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パンも曲がり角も回避したのに、反則だ!/Novel by souku

パンも曲がり角も回避したのに、反則だ!

1,526 character(s)3 mins

Xにて #同チャレ 企画に参加したときのお話です!
【夏、ハッピー、学パロ】というお題で遅刻ギリギリなどいろいろ設定があって面白かったです。
恋人未満なアオハルしてる槍弓をお楽しみ頂けたらと思います!

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「しまった……遅刻する」
 アニメなどで使い古されたセリフを自分が口にするとは思わなかった。
 一つ訂正させてほしいのだが、決して寝坊したわけではない。確かに明日から夏休みが終わり学校が始まるのを失念していたのは認めよう。
 そんなくだらないことを考えてしまうのは現実逃避しようとしているせいだろう。
 昨晩は夜のトレーニングに少し熱が入りすぎてそのまま眠ってしまった。いつもと同じ時間に起きた時点で支度に割ける時間は限られた。
 優先されるは清潔さ。シャワーを浴び、身支度を整えれば出発時間。
 それこそ王道の流れでいくとパンを咥えて、曲がり角でどーん、だ。男の自分がそのイベントに該当するのかは不明だが。
 パンを咥え──なかったが夕飯の残りで握り飯を拵え、小走りで学校に向かった。

「この時間ならあの角さえ曲がれたならば、間に合う!」
 握り飯片手に走っていた私の頭に一瞬あのワンシーンがちらつく。気持ち速度を落としてみると見慣れた姿が目の前に飛び込んできた。
「よう、アーチャー。こんな時間に歩いてるなんてお前にしちゃあ、めっずらしいなぁ」
 夏のようにギラギラと明るいこの男はクラスメイトのランサーだ。遅刻の常習犯でその証拠に今まさに眠たそうに欠伸をしている。
「君と違って寝坊はしてない」
 朝からシャワーを浴びていたから遅れた、と素直に口にしてみると「道理でいつもみたいに決まってない訳ね」と頭を乱暴にかき回される。
 乱れると苦言をぶつけてやると思いの外素直にすまんと謝られた。
 何処かいつもと違う様子にこっちまで調子が狂ってしまいそうで、ランサーを放って歩きはじめる。
「行き先一緒なんだから仲良くしよーぜ?」
 ひょいひょいと隣に並んだランサーはこちらの手元に視線を向ける。
 急いでんのにおにぎりかよ、と笑うのに悪いかと返す。
 いんや、と返事したランサーはうまそうだなって思ってなと笑う。それがやっぱり慣れなくて、居心地悪くて、わざとらしく咳き込んでみる。
「君の寝坊は夏休みが終わるのが恋しくてだろうね」
 てっきりいつものように食ってかかって来るだろうと思っていたのに返事がなかった。隣をみてもランサーの姿はない。
 足を止めて振り返ってみると膨れっ面の男がこちらをじっと見つめている。
「……久しぶりにお前さんと話せると思うと眠れなかった」
 予想外の言葉に驚く。傍からみたら心底間抜けな顔をしていたと思う。だってそうだろう?今の口振りでは、彼が私と会うのを楽しみにしていたみたいではないか。
 平静を装おうと握り飯を食べる。うん。我ながらいい塩加減だ。
 食べ終わった私は一言だけ呟いた。
「……そうか」
「えっ、それだけ?」
 いつの間にか再び隣に来ていたランサーは不服そうだ。「オレさお前のこと、」と言いかけた彼を遮るように遠くで予鈴がなる。
 まずい、とどちらともなく走り出す。ちゃっかり繋がれてしまった手に汗が滲む。

 セーフ、とおおらかに笑うランサーは最後にもう一つ爆弾をお見舞いしてくれた。
「さっきの、告白だかんな。お前さんが強くノーって言わんなら嫌って思ってないと受け取るから」
 屋上行ってくる、と言い残した背を見送ったあと、その場でヘナヘナと座り込んでしまった。
 だって仕方ないだろう?すれ違い際、お前さんを待ってる間に汗かいちまって気持ち悪かったろ、とハンカチを押し付けられたのだから。
「それでは、まるでオレのことをあの暑い中、待ってたみたいじゃないか」
 ランサーの本気さと己の煩い鼓動を無視するなんてできなかった。
 まだまだギラつく夏の太陽にだって負けないほど、頬が熱を持っていた。

Comments

  • お酒

    お幸せにー!

    December 26, 2024
  • ポリゴン
    September 18, 2024
  • fufudululu
    September 16, 2024
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