アンティーカと待ち合わせをする話
46作目です。
前回のお話→novel/24196937
次かその次でアンティーカ回は終わりの予定です。
私事ですが、しまっていた冬服を引っ張り出しました。
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当日の朝。今は駅前の喫茶店に向かっていた。
というのも、昨日の夜のこと────。
結華『明日、プロデューサーは何時くらいに駅に来る予定?』
P『集合が9時半だから...8時半くらいかな』
結華『了解!じゃあ駅前の喫茶店に集合ってのはどう?』
P『了解だ。そのくらいにお店の前で待ってるな』
俺からの連絡に結華は「ふ~ん」と文字のついたすまし顔のトカゲのスタンプで返事をする。
まみみも同じものを使っていたはずだが、アンティーカ内で流行っていたりするのだろうか。
とまあ、そんなお誘いがあって時刻は午前8時半。
「だ~れだ!」
後ろから目隠しをされる。この声を聞き間違える訳もない、結華の声だ。
P「結華、おはよう」
目隠しの本人を答えながら後ろを向く。そこには髪を後ろで纏めた長髪の女性、白瀬咲耶が居た。
P「えっ...咲耶?」
咲耶「おはよう、プロデューサー。今日も素晴らしい朝だね」
P「お、おはよう」
まさかの人物が立っていたことに面を食らっている俺に対して、片手を上げて優雅に挨拶をする咲耶。
その咲耶の後ろから、結華がひょこ、と顔を出した。
結華「おはよー!あはは、騙された?」
P「結華もおはよう。驚いたぞ、結華だと思って後ろを見たら咲耶だったんだから」
結華「ふっふっふ。Pたんもまだまだですな」
顎に手を当ててしたり顔をする結華を笑顔で見つめる咲耶を、まるで姉妹のようだと思っているとあることに気付く。
P「そういえば咲耶、恋鐘と一緒に来てないのか?」
同じ寮に居るんだし、一緒に出てくると思っていたがよく見ると恋鐘の姿が見当たらない。
咲耶「ああ。恋鐘と一緒に出ようと思ったのだけれど、樹里と千雪の弁当を作るから、と言われてしまってね。結華が寮に迎えに来てくれていたから、私だけ先に出てきたんだ」
結華「そうそう。こがたんはまみみんと一緒に来るってー」
咲耶の説明に結華が補足する。
なるほど。摩美々は寮に泊まっていたのか。それなら安心だ。
後は霧子だが......こちらも特に心配する様子も無いだろう。
喫茶店に集合することは咲耶にも伝わっているようで、自然とそちらに移動を始めていた。
左に咲耶、右に結華と両手に花状態で会話をしながら歩いていると、ある違和感に気付く。
P「あれ」
咲耶「どうかしたかい?」
P「いや、咲耶がスカートなの珍しいなと思って」
カーキのフレアスカート。撮影やライブ衣装以外ではパンツスタイルしか見たこと無かった咲耶がスカートを履いている。
こんな時まで仕事のことが浮かんでしまうのは良くないと分かっているが、撮影の仕事などさらに幅を広げられそうだ。
一方咲耶はまさか指摘されると思っていなかったのだろうか、少し驚いた顔で目を見開いていた。
咲耶「あなたに気付いてもらえて嬉しいよ。それだけで今回勇気を出したかいがあったというものさ」
結華「今日のためにお仕事終わった後にみんなでスカート見に行ったんだよね。ほらほら!Pたんももっと褒めたげて!」
P「あ、ああ。すごく似合ってるよ。いつもの雰囲気と違って......可愛い......と、思う」
咲耶「おや......!っふ、ふふ、ふふふ......!すまない、そんなに見つめられると、少し照れてしまうな。ありがとう、あなたも素敵だよ。結華と二人占めで来ていることがもったいないくらいに」
耳まで赤くさせた咲耶が顔を隠しながら笑う。そこまで意外だったかと思っていると、反対側から袖を引っ張られた。
そこには、キメ顔でわかりやすく答えを待っている結華が居た。
P「うん、結華もすごく似合ってるぞ」
結華「うーん...もう一声!」
P「そうだな......咲耶と同じで月並みな言葉になってしまうけど、可愛いよ」
俺の言葉を聞いた結華は少し考えて数回深く頷いた。
結華「うんうん。Pたんは変にボキャブラリーを増やすより、思ったことを素直に伝えたほうがぐっ!と来ると三峰は思います!」
「もちろんPたんもかっこいいよ」と最後に付け加える。
