Pへの独占欲が強い美琴さんが家に上がり込んでくるだけの話
Pと毎日寝る前に通話をするのが何より楽しみなのに、それが1日ないだけで彼の家に押しかけて、ついでとばかりに色々と牽制しまくる、(全く続きを公開する気がなかった)Pに依存気味の美琴さんの続編。
何故、ヤンデレ美琴さん概念がもっと盛り上がらないのか。
簡単だよ。あのシナリオからどう読解すればヤンデレ要素あるんだよ。
そんなことは分かっとるが、僕は読解力に乏しいのでヤンデレSSをとりあえずは書いておきます。
以下、作品に関して来るであろう依存美琴グループ・株主総会想定問答集。
①相変わらず本編シナリオ(特にノー・カラット)読んだのか、と罵詈雑言を浴びせられながら五体をバラバラにされそうですが、読みはしました。読みはしましたが、それはそれです。
②あと相変わらずPはシャニPそのままで書いているわけではないのでご了承ください。
③前作からどれだけ時間が経過したのか、具体的には記述致しません。
④Pの家の場所をなぜ知っているのか、という事実に全く美琴さんは答える気がありません
以上。
- 858
- 1,006
- 27,201
ピンポン、と。
久しぶりの週末2日休み前の金曜日。
部屋でしばらく会えていない友人と電話越しに宅飲みをしていたら玄関の呼び鈴が鳴った。
「なんかそっちピンポンなってない?」
「え、うそ?」
友人に言われ、着けていたイヤホンを外すと。
ピンポン、と。
確かに聞こえる。
スピーカーモードに切り替わったスマホから友人の声が響く。
『さっきから何度も鳴ってるよ。宅配便?』
「もう夜の11時だよ。流石に配送も終わってるし、今は何も頼んでないよ」
『でもまた─』
ピンポン、と。
流石にこう何度も呼ばれては気になるというもの。
壁のインターホンを見に行くと。
安アパートのドアを叩くにはあまりにも不釣り合いな、見覚えのある美人が映っていた。
───
「・・・・・・美琴?どうしたの?こんな夜に」
ドアを開けて出てきたプロデューサーはすっかり緩み切った姿で、ねぎを背負った鴨がプリントされているTシャツを着ている。いつものスーツ姿ではなく、お風呂上りらしく髪も乱暴にカチューシャで止めて。
こんなだらしがないプロデューサーは事務所でも私ぐらいしか見たことないだろう。
そんなプロデューサーを独り占めしていることに優越感を感じながらも、とりあえずプロデューサーがちゃんと家にいてくれたことを確認できたことに安堵。
一方、そんなプロデューサーは何故、自分の担当アイドルが自分の家を訪ねてきたのか、当惑しているようである。
こっちの気持ちも知らないで。
「プロデューサー・・・・・・どうして電話出なかったの?」
そう。今日、ここに来た理由は。
プロデューサーから電話が来なかったから。
そんな理由で、なんて思わないでもらいたい。
私はそんな理由で、今日、不安で不安で仕方がなかったのだ。
それぐらい、プロデューサーに精神的に依存してしまっていることぐらい、私だってわかっている。
「あ・・・・・・仕事用のスマホ・・・・・・やば・・・・・・み、美琴、ちょっと待ってね。あっ、えっと、このまま家の前だとあれだし、すぐ済むから玄関にいてくれない?」
「・・・・・・うん」
どうやらスマホを確認しに部屋に戻るらしいプロデューサーの背中を見つめながら、私は今日初めてプロデューサーの家に入った。
玄関からそこまで長くない廊下、開け放たれたドアからはリビングもとい寝室のワンルームが見え─
「ごめん、ちょっとした来客でさ。少し待ってて」
と、確かにプロデューサーの声がまた聞こえた。
私に対しての発言じゃないことは直ぐにわかった。プロデューサーは机に置いてある、スマホに対して話していた。
あのスマホは確かプロデューサーのプライベート用のスマホだ。仕事用とは違い、スマホカバーをつけているようで、スマホスタンドで折り返した革のカバーが見えた。
