P・美琴「彼女(彼氏)のフリをしてほしい。」
八十四作目。
本作、架空のP母・美琴母が登場します。本編とは全く関係ない想像上の人物となってますので、読むにあたってはご注意・ご了承ください。
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とある日の昼下がり、事務所
P「……よし、と。ん〜っ……はぁっ。そろそろ休憩するかぁ〜。」
美琴「お疲れ様、プロデューサー。はいこれ。コーヒー淹れたよ。」
P「ああ、ありがとう。美琴も休憩入るだろ?」
美琴「うん。そうだ、プロデューサー。」
P「ん?」
美琴「ちょっと相談があってね……
ティンティントン ティンティントン♪
P「! すまん、俺のスマホだ。……ん?」
美琴「『母』って……。」
P「……なんだろう、ちょっと出てみるな?」
美琴「……うん。」
P「はいもしもし。……うん、久しぶり……
美琴「……。」
P「……はぁ? いや、今はいいって前にも……
美琴「……?」
P「……いやいや、そんな勝手な……!?」
美琴「……大丈夫?」
P「んっ!? だ、大丈夫だよ。……えっと、もしもし? ごめん、ちょっといまは仕事中で……え?」チラッ
美琴「?」パチクリ
P「……そ、そうだよ。ああ、そうそう。だからお見合いは断っといてよ。」
美琴(!?)
P「え? ……あ、ああ、いいよ? いま代わるから待ってて。」
美琴「……プロデューサー? お見合いって……?」
P((美琴、すまん! ちょっと彼女のフリして俺の親と話してくれないか!?))
美琴((!? ど、どういうこと……?))
P((詳しい話は今すぐには無理だから、テキトーに彼女っぽく振る舞ってくれ!! 話の辻褄はあとで俺が合わせとくから、頼む!!))
美琴((……わ、わかった。やってみるね。))
美琴「……代わりました。……はい。電話で失礼します。緋田です。……下の名前は美琴です。……はい。いつもお世話になってます……
P「……。」
美琴「……はい。また後日、直接お会いできればと思います。はい。……失礼します。」
美琴「……。」コクリ
P「……!」コクリ
P「……あ、もしもし? うん、そういうことだから。……え? いやいや……うん、分かったわかった、また後でな! じゃ!」
P「……ふぅー。」
美琴「大丈夫だった?」
P「……ああ、とりあえずは。助かったよ、美琴。それと……本当にすまん!」
美琴「そんなに謝らなくてもいいよ。」
P「いや、違うんだ。もっとややこしいことになってしまった。」
美琴「え?」
P「……ということで、近いうち俺の親に会ってもらうことになるかもしれん。さらに最悪なことには『俺の彼女』として……。」
美琴「……うん、わかった。」
P「……いや、これは完全に俺の不始末が原因だから、美琴は無理をして付き合ってくれなくていい。別れたとか何とか、はぐらかせば大丈夫だろう。さっきは咄嗟に対応してくれて助かったよ。ありがとう。」
美琴「……あのね、プロデューサー……
P「そ、そういえば、相談があるって言ってたよな!」
美琴「聞いて、プロデューサー。」
P「ん、」
美琴「私の相談……プロデューサーのそれにも関係する話かもしれないの。」
P「……え?」
P「……それは、その……なんというか……奇跡というか数奇というか……。」
美琴「……うん、多分理由はプロデューサーのお母さんと一緒だと思う。私もいい歳だから……。」
P「えっと……まぁ、彼氏のフリならいくらでも協力させてくれ。今回美琴にはずいぶんと迷惑をかけてしまったからな。」
美琴「ううん、気にしないで。……それと、『迷惑をかけた』じゃないでしょ?」
P「え?」
美琴「これからも迷惑かけてよ。私もプロデューサーに迷惑かけるからさ。」
P「……ははっ、ありがとうな。」
美琴「それで、いつ行くの? プロデューサーの実家。」
P「……ん!? いや……
美琴「さっきの言葉、嘘じゃないよ。」
P「ん……わ、わかった。あとで調整しよう。」
美琴「うん。……私のほうは?」
P「あー、北海道だもんな……。」
美琴「早ければ早いほうが良いよね、多分。」
P「そうだな、じゃあ次の連休に行こうか。北海道の観光もついでにしたいし。」
美琴「うん。わかった。ごめんね、手間かけて……。」
P「お互いさまだな、ははっ。じゃあ、この話はこのくらいで……
美琴「あ、そうだ。一応もう一個だけ相談いいかな。来週のスケジュールの調整についてなんだけど……
◇
数週間後、美琴の実家 玄関前
P「……やばい。緊張してきた。」
美琴「大丈夫。お父さんの都合がつかなかったから、相手はお母さんだけだよ。」
P「ふーっ……よしっ。行こう。」
美琴「……うん、よろしくね。」
ガチャ
美琴「……ただいまー。」
P「お邪魔します……!」
美琴「呼んでくるね。ちょっと待ってて。」
P「お、おう……。ふぅー……。」
美琴「紹介するね。こちら、〇〇さん。アイドル事務所でプロデューサーをしてらっしゃるの。」
P「〇〇と申します。娘さんにはいつもお世話になっております。よろしくお願いいたします……!」
美琴母「こちらこそいつも娘がお世話になっております。遠いところお疲れでしょう。立ち話もなんですから、どうぞ上がってください。」
P「はい、失礼いたします……!」
美琴母「美琴から連絡が来たときは驚いたけど、良い人そうで安心したわ。」
P「あ、ありがとうございます。」
美琴母「それにしても……すごいわね、色々と。」ジー
P「はは……。えっと……、美琴さんとは普段から連絡をとったりするんですか?」
美琴母「え? ああ、まあそれなりには……って、そんなに緊張しなくてもいいのよ? 緩くいきましょう?」
P「は、はあ。」
美琴「プロデューサー、大丈夫。試したりなんかしてないよ、お母さん。いつもこんな感じだから。」
P「ん、そう言われてもだな……。」
美琴母「あら? 美琴は〇〇さんのこと、『プロデューサー』って呼んでるの?」
P(やばっ!? そういえばそこらへんの設定、固めてなかったな……!?)
