美琴さんがPの札幌旅行に付いて来てしまう話
美琴さんがPの札幌旅行に勝手に付いて来てしまう話。
依存美琴さんのお話の5話。この後どうなっちゃうんですかね。続きはもう既に完成はしてはいますけれど、今回はかなりの策士だった美琴さん。いや、普通に策に溺れていますけどね。あからさますぎるだろ。プロデューサーに絶対バレてる。
新恒常の美琴さんコミュ読みました。イベントシナリオに出てくる緋田美琴って人と名前同じですけれど別人ですよね?ってくらいの話でした。Pみこ概念って自分の頭の中だけの都合の良い学説(少数説)だと思っていたら何故か最新判例になっていたイメージ。とりあえず新衣装も可愛いし、半年間待ち望んだ甲斐がありましたね。あと東京の方が寒いだとか何か大泉くんみたいなこと言ってましたね(そういう意味ではない)。
北海道ネタについては申し訳がないことに僕は北海道に行ったことがありません。生粋の埼玉県民である僕が関東以外でしっかり書けそうなのは京都と神戸ぐらいです。何で書いちゃったんだろ。札幌の知識なんて波よ聞いてくれ、と金カムと、銀の匙くらいしかないのに。地理的条件等の違和感がある場合があると思いますが、坂東の人間が書いたということでご了承下さい。
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看病の甲斐あって、と思いたいものだが、回復したプロデューサーが仕事に復帰してから1週間。
私にはちゃんとしたご飯を食べるよう言っておきながら自分だってお昼をおにぎり1個食べて済ませた気になっているプロデューサーを、私は初めて今日ご飯に誘おうと思っていた。
私から外食に誘う、なんて自覚するほどの食に対する無頓智さからはありえない行動だけど、せっかくのお昼休みだし、プロデューサーともっと話したい。
そう思って、プロデューサーの席に行ってみたら。
「・・・・・・プロデューサー、何見てるの?」
事務所のデスクで昼休み中にプロデューサーがなにやら雑誌を何冊か開いてうなっていたものだから、声を掛けてみると。
雑誌はどうやらガイドブックのようで、どれもこれも札幌、函館、旭川と、北海道の地名ばかり。
「あぁ、美琴。来月くらいにさ、休みが取れそうだから行ってみようかなって」
「北海道?」
「そう。実は行ったことないんだ」
「そうなんだ・・・・・・プロデューサー、時計台行きたいの?」
付箋をしている頁には札幌市内の観光地がまとめて掲載されていて、特に時計台の方にはペンで赤丸が付けられていた。
「札幌といえば、って思うところにチェックつけてる感じだよ。時計台もよく観光地として取り上げられているなって」
「うーん・・・・・・あそこ、内地から来る人からするとちょっとがっかりしちゃうかもよ。プロデューサーが思っている以上に小さいと思うし」
「そうなのかい?まあ確かにがっかり観光地って聞くしなあ」
「でも時計台の鐘は綺麗だよ。ちょっとがっかりしちゃうかもっていったけど、この街のシンボルだからプロデューサーには見て欲しいかな」
「美琴のオススメの場所なら行ってみるか。近くにサッポロビール園もあるらしいし」
「プロデューサー、ビール好きだもんね。昔、家族と行ったことあるよ。ジンギスカンも食べれるし、いいんじゃないかな」
「ジンギスカン!そういえば、食べたことないんだよね。ラム肉食べたいなあ・・・・・・」
「そんなに食べたいものも行きたい場所もあるのに、さっきは何を悩んでたの?プロデューサー」
「ああ、いや・・・・・・ええと。説明するよりも見せた方が早いと思う」
プロデューサーはそういうとパンフレットの付録の地図を広げた。
地図の所々に赤丸が書かれているのだが。
確かにプロデューサーの言う通りだ。見た方が早かった。
「・・・・・・距離感、掴みにくいよね。北海道って」
そう。プロデューサーが行きたい場所であろう函館、札幌、旭川、網走、小樽。
普通の観光都市ならいいが、ここは北海道だ。
要は。
「北海道・・・・・・広いんだね」
「・・・・・・北海道は広いんだよ、プロデューサー」
そんなよくある、北海道あるあるで頭を抱えていたプロデューサーと事務所で話していたのが先月末のこと。
「プロデューサー」
「え」
そして今は空港でキャリーケース片手に札幌へ行くJR駅を探しているであろう、キョロキョロと周りを見渡しているプロデューサーの肩を叩いている。