そこには遠くからよく見えないものの、ビデオ通話らしき画面が見える。
「・・・・・・誰だろ・・・・・・あの人」
玄関にいてくれ、とはいわれたのを覚えてはいるものの、私は嫌な予感がして、プロデューサーの後を追って部屋に入ってみた。
乱読家というのは知ってはいたが、ジャンルを問わず、実用書や漫画が本棚に収まりきらず、ブックタワーを作っているような部屋。
プロデューサーもこんな風に私生活にだらしがないところがあるのか、と思うと自分との共通点を見つけたようでつい、気にはなってしまうが。
それよりもその部屋の中央のテーブル、ビールの空き缶が並ぶ中に置かれた卓上のスマホ、もっといえばそこに映されているビデオ通話の相手。今の私の最も興味、もとい、不安の根源にもなりかねない人。
「・・・・・・やっぱり。女の人・・・・・・」
画面に映る人は女性。
突然の来客、そしてカメラの奥に映っているであろく私の影を訝しげに見ている。
染めたふんわりセミショートで、大きな二重目。
コーラル系のチークにわざわざデスク用ライトで照らしているのか反射しているハイライト、濃いめのリップと、ビデオ越しにも綺麗に見えるよう、メイクしている。
画面をタッチしている腕は細く、全体的に身体も華奢。総合してすらっとしたスレンダー美人という印象だ。
「はあ・・・・・・」
つい、スマホを鞄から取り出しているプロデューサーには聞こえないような声量だけれど、ため息をついてしまった。
つまりは、こうだ。
プロデューサーはこの人と話すのに夢中で、仕事用のスマホのチェックを失念、私の着信に気づかなかったようだ。
だったら、この人は何なのか。
確実に言えるのは、私の不安の原因になり得る人だ。
プロデューサーとの時間を邪魔する人。どんな理由であれ、私の時間を邪魔する人。
この時間はいつもプロデューサーと電話で話していたのは私なのに。
反省会、なんて形にして今日のレッスンの感想とか体調、食べたものとか睡眠時間等、報告をしたいと私がプロデューサーに言って毎日5分程度、夜に通話をしているが。
それは建前であって。私としてはプロデューサーが私を好きでいてくれているか、私を嫌いになったりしてないか、私のことを見てくれているか、私の担当を嫌がってないか。
そんな日々の不安を一掃したいがために、掛けている電話。
この電話は、この5分余りの時間は、私が私であるための、大切な、かけがえのない時間。
プロデューサーが今日のレッスンの完成度を褒めてくれる。プロデューサーがつい私が昼飯を食べ忘れてしまったことを注意してくれる。プロデューサーが私のどんな悩み事でも聞いてくれる。
プロデューサーが私というアイドルを好きだ、と言ってくれる。
それだけで。それだけが、欲しいだけなのに。
プロデューサーが私のことを好きでいてくれることを実感できればそれでいいのに。
今日はプロデューサーは電話に出てくれなかった。
私との電話に出ず、この人と話していた。
いいな。
狡いな。
羨ましいな。
どうしてそんな酷いことできるのかな。
私にはこの人しかいないのに。
向こうからすれば、毎日プロデューサーの時間を自分の時間で支配している私の方がずるいかもしれないけれど。
貴方には他の人がいるじゃない。他の人でもいいんでしょ。
だったら、私からプロデューサーとの時間を奪うのは酷いことだよね。
私にはもう、プロデューサーしかいないのに。
プロデューサーがいないと、私は私じゃなくなる。
前みたいに、何も進まない、停滞した、硬直した、全てが冷たくて重い時間に戻ってしまう。
そんなの、死ぬよりも嫌だ。
「美琴、ごめん。どうやら情けないことに鞄に出すの忘れててスマホ見れてなかっ・・・・・・み、美琴?」
玄関にいろ、と言ったはずのアイドルが何故か、部屋に入っていて。スマホと、そこに映っている友人の顔を見つめていたら、そういう反応をするだろう。
「・・・・・・この女の人」
ボソッと。
でも確かに、プロデューサーにも聞こえるように、私はつぶやいた。
