マスクをしていて良かった、とユウは心の底から思った。
何故なら、今、目の前の先輩の、
「バカ!アホ!おたんこなす!!」
(男子高校生の『あたまのわるいわるぐち』かわよwww)
随分と可愛らしい罵倒に、口角が上がるのを止められないからである。
「バカ!バカ!バーーーーーカ!!!」
「ングッ」
思わず噴き出してしまい、慌てて俯いて誤魔化す。
が、肩が少し震えてしまったかもしれない。
しばらくそうしていると、背後から軽妙なスワヒリ語が聞こえてきた。
「アレ、なーにしてるんスか?こんな所で」
「ゲッ!」
「あ、ラギー先輩」
声の主はラギー先輩だった。
私を罵っていた先輩のベストと腕章の色は山吹色。サバナクロー寮の生徒だ。
自寮のNo.2に見られたのが気まずいのか、目の前の先輩が黙り込んだ。
「何してんの、って聞いてんスけど・・・アレ、もしかして、」
(悪い顔をしてらっしゃる)
「言えねぇようなこと、してたんスか?」
「・・・チッ!!」
かなりデカい舌打ちをして去って行く先輩。
いやホントにデカいな。隠そうともしてねぇよ。さすがナイトレイブンカレッジ生。
「まったく・・・『弱肉強食』と『弱い者いじめ』の違いが分かんねぇお馬鹿さんがまだ居たんスね」
(サラッと『弱い』って言ったな)
しかし事実である。悲しいことに。
まぁ、結果的には助かったし、礼を言うべきだろう。
「あの、ラギー先輩、」
「アンタも!」
「え?俺?」
「なーんでずっと下向いて黙ってんスか?言い返すなりなんなりしろよ」
いつもの口調が抜け、言葉遣いが荒くなっている。
おまけにグルル・・・と喉も鳴っている。
(翻訳魔法ってここまで翻訳できるんだな)
牙を剥き出しにした獣人を前に、呑気に考え事をするユウ。
恐怖心は異世界(故郷)に置いて来た。
「なぜ、と言われても・・・」
あんな子供の悪口程度に本気になるのも馬鹿らしいだろう。
「強いて言うなら、“興味がない”から、ですかね?」
「はぁ!?あんなことまで言われといて!?」
(私はそんなに酷いことを言われたのか?)
地味に気になるが、まぁ今はいい。
「何とも思ってない人に、何を言われても何も感じないでしょう?」
好ましく思っている人、例えばグリムやエーデュースたちに罵られたら、かなりしんどいだろうが。
「・・・ハァ、なんか、怒ってるのが馬鹿らしくなってきた。
監督生くんの考え方、楽そうでイイッスけど、たまにはちゃんと言い返した方がいいッスよ」
「ありがとうございます」
(ん?ラギー先輩にしては肩入れしすぎじゃね?)
「珍しいですね。先輩がそこまで言うの」
「え?あぁ、それはレオ・・・あっ」
「なるほど。レオナ先輩からでしたか」
マジフト大会のときもだが、結構詰めが甘いのだ。この人は。いや獣人。
(耳がペソッってなってんな・・・)
正面からだと分からないが、恐らく尻尾もペソッとなっているだろう。
「・・・オレ言ったってこと、レオナさんにバラさないでくださいよ」
「バラしませんよ。アズール先輩じゃあるまいし」
まぁ、あの人の前だったらそもそも口を滑らしたりしないだろうが。
「とにかく、ヤバそうだったら逃げるんスよ」
「ウィッス」
冒頭の先輩が言っていた台詞は、実は『夕焼けの草原』特有のスラングだから、罵倒の単語の種類が少ない日本語に翻訳するとあぁなるって話。
誤字脱字、間違い、質問等ございましたら、コメント欄に書いてください。
※注意※
・監督生に名前有り(デフォルト名)
・ツイステ世界の言語事情を捏造
・本編にない国と言語有り
・本編にない魔法有り
・グー◯ル翻訳使用