そももそ宮崎勤はオタクではない
noteにアクセスしたら、以下の記事をおすすめされました。
Xで二十年前にあった『苺ましまろ』のなんらかの広告が話題になり、そこから一九八〇年代終盤に発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件、通称宮崎勤事件を持ち出してゾーニング論を展開した人がいたようです。
宮崎勤事件は当時二十代だった宮崎勤に女児四人が次々と誘拐・殺害されるという日本の事件史において非常に大きな事件でした。宮崎勤の部屋には壁一面にびっしりとVHSが並べられ、その多くがアダルト系、残虐系、ロリ系、漫画やアニメなどであったと報道されたことから創作物に向けられる世間の目が厳しくなり、オタク業界も影響を受けたと言われています。
おすすめされた記事は、宮崎勤が起こした事件と彼が所持していたとされるアニメや特撮との科学的根拠や因果関係は確認されておらず、犯罪とオタク文化を安易に結びつける言説に釘を刺す内容でした。
その主張自体にはわたしも賛同の立場です。ただ、宮崎勤の部屋がオタク文化のもので溢れていたかのような記述はやや事実誤認があります。実際に当時はそのように報じられていたことは先に書いた通りです。ただ、これはのちにメディアによる捏造だったことが判明しています。
きっかけは今から二十年前の二〇〇五年十一月十二日に読売ウイークリー編集部の公式ブログに投稿された記事です。以下に該当記事のスクリーンショットと引用を載せます。
当時保存されたスクリーンショット
いったいどうなっているのか
女子高生がタリウムを母親に飲ませたかと思えば、
今日は同級生の女の子を殺した疑いで高1の男子が逮捕。
いったい、どうなっているのでしょう。
とても理解できません。
10年ほど社会部にいたので随分事件取材もやらされました。
警視庁記者クラブでは、
詐欺とか汚職などの知能犯を扱う捜査2課の担当だったせいで、
その後もそんな事件ばかり取材しました。
知能犯ですから、頭を使った犯罪なのですが、
動機はほとんどが「お金」。
その点では、大変わかりやすいのです。
理解不能と思った事件も、多くはありませんが、経験しました。
忘れられないのは、平成元年の「宮崎勤事件」です。
幼女4人の連続誘拐殺人。
オウム以前の、戦後最大の事件かもしれません。
ビデオテープで埋まった宮崎勤の部屋の映像を覚えている方も多いと思います。
実は、事件後あの部屋に初めて入ったのは私です。
宮崎勤が逮捕されたという一報で、
五日市町の彼の自宅に急行しました。
なんと、まだ警察官も来ていなくて、
3−4人の他社の記者が彼の両親を取り囲んで話していました。
そのうち、だれかが彼の部屋を見せてほしい、と言ったところ、
彼の父親がどうぞ、どうぞ。
母屋から彼の部屋には幅30センチほどの板が渡路代わりに渡されていました。
幅が狭いので一人ずつ渡ることになり、
5、6人の記者でじゃんけん。
で、私が一番になった、というわけです。
部屋に一歩入ったときのことは忘れられません。
窓がなくて薄暗く、
四方の壁面すべてがビデオテープで埋め尽くされていたのです。
テレビとビデオデッキが3−4台あったと記憶しています。
そんな部屋は見たことありません。
まさに「理解不能」でした。
おそらく、あの部屋の映像を覚えておられる方は、
あのビデオはみんな、アダルトとか盗撮とかロリータとかそんな類のものだと思っているのではないでしょうか。
実は違うのです。
大慌てで、ビデオのタイトルが写したのですが、
ほとんどは「男どあほう甲子園」とか「ドカベン」といった、
ごく普通のアニメばかりでした。
その中に、おぞましい映像が入ったビデオも含まれていたのですが、
少なくともそれはごく一部だったのです。
なぜ、そういうイメージが伝わってしまったか、
については理由があります。
部屋の隅には、数十冊の雑誌の山がありました。
どんな雑誌かももちろん確認しました。
大半は、「GORO」「スコラ」です。
20代の男性としては、ごくごく普通でしょう。
その中に「若奥様の生下着」という漫画が1冊ありました。
ある民放のカメラクルーがそれを抜き取って、
一番上に重ねて撮影したのです。
それで、その雑誌の山が全部、さらにビデオもほとんどがそういう類のものだという、
誤ったイメージが流れてしまったのです。
ま、犯した犯罪からすれば、そのくらいは誤解されても仕方がないかもしれませんが、
それでもやっぱり、事実とは違ったのです。
高校生逮捕の夕刊を見て、
そんなことを思い出しました。
(苦肉デスクこと・木村透)
メディア関係者が直々に捏造報道を証言した上に、それをまったく悪びれていない記事は一部で話題になりました。しかし当時のインターネットにはオールドメディアや世論に影響を与えるほどの力はなかったため、読売ウイークリーが記事をこっそり削除したことで事態は沈静化しています。
そういうわけで「宮崎勤はオタクである。よってオタク文化は犯罪を誘発する」という言説は、科学的根拠や因果関係以前に事実誤認があるため成り立たないということです。そもそも宮崎勤はオタクではないので。
ただ、わたしの記憶が確かであれば、読売ウイークリーの記事の衝撃部分はあくまで捏造の証言であり、「宮崎勤の部屋にあったVHSや雑誌は案外普通のものだった」という情報は当時でも特に目新しいものではなかったはずです。「部屋の一部だけを見てメディアが暴走した」と認識されていたのが「明確な捏造だった」に変わるきっかけがこの記事だったという感じです。
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なんだこの雑な記事。取材記者が現場を弄った事と、宮崎勤がオタクであるかないかは全く別の話。
宮崎勤事件において「オタク」という言葉は「アダルトとか盗撮とかロリータとかそんな類のもの」を愛好する者の意味で使われました。先に言及したnoteで触れられている『苺ましまろ』も女子小学生がメインの作品でありロリ系と表現されることがままあります。一方で宮崎勤が所持していたのは大半が「ご…