【田村藤夫】DeNA7年目・森敬斗、センター転向の可能性が示すもの 空虚な三振に思わず声…
【226】<ファーム・中地区・DeNA3-2巨人>◇21日◇横須賀 7年目のシーズンを迎えたDeNA森敬斗内野手(24=桐蔭学園)は、ファーム中地区でセンターに挑戦していた。ルーキーイヤーから森のプレーをことあるごとに見詰めてきただけに、ポジティブなものと、複雑なものが胸に浮かんだ。 【イラスト】球春前、DeNAの予想される布陣 ◇ ◇ ◇ そうかと、グラウンドを見て思った。森がセンターのポジションへ軽やかに走りだす。本来いるべきショートを通り過ぎ、広大な守備範囲をカバーするセンターで打球に備える。試合で打球処理は1度、イージーなフライをさばいただけに、センター森の守備について細かく考察はできない。 しかし、高卒7年目となると、当然のことだが、この世界に生き残るためには選択肢を増やすしかないのだろう。これが、森本人の希望なのか、指導者主導のことか、そこは今後の取材で確かめたいとは思うが、自然な流れかな、とも感じた。 昨年のドラフトでDeNAは即戦力といえる大学、社会人出身のショートを2人獲得している。そのうちの1人、宮下朝陽(東洋大)がショートを守っていた。キレのある動きを見せていた。肩も強い。その守備を、センターから森はどういう思いで見ているのだろうと、やや複雑な思いに駆られた。 私が、評論家になったのが2020年。高卒ドラフト1位だった森のルーキーイヤーだった。強肩で俊足、打力も期待できる有望なショートとして私は注目していた。だが、たまたま私が見た試合で、中前への当たりに激しくチャージしない動きに、私は厳しい評論を加えたことを思い出す。 その後、何度か取材を重ね、本人とも言葉をかわし、さらに京田とのインタビューの中で、何度も森敬斗の名前を聞いた。あっけないボーンヘッドが目立ち、その印象ばかりが先行するが、森の野球に対する姿勢を京田はほめていた。チームメートの評価ほど、確かなものはない。 私はそうした部分に触れながら、いつしかショート森として1軍に定着すること、レギュラーに肉薄する未来図を描いていた。24年には71試合に出場し、レギュラーに手をかけた時もあった。しかし、1軍のレギュラーを手中に収めることは至難の業だ。定位置を確固たるものにしたかった昨年は28試合出場にとどまった。故障もあっただけに、とてももったいなかった。 今年こその思いはあっただろう。それが、ファームでセンターに取り組む姿には多少の驚きはあった。しかし、新人選手の補強状況を見る限り、外野という選択肢を広げておくことは、森にとって悪いことではない。すぐに、内野手から外野に転向して成功した強打者を考えてみた。西武秋山幸二、オリックス田口壮、そして日本ハム陽岱鋼。 ここに、打力が開花した森敬斗の名前がやがて加わることだって不思議ではない。決して後ろ向きな転向でもない。森が「打つしかないんだ」と腹を決めるきっかけになるなら、これも大切な節目と言える。 頭の中でそう整理をつけて、森の打席に集中した。2番センター森は、無死一塁の第1打席では初球空振り、2球目ファウルからの、3球目の外角真っすぐを見逃し三振。先頭打者の第2打席は、ファウル、ボール、ファウル、ボールから、巨人左腕井上の内角を攻めたスライダーが抜けて甘く中に入ってきたボールを空振り三振。 心の中で「おいっ!」と、唸っていた。それじゃ、だめだろ、と。結果が見逃しでも、空振りでもそこは汲むべき事情がなくはない。しかし、打席でしっかり準備が出来ていたのかと、きっちり森に聞きたくなった。特に第1打席の見逃し三振は論外だ。 一塁に走者がいる。2球で追い込まれたなら、まずは狙い球を絞りつつ、変化球にも対応する、これが基本だ。厳しいコースならカットする、そしてボール球を見極めながら粘る。プロの打者にいまさら説明は不要だ。当然、森だって分かっている。分かっているのに、このあっけなさにこそ、森敬斗が抱える「ムラ」というか「粗さ」が浮き彫りになる。 打者としての能力が足りないわけではない。現に、第4打席、第5打席では2ストライクと追い込まれてから、2打席とも四球を選んで出塁している。できるのだ。森はそういうことができるのに、それを第1打席から実戦できない不思議な側面を持つ。だから、首脳陣も安心して打席を任せられないのかな、とも感じる。 この不安定さ、森もよく理解しているはずだ。この弱い部分が顔を出す頻度が少なくなればなるほど、森のチャンスは広がる。まさにそれこそが森の克服すべきバッティングでの悪癖であり、成長への糸口でもある。 分かっていても、矯正できないこともある。いや、そんなことの連続かもしれない。特にバッティングは、些細なことでつまずく打者がほとんどで、その課題を上回るだけの長打力なり、機動力なり、勝負強さがあれば、打者はわずかでもゆとりを持って打席に立てるようになる。 ショートからセンターに転向が決まれば、バッティングではっきりしていることがある。ショートの時よりも打たなければならない。打つしかない。ショートで2割5分前後なら、センターならば3割近く打たなければ。そのためには、追い込まれてあっけなく見逃し、空振りをしていては、自らチャンスを逃してしまう。 守備では、レフトやライトの守備機会で確実にバックアップに走り、しっかり万が一に備えていた。打球を追う両翼に対してしっかり声も出し、フォローする意識も高かった。ベンチからセンターへ駆けだす森の姿は、はつらつとしていて、すがすがしかった。私は評論する立場ではあるが、結果を出してほしいと願わずにいられない選手でもある。 入団当初から見てきた選手への思い入れというのは、正直に言えばある。それではフラットな評論は書けないと指摘されてしまえば、答えに窮するしかないのだが、それが本音でもある。高卒で期待されながらプロに入り、失敗もして、怠慢プレーだと批判もされ、それでも1軍昇格を目指し、レギュラーをつかもうと必死な姿には、心を打たれる。 それが2年目、3年目と月日が流れ、4年目、5年目となると、大卒に換算した表現となり、そろそろ1軍定着を、あるいはレギュラー獲りをと、ハードルが上がる。それが7年目にもなると、高卒で生き残っていることだけでも難しいのに、新人選手との比較の中で、より厳しい立場になっていく。 その中で、首脳陣に力を認めさせ、歯を食いしばってでも成長するしかない。今の森に対してシンプルに言うなら「ショートに比べて守りに負担が減るのだから、より打つしかないぞ」と。それがいかに難しいことか、私にはよく理解できる。 だから、その1打席に、しっかり準備して入ってほしい。追い込まれたところから、打者の真価は問われるのだ。1球でも際どく粘って、打てるチャンスを残し、そこに懸けるしかないのだ。 この試合で見せた第1打席、第2打席の見逃し、空振り、いずれも三振というシーンが、極端に言えばなくなることを願う。(日刊スポーツ評論家)