こちらの評価の言葉をさらに評価してくるとは思っていなかったが、結華が言うなら今度からちゃんと思った通りの言葉で伝えるようにしよう。
結華「よし、じゃあ頑張って褒めてくれたPたんにご褒美ということで......えいっ」
何をするのかと身構えていると、結華が腕を組んできた。急なことに驚いていると咲耶も同じく腕を組んでくる。傍から見ると夢のようなサンドイッチが完成しているわけだが、当の本人としては何が起こっているのか思考が追い付いていない。
歩みを止めないのに固まっている俺を見て結華が口を開いた。
結華「まあまあ、今日の第一の集中的接触ということで!」
咲耶「結華の言う通り、今日はあなたを射止めるつもりで行かせてもらうよ」
どうやら、今日は気が休まらなさそうだ。
P「はは、お手柔らかに頼むな......」
咲耶「ところでプロデューサー」
P「ん。どうした?」
咲耶がずいっと近づいてきて、耳元で囁く。
咲耶「────前に渡した香水、使ってくれているようで嬉しいよ」
耳元をこそばゆい感覚が襲う。せっかくのオフだからと思ってつけて来たが、正解だったみたいだ。
結華「さくやん?」
咲耶「ふふ、少しね。......おや、この素敵な時間ももうすぐ終わりのようだ」
咲耶の視線の先には喫茶店があった。とりあえずこの緊張の時間からは解放されるようだ。
朝の駅で、混む時間かと思われたがちょうど空いていたようで、5人掛けのテーブル席に案内されて座る。
みんな朝がまだということもあり、速やかに注文を決めた。
店員「こちら、ホットコーヒーが2つとホットレモンティーになります」
店員を見送り、無糖のホットコーヒーを口に運びながらテーブルの先に目を向けると、笑顔の咲耶と目が合った。
P「...?どうしたんだ?咲耶。俺の顔に何か付いてるか?」
咲耶「いや。こうしてあなたの顔をじっくりと見ることができるのも久しぶりだなと思ってね」
結華「確かに!送迎とかはしてくれるけど、あんまり正面からPたんの顔見ることって無いよねぇ」
P「確かに...でも、俺の顔なんてそんなまじまじと見ても何の面白みも無いと思うぞ?」
咲耶「そんなことは無いさ。大切な人の顔と言うのは、いつでも眼に焼き付けておきたいものだよ」
P「そ、そうか......?なんだか照れるな」
照れくさくて頭をかいていると、横からパシャリと音がした。
音の方を見ると結華がデジカメを取り出していたので、おそらく写真の音だろうと予測できる。
P「カメラ、持ってきてたんだな」
結華「もちろん!今日一日の思い出は、Pたんの照れ顔からスタートということで!」
こちらに見せてくるデジカメの画面を見ると、恥ずかしそうにしている自分の顔が写っていた。
「よく撮れてるじゃ~ん、三峰、これ後で送ってよね~」
結華「もちろん!......って、まみみん!?」
写真を見ていると、自分の背もたれに猫のようなしなやかな声が後ろから聞こえてきた。
反射的に返事をした結華だったが、声の人物を見るとややオーバーなリアクションを見せる。
咲耶「おはよう、摩美々」
摩美々「おはよーございまぁす」
咲耶に対してけだるげな挨拶で返す。
2人は......と聞こうとしたところで摩美々の後ろから恋鐘と霧子も顔を出した。
恋鐘「みんなおはよ~!」
P「恋鐘と霧子もおはよう。3人とも合流してたんだな」
霧子「はい......。恋鐘ちゃんと摩美々ちゃんとは......ついさっき出会いました......♪」
着席した3人にメニュー表を渡して追加で注文をした後に、ホットコーヒーを口に運ぶ。
P「......あ、甘っ!?」
口内に入ってきたコーヒーは、無糖とは程遠い甘さだった。吹き出すまでは行かなかったが、驚いてカップを口から離す。
こんなことをする犯人は一人しかいない。斜め前に座っている袖で口元を隠しているいたずらっ子に目を向けた。
摩美々「ふふー、いたずら大成功ー」
P「い、一体いつ入れたんだ......?」
摩美々「座る前にちょーっと、さらさら~って感じでー」
結華「いやー......まみみんはいつもブレないねぇ」
その後、ゆっくりと朝食を取ってから喫茶店を後にする。それとなく目的地なんかを聞いてみたが、誰に聞いてもはぐらかされて教えてもらえなかった。
恋鐘からはもう少しで聞き出せそうだったな、なんて思いながら電車に揺られていると、車窓から桜並木が見えてきた。
Comments
- クロモコApril 2, 2025