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美琴「私、プロデューサーに恋してるみたい」/Novel by 月姫

美琴「私、プロデューサーに恋してるみたい」

9,746 character(s)19 mins

初めてアイドルマスターシャイニーカラーズを書いてみました!

めちゃくちゃ良いですよね、このゲーム!
好きなアイドルは沢山いますが、
やはり最初に書きたかったアイドルは美琴ちゃんでした!

美琴ちゃんの恋愛知識を赤ちゃんにしてしまったのと
自己肯定感を低めに書いてしまったのは
あえてなのですが、解釈違いの方いたら申し訳ございません

よろしくお願いします!

追記:6/29に後日談をLINE風漫画で書かせていただきました!
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ご興味ある方は是非どうぞ!

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暖かな春
満開とは言えぬまでも、事務所前の桜の木がチラホラと花を咲かせる頃

283プロは今日も、普段通り賑やかだった。


10:00

「樋口、次の仕事なんだっけ」
「…さっきあの人から説明あったでしょ。
雑誌の取材とラジオの収録」
「あー…成程。メモ取ってたわ。そういえば」


11:00

「冬優子ちゃん冬優子ちゃん!わたし、ツチノコ見つけたいっす!
仕事の合間に探しに行ってきていいっすか?」
「うーん、今日のスケジュール的に、そんな時間は無いんじゃないかなー?♡
それに、この前もそう言って勝手にいなくなったの、忘れちゃったー?♡」


16:00

「にへへ…今日のお仕事、甜花頑張った…!」
「うんうん!すごいよ甜花ちゃん!
ディレクターさんもめっちゃ褒めてたよ!」
「にへへ…」


18:00

「行くばい咲耶!1日お仕事した後の晩ご飯は美味しかよー!」
「フフッ、待ってくれ恋鐘。慌てなくたって夕飯は逃げやしないさ
────じゃあプロデューサー、はづきさん。また明日。番組収録、楽しみにしているよ」


そう言って、慌ただしく1日が過ぎていき
恋鐘と咲耶が帰ったあと、
俺とはづきさんは2人してPCと睨めっこしていた。

「……はづきさん、今日は何時まで残る覚悟ですか」

「ふふ〜。今日はもうすぐ上がれそうで〜す🎵」

アイマスクを額に掛けているはづきさんは、
勝ち誇ったかのような満面の笑みでコチラを向く。

「くっ…なんてことだ。はづきさんまで俺を置いていく…!」

「今日は千雪と約束があるので〜。
プロデューサーさんも、あまり根詰めないでくださいね。
プロデューサーさんが倒れたら、もう事務所回りませんので〜」

「ははっ…まあ、確かに仕事は溜まってますが喫緊のものは粗方終えたので、後は休憩を挟みながらゆっくりやりますよ」

2週間後に開催されるアルストロメリアの単独ライブ
8日後にレコーディング予定のSHHisの新曲
4日後行われる放課後クライマックスガールズの横浜でのイベント
そして明日から始まる、アンティーカのテレビ新番組

それらに向けた諸々の調整は既に済んでいる
20人以上のアイドルを1人でプロデュースするのは側から見れば激務に映るだろう

確かに激務ではある
だけど、彼女たち1人1人の充実した笑顔を見れることを思えば、これほどやり甲斐のある仕事は無い
それに…

「残業中に飲むコーヒーが、俺は世界一美味いと思ってるんですよ」

「…それ、ちょっとワーカホリック入ってません〜?」

はづきさんとそんな話をしていると、
ガチャリと事務所の扉が開いた


「おつかれさま、プロデューサー。はづきさんも」


入ってきたのは美琴だった


「美琴、おつかれ。
ごめんな、今日の撮影見ててやれなくて」

今日、SHHisは雑誌の撮影の仕事だった
当然俺も同行したかったが、どうしても手が離せず事務所に残ることになったのだ

「謝らないでよ、プロデューサー。
プロデューサーが忙しいのも、それでも私達のために頑張ってくれてるのも、分かってるつもりだから。
それに他の事務所じゃ、プロデューサーがタレントの仕事に毎回同行することなんて無いんだよ?」

