2026/03/22 (日) 18:00 49
全国300万人の慎太郎ファン、netkeirinをご覧のみなさん、佐藤慎太郎です。3月になり、メモリアル勝利となる500勝を達成したり、久々にGIIIで優勝できたり、ファンのみなさんに良い報告ができることを嬉しく思っている。
昨年の3月は、骨盤骨折からの復帰を模索していた時期で、普通に走る事すらできなかった。そんな中でも変わらず応援してくれたみなさんのおかげで、ここまで調子を戻すことができたのだと思う。それでは報告と振り返りのコラムを書いていこう。
まずは先日の取手GIIIから。今回の優勝はどうやらGIIIにおける『歴代最年長記録』だったらしい。冒頭にも書いたが、みなさんの声援あっての競輪人生だから、記録そのものを喜ぶよりも感謝する機会だと感じている。いつも熱い応援をありがとうございます。
メモリアルも最年長記録も名誉あることで、直近の充実を物語っていると思う。しかし、充実していようが今は満足などできてない。浮足立たずに、上位で戦う実力をつけるために目の前の課題へ徹底的に取り組んでいく。
取手は決勝戦を振り返りたい。
決勝はレース前に何通りもシミュレーションを重ねていた。長田龍拳や渡邉雅也は並々ならぬ闘志で臨んでいたシリーズだったし、オレは準決勝で長田と連係したことで、強さや気迫を肌で感じていた。ただ、この決勝は「長田の先行か?」と決め打ちすると、良くない方向に行く気がしていた。誰がいつ動くかーー。その予測において、先入観を持つとやられてしまう感覚があったというか。
北日本の先頭で走ってくれた小堀も先行意思を持っており、3車の厚みを活かすべくレースに臨んでいた。凝り固まった考えで選択肢を狭めず、ラインとして柔軟な戦い方ができたように思う。小堀の「主導権を取りに行く」という考えがベースにあったことが、オレの優勝に繋がっている。
際どい判断が必要になったのは中島詩音の捲りに反応した1発目のブロックだ。ガッチリ止めに行ってしまうと、後続の松浦や雅也に流れが向く。ただし、止めに行かなければ詩音の捲りそのものにも勢いがあった。
このあたりのレース感覚は良い頃に戻せている気がした。レース直後は「一発目でもう少し止めても良かったのかな」と感じなくもなかったが、映像で振り返るとベストに近い選択だったように思う。ゴール前でも余裕があったので、割って来る雅也にしっかりと体重を乗せて対応し、ゴール線を捉えられた。
優勝も嬉しいが、やるべきことをやり切れた感覚が何より大事で、収穫だったように思う。これからも一戦一戦、追い込み屋として「レースを見極められたか」、「体は申し分なく動いたか」という点は厳しく自問自答を続けていく。
時系列が前後してしまうが、500勝達成も報告する。オレ自身、勝ち星そのものには、そこまで興味があるわけではない。ただ、495勝あたりから、「そろそろ500勝」の言葉が聞こえてきていたし、意識の中には自ずと「500」という数字があったのは事実だね。
そんな中で、メモリアル達成は岩本俊介との連係だった。岩本は先行策をとり、オレも仕事をしてワンツーでレースを終えることができた。レース後に「慎太郎さんのメモリアルに立ち会えて、しかもそれに貢献できて嬉しい」と話してくれた。ともに戦った選手の気遣いやポジティブな言葉というのは本当に嬉しい。
“競輪らしく”ーー。役割を全うしての勝利は気持ちがよく、良いレースができたなと思った。敵として戦うこともあれば、組んで信頼し合うこともある。そういったことを改めて再確認する500勝であり、これまで連係してきた選手たちへの敬意は忘れてはならないもの。
さて、今月のコラムは近況報告だけで終了とはできない。小野俊之のことだ。3月のあっせんスケジュールが発表された時、別府開催の出場メンバーを見るや否や、頭によぎるものがあった。その後、小野俊之が現役引退することが報じられ、オレもニュースを読み、頭によぎったものが事実だったことを確認した。
オレは基本的に「ライバルは誰ですか?」と質問されるのがまずまず苦手だ。オレにとってライバルといえばオレ自身でしかない。懸命に己を高めるほかないのだから、戦うべき存在は自分自身って考えだ。だから「あいつがライバルだ」と特定人物を口にするのは非常に難しいことだと思っている。
小野の話に戻すが、学生時代から全国中にその名は知られていて、競輪学校にもストレート入学。プロになってからも、何度となくその背中を見せつけられてきた。同い年という事もあって、若い頃は意識していた。開催で顔を合わせても口もきかなかったし、その都度ピリついた。小野が勝つと悔しさもひとしお、心中穏やかではいられんって感じだったな。
2003年の全日本選抜競輪決勝、オレは小野と競り合い、落車しながらゴール線を通過した。ぶっ倒れた場所からビジョンを見て自分の優勝を確認したわけだけど、ゴール後に一周してぶっ倒れているオレのところまで戻ってきた小野俊之に見せつけるつもりでガッツポーズをしたことを覚えている。喜びの表現というよりも、「オレが勝った」と示したい意図があったと自覚している。
オレにとってライバルはオレ自身。それは変わらない。でもこうして過去のレースやエピソードを思い返すと、自分以外に『ライバル』という表現を使うなら、それは小野俊之だったのかなと思う。
引退のニュースが出てから、小野とLINEで連絡を取り合った。小野からのメッセージには現状やオレに対する思いなどが書かれていた。小野もオレと同じような感覚を持っていたのかもしれない。小野からのメッセージを読んでいて、グッとこみ上げて来るものがあったよ。
競輪選手はいろいろな考えを持った選手がいる。どう走るかを決めるのは各選手自身だ。小野は時代の変化やレースの進化、他人の目といったもので己のスタイルを曲げることをしない。何かに合わせるのではなく、「俺は俺だ」と最後まで我を曲げないタイプの選手の筆頭格だろう。
そんな小野俊之の引退シリーズが3月24日、別府競輪で開催となる。オレも参戦が決まっているから、優勝一点に狙いを定めている。そして、小野のラストランを目に焼き付けるつもりだ。みなさんにも大いに注目してもらいたい開催につき、ここに大々的に宣伝させてもらう。
別府シリーズ見てくれよ! ガハハ!
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界の第一線で活躍し続けている。2019年、立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現で常にファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。麻雀とラーメンをこよなく愛する筋肉界隈のナイスミドルであり、本人の決め台詞「限界?気のせいだよ!」の言葉の意味そのままに自身の志した競輪道を突き進む。