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迷宮遊戯  作者: ヘロー天気
大舞踏会編

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 テラコーヤ王国中から集まる領主達を迎えるべく、ハイスーク領の隣の領地近くまで領域化街道を延ばした街づくり好きな迷宮核。


 先日の夜、ハイスーク領に一番乗りした比較的少数の貴族家一行は、なかなかに魔素の吸収量が多かった。


 小さな領を治める中堅貴族だったようだが、王都の周辺に領地を構えていられるだけあってか、実は結構高貴な血筋なのかもしれない。


 その後も何組かの少数編成の領主一行が到着したので、それぞれ休憩屋敷を提供した。彼らの魔素吸収量は、一般的な貴族のそれと大差なかった。


「お、今日はかなりの大所帯が上がって来てるな。流石に入り口付近のサービスエリアはスルーするか」


 領域化街道の効果で移動速度が上がるので、一日の移動距離も伸びる。

 朝早くに出発した先行組がハイスークの旧領都に到着する頃には、十数台編成の大馬車隊が領域化街道に入って来た。


 ハイスークの領主が正規軍を連れて来た時のような勢いで魔素が増えていく。野営前提の編成で来ている彼らは、街道入り口の近くに設けてあるサービスエリアには寄らずに進んだ。


「隣の領地の街で休めたグループは一気に中頃まで来そうだな」


 おおよその移動距離を予測して大所帯向けの臨時サービスエリアを新たに設けておく。続々と列を成して領域化街道に上がって来る馬車隊集団のお陰で、魔素は十分に足りていた。



『――』

「ん? ああ、そこはこのギミックで切り替えるんだ。基本は幻影だから環境は弄らなくていいよ」


 ハイスークの新領都、穢れ山城塞街を管理している中腹の魔核から、城内の一角に設けられた大舞踏会場の装置について尋ねられた街づくり好きな迷宮核は、動作の説明をして指示を出す。


 城塞街の管理にも慣れて余裕が出て来たようなので、大舞踏会の運営も一部手伝ってもらうのだ。


 大舞踏会はハイスークの領主と運営スタッフが中心になって進めるので、街づくり好きな迷宮核は彼らとの連携をはかりながら、その舞台作りとイベント進行を集中的に補佐する。

 中腹の魔核は街と城の一括管理業務を担いながらそれらを手伝う感じである。


「来訪者達が街に居る間は地下施設の利用者も増えるだろうから、そっちの調整も頼むぞ」


『――』

『まあ、よかろう』


 中腹の魔核と麓の魔核が揃って了承で応える。

 現在、元穢れ山の地下迷宮は、街づくり好きな迷宮核による大改装(魔改造)が終わり、冒険者育成センターとして生まれ変わった。


 『穢れ山迷宮ランド』


 初心者から熟練者まで、幅広く利用できる総合訓練施設。

 ありとあらゆる環境とシチュエーションを再現し、実戦さながらの戦闘訓練のほか、罠の設置や解除、仕掛けの謎解き、仲間との連携、閉じ込められた部屋からの脱出など、様々なニーズに応えられる。


