【槍弓新刊サンプル】花咲く止まり木
4/18の赤弓受まつりに出したかったのに間に合わなくて結局5/9のエアブー合わせになってしまった、FGO・CBC2021概念礼装「フラワー・アンド・カフェ」ネタのHA槍弓本サンプルです。
フラカフェ本です、としか言いようのない内容です。書いた人的には槍弓ですが、いちばん量があるのはおそらく槍と凛の会話です。イミフ。
この設定で細々と書き続けたいという希望だけはありますが予定は未定です。
「花咲く止まり木」
B6/フルカラー表紙/オンデマンド/20P/イベント価格200円
通販(BOOTH):https://acf.booth.pm/items/2900352
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きっかけは小さな英雄王のちょっとした気まぐれ、だったはずだ。
そこに深い意味などなく、単純に長い目で見れば商売として成功しそうだから投資した。おそらくはそんなところだろう。
大きかろうが小さかろうが、英雄王はビジネスの相手としては申し分ない相手である。なんせ天性の商売人な上に放っておいても勝手に金が集まってくるというチートスキルの持ち主なので、事業の失敗という単語とほぼ縁が無いからだ。
過程として、人選に少しばかり周囲の思惑が絡んだという可能性は捨てきれない。リスクを排除するのであれば、最初からこの時代を生きる普通の人間を従業員として雇用したほうがいいに決まっているからだ。戸籍もない、姿形はともかくそもそも人間ですらない存在のみでスタッフを構成するなど、現代の常識に詳しくないランサーにでさえ愚行だとわかる。神秘の秘匿はどうした、というわけだ。
「いいじゃないですか。どうせ暇なんでしょう?」
そんなランサーの心中を知ってか知らずか、小さなギルガメッシュはにこりと邪気のない笑みを見せた。笑みに邪気がないだけで、言っていることはそれなりに酷い。
「ヒマじゃねぇよ、こちとらバイトしてんだよ」
「そのアルバイトで培ったランサーさんの経験を買っている、というわけです。それに、居場所さえ判明しているのなら今後緊急時以外は特に干渉するつもりはない、マスターはこう言っていますけど?」
「ぐ」
あの繰り返しの四日間が終わって時が流れるようになってからもランサーがあの教会に近寄らないのは、もちろんマスターの酷使から逃げるためだ。
マスターのカレン・オルテンシアは魔術師ではないので、そもそも魔力の融通という意味ではさほどアテにならない。近づいたところでデメリットのほうが大きいので、今でも強制的に呼びつけられでもしない限りは近寄らないことにしている。
そういう意味で、カレンのもうひとりのサーヴァントである小さなギルガメッシュには、借りがあるというのが現実だ。なんだかんだ言いつつも子ギルは教会に拠点を据え、適度にカレンの無茶振りをランサーに放り投げつつも彼女を護っている。
その子ギルからの正式な『依頼』となると、無下にしにくいというのが本音だ。それに、依頼内容自体はべつに拒否感をもたらすものでもない。ランサーにしてみればデメリットなどないに等しかった。
ただ、己の本能がなんらかの警告を発している。なにも考えずに引き受けるなと、警戒は怠るなと主張している。
これまた、忌避感というわけではない。引き受けるのは構わないしそれ以外に選択肢はないが、なんらかの覚悟を決めておけと、そういう感覚に近かった。
「……まあ、いいわ。りょーかい、引き受けた」
つまり、覚悟さえ決めておけばいいわけだ。あっさりとそう結論づけて、了承の言葉を返すと。
「ランサーさんならそう言ってくれると思ってました。よろしくお願いしますね」
小さなギルガメッシュはまたしてもにこりと可愛らしい笑みを浮かべて、小さな手を差し出してきた。
――己の本能の機微にランサーが感謝することになるのは、そう遠い先の話ではない。