美琴「んー、そっちのほうに慣れちゃって。プロデューサーは『〇〇くん』って呼ばれたい?」
P「!? い、いや……そうだな……。」
美琴母「あら、意外とウブなのね。」
美琴「ふふっ。」
美琴母「……二人はいつから付き合いだしたのかしら?」
P「えっと……、」チラッ
美琴(任せて。)「去年の冬とかだったかな。プロデューサーのほうからプロポーズされて。ね?」
P「そ、そうそう! いやぁ、あの時は緊張したなぁー……!」
美琴母「じゃあ、まだ一年も経ってないのね。ふぅん……。」
美琴母「まぁ、私とお父さんもそんな感じだったし、今の時代なら尚更かもねぇ……。」
P(? 冬場のプロポーズは普通じゃないのか?)
美琴「お父さんとお母さんの話は訊いてないから。」
美琴母「む、いいじゃない少しくらい。」
P「い、いやぁ、僕としてはお父様ともお話ししたかったですねー……!」
美琴母「そうよねぇ、お父さんもいればおもしろかったのに。」
P「? おもしろい?」
美琴母「ホストクラブに来たみたいで。」
美琴「お母さん? 何言ってるの?」
美琴母「顔もスタイルも良い男に自宅で囲まれることなんてそうそうないじゃない?」
美琴「それはそうだけど……。」
P(美琴っ!? ていうかお父様……この美形親子が認めるほどなのか……より緊張してきたな……。)
美琴母「まったくもって眼福だわー。……アイドル事務所に勤めてらっしゃるのよね? 大丈夫そう?」
P「……と、言いますと?」
美琴「……。」
美琴母「若くて綺麗な女の子ばかりなんでしょ? 貴方ほど出来た人なら美琴意外の選択肢もあったんじゃないの?」
P「いやいや、そんなことは……みんな年頃の女の子ですから、いい歳したオジサンに興味なんかありませんよ。ははっ。」
美琴母「そういうものかしらねぇ……。」
美琴「……そうだね、みんなきっと彼氏とかいるだろうし。」
美琴母「あら。現代のアイドルってそういうのに寛容なのね。」
美琴「うん。だからこうしてプロデューサーがここにいるんでしょ?」
美琴母「たしかにね。」
P「あはは……。(まあ、ウチは特に恋愛禁止とかは無いし、美琴がこう言うなら、みんな本当にそうなのかもな……。)」
美琴「……そろそろいいんじゃないかな。ね、お母さん。」
美琴母「ええ、大体わかったわ。二人の関係は。」
P「今日はお時間いただきありがとうございました。」
美琴母「全然いいのよ。また二人で遊びに来てちょうだい。今夜は泊まるところあるの?」
美琴「うん。ホテルとってあるから。」
美琴母「あらあら。あら。」
美琴「なに? その笑い。」
美琴母「別にー? 私がおばあちゃんになるのも時間の問題みたいね、って。」
美琴「?」
P「ちゃんとビジネスホテルですよ。別部屋の。」
美琴「ああ、ホテルの場所を訊いてたの? うん、駅前のホテルだよ。」
美琴母「……まぁ、こんな娘なので、末永くよろしくお願いしますね、〇〇さん。」
P「わ、分かりました。」
美琴「?」
P「では、僕たちはこれで。今日はありがとうございました。」
美琴「また近いうちに戻るかもしれないから。その時は連絡するね。」
美琴母「はいはい。今度はお父さんも一緒でね。」
P「お邪魔しました。失礼します。」
美琴「またね。」
ガチャ
美琴母「〇〇さん。」
P「? はい?」
美琴母「楽しみにしてるわね。式と孫。」
P「(シキトマゴ……? なんのことだ……?)……は、はい!」
美琴「お母さん。まだ早いよ。」
美琴母「ふふっ。じゃあね。」
バタン
P「……? 美琴、今お母様が言ってたのって……
美琴「行こう、プロデューサー。なんだか疲れちゃった。」
P「ん、うん……?」
美琴「ありがとうね、プロデューサー。"付き合ってくれて"。」
P「あ、ああ。お安い御用だよ。美琴も、あとで俺の方よろしくな。」
美琴「……うん、もちろん。いつだっけ?」
P「来週の土曜日だな。」