「うーん、そうは言うけどなあ…
せっかく美琴が頑張ってくれてるんだから、直接応援したいんだよ」

俺にとっては当たり前のことを言っただけだったが、美琴は目をキョトンとさせた後、クスクスと笑い出した

「フフッ…やっぱり、変わってるね。
この事務所も、プロデューサーも」

どういうわけか俺は、口元に手を当て笑う美琴から目が離せなかった
美人が顔を綻ばせる姿っていうのは、どうにも男を釘付けにするらしい
───いや、きっと
それだけではなく───


「…だけど、そんなプロデューサーだから私はこんなに信頼できるのかも。ちょっと仕事し過ぎなのは心配だけど」

「そ、そんなこと言ったら美琴もだぞ。
今日ここに来たのだって、今から自主練するからだろ?
俺が止めないとすぐオーバートレーニングするんだから…」

「大丈夫、私は体調のケアはちゃんとしてるから」

そう言って、美琴ははづきさんの方に向き直る

「あ、そうだ。はづきさん。
今日のタクシーの領収書、渡しておくね」

「ありがとうございます〜。
七草さんと違って、美琴さんは忘れずに提出してくれるので、助かります〜」

領収書を受け取ったはづきさんがそう声をかけると、美琴はまたニコリと笑った

「年長者だもん。にちかちゃんや、他の子たちのお手本にならないとね。
…じゃ、自主練行ってきます。2人とも、あんまり働き過ぎないようにね」

クルリと背中を向け、美琴は事務所を出てレッスン室へと向かっていった


「なんか、美琴さん変わったと思いません〜?」

はづきさんの言葉に、俺も同意する

「そうですね、周りの人間を気にする発言が増えたというか…
事務所に来たばかりの頃は、どこか他人と一線引いてた感じがあったんですけど。
まあ美琴が283プロに来て、ちょうど1年経ちますからね。
しっかり事務所に馴染んでくれて良かったです」

すると、はづきさんは顎に人差し指を当てる

「ん〜…それもありますけど〜…なんて言うか、笑顔が増えたというか…
元々の美人さに、『可愛さ』がプラスされたというか」

成程
確かに、笑顔は確実に増えただろう
やはりこの事務所に馴染んできたことや、
にちかとユニットを組んで活動していく中で影響を受けたのかもしれない

そして、その笑顔はとても朗らかで
見る者全てを惹きつける


「ますます魅力的になってますね、美琴は。
こりゃ俺もプロデュースのしがいがあるってもんです」

そう言うとはづきさんは、この人には珍しく(もしかしたら珍しくはないかもしれない)ニヤニヤとした顔をコチラに寄せる

「『プロデューサー』としての意気込みもいいんですけど〜。1人の女子としては恋バナ的な話も聞きたいところですけどね〜?」

「え、ええ?」

「プロデューサーさんは美琴さんのこと、『担当アイドル』としてじゃなくて『1人の女性』としてどう思ってるんですか〜?」

なんだ、この楽しそうな事務員さんは
格好のゴシップネタを見つけた!みたいな顔をしている…!
俺は経験上知っている
こういう時の女子は、非常にめんどくさいことを…!

「『付き合いたい!』とか『結婚したい!』とか思ったりしないんですか〜?」

「い、いや…それは…!」

ヤバい、隙を見せたらゴシップ好き女子の餌食になってしまう
これは、プロデューサーとして毅然とした態度で臨まないと…!