プロデューサーは一瞬。私から目を逸らした、気がするが、直ぐに私の方に視線を戻し、
「美琴?えっと。玄関にいたんじゃ・・・・・・」
「・・・・・・プロデューサー、もしかしてこの人と話してたの邪魔しちゃった?」
わざとらしく申し訳なさそうに、しゃがんでスマホを指さしてみる。
この位置ならきっと映るはず。
うん。画面から見える、プロデューサー側のカメラ画面にはプロデューサーの代わりに私が映り込んでいる。
しっかり姿を見せておかないと。
そんな態度が効いて、プロデューサーは改めて謝罪を続けた。
「いいや、僕が悪いんだ。つい、スマホ見てなくって。ちょうど友達と話してたから。本当にすまない」
自分に迷惑をかけたのではないかと心配してくれている私、という構図になっていてくれているようで。
プロデューサーは素直に私に謝ってくれた。
相変わらず優しいプロデューサー。
それにしても。
そっか。お友達か。
良かった。もし恋人ならどうしようかと思った。
ああ。でも関係ないか。
もし恋人でも、私のプロデューサーが私以外の人を好きになっていたとしても。
だったら、その人から私のプロデューサーを守ればいい。
私のプロデューサーがずっと私のプロデュースに集中できるようにすればいい。
要は、もし恋仲関係なら。プロデューサーを奪い返せばいい。
勿論、プロデューサーの言うことを額面通り受け取るならば友達であるからそんな必要は無い。
額面通りに受け取るならば。
見た感じ、プロデューサーに嘘をついているような様子はなく、「友達」と言ったときにも真っ直ぐに私を見つめて、それでいて特に気持ちも何も入らず、淡々と当たり前の事実を言っていたようだった。本当にプロデューサーにとっては友達なのだろう。
まあ、それはプロデューサーから見たら、であって。
この人から見ても友達、とは限らない。
いくら友達でも会う時は最低限のメークぐらいはするだろう、とも言い訳できるが、明らかに外向きであろう気合いの入ったメーク。
夜11時に二人っきりで、お酒も飲みながらの電話。
そういう好意を持っているのか、と疑わせる事情はいくつかある。
この人は、プロデューサーのことを好きなのかもしれない。
だったら、お友達だろうと、友達以上恋人未満だろうと。
この人にはプロデューサーを諦めてもらわないと。
ごめんね。
プロデューサーを独占しちゃうのは貴方には悪いとは思っているけれど、私にだって私の事情がある。
私はプロデューサーを独占したい。
プロデューサーと一緒にトップアイドルになりたい。
プロデューサーがもう私以外の女の子に興味を持たないようになってもらいたい。
私はプロデューサーの特別であり続けたい。
「・・・・・・そっか、プロデューサーのお友達なんだ・・・・・・ねえ、プロデューサー。ゴミ袋とかで使っていい袋とかってある?」
ともう完全に話の流れも意図もわからない質問をプロデューサーにぶつける。
訳が分からないと言った様子ではあるものの、言われたので、コンビニで買ったビール缶を入れていたビニール袋をプロデューサーは渡してくれる。
私がこの人に牽制をする道具。
私は机の上の空き缶をビニール袋に入れ始め、
「プロデューサー、駄目だよ。こんな散らかしちゃ。それに飲み過ぎだよ。いつも言ってるのに全然治ってない」
スマホのマイクにも響くように、わざと少し大きな声でプロデューサーに話し掛ける。
スマホのビデオ通話には彼の飲んだ空き缶を甲斐甲斐しく片付けている私の姿が映っている。
要は、私はこの人の世話焼き彼女を演じた。
何一つ、発言内容に嘘はないけれど、それをわざと口にして。
この人にプロデューサーの隣にいつもいるのは私だと教えてあげる。
いつも世話してもらっているのは私の癖に。変なの。
つい笑ってしまいそうにもなるが、今は自分の行動のおかしさよりも、この人にちゃんと、この人のパートナーらしいところを見せないと。
さて、電話越しの人は、明らかに戸惑っている。
