図書新聞と私[1]

吉増剛造、粉川哲夫、小池昌代
図書新聞と私[1]
荒天の昨、…… 吉増剛造

■もしも、とうとう、……図書新聞が送られて来ないことになったとしたら、そのときの空白はどんな“心の色…”の、残り方なのだろうか。郵便受を前にして“心急いて”=“胸騒ぎに似た”=“心の色”は、“龍巻の小声”にも似ていた。“ひっそりと急いている心”が手にして急いで開く姿がみられませんようにと、……。しかし匿名のとも「びら」や「ちらし」とも違うのだ。そうだ、“龍巻”ではなくて、小さな小さな荒天なのだ。
凧昨日の空の在所
    (蕪村)
この“空”は、深海の火のような命のことでもあるのであって、灰色と青とが、雑って、濁っているのだ、土気色に。海底の荒天なのでも、あるのであって、“とうとうとう”これが魚が怒って、吐く息でもあるのだ。このような“荒天の昨、……”は、日刊紙にはない。
もしも、とうとう、……言葉から、“棒のようにして”母音が、曳かれたら、……。
もしも、とうとう、……時間から、“棒のようにして”、昨と明日が、曳かれたら、……。
彗星棍棒の傷口が輝いて残る、……。わたくしたちは、この“残るもの”に“賭けるもの”だ。
須藤巧編集長とヨーナス・ミャーカス=ジョナス・メカス追悼号(二〇一九年三月二日、三三八九号)を拵えたとき、山本光久編集長がgozo特集(一九九七年三月二二日、二三三五号)を拵えたとき、有り余る荒天の昨、……が、そこに残されたのだ。
2026.3.2.
gozo yoshimasu
(詩人)
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