「ゴ、ゴホン!はづきさん…そのような感情は、プロデューサーとして決して許されるモノではありません!
担当アイドルに恋心を抱くなど…!」

わざとらしく咳払いをする俺に、はづきさんはまだ喰らいついてくる

「ウチの事務所、別に恋愛禁止ではないですけど〜?」

「そ、そりゃそうなんですけど!
恋愛も自由なんですけど!
流石にアイドルとプロデューサーが付き合うのはまた違うというか、公私混同と見られて世間の目も厳しいというか…!
なので俺は絶対に、美琴のことをそんな邪(よこしま)な目で見たりはしません!
美琴の為に!
美琴のアイドル活動の為に!」

グッ!と
力強く拳を握り力説する

すると、はづきさんは脱力したように椅子に座り直す

「なーんだ、つまんないのー。
身近にカップルが出来たら、いろいろ弄って面白そうなのにな〜」

「…俺をいじられキャラ枠にカテゴライズしようとしないでください…」

そんなことを話していると、はづきさんが時計を見る

「あ!もうこんな時間、千雪との待ち合わせに遅れちゃう。
ではプロデューサーさん、おつかれさまでした〜
本当の本当に、身体のこと考えて根詰めないようにしてくださいね〜」

そう言ってトテトテ、と
はづきさんは退勤していった


事務所内には俺1人
俺1人しかいないのを再度念の為確認した後

「うーーーーん…………」

俺はデスクで頭を抱える

「うーーーーん…………」


「────そりゃ好きだよ…
好きだよぉ、美琴のこと……!
でも、どうしようもないよなぁ……」


いつからだろう、美琴に恋心を抱いたのは
はづきさんに切った啖呵が恥ずかしい
でも仕方ないじゃないか
俺だって20代の男だ


「はぁ…………」


あまりにも重いため息だ
仕事でもこんなため息ついた事ないぞ




いつもの部屋
いつものジャージ
いつものシューズ

もはやルーティンになってる私の自主練は、最近特に調子が良い

何百回、何千回と繰り返してきたステップと振り付けが

自分でも気持ちの良いように決まっていく

流れる汗も全く気にならない

W.I.N.G.に優勝して
にちかちゃんとユニットを組んで
多くの仕事をさせて貰って

そんな忙しい中でも欠かさずやってきた練習のおかげで
私はもうひとつ上のステージに行ける

そう確信できるほど
最近の私は調子が良かった


───でも、気がかりが1つ


(今日もプロデューサー、来てくれるかな…)

無意識に頭に浮かんだ言葉を、ステップと共に打ち消す
練習の間は他のことを考えてはいけない


(でもプロデューサー、毎日こんな時間まで残業してたら身体に良くないよね…)

ステップと共に打ち消す
練習の間は他のことを考えてはいけない


(プロデューサーに心配かけないように、私ももっと頼られるようにならないと…)

