light
The Works "入院したら麻婆豆腐を作ってくれるヤンデレ冬優子の話" includes tags such as "アイドルマスターシャイニーカラーズ", "黛冬優子" and more.
入院したら麻婆豆腐を作ってくれるヤンデレ冬優子の話/Novel by VMAX珈琲

入院したら麻婆豆腐を作ってくれるヤンデレ冬優子の話

4,000 character(s)8 mins

ヤンデレ冬優子に睡眠薬盛られて搬送された病院で、冬優子に麻婆豆腐を作ってもらえる話。
今まで美琴さんは話には必ず出るメインキャストでしたけど、今回は冬優子がメイン。強いていえば天井がサブヒロイン。
業界全体で冬優子のヤンデレ話も少ないなって感じたので書いてはみました。
冒頭のナースコール連打はNHK版ハゲタカから。大森南朋ボイスで「おいッ!!」って叫んでも良かったけれど、流石に態度悪すぎてやめました。

1
white
horizontal

目が覚めたら、目の前にぶら下がっていたのは点滴。
判然としない記憶と認識の中で。
なんとか状況を理解しようとした。
外傷がないかどうか確認したが、していない。
となると、身体内部の故障か。自分ではどこが悪いのか、まるで分からない。

兎にも角にも。
なにがあって倒れたのかも今はどうでもいい。

仕事に戻らなければ。
時計は15時を指している。
今日を俺が倒れたであろう日の翌日とするならば、今日はノクチルのCD収録日。
どの仕事も大切だが、今日の仕事は特別だ。初めて仕事を一緒にするレコーディングスタッフもいるし、作曲家の先生も結構な大物だ。
プロデューサーが不在なんて有り得ない。

ナースコールを鳴らす。
ピンポーン、なんて悠長な音鳴らしやがって。
耐えきれず、何度も何度も押して。
それでも、自分の中の焦燥感は抑えられず。
応答も待たずに、結局、ベッドから重たい身体を何とか起こして。

部屋から出ようとするが。
結局、その場に膝をついて、伏せってしまった。
ね、眠い・・・・・・めっちゃくちゃ眠い。
何でこんな眠いんだ。そういや、倒れたときもちょうどこんな感じの眠気に襲われて・・・・・・

そんなこといってられない。
俺のスマホはどこだ。とにかく外部と連絡を取らなければ─


「スマホ、私が預かってるから。探してもないわよ」

「ふ、冬優子・・・・・・?」

ベッドから半ば転げ落ちて、暴れ回っていた僕の顔を見下ろすように、しゃがむ冬優子。
目の前で俺のスマホを見せつけるようにキーホルダーの部分をプラプラもって。
いつの間にか、僕の目の前にいた。
病室にいつ入ってきてたんだ。

「か、返してくれ。社長に連絡しなきゃ」
「天井社長はあんたの代理でお仕事中。今、放クラのテレビ収録だから電話、出ないと思うけど?」
「は・・・・・・はあ!?じゃあなおのこと連絡しなきゃって・・・・・・ってそれ3日後の予定じゃないか。今日は─」
「あんたが事務所で倒れて3日目」
血の気がさあ・・・・・・って引いた。


医師の診断を半ば眠りながら聞いたところ、睡眠薬を多量に使わなければならないほどストレス性の不眠症に陥った俺は事務所で突然倒れたらしい。
「いや、睡眠薬って・・・・・・確かに服用はしていましたが、それは前にみこ・・・・・・職場の同僚に捨てられた、というか捨ててもらったのでもう飲みたくても手元には・・・・・・」
と、言った途端に、預けられた鞄からあれよあれよと出てくる、見覚えの全くない睡眠薬の箱。
いわく、こんだけ飲んでたら、普通死にます、と。
俺、それは1回実践しようとしてました、なんて口が裂けてもいえないその薬の危険性についていらぬレクチャーを聞かされて。
あんまりにもつまらないから少し目を閉じたら。
次の瞬間、目を開けたら、窓から見える東京タワーのライトアップが綺麗だった。
この病室、景色だけはいいみたいだ。
全く僕の病状はよくないが。

翌日。
見舞いに来てくれた社長に全力で謝罪しようとして。
身を伏せた瞬間、記憶が飛んだ。

目を開けたら。

「起きたか」
随分いい声がする方向に顔を向けたら。
まだ社長はいた。持ち込んだパソコンで書類を作成していたようだった。
パソコンのバックライトが眩しい。
また東京タワーのライトアップが随分綺麗な、昨日とはまた違うパターンで彩られていた。

「仕事は心配するな。お前が開けた穴くらい塞げないなんて間抜けな真似は俺はしない。これでも肩書きは社長だからな」
「今は休むのが仕事だ。お前がいなきゃ回らない、締まらない現場がこれからたくさんある。私にはお前が必要だ。ここで無理してお前にやめさせる口実は作りたくない」
「何があったか、なんて聞いてもお前は応えるつもりはないだろ。別に聞かん。安心しろ」

社長の優しさとその言葉に安心しきって、お礼を言おうとした途端。

バチン、と。

また世界が暗転した。


───────────


「あんたにとってここは監獄でしょうね。こんな味が薄いものばかり食べさせられて」
1週間後。
いや、本当に1週間なのかもよく分からなくなってきたが。
とにかく僕がろくに結局食べれなかった朝食を見つめていたら、冬優子がまたお見舞いに来てくれた。
「味がしないんだ」
「そんなの前からじゃない。あんた、前から味、よく分からなくなってるじゃない」
「前以上にしないんだ。病院食ってこんなものなのかな」
そしたら。
「・・・・・・・・・・・・これ」
と、手渡されたのは。

