyo Review (https://www.tokyoreview.net/2020/11/are-women-japans-hidden-conservatives/)

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