ステップと共に打ち消す
練習の間は他のことを考えてはいけない


今日何十回とリピートしている音楽が終わる
ハァ、ハァと荒く息を吐き、汗を拭う


どうしてだろう

こんなにも身体の動きはキレてるのに
こんなにも練習が上手くいってるのに
こんなにも仕事も上手くいってるのに


その一方で、悩みがあった


「……どうしてプロデューサーのことが
───頭から、離れないんだろう」


朝起きた時も
仕事現場に向かうタクシーの途中も
夜眠りにつくベッドの上でも
こうして自主練をしている間でさえ


1人になると、頭に浮かぶのはいつもプロデューサーのことばかり


彼は今何をしているのか
彼は今誰と話しているのか
彼は───私のことをどう思っているのか


そんな考えばかりが頭を支配して
本来ならリラックスするはずのベッドの上で、鼓動が速くなる感覚もある
たまに、心臓がキュッとする感覚すらある


これが何なのか、全く見当もつかない
今まで二十数年生きてきて、初めての経験だ


「もしかして…」

でも

確か、仲良くしているスタイリストから聞いたことがある

そのスタイリストの学生時代の友人が、
それで仕事が手につかなくなってしまったと

「もしかして…」

私には無縁のものだと、どこかで思っていたけど

この症状は…


「もしかして…心の病気?」




時計を見ると、自主練を始めて約1時間半

私はレッスン室の壁に背中を預けて座る

いつもプロデューサーが止めに来てくれるまでぶっ通しで自主練を行っている私にとっては、あまりにも珍しいことだ


でも、これは非常に重要な問題である


私も全く詳しくないけど
うつ病などの心の病気は、どれだけ早期に発見し治療ができるかが大切と聞いたことがある


原因には全く心当たりがない


でも、もし私の心の中で
知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでいたのだとしたら


自分でも充実していると思っていたアイドル活動の中で、無意識にストレスが蓄積されていたとしたら


そういうことも、あり得るのかもしれない


「もしそうだとしたら、早く病院に行かないと…」


私の症状は主に3つだ

1つは、何をしてても特定の人物(プロデューサー)のことを考えてしまうこと

2つ目は、その人のことを考えると脈拍が早くなる、ということ

3つ目は、その人のことを考えると胸が苦しくなる時がある、ということ


この症状を治療するには、いったいどのような方法が必要なのだろう
今まで全く考えたことのない問題だったので
見当もつかないけど


例えば、カウンセラーの人に話を聞いてもらうのだろうか
例えば、そういう症状を抑える薬、みたいなものがあるのだろうか
例えば、治療のためにその特定の人物───私でいうところのプロデューサーだ───と会わないようにするのだろうか
つまり、プロデューサーにこれから会えないのだろうか……?


「……ぅう」

また、ズキリと胸が痛んだ


これはいけない


私は急いでスマートフォンを手に取り、
症状を検索した


「ある人のことが頭から離れない」

スペース

「ある人のことを考えると胸が痛い」

スペース

「ある人のことを考えると脈が速くなる」


『検索』をタップすると、
スマートフォンの画面の下で、
青いバーが伸びていく


そして表示された検索結果に
私は思考が止まった




20:30

結局この時間まで仕事していた俺は、
レッスン室にいる美琴に差し入れを持って行こうと廊下を歩いていた

美琴が自主練を開始してから約2時間半
おそらく、また休憩もロクに取らずにぶっ通しで練習しているのだろう

「全く…人に『働き過ぎないように』なんて、よく言えたもんだよな…」

口ではそんなコトを言いながら、俺の足取りは軽い
あんまり自分の感情に真っ直ぐ向き合うのは恥ずかしいが、
やはり美琴に会って、話したいからだろう


勿論、こうやって差入れをするのは俺が『プロデューサー』だからというのが主な理由だし
実際他のアイドルの子たちが自主練している時も、差入れは行う。当然のことだ


でも、美琴への差入れは少しだけ意味合いが違ってくる
やはり…その…好きな女性と会える口実にしているのだろう
ましてや、最近の美琴はいつにも増して多忙だ
事務所でゆっくりする時間もあまりないし
話すときは大体はづきさんや他のアイドルの子たちがいる

だから、こうして美琴と腰を落ち着かせてゆっくり2人で話せるのは、必然この自主練の差入れの時間になる


「そんな時間を楽しみにしている、なんて美琴が知ったら、幻滅されるんだろうな…ははっ」


自嘲ぎみた笑いが溢れてしまう
美琴が俺に信頼を向けてくれているのは十分わかっている
だけど、それはあくまで『プロデューサー』としての信頼だ
男性として好意を持たれているわけじゃない
そんな男が、『自分のことを仕事のパートナーとしてではなく、女性として好いている』なんて知られたら
美琴は困惑するだろう
いや、それどころか今までの信頼すら失ってしまう
俺はそれが1番怖い


だから、今日はづきさんに伝えた言葉も間違いではないのだ
俺はこの感情を、一生秘めていく
この恋心を誰に吐露することもなく、ただ1人の『信頼できるプロデューサー』としてあり続けるのだ


