株式市場の主役テーマの座を「AI(人工知能)」から奪い取るかもしれない。そんな予感を抱かせる壮大さが「宇宙」にはある。イーロン・マスク氏率いる米スペースXの上場計画が実現すれば、象徴的なイベントとなるだろう。企業価値は約124兆円、調達額は過去最大規模の約4.7兆円に達すると見込まれており、株式市場の関心は早くも空前の高まりを見せている。
日本の宇宙産業の強み
宇宙を巡る「覇権争い」と「ビジネス化」は米国以外でも加速しており、ESA(欧州宇宙機関)では過去最大となる約4兆円の予算を投じている。日本政府の宇宙関連予算も初めて1兆円の大台を突破した。2026年度当初予算と2025年度補正予算の合計は1兆446億円(前年度比12%増)に達し、過去10年間で3倍近くも増額している。
柱のひとつが「低軌道衛星通信サービス(地上に近い高度を飛ぶ衛星を活用した高速通信ネットワーク)の整備」だ。自動運転やスマート農業など次世代インフラを支える不可欠な技術であり、災害時の通信維持にも直結する。もうひとつは「安全保障体制の強化」だ。航空自衛隊の改編においては、新たに「宇宙作戦集団」を設置した。加えて、衛星コンステレーション(多数の小型衛星を連携させた統合運用システム)の構築により、観測・情報収集能力の飛躍的な向上を目指している。
日本の宇宙産業の強みは、長年培ってきた高い信頼性と精密な部品技術にある。これまで官主導が中心だった宇宙開発だが、政府が「宇宙戦略基金」を通じて民間参入を後押しするフェーズへ転換しつつある。中心軸となるのは三菱重工業〈7011〉、IHI〈7013〉、NEC〈6701〉、三菱電機〈6503〉といった大手企業だが、近年は宇宙専業スタートアップの上場も相次いでいる。宇宙事業を収益柱とする専業企業にとって、政府予算の拡大と民間需要の成長は強い追い風となる。
アストロスケールホールディングス〈186A〉
・3月20日終値1,104円 時価総額1,497億円
宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去・軌道上サービスを専業とする数少ない上場企業だ。宇宙空間で他の物体に安全かつ精密に接近・操作するRPO(ランデブー・近傍運用)技術では、世界最高水準の実力を誇る。JAXA・ESA・米宇宙軍など各国政府機関を主要顧客に持ち、スペースデブリの回収および周辺関連市場での受注を拡大させている。
防衛予算の拡大による恩恵も大きい。2024年4月期末で26.8億円だった防衛関連受注残高は、2025年4月期末には104.1億円へと急増した。衛星数が急増する今後の宇宙空間において、デブリ対策は安全保障・通信インフラを問わず不可欠な課題となる。義務的な対策を求める国際ルール整備が進むほど、同社のビジネス機会は拡大する構造だ。
技術水準の優位性は際立っている。「宇宙の持続可能性」という世界共通の課題をコア事業に据えた唯一無二のポジションが、投資テーマとしての希少価値を高めている。各国政府が宇宙関連の予算を増額するなか、2027年4月期末には営業利益の黒字転換が視野に入りつつある。