戸惑う理由は複数あるだろう。
夜に突然家に上がり込んで世話をする新人アイドル。
これだけ聞くと随分なゴシップをこの人は目にしていることになるが、この人にとっては会ったこともないアイドルのスキャンダルよりも、そのスキャンダルに意中の男が寝取られている方が心配の種だろう。
「お酒も楽しいのはわかるけど、今日の電話、忘れてたのちょっと傷ついたな・・・・・・って、ごめんなさい。プロデューサーのお友達さん。お話の邪魔してたよね?」
『え、えっと・・・・・・あっ・・・・・・緋田美琴・・・・・・さん?』
突然、私に呼びかけられたお友達さん。
ここ最近、テレビで取り上げてもらっているおかげか、私のことを知っててくれている。
貴方が私のことを知っててくれているのは、そうやってメディアに取りあげてもらっているのは、全部、プロデューサーのおかげなんだよ。
「そっか、知っててくれてるんだ・・・・・・うん、私は緋田美琴です。お姉さん、初めまして」
『は、初めまして・・・・・・あの、てことは、彼が担当してるアイドルって・・・・・・』
「プロデューサーの担当アイドルは私だよ、お姉さん」
私がどんどん話を進めてしまうからか。
何より、なんかこの状況。非常にまずいような気がしたのか。
新人アイドル、毎日の電話、甲斐甲斐しく自室で世話を焼いてくれる。
字面を並べるだけでありもしないことが連想できてしまうからか。
プロデューサーは私の話の間に入って
「美琴。ありがとう、あとは自分でやるから一旦─」
空き缶に触れようとするプロデューサーの手。
私はその手を握って
「プロデューサー、まだ今日、『おやすみ』って言ってもらってないよ。だからそれを聞くまで私は帰らないから」
「え」
「いつもの、まだ貰ってない」
ああ。一度言ってみたかったかも。こんな台詞。
彼氏に毎晩甘える世話焼き彼女。
そんな私の事実を交えた、私の妄想がつくるストーリー。
それを勝手に連想したお友達さんはいかに。
スマホ画面を見ると、お友達さんは自分のビデオを既に切っていて、そのブラック画面から慌てふためくお友達さんの声が響いて。
『・・・・・・あ、あの・・・・・・私、今日この後用事あったから切るね。また今度、連絡するから』
と、突然の座談会終了のお知らせ。
どうやらいつの間に用事が出来たようで、電話をもう切るらしい。
もうなんか思い当たる節しかないけど。
良かった。諦めてくれたかな。
でも、「今度」か。
今度も余計かな。その日もプロデューサーは私といるだろうから。
ちゃんと言っておかないと。
「そっか。本当にごめんね。そんなつもりはなかったんだけど。そうだね、また今度プロデューサーと話してくれると嬉しいな」
『・・・・・・』
ここまで、言えばわかるだろう。
二度と私のプロデューサーに話し掛けないで欲しいって。
こんな皮肉もいえるようになったのか。
我ながら、少し自分の感情が広がる、あるいは人間らしくなったのは感心しちゃう。
人との関わりは、こんなにも私を変えてくれるものなんだ。
やっぱりプロデューサーってすごいな。
プロデューサーといたから、こんな意地悪もいえるんだ。
でも、ここまで言っても、もしかしたら通じてないかも。
こんなにプロデューサーは素敵な人だから、まだ諦めないって子も中にはいるよね。
だから。
ちゃんと言おう。
「・・・・・・でも、この時間は私が話してるかもしれないから。その時はごめんね。プロデューサーの仕事は私のプロデュースだし、プロデューサーの時間は私の時間でもあるから・・・・・・・・・・・・じゃあ、またね。プロデューサーとずっと『お友達』でいてくれたら・・・・・・嬉しいな」
じゃあはい、と私がプロデューサーにスマホを渡したら、スマホ画面には通話時間を示すアイコンが出ていて。
お友達さんはプロデューサーの返答を待つまでもなく、通話を切っていた。
「プロデューサー。この時間は私との時間だよ」
とても良きでした‥