だから、せめてこの時間くらいは
君と2人で過ごせるこの時間くらいは、俺の1日の楽しみにさせて欲しい


そんなことを思っていると、ふと違和感に気付いた

「あれ?」

レッスン室から、音が聞こえてこない

それは美琴が練習に使っているSHHisの楽曲、というだけでなく
床をシューズで踏みしめる「キュッ!」とした音も聞こえてこないのだ


ガチャ…


「…美琴ー?」


扉を開けると、美琴は確かにいた
だが、自主練中というわけでなく
彼女にしては珍しく、本当に珍しく
壁に背を預けて座り、スマートフォンの画面を見ていた

「おーい、美琴ー?」

声をもう一度かけると、やっと美琴は気づいたようでコチラを向いた
ただ、その表情は何か困惑しているようだった


「差入れ持ってきたんだけど…その様子、何かあったのか?」


廊下を歩いていた時の、1人の情けない男としての俺、ではなく
瞬時に『プロデューサーとしての俺』に思考を切り替える

なにか、美琴が困っている
俺はそれを一緒に受け止めて、一緒に解決していく責任がある

俺は、恐る恐る口を開く美琴の
次の言葉を待った


「プロデューサー、どうしよう…私…
────プロデューサーに、恋してるみたい」




「私────プロデューサーに、恋してるみたい」


スマートフォンの画面に「貴女は恋をしています」という検索結果がいくつも表示されていて
多分1時間くらい固まってしまっていたと思う
レッスン室にいるのに、練習もせずに

どうしたらいいのか分からなくて、
いつものようにレッスン室に入ってきたプロデューサー本人に助けを求めるように告げた


「………!?」

すると、プロデューサーは目を丸くして
饒舌な彼にしては珍しく黙り込んだ


「あ、あの。あのね。
最近、何をしててもプロデューサーのことが頭から離れなかったの。
『プロデューサーが今何をしてるんだろう』とか
『プロデューサーって私のことどう思ってるんだろう』
とかって考えが、頭から離れなくて…
し、仕事の時は勿論集中してるよ?
でも、それ以外の時は朝も昼も夜もそんなことばかり考えてしまっていて…
それに、鼓動が速くなるようにドキドキするし、
時々、胸がギュッと締め付けられるような感覚があって…
最初は病気かと思って携帯で検索してたんだけど、
そしたら、『それは恋だ』って検索結果がたくさん出てきて…それで…」


私は、まるで兄に言い訳をする妹のように言葉を重ねる

その時、ふと思い当たった

私が今言い訳のように口から出している言葉は
もしかして、恋の告白に当たるのではないか、と


「……ご、ごめんなさい。プロデューサー」


項垂れてそう呟くと、プロデューサーは慌てる


「な、なんで謝るんだよ美琴。
そりゃ、俺も驚いたけど…別に謝るような悪いことじゃない」


優しいプロデューサーはそう言ってくれる
でも、これに関して全面的に悪いのは私だ


プロデューサーからしたら、仕事上のパートナーである担当アイドルに直接恋の告白をされたのだ


それは、彼が私にこの1年間伝え続けてくれていた『仕事仲間としての信頼』を裏切ったに等しい行為だ

『ああ、俺はお前を仕事に真剣に取り組むアイドルだと思っていたのに』

『お前はそんな浮ついた気持ちで仕事をしていたのか』

『見損なった』

そんな風にプロデューサーが思ったって、何ら不思議ではない


(それに……)

もし仮に、私が女性として魅力的であれば
話は違ったかもしれない

例えば、もっと若くて
例えば、もっと生活力があって
例えば、もっと他人に気配りができる

そんな女性なら、プロデューサーも告白を喜んでくれたかもしれない

でも私は、アイドルしかやって来なかった
私が磨いてきたのはアイドルとしての技術だけで
それ以外には何もない

そんな女の告白なんて、誰が喜んでくれるのだろう

彼を困らせてしまうだけだ


そう思うと、涙がポロポロと溢れ出てきた


「……ぐすっ……ご、ごめんなさい……プロデューサー……ごめんなさい……プロデューサーは、仕事として、ひぐっ…し、仕事仲間として、信頼してくれてたのに……裏切って、しまって………ごめん、ごめんなさい……こんな、女が……貴方に恋なんて、してしまって…ぅう……ごめんなさい……っ」


もう、彼の顔も見れない
いや、見てはいけないんだ


その時

グッ!

────強く、抱き寄せられた


「!?!?!!」


何が起こっているのか、全く把握できない

感じるのは、プロデューサーの胸の鼓動と暖かさ

あれ?

プロデューサーも、鼓動が
速くなってる……?