「み、美琴・・・・・・?」
「空港駅、あっちみたいだよ。行こっか」
「え?美琴?」
「・・・・・・プロデューサー?どうかしたの?」
さすがにわざと過ぎたかな。
プロデューサーは今も信じられないみたいで、何度も目をぱちくり、瞬きしている。
「・・・・・・な、何でここに?ここ、千歳だよ。北海道だよ?」
「仕事が落ち着いたら親に里帰りしなさいって言われてて。今週末は283プロの皆、お休みでしょ。私もお休みだから」
機内で考えていた台詞を矢継ぎ早に話した。
今まで1回も里帰りしてなくて、やっとアイドルデビューして、大きなライブを終えた後、社長がアイドルも含めた事務所のみんながたまには羽を伸ばせるように設けた週末。
里帰りするタイミングとしてはいちばんの機会なわけだから、違和感はない・・・・・・はず。
「・・・・・・たまたまってこと・・・・・・?」
「うん。たまたま、同じ飛行機でこっちに来たみたいだね。同じ機内なのに私も今の今まで気づかなかったからびっくりだよ。札幌まで行くんでしょ?私も途中まで一緒だから、一緒に行こ?一人だと迷っちゃうよ。プロデューサー」
これ以上、プロデューサーに疑われるなり詮索されちゃったら、昨日、飛行機に間に合うように目覚まし忘れないようにね、と、プロデューサーに朝何時に起きるの?だとか聞いていたことも思い出されてしまう。
キャリーケースを転がしながら、プロデューサーの前を歩いていくと
「う、うん・・・・・・そ、そっか。そういう偶然もあるんだなあ・・・・・・考えてみればお互い休みが重なって、僕は観光で、美琴は里帰りで、北海道行くなら同じ飛行機になっちゃうよね。それに確かに美琴が途中まで一緒にいてくれるなら安心だよ」
なんとか信じてくれた、ようなプロデューサーが着いてきてくれる。
これでとりあえずは札幌までは一緒に行けるかな。
「でも、あんまり頼りにしないでね。私、北海道に帰るの10年振りだから。新千歳から札幌も初めて行くし」
そうやってなんとか平静を装って、私はプロデューサーに話してはいるけれど、自分のさっきまでの行動を振り返ると。
プロデューサーの一人北海道旅行の話を聞いた先月から、旅行の準備を始めて、プロデューサーが間に合わなきゃいけない飛行機のフライト時間を聞いた途端にすぐにチケットを予約して、空港に来たプロデューサーにバレないように、飛行機に乗り込み、東京から千歳まで。
プロデューサーの後をつけてきて、ここまで来てしまっている。
これ、もう事務所の子達からすれば抜け駆けとか、そういうレベルじゃない。
私以外の子達からも慕われているプロデューサーのプライベートに勝手に立ち入って、わざとらしい演技をしておきながもプロデューサーと北海道までデートしに来てしまっている。
本当はそういうつもりはなかったのだ。流石にここまでやっちゃうのは私だってまずいのでは、と思っていた。
チケットを取ったのも、プロデューサーと旅行に行けたら、と妄想しているうちに買ってしまったもので。
本当に飛行機に乗ろうとは考えてなかったのだ。
私の頭の中で、ifとして、そういうことを考えるについ欲しくなってしまって買っただけで使うつもりはなかったのだ。
でも、朝、空港でプロデューサーが飛行機に乗るのを、一人で見送ることが出来れば、としか考えずに、早起きして空港で待って。そのときに旅行前のちょっとワクワクした様子のプロデューサーを物陰から見た途端に、私は搭乗ゲートに既に向かっていた。
「美琴?」
隣のシートに座るプロデューサーに声を掛けられて、はっとした。
肩が触れ合う距離でこの人が私の隣に今も実際にいてくれる。
そっか。私、結局、自分の行動を抑えられかったんだ。
プロデューサーと本当に旅行してるんだ。
「なに?プロデューサー」
「札幌に着いたらお昼食べようと思うんだけど美琴もどう?」
「まさか美琴からラーメン屋に行かないか、って誘われるとはね。美琴とラーメンか・・・・・・こんなに合わない組み合わせ、あるんだな」
「そんなに笑うことないじゃない。私だってラーメンくらい・・・・・・・・・・・・あれ、結構久しぶりかも」
前にお父さんに連れていってもらったラーメン屋さん。
こうやって二人カウンターで並んでいると、そのときの記憶が蘇るようだ。隣にいるのはプロデューサーで、お父さんじゃないことは分かっているし、第一、私と三歳しか違わないプロデューサーをお父さんとは勿論思うわけがない。
