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アイム、ホーム/Novel by 藤咲

アイム、ホーム

6,601 character(s)13 mins

金塊争奪戦後に服役した白石が出所する日のお喋り。完全にIF妄想。
七割くらいCP要素薄め、白石の過去捏造ですのでご注意ください。

ゴートリはハ●レグミの家族の風景が似合うなあと思います。
表紙はaiha-deco様からお借りしています(illust/59953982)

◆追記◆閲覧ブクマありがとうございます!白杉ハッピーフォーエバーであって欲しい〜〜

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実の親の顔は知らない。
養父母には「お前の両親はロクデナシだったよ」とうんざりするほど言い聞かされた。
大酒飲みで博打打ちの借金を抱えた親父は酔っ払って川に落ちてナンマイダ。お袋は女郎だったが、肺を患ってこっちもナムアミダブツ。
女郎屋で一歳の赤ん坊なんて使いようもない邪魔者で、小さな商いをしている夫婦に引き取られ物心ついた時には雑用の手伝いをしていたってわけ。学校には行ってないけれど、読み書きと算盤は二人から教わったし、まあ食べ物も寝るところも貰えたね。そりゃクソみたいな生まれからしたら恵まれて上々だろと他所様に言われる。
でも俺は有り難いと思えたことは無かったね。何をするにつけても「アンタは貰われ子なんだから、感謝しなさい」って言われるんだもんな。恩着せがましい奴らだったよ。

しかも、俺が八つの頃に養父が女にハマっちまって、そこから真っ逆さま。
相手は素人女らしいけど入れ込んで貢いじゃって店も取り上げられ、養母もおかしくなった。
寒い冬に馬小屋程の狭い家の土間で寝させられ、頬を打たれたり竹箒で小突かれたりしたらそりゃもうウンザリするよな。
俺の本当の母親が女郎で男に入れ込ませる商売してたから、あのババア、俺に八つ当たりしてたんだよなあ。養父が入れ込んでいる女と俺の本当の母親はいっさい関係無いのにさ。
そのうちメシも貰えなくなるわ無視されるわ。ちょっと酷いよねえ。飽きられたんだよ。気に食わないから要らないってね。

我慢できなくなって家を飛び出しのは良いものの、育ち盛りだし腹が減って仕方なかった。だからとりあえず飯にありつくために必死だった。物乞いしたって貰える量なんかたかが知れてるからな。
日雇い人足の現場で子どもでも出来る雑用の仕事貰って、そこで働いている時は腹一杯になるまで炊き出し食えるのは嬉しかったなあ。稼ぎはほぼ出ないの。ガキだし。飯を食えたら充分だったんだけどね。

まあでもそんな殊勝なことを言っていられるのも最初のうちだけ。皆んな飯食ってる時にやっぱり酒や博打、女の話になるでしょ。そうしたら楽しそうだなあって思うじゃん。楽しむには金が要るんだよね。
だから同じように訳ありのガキ連中で組んで盗みで小遣い稼ぐことにしたわけ。
日雇い人足やってるおじさん達、わりと前科者多くて酔ったらよくコツを話してくれていたからさ、それを実行してみたら拍子抜けするほど簡単でビックリしちゃったな。こういう時は手先が器用な方で良かったなって思ったわけよ。んで、しばらくはスリや盗みに入って金を手にすると飲んで打って買って好き三昧。

まあでも阿漕な真似してそうそう上手くいくわけないよな。身なりが薄汚いガキが頻繁にそんなこと繰り返していたら通報もされる。そんで捕まって、気付けば刑務所。
そこからはもう話したっけ?シスター宮沢の話とか華麗な脱獄劇について。あっそう。ごめんね、おじさんになると同じ話何回もして若者にウザがられちゃうのよね。あはは。

うん?で、またしくじって入牢してるのかって?
いやいや、しくじったんじゃない。脱獄は成功して樺太の先、露西亜まで行ったこともあったんだぜ。えっ、この話もしたっけ?あらら。

まあそうだよな。みんなに話しまわって一番評判良いもんな、俺と杉元とアシリパちゃんの冒険譚。おっかないこともたくさんあったし、金が欲しいとはいえ命賭けても勝算ねえから降りようとも思ったんだぜ。でもなあ、めちゃくちゃ楽しかったんだよなあ。あいつらといるの。
うん、そう。最後に杉元の故郷にアシリパちゃんと柿食べに行こうとするところで終わるの。そこから先はどうしたのかって?
あはは。俺が行けるわけないじゃん。