お弁当箱。
というかタッパー。

「・・・・・・・麻婆豆腐、作ったから」
麻婆豆腐。
開けたら確かに豆腐やひき肉は入っている。
それだけだったら、麻婆豆腐。
色がこんなに赤くなければ。
火鍋の間違いではないか。陳建一のレシピと照らし合わせてもなんか知らない材料は入っていそうだ。
それにしても。

「辛そうだ・・・・・・・」
とにかく辛そうで、舌が痺れるほどの、呼吸困難を催すほどの辛味が襲ってくることへの高揚感。
「普段私が家で食べるくらいの辛さだから、まあ、普通の人は食べられないだろうけど・・・・・・・あんたはイけるでしょ」
「食べていいのか」
「あんたの好物、あんたの前で出しておいて食べるな、なんていうつもりはないわ」


感想はここで特筆するべきではなかろう。作った本人にはちゃんと世辞なしで言ったのだから。
ただ少なくともあえて書くのであれば。

白米がおかわり自由であれば良かったのに。
次回、もしまたもってきてくれるならば白米ももってきてくれると泣いて喜ぶ、と伝えたところ。

「生意気」

怒られた。

「それで。この1週間でゆっくり寝れたかしら」
「多分」
「まあ私以外のあんたの担当してる子たちが見舞いに来たことも、私が前に4回は様子見に来てやったことも覚えてないようなところ見ると、ちゃんと寝れているようね」
担当しているストレイ、ノクチル、シーズの子達はみんな来てくれたのに。
どうやらその子たちが見たのは布団にくるまったままだったり、処方された睡眠薬のあまりの強さに耐えきれず病室廊下で倒れ込んで寝ている僕だったようだ。

さて。
美琴は。
美琴は、そういう僕を見てどう思ったのか。
美琴も来ていたらしいが。

あのとき、庇う、というか。半ば無理矢理助けられたから、美琴は悪くないといった。
美琴にひどいこといったから。正直会わせる顔もないのだが。
一言、美琴にも謝らなければ。
美琴に、とんでもない役割を押し付けた気もするし。
「話、聞いてる?」
「ごめん。寝てた」
「寝てない。あんた、あの女のこと、考えてた」
「ごめん」


「・・・・・・・もう一度いうけれど。とりあえず退院まであと1ヶ月。ここ出たら、正真正銘あんた、無職になるんだから。ちゃんと無職ライフ、余生を謳歌できるよう、治療に集中しなさいよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解雇理由は?」
「自主退職」
「・・・・・・・・それは実は社長から戒告とか減給処分食らったとかで、しかもそれが公務員とか警察官とかの実質辞職勧告的な・・・・・・・・?」
「いや、社長はあんたのこと買ってたから。そういうのは特に。大体、あんた、辞めされるようなことしたの?」
「仕事中に寝てた」
「それはあんたのせいじゃないわ」
「いや、俺が睡眠薬服用しまくって意識混濁して買った覚えのない超強力な睡眠薬も服用しまくって寝たから」
「・・・・・・・・あんたは少しくらい人を疑うってことを覚えた方がいいわね。先が思いやられる」
「・・・・・・・・とにかく辞めないぞ。社長に恩を返さなきゃ─」
「あんたに睡眠薬盛ったのは私」
「返さ・・・・・・・・なんて?」
「私があんたを病院送りにした」
「な、何で・・・・・・・・?」
「あの女にはあんたを休ませるためだの病院行きにさせてあの女から無理やりにでも引き離すためだのもっともらしいこといったけれどね。とりあえずあんたにこの仕事を辞めてもらうため」
「無職・・・・・・・・・・・・・・・・俺?」
「まあ、無職ね。生活費くらいなら私が払うから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・返事」
「返事とは」
「はい、か、いいえで」
「今の冬優子の回答のどこにDoで聞いてる疑問文があったんだ」
「あんたはまあ・・・・・・・・うちの実家でしばらく畑でもいじってなさいよ。なんか隣の農家さん、離農するとかで畑余ってるみたいだし」
「プロデューサー、続けたいんだが」
「あんた、才能ないから無理。特に人を見る目が皆無」
「・・・・・・・・今のは結構傷ついたぞ」
「緋田美琴の本性もよくもわからず野ばらしにして勝手に食い荒らされている時点で、あんたの目は節穴って訳。スキャンダルもいいとこよね。プロデューサー、失格」
「・・・・・・言い返したい」
「・・・・・・まあ、愛依もあさひもそうだけれど、いちばんはアキバで私に声掛けたこと。これぐらいは誇っていいんじゃない?」
「自分にばかり都合のいいこという女だな」
「とにかくあんたは薬漬け。仕事も満足にできずに、爆睡かます人工ナルコレプシー状態。完治には少なくとも数年はかかる。そういう設定なの。だから、あんたはプロデューサー、やめなさい。あの女に潰される前に」
「いや、あの」
「プロデューサー、やめろって言ってるの。これはお願いとかじゃないから」
こういうときに。
眠気が来ないように。
逃げられないように。
冬優子は息をするのも痛いと感じるほど辛い麻婆豆腐を持ってきたに違いない。

Comments

  • 白シャツ

    すごい好きです

    April 15, 2023
  • resurrection

    台詞回しが西尾維新っぽい

    April 6, 2023
  • ありが毛冬

    時系列が投稿順か番号順か混濁してしまう頭の中でしたが、ここに来てグッと惹かれるような場面描写&展開でした。願わくばハッピーエンディングを夢見てしまいますが、好きです。

    December 4, 2022
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
Popular illust tags
Popular novel tags