でも、私にとっては東京で唯一頼れる大人だし、私のことを守ってくれる人って考えると、そういう家族みたいな温かみをつい感じてしまうのだ。
「上京してから食べたことないんじゃないかい?じゃあ美琴も味噌ラーメンでいい?」
「あっ、待って。これ、たぶん小さいサイズ選んでも私食べきれないかも。どうしようかな。炒飯にしておこうかな」
「だったら美琴さえ良ければ僕のラーメン、取り皿で少し食べてみるかい?」
小皿に麺とスープ、メンマにネギと、少しずつプロデューサーに入れてもらって出来た可愛らしいミニサイズラーメン。
プロデューサーとごはんを食べる時はこうやって取り皿を用意してもらって食べさせてもらうことも少なくない。食べさせてもらったから、とお金払おうとすると、まあ経費だから、と毎度の如く払ってもらっているのも。
「でも今日はプロデューサー、観光で来たんだから経費で払えないでしょ。私が払うよ、このラーメン」
「ラーメンのほとんど僕が食べておいてそんなことしてもらう訳には行かないよ。頼んだミニ炒飯の分も含めて僕が払っておくよ」
「普段買ってもらってる差し入れもプロデューサーのお財布から払ってるんでしょ。あれ、経費で落としてないの知ってるんだから。せめてここの分だけは払わせて。こう見えてレッスン室にいるだけじゃなくてちゃんとお仕事行ってお金稼いでるんだから」
「じゃあ頼もうかな。美琴に奢ってもらえるのは気分がいいな」
「前、そういっておいて御手洗行くふりして勝手に代金払ってたの、忘れてないからね。プロデューサー」
「・・・・・・美琴さん、ごちになります」
「ふふっ、初めてプロデューサーにお返しが出来た」
「美琴のおかげで僕は毎日食べられるんだから毎日美琴には返しきれないほど助けてもらってるよ」
「じゃあもっとお仕事頑張るよ。プロデューサーの為にも」
結局、ラーメン食べて少し温かくなっても、身体から今すぐにでも体温を奪わんとする懐かしい寒さを感じながら、私はプロデューサーと札幌デートを続けた。
札幌に着いた時間ももう午後3時くらいだったからラーメン食べて時計台まで行ったら日も落ち始めてて期せずして二人でイルミネーションも見れて。
こうやって過ごしていると本当にプロデューサーと付き合っているんじゃないか、って勘違いしてしまいそうになるけど。流石に周りの人もいる中でアイドルがプロデューサーの手を握る訳にもいかず、ただプロデューサーの袖を掴むことしか出来ない自分を見て、なんとかそんな妄想に逃げずにはいられていた。
そして今はビール園でプロデューサーと夜ご飯を食べているのだが。
「そういえば美琴。実家に帰らなくていいのかい?」
「あっ」
素で忘れてた。そういえば私、実家に帰る予定で札幌にいるんだった。
すっかり忘れて、呑気にプロデューサーとジンギスカンを食べていた。
「・・・・・・今、家族と連絡たまたまつかなくて。返信待ってるの」
「そっか。まあこの時間だからまだ寝てないだろうし、どこか外出してるのかもね」
そんなことでなんとか誤魔化しながらも、私は数週間ぶりに家族にメッセを送る。お母さんとは定期的に連絡は取っているけれど、忙しかったり、特筆して何もいうことがなければ連絡をつい忘れてしまうこともあって。前に送ったメッセもろくに連絡をしない娘を心配したお母さんからのメッセの素っ気ない『大丈夫だよ』の一言だけの返信。
『お母さん。突然で悪いんだけど明日、家に帰ってもいいかな』
そう送った返信はすぐに来た。直接会うのは東京に様子を見に来てくれた以来、数年ぶりだ。快く了承してくれた。
まあ。帰るのは、明日、だけど。
私だって色々準備があるのだ。
だって、そしたら今日は─
「プロデューサー」
「ん?」
「お母さんから返信来ててね。事前に話してなかった私が悪いんだけど、今、お父さんもお母さんもちょうど家にいないらしくて。二人とも、今日は旅行中なんだって。だから私もどこかホテル探すことにするね」
「えっ・・・・・・そうか・・・・・・それはタイミング悪かったね。宿の当てはあるの?」
「今から探すからどうとも。ちょうど明後日ぐらいから雪まつり始まるでしょ。結構探すの苦労しそう・・・・・・あっ、でも駅前にネットカフェってあったよね。あそこ、泊まれるかな。一度も泊まったことないからちょっと見てみたいし」
「駄目だよ。この時期はネットカフェも混み合ってるだろうし、第一、危ないし」