俺は脱獄囚で本州に渡ってお巡りに見つかったら即逮捕されちゃうし、もし二人も一緒にいたら共犯?幇助?っていうの?とにかく迷惑掛かるのは確実だと分かってるから俺は行けないって断ったの。それなのに二人とも駄々捏ねてさ、困っちゃうよね。
俺なんて放っておけば良いのに「シライシが行かないなら私達も行かない」なんて言われちゃって。とうとう三人で泣いちゃった。

俺だってそりゃ最後まで見届けてあげたかったよ。でもそれよりも二人に迷惑かけて巻き込んで旅を台無しにするのが嫌だったんだよね。
杉元とアシリパちゃんは人生の一区切りをつけて未来に向かって一歩一歩きちんと歩んでいける強さがある。
けれども俺はそんなの無い。生まれてからずっとズルズルと適当にのらりくらりとかわしながら生きてきた結果、真っ当にお天道様の下を堂々歩ける身の上じゃなくなっちゃっていたんだなってようやく思い出した。
北の大地はそこだけ別世界のようになんでもアリの土地で罷り通っていたこともあったけれど本州はそうは行かないじゃん。世間が狭いからさ。何かしでかしたらすぐに広まっちゃう。

あーあ。俺、杉元とアシリパちゃんと堂々と往来闊歩したかったんだよなあ。本場の桜鍋もちゃんと振舞ってやりたかったし。アシリパちゃんに北海道には無い美味い飯たらふく食べさせてやって、どんな反応してくれるのか見るのをこっそり楽しみにしてたんだぜ。
でも脱獄囚のままだったら出来るわけないから、仕方ない。そう自分に言い聞かせながらすっごく悔しくて、自分に腹立ってきちゃって。俺もちゃんと生きてみれば良かったのにって今までの生き方を初めて後悔したの。シスターを目の前にしたって、不埒なことばかり考えて何ひとつ悔い改めようなんて考えなかったこの俺がよ?

二人には一緒に行くよって言って安心させて騙して本州に船で渡ってさ、下船して宿に入った晩、いつもみたいにお姉ちゃんのところで遊んでくるねって言ってふらっと別れてそのまま真っ直ぐ出頭したの。俺も役者だよね。
あっ、一応ちゃんと置き手紙は残して出たよ。探しに来られても困るから。

そんで収監されてどこの監獄に行くのかと思ったらまたこっちで驚いたよね。
俺ここ抜け出したことあるのによくまあ収監場所に選んだもんだと思うよ。火災で燃えて頑丈に建て直された獄舎だから良いかって判断されたのかもしんない。
杉元やアシリパちゃんに会ったのも俺が監獄から脱走して北海道を彷徨いていたからこそ、っていうのもあるけれどやっぱりこっちの土地と縁があるってことなんだろうなあ。

嘘ついて黙って出頭したけど、結局脱獄王ついに捕まる!って新聞記事になっちゃって杉元とアシリパちゃんにはバレたよ。でも二人とも怒らなかった。新聞記事に俺がどこの刑務所にいるか載っていたらしくて少し経って二人から手紙が届いてね。心配したって書かれていたよ。会ったらストゥで殴るとも書かれていたけど、不覚にも嬉しくなっちゃった。あっ、別に俺被虐趣味は無いからね?
ストゥ知らない?なんかでっかくて太いお仕置きする時に使う棒。びっくりするほど痛いんだからね。使われたことあるのかって?まあそのことは今関係ないから……。

出頭した時にはさ、俺のことなんて忘れて二人は二人の暮らしをして欲しいって俺は考えていたんだけどそれでもやっぱり、気にかけてくれる人がいるって嬉しいもんだね。だから二人からの手紙読んで泣いちゃった。
俺は生まれた時から要らない子で、親にも気にかけて貰えなかった人生しか知らないから。

なあ、小樽からここまで道程がどれくらいか知ってる?四百粁もあるんだよ。
なんと手紙どころか、杉元はね、面会に来るんだよ。
平坦な整備した道だけならまだしも、どんなに急いだって山を何度も越えなきゃいけないし足掛け二週間掛かる道程だよ。往復ほぼ一ヶ月。年に三回も来るの。熊も出るし他にも物騒なこと沢山あるのに。命知らずにも程があるよね、不死身とはいえ。
しかも俺が収監された最初の三年は面会禁じられていたのに、その時もずっと来てたの。会えないこと分かっていて会いにくるの。尋常じゃないなって刑務官のお兄さんも言ってたけど、俺もそう思う。
時間も労力も勿体無いから来なくて良いって言っても差し入れ持って来るんだもん。あいつ律儀すぎるんだよ。いや頑固と言った方が良いかな。