「美琴、自分のこと『こんな女』なんて言うなよ」


聞こえてくるのは、彼の暖かな声
耳を通して、私を安らげてくれる

でも
でも

それを裏切る行為をしてしまったんだ


「でも……私は……!」

「────俺も好きだよ。美琴のこと、」

「え…?」


信じられない言葉を聞いた気がする

泣き腫らした目で彼を見ると、
彼はいつもの微笑みでコチラを見てくれる


「俺だって伝えるのが怖くて今まで言えなかった。
伝えて拒絶されるのが。
でも、今言うしかないと思った。
俺、緋田美琴のことが本気で好きだ。
アイドルとしてではなく、1人の女性として、さ。」


「本当…?」

「ああ、本当だ」

「私、プロデューサーの信頼を裏切ったんだよ?」

「俺もそうだから『裏切り』にはならないよ。
お互い恋しちゃいけない相手に恋したんだ」

「もう、若くもないし…」

「バカ、まだ20代半ばだろ?それに同い年じゃないか」

「掃除はルンバに任せてるし…」

「いいじゃないか、ルンバ。便利なものはどんどん使えばいい。それが人間ってやつだ」

「他人に優しくなんて出来てないし…」

「本当にそう思ってるのか?美琴がにちかや他のアイドルの子たち、スタッフさんたちに気を配ってるところ、俺はプロデューサーとして何度も見てるけど」


「俺、美琴に惚れてるんだ。
アイドルに全力に向き合っている姿にも
口元に手を当ててクスクス柔らかく笑う姿にも
たまに抜けてるところにも
ああ、もしかしたらこうして泣いてる姿にも惚れてるのかもしれない
俺はプロデューサーとしてアイドルみんなのことを輝かせたいと思ってるけど、
それでもこんな気持ち、他のアイドルの子達には感じたことないんだ
美琴なんだよ。俺が惚れてるのは美琴だけなんだ」


「っ……!」


どうしてだろう

どうしてこの人は、私が欲しい言葉を全部くれるんだろう


「美琴」

両肩に手を置かれて、ジッと見つめられてる

「『パフォーマンスで感動を与えられるアイドルになれるのなら、死んだっていい』……これ、覚えてるか」

それは、私が常々口にしてきた言葉

その覚悟に偽りは無く

その想いは今も胸にある

「……勿論」


「俺は美琴の覚悟を否定はしないし、邪魔もしない。むしろ全力で応援する
だからこうやって両想いってことがわかっても、
目に見えて関係性を変えることはしたくない。
ウチの事務所は恋愛禁止じゃないけど、流石にプロデューサーとアイドルの恋愛ってのはファンの方もよく思わないだろう」


「………うん、そうだね……」


流石プロデューサーだ
私がこんなにも感情的になっている間にも
こうやって理知的に私のことを考えてくれている

でも、ということは

私達の関係はこのまま
想いを伝え合っただけ、ということになる


(ううん、それで十分)


そう、自分に言い聞かせる

その時


「あー、だからさ…」

何故か恥ずかしそうにしている彼

「?」

「もし、美琴が夢を叶えてさ……『死んでもいい』って思えるようなトップアイドルになって、いつかアイドルを引退して………その時、それでもまだ美琴が生きてたらさ。
────俺と一緒になってくれないか。
そして、2人で手を繋いで100歳まで生きよう」


その言葉を聞いた時、また私の目には涙が溢れてきた
思わず、今度は私からガバッと抱きついてしまう


「お、おい美琴?」

「うんっ………うんっ!!!よろしくね、プロデューサー!!」


もう私には、何の迷いも曇りもない


貴方となら、どこまでだって羽ばたいて行けるから



「ねえ、プロデューサー」

「ん?」

チュッ

「ふふっ……大好きだよっ」

Comments

  • young

    とても面白かったです!! 美琴さん、かわいい!!! 相思相愛っていいですね〜 楽しく読ませていただきました、ありがとうございます!

    October 31, 2025
  • クロモコ
    March 31, 2025
  • ウェーイ

    美琴さんの不器用な感情が表れててとても可愛いです! すっごくしあわせ〜な気分にさせて頂きました(*^^*)

    March 30, 2025
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