「危ないところなの?」
わざとらしい。
最近覚えたことで、こうやって無垢を演じて、危ないところに飛び込もうとするとプロデューサーが止めてくれる。構ってくれる。手を握って、引き止めてくれる。
自分から手を握る勇気がない私が、最近覚えたことだ。
「プライベート空間が確保されているとは言い難いし、色んな人達が使うから。美琴は一人で行っちゃ駄目だよ。とりあえず待ってて。確認してみる」
そういって私の皿にジンギスカンをのせながらプロデューサーはどこかへ電話を掛けている。
多分、掛けている先は。
「・・・・・・ええ。ですから、僕が予約した部屋、僕じゃなくて、女性一人が泊まります。はい。支払いもフロントで僕がしておきますので─」
プロデューサーが泊まるはずのホテル。その部屋を私に譲ろうとしているのだ。
譲ってしまったら自分はどこに泊まるのか、考えもしないで。
「駄目だよ」
駄目に決まっている。
「・・・・・・美琴?」
だって、やっと、プロデューサーと。
「携帯、貸して」
ふたりきりなんだから。
プロデューサーからスマホを受け取って、私は、意を決して。
「すみません。その部屋、セミダブルとかに出来ますか。私の分と彼の分、二人分で料金払うので」
「ゴホッ」
スマホを取られ、やること無くビールをあおいでいたプロデューサーの咳き込む声は電話越しのホテルの人にも聞こえてしまっているだろうか。
電話を切ってから。
プロデューサーの箸は全く進まず。
ぬるくなったビールグラスを見つめて。
少し考えていたけれど、やっぱり結論は決まっているようで、すぐに机の上のスマホに手を伸ばすものだから。
つい、そのスマホを取り上げてしまった。
「美琴」
「だってプロデューサー、私に部屋譲って、それこそ自分はネットカフェに泊まろうとしてたでしょ」
「・・・・・・いや、そうだけどさ」
「・・・・・・勿論、プロデューサーの部屋に泊まらせてもらうんだからお金は私が払うし、それに。プロデューサーが私と泊まるの嫌なら、今から私がホテルに電話して私の分、キャンセルするから」
「・・・・・・キャンセルして、行く当てはあるのかい」
「ないよ。探すしかない」
「じゃあ美琴が僕の部屋に泊まればいい。僕が他を探す」
「それは私と一緒の部屋が嫌ってこと?」
「・・・・・・職務上の理由で出来ない」
「・・・・・・こないだも私の部屋に泊まったのに?」
「あれは、酒飲んで車で帰れないから、仕方なく・・・・・・」
「前もプロデューサーの部屋に泊めてくれたのに?」
「あれは、いつもの電話を忘れてた僕を心配して来てくれた美琴を一人で夜帰すのが悪かったからで、仕方なく」
「今回は仕方なく、じゃないの?」
「・・・・・・」
「私はプロデューサーと一緒でもいいよ。でも、プロデューサーが嫌なら、諦める」
嘘。
プロデューサーが嫌がっても。
プロデューサーのそばにいたいから。
絶対に諦めない。
だから。
無理矢理でも。
選択を迫って。もう他の選択肢を選べない状況にする。
「・・・・・・分かった。じゃあ、今からホテルにキャンセルの電話かけ─」
あからさまにそんな説明口調で、席を立とうとしたその瞬間。
「待っ─」
結局。
耐えられず、つい、無意識なのかもしれないけれど。
プロデューサーは立ち上がりかけた私の腕を掴んでいた。
「・・・・・・プロデューサー?」
ああ。やっぱりそういう顔するんだ。
掴んでから、やっと自分のしてしまったことを意識したようだった。
無意識に他人を求めてしまったことに対しての後悔の念、恥じらい、情けなさ。
あれだけ渋っていたのに。あれだけ体裁を整えるのに必死だったのに。
少し揺らせば、この人は私の腕に必死にしがみついてしまう。
この感情は自分のものだけじゃないんだ。
それが確認できるなら、こんなこと何回でもやってみたい。そう思ってしまう魔力がある。
「・・・・・・ごめん・・・・・・」
どうしよう。萎縮しきって、もうどうしようもない様子のプロデューサーがたまらなく愛おしい。
「そのごめんは、何のごめん?」
つい、またいじめたくなってしまう。
「・・・・・・」
もういいよ、プロデューサー。
逃げられないんだから。自分の気持ちからはどこにも逃げられないんだよ。
離そうとするプロデューサーの手を握り返して。
「・・・・・・プロデューサー。行こっか」
未だに迷う、プロデューサーの手を、私は引いた。
大好き……心情描写とか参考にします……