 そしてこの訓練施設の運営を管理するのが、麓の魔核である。城塞街とは繋がっているものの、完全に独立した別区画という扱いで運用される。あくまで便宜上だが。


 施設は各フロア毎に複数の区画が用意され、それぞれ戦闘区画、走破区画など、訓練内容によって分かれる。


 例えば罠専門の区画は、罠の発見や解除、回避方法の訓練を目的とした部屋が連なる。

 最初はノッペリした床にこれ見よがしに設置されている罠の解除という簡単な部屋から始まり、徐々に見つけにくく、解除しにくくなる。


 解除不可な罠をどうやり過ごすか。安全に発動させて無効化したり、発動しないように回避したり、いかに突破するかはスカウト役の腕とセンスが問われる。


 戦闘訓練の区画は、お馴染みの案山子が置いてあるだけの部屋から始まって、案山子が動く、防御する、反撃して来る等の段階を経て、本物の魔物との戦闘にまで挑める。


 最初のフロアを攻略すれば、一段階難易度が上がる下層のフロアに行けるようになる。

 各部屋を突破するたびに、攻略証明書代わりの『クリアメダル』が個人ごとに発行され、このメダルがあれば、攻略したフロアまでの直通転移陣を使える仕組みになっている。



 この『クリアメダル』は発行する際、受け取った人物に『本人登録』の紐づけがされるので、他人のメダルで直通転移陣を使う事はできない仕様にしてある。

 ――ちなみに、本人登録の仕組みだが、ダンジョン産の武具や装飾品にもよく使われる『呪い』のトラップを使用している。


 手放しても勝手に戻って来るくらいで、特に何のデバフもない無害な呪いに攻略状況を書き込む事で、持ち主の個人情報を管理できるように組み上げた。

 単純な呪いなのでうっかり浄化系の魔法で祓われないよう、超強力な呪力が込められている。



 挑んだ部屋に見合った報酬がもらえるようになっているので、一獲千金を目指す冒険者も、名声を求める冒険者も、小遣い稼ぎ目的の一般民さえ相応の収入が得られる。


 娯楽と労働を融合させたような施設。これから来訪する大舞踏会の参加者達を含め、その護衛や使用人など、多くの人間が地下施設を訪れるはず。

 そして、その大多数が荒事とは無縁の人達であろうと、街づくり好きな迷宮核は予測していた。


「大舞踏会の関係者が利用する時は、多少の便宜を図ってやってくれな」

『我に手を抜けと?』


 ぬるい訓練だからとて、特定の相手をわざと勝たせるような真似に意義を見出せない麓の魔核が険しい反応を見せるが、街づくり好きな迷宮核は『接待も戦略のひとつだ』と説得する。


「最初に成功体験を覚えれば、リピーターになりやすいだろ」

『……ほぅ、そうやってここに通わざるを得ない身体にするわけか』


 麓の魔核は感心した。確かにそれなら、通常のダンジョン運営で行われる、魔素から生み出した素材――迷宮産の品々で獲物を釣るのと同じ効果が得られる。

 しかも相手に渡す素材の量はこちら側で管理できるのだ。吸収する魔素量を超える素材を持ち出されて赤字になる事もない。


『なるほど。西の(あやつ)から聞いていたが、なかなかに腹黒いではないか』

「えー……これ腹黒いか?」


 西の森の魔核に続いて、麓の魔核からも『実は腹黒い迷宮核』認定されて、地味にダメージを受けている街づくり好きな迷宮核なのであった。




 ※ ※



 ハイスークの新領都には、大舞踏会が開催される十日前頃から続々と各地の領主一行が到着し始めた。


 馬車が六台は並んで通れそうなほど広い正面の大通り。中央には分離帯があり、背の高い街灯が並んでいる。

 この道は片側三車線の左側通行のルールが設けられていた。


「こ、ここがハイスークの新しい領都……」

「なんて大きさだ、まるで王都カンソン――いや、それ以上だ」

「それにあの城、まるで要塞の中に建っているみたいじゃないか」


 穢れ山ダンジョンの入り口があった南側には、異様に発展した活気ある城下街が広がっていた。

 街道を進んでいる時に、街の高い防壁越しでも山の上に立つ城の姿は見えていたが、街の中に入るとその全貌が明らかになる。

 城の周囲を何重にも覆う側防塔付きの重厚な防壁は、まさに難攻不落の城塞を印象付けた。


 そんな防壁を見上げながら長い蛇行道を登りきると、美しい城壁に囲まれた巨大な城にたどり着く。芸術品のような城門は開かれており、門番の騎士からはそのまま中に進むよう促された。


「ようこそハイスーク領へ。長い道中、お疲れ様でした。皆様には部屋をご用意しておりますので、こちらへどうぞ」


 出迎えた執事紳士と使用人達に案内され、領主一行は客間のある棟へと移動した。

 大舞踏会の参加者は、領主一家の関係者であれば、全員城の客室に宿泊できるようハイスークの領主が取り計らっていた。


「転移陣で移動するのなんて初めてだ」

「この城、そこら中に転移陣がありますよ」

「流石はダンジョン卿の城……」

「おいっ、その俗称は失礼にあたるかもしれないから、ここでは控えろ!」


 城の中に入るのに巨大転移陣を使う事にも驚いたが、エントランスから客間がある棟への移動にも城内転移陣が使われている。


 同じテラコーヤ王国内の一領地とは思えない、あまりに隔絶された世界に、客人の領主一行は動揺を隠せないでいた。



「こちらがお部屋になります。舞踏会の当日まで、どうぞごゆっくりお過ごしください」


 城に宿泊したいずれの領主一行も、あてがわれた部屋には大変満足したそうな。





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― 新着の感想 ―
この転移陣を多用する街づくりは古典SFノウンスペースシリーズにあるパペッティア人の都市に近いなあ。 SFでもファンタジーでも技術が極まると似てくるのは生物の収れん進化のようで面白い。
冒険者育成センターとして生まれ変わった。  →『穢れ山迷宮ランド』 違う、絶対に育成センターじゃないw 単純な呪いに超強力な呪力って、どうあがいても解除不可能なのでは???w 王都がその名の通り寒…
麓の魔核さんもうだいぶ馴染んでるなぁw
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