話逸れちゃった。なんだっけ、えっーと。そうだ、柿食べにいく話の顛末ね。
杉元とアシリパちゃんは俺が出頭した後、迷ったらしいんだけどちゃんと故郷の村まで旅したんだって。杉元はずっと好きだった未亡人に眼の治療費渡そうとしたけれど気持ちだけで嬉しいって断られちゃったみたいだけど。
でも杉元はそれなら二百円はその女の人の子どもさんが学校行く時の資金にして欲しいって頼んでようやく受け取ってもらえたんだって。その人のために北海道で危険を冒して冒険したんだから、受け取ってもらえなきゃって思ったんだよな。
あいつのケジメなんだって理解してその人も受け取ったんだと思う。お金なんかよりもたくさん顔見せに来て欲しかった、って言われたらしいけどね。
そんでその女の人とアシリパちゃんと杉元で柿食べて、数日滞在して杉元はアシリパちゃんとまた北海道に戻ってきたわけ。

今はね、アシリパちゃんと杉元は一緒のコタンで暮らしているよ。コタンはね、アイヌの人達が暮らす村落。こんなところに収監されている俺らに比べたら百倍真っ当な人達だよ。

結婚はしてないねえ。アシリパちゃんは自立した新しいアイヌの女性になるんだって言って結局学校通って、読み書き習得したんだ。アイヌの言葉や文化を文字で記録して、コタンの子どもに教えてる。それからなんと、親の居ない子どもを杉元と面倒見てあげてるの。
血の繋がった子どもはいないけれど、コタンの子どもみんなに慕われ幸せだって、私にはこんなにたくさん子どもがいるんだって、手紙に子ども達の名前全部書かれていた。たまに子ども達の描いた絵も俺宛ての手紙に同封してくれるよ。
コタンは違うけれど、亡くなったキロちゃんの子どもの面倒も大人になるまで見てあげてるし、エライよね。

アシリパちゃん、一つの家庭に収まるタイプじゃなかったんだよなあ。新しいアイヌの女になるって言ってたけど本当その通りになっちゃった。
夫を持って子どもを生んでその子どもを育てる人生も素敵だなあと俺は思うけれど、アシリパちゃんの生き方も素敵だと思う。
あの子がその道を選んだなら俺もちゃんと応援してあげないとね。杉元とは継続して相棒の間柄で仲良くしているみたいだしまあ良いかな。相変わらず杉元の銃の腕前がダメって時々ボヤいているけれど。

そう。杉元もそうやって暮らしているのに満足しちゃって結婚してないんだって。
だから身軽にこうして来てくれるんだろうけど、それにしたってさあ……もっと自分のために生きてくれって言いたくなったね。言えなかったけどさ。こうして来てくれることに喜んじゃってるのに身勝手なこと言えるわけないもん。

ああ、でも来る道中で行商の真似始めたのはちゃんと生き方の活路見つけたんだなあとホッとしたんだ。
でもさ、杉元商売下手なんだよなあ。
だって客商売なのに顔が怖いからビビられるか、逆にわけ分からないやつにすぐ喧嘩吹っかけられるもんなあ。その一方で困っている人は放って置けないから助けて損しちゃうし。
俺がここ出たらちゃんと上手い儲け方教えてやらないと。

いやいやもう詐欺みたいなことはしないって。
そんなことしたら本当に二人から見捨てられちゃうからね。
二人は情が深いから俺が落ちぶれてもなんだかんだ言いつつ見捨てないだろうけれど、俺はそれくらいの気概でいるわけ。
甘えすぎたくないんだよね、大好きだから。

……本当に大好きなんだよ。血の繋がった親父や母親、育ててくれた親代わりの人達よりも。つるんでいた人間や、寝た女なんて勿論数のうちに入れるはずもない。
あの二人だけは俺にとって特別なんだ。一緒にお天道様の下歩きたいなって思っちゃったくらいにね。自分の人生、適当に済ませて後はどうぞ地獄でもどこでもお連れくださいって思っていたのに心から神様に懺悔したんだからさ。

