ようこそのお運びで。今回も源氏物語の女三宮関係の記事の続きです。拙写真は、ご近所で見かけた花ですが、前回申しましたように、当地では秋らしい花が咲いていません。加えて、最近ストレス過多のせいか、私の病状が重く、日中は伏せっていることが多く外出できないでいますので、写真を撮る機会も減っています。お見苦しいとは存じますが、ご容赦下さいませ。
「ガーベラ」
・・・お題「『源氏物語』より、『女三宮(おんなさんのみや)』のこと」③・・・
「煙くらべ」
女三宮は、柏木のことをどう思っていたのでしょうか?
「柏木」の巻より
重態に陥った柏木は、自分に同情してくれる女三宮の女房の「小侍従」を介して、宮に手紙を送ります。
「今は限りになりにてはべるありさまは、おのづから聞こしめすやうもはべらんを、
いかがなりぬるとだに御耳とどめさせたまはぬも、ことわりなれど、
いとうくもはべるかな」
・・・今はもう我が命も限りになってしまいましたこの私の有り様は、自然とお聞きになることもございましょうに、
どうなったのかとさえ気にとめてくださらないのも、もっともなことでございますが、
本当に情けないことでございます。・・・
この手紙を書くのにもひどく手が震えるので、思うことも皆書くこともできず、
一首の和歌を詠みます。
「いまはとて 燃えむ煙(けぶり)も むすぼほれ 絶えぬ思ひの なほや残らむ」
・・・今はもう最期というので私を荼毘する煙もくすぶって、貴女を諦めきれぬ思いが相変わらずこの世に残るのでございましょうか。・・・
「シコンノボタン」
問1です。
掛詞を一つご指摘ください。頻出です。
またその語は、ある語と縁語関係になっっています。それもご指摘下さい。
・・・thinking time 3 seconds・・・
解答:「思ひ」の「ひ」が「火」との掛詞。「火」は「煙」と縁語関係。
私を荼毘する煙がくすぶるように、私の貴女への思いの「火」も途切れることなく残るのでしょうか。
そして和歌の後に書き添えます。
「あはれとだにのたまはせよ。心のどめて、人やりならぬ闇にまどはむ道の光にもしはべらむ。」
・・・せめてかわいそうにとだけでもおっしゃって下さい。(そのお言葉によって)心を安らかにして、自らのせいで煩悩の闇の中をさまよう私の行く手を照らす光と致しましょう。・・・
「アメジストセージ」?
柏木に同情する小侍従は
「本当にこれが最後のお手紙になるかもしれません」と泣く泣く、女三宮に申しあげますが、
源氏の君のことを恐れる女三宮は、全く応じようとしません。
しかし、小侍従が硯などを用意してご催促申しあげるので、
宮はしぶしぶお返事をお書きになります。
「心苦しう聞きながら、いかでかは。
ただ推しはかり。残らむ、とあるは、
立ちそひて 消えやしなまし なやましう 思ひみだるる 煙(けぶり)くらべに
後るべうやは」
・・・「お気の毒なことと聞いていますが、どうしてお見舞いできましょうか。
ただお察しするばかりです。『残らむ』という歌に対しては、
あなたのくすぶる煙と一緒に、私も消えてしまいたい思いです。私の、情けないもの思いの「火」に乱れる煙は、あなたの煙とどちらが激しいかを比べるために。
あなたに後れをとりましょうか、いや後れをとったり致しません。・・・
「コエビソウ」
問2です。
この返事から、女三宮の柏木への恋心を読み取ることはできるでしょうか?
ご説明下さいませ。
・・・thinking time 3 seconds・・・
「源氏物語絵巻より。病床の柏木を夕霧(源氏の君の息子)が見舞う」
復元図
意見の分かれるところだと思います。
①恋心が込められていると読まれた方は・・・
おそらく、宮が「立ち添ひて」(あなたと一緒に)消えてしまいたいと詠んでいるところに注目なさっているのではないでしょうか。
心の底から柏木のことを嫌っていたなら、「一緒に」などと言うはずがない。
柏木についていきたい気持ちの表出になっている。
とお考えなのでは?
また、歌の後に「後るべうやは」と記されていますよね。
「後る」には「生き残る」という意味があります。とすれば、ここは、
「あなたに後れをとって、私が生き残ることができましょうか。いや、できません。
私もあなたと一緒に死にたいです」と解釈できます。
恋心がなければ「一緒に死にたい」などと言わないのではないか。
密通とはいえ、その人の子をみごもったことによって、だんだん柏木に惹かれる気持ちが芽生えてきているのではないか・・・という風に考えることも可能だと思います。
「一輪だけ咲いていた秋明菊」
②恋心が込められてはいないと読まれた方は・・・
「立ち添ひて」は結果であって、「煙となって消えてしまいたい」という思いが共通するから、「一緒に」となったに過ぎない。
「後るべうやは」は、「あなたのくすぶる煙と、私の物思いの火によって生じる煙とを比べて、
その煙の量があなたに劣ることがあろうか、いやない。」と解釈し、
「これほど私に物思いをさせるあなたのことを許せません」と抗議している・・・
という風に考えられたのでは?
「シコンノボタン」
意見が分かれますが、私自身は②の恋心は無いという解釈を取りたいと思っています。
ん?それでは柏木君があまりに可哀想?
そうなのですが、本文の中に、ここ以外に柏木への恋心を読み取ることができる部分が無いからです。
女三宮が小侍従に、このように言っている部分があります。
「我も、今日か明日かの心地してもの心細ければ、おほかたのあはればかりは思ひ知らるれど、
いと心憂きことと思ひ懲りにしかば、いみじうなむつつましき」
・・・私の命も今日か明日かのような気持ちがして、なんとなく心細いので、(ご臨終が近いと聞けば、)一通りの不憫な気持ち程度にはなりますが、(あの方とのことは)本当に情けないことと、懲り懲りしましたので(とても手紙を書く気になれません)。・・・
女三宮は、柏木の臨終が近いと聞いても、「一通りの不憫な気持ち」「通りいっぺんな可哀想という気持ち」しか抱いていないのです。
恋心ではありませんよね。
「ユリオプスデージー」
鎌倉時代初期に成立した評論書『無名草子』には、
柏木の「今はとて・・・」の歌に対し、
「立ちそひて 消えやしなまし 憂きことを おもひみだるる 煙くらべに
とて、『遅るべくやは』とある女宮ぞ憎き」
とあります。
源氏の君の正妻でありながら、柏木に
「遅るべくやは」と返事をしている女三宮の態度を「憎し」と断じているのです。
『無名草子』作者(藤原俊成女か)の場合は、ここに恋心を感じ取っているようです。
或いは、恋心が無いのにあるかのごとき表現をした女三宮を「憎し」と言っているのかもしれません。
(続く)
お読み頂き、有難うございました。 ぺこり。
おまけ。
和歌山県立医科大学の研究チームによる「耳鳴り」研究の新論文2報目。国際科学雑誌に掲載。

Views が2000を超えています。
なお、1報目の同科学雑誌に掲載された論文は、その論文発表に至るまでの経緯の記述とともに、私のプロフィールにURLを貼ってあります。念のため、以下が1報目です。viewsが11000を超えています。
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