じゃあね。あんたにもそういう巡り合わせがくるといいな。今はそんなのありえねえって思ってもいつかやって来るんだよ。認めたくなくてもさ。俺もそうだったから。




あのさあ……杉元、いつからそこにいたの?
待って。ちょっと……どこから聞いていたの。


ねえそれって、ほぼ全部じゃん、恥ずかし……。
いやほら、刑期がようやく終わって娑婆に出れるの嬉しすぎてさ、喋るの止まらなくなっちゃった。
なにが食べたいって?そうだなあ、そりゃやっぱりアシリパちゃんのメシだよなあ。はやく帰ろうぜ。小樽までここから二週間掛かるけどさ。

えっ?干し柿もあるの?へえ。『梅ちゃん』って人から送って貰ったんだ。わざわざアシリパちゃんが手紙出して依頼したって?なんで?俺にも食べて欲しいからって?
はは……そりゃありがたいなあ。絶対美味しいんだろうな、干し柿。三人で食べられるなんてね、夢みたい。俺は杉元の故郷に行けなかったのに。

あっ、そうだ。行商してるんだったら、懐もあったかいんじゃないの?帰りがけにアシリパちゃんになんかおみやげでも買っ……えっ……そんな金無い?嘘だろ?
そりゃ杉元、商売向いてないんじゃない?やっぱり。
ごめん、ごめん。怒んないで。これからはお前も手伝えって?それは勿論良いけれどさあ、杉元のチセに俺も住むっていうのはちょっとなあ……

い、嫌じゃないです。はい。全然大丈夫。というか大歓迎。でも杉元こそ……それで良いわけ?本当に?
あっそう。じゃあ、はい。不束者ですがよろしくお願いします。
ん?えっ。冗談だから!そういう意味じゃなくて、って、痛い痛い!痛った。
殴んなよ。急にどうしたの。そういう意味で言ってる……?えっ俺に?俺なの?俺で良いの?

……シ、シライシじゃねえと嫌って……お前さあ……俺喜んじゃうよ?そんな耳まで真っ赤にして。嫌なわけねえだろ。可愛いなチクショウ。


まさかこんな良い年して熱烈な告白されるとは思ってなかったからビックリしちゃった。
なに、じゃあお前、俺のこと待っててくれたの? 俺がまた脱獄してどこかに逃げたりとか、刑期伸びる可能性もあったのに。
シライシのこと信じてたから、って……それ、今言っちゃうんだな。はあ。そういうところ嫌。いや杉元のこと好きだけどさ。遠慮無しにド直球投げ込んでくるんだもん。俺の心臓もたない。
昔もさ、大事なアシリパちゃんを俺なんかに託すし。俺を信じる人間なんて日本中いや世界中探してもお前くらいだよ。

本当に良いの?俺と一生同じ家で暮らすの。
行ってきますとかただいま言う相手になるってことでしょ。臭いからやっぱり出ていけはナシだからね。そんなこと今更?そう。ですよね。うん。そっか。安心した。後悔なんかするわけない?

なあ杉元、泣かないでくれよ。俺どうしたら良いか分からなくなっちゃうじゃん。
本当にもう二度とどこにも行かないから。な?これは信じてくれて良いぜ。
杉元とアシリパちゃんから俺、一生離れなくてもいい身の上に晴れてなったんだぜ。今日。
だからずっと一緒に居させてください。お願いします。

杉元、ねえどうしたら泣き止んでくれるの。
せ、接吻?えっ。きゅ、急展開すぎない?しかもここで?お兄さん大胆だね……おっし、ちょい待って。手汗すごくなってきちゃった。

本当に良いの?これ夢じゃないよね?夢だったら俺目が覚めるの嫌すぎるもん。ちょっと抓ってみて。……あっ、いひゃい。

じゃあ、目瞑って。口は尖がらせなくて良いから。ふふふ。
生まれてきて幸せだったなんて思ったこと、今までこれっぽちも無かった。
でも今は俺の人生悪くなかったかもしれない、というよりちゃんと幸せだなって思えるよ。杉元のおかげで。今日を祝日にさせて欲しいくらいって言ったら大げさ?

でも、俺なんかのことに一喜一憂してこんなに涙を流して泣いてくれる人とこれからずっと一緒に暮らせるってすごいことだと思うんだよね。


ただいま、杉元。
待たせてごめんね。
本当に、本当にありがとう。

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