美琴「了解……。楽しみにしてるね。」
P「ん? んー、楽しめるようなことならいいんだけどな。」
美琴「ふふ……。」
◇
翌週、プロデューサーの実家
P母「あらー、まさか本当に連れてくるなんてねぇ。」
美琴「はじめまして。緋田美琴です。」
P母「いつも〇〇がお世話になってますー。会うのは初めてよねぇ。」
美琴「はい。」
P「……ん? あれ? 初対面だよな?」
美琴「うん。」
P母「対面は初めてよ? 連絡はちょこちょことってたけど。」
P「……え?」
P母「もう美琴ちゃんったら婚姻届の出し方なんて訊いてきちゃって、少し気が早いんじゃないのー? 孫の顔を見れるのもすぐかもねぇ。」
P(!?)
美琴「でも、そういうことはちゃんと訊いておかないとと思ったので……。もう私たち付き合って3年経つし。」
P(!!?? 美琴!? なに言ってんの!?)
P母「あら、そんなに経つの? あんた『いま良い娘がいる』くらいの連絡よこしなさいよー!」
P「(しかし親に嘘がバレてはならぬっ!?)も、もうそんなに経つっけかー!?」
美琴「うん。結婚を決めたのもつい先週のことになるね。」
P「ま、マジかー! あっという間だなー! 時間が経つのはー!!(美琴っ!? 演技にしては設定が細かいな!?)」
P母「そういえば、今日はアレ持って来るって聞いてたけど……
P「『アレ』?」
美琴「はい。コレです。」
P母「あー、そうそう。コレよねー。」
P「こっ……れは……!?」
美琴「ここの証人欄に、お願いします。」
P(ど、どうやって婚姻届に俺の住所と本籍を——いや、そんなことより、どういうつもりなんだ美琴!? いくらなんでもやりすぎでは!?)
P母「もう記名してあるのは美琴ちゃんのお母様かしら。」
美琴「そうです。」
P(お母様!? こないだ挨拶行ったばかりなのにもう結婚許したの!? いやそんなことよりっ……!
P(このままいくとなんかマズい気がするッ!!)
P母「はい、これでオッケーと。それにしても、あんたももう結婚するのねぇ。本当にあっという間だわ……。」
P(しかし感慨に耽る母ッ!! 口が裂けても嘘とは言えないぞこれはッ!?)
美琴「ありがとうございます。〇〇さんのこと、必ず幸せにしてみせます。」
P(それは先に俺が言わなきゃいけない言葉だがッ……がッ……しかし!! 今そこは問題じゃない!!)
P母「あらー、こんな息子ですけど、今後ともよろしくお願いしますー。」
P(美琴ッ……、美琴ッ……!? 冗談なんだよな……ッ!?)チラッ
美琴「……」チラッ
P(!! みこ……
美琴「……ふふっ。」ニコッ
P(!?)
美琴「こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。ね、プロデューサー……いや、〇〇さん。」
P(美琴——!?!?)
◇
美琴「——そう。だからね、プロデューサーがプロデューサーのお母さんからの電話をとったときに、咄嗟に思いついちゃって。」
P「……ほう。」
美琴「だって、あのままだと、いずれプロデューサーは知らない女とお見合いしなきゃならなかったでしょ? それなら私のものにしちゃおうと思って。」
P「……ふむ。」
美琴「……け、結果的には良かったと思うの……。プロデューサーのお母さんも悪くない反応だったし……!」
P「まあ、『彼女のフリしてくれ』なんて頼んでる俺が言えたことじゃないが、黙って婚姻届を出そうとするのは流石にやりすぎだったかもな。」
美琴「……ご、ごめんなさい……。」
P「……美琴。美琴のお母様のところ、来週行こう。……謝ろう。嘘をついてしまったことを。」
美琴「え……。」
P「不誠実だろう、このままじゃ。」
美琴「だ……だめ……!」
P「……? なんで?」
美琴「なんでって……私……私、プロデューサーが……プロデューサーが誰かのものになるなんて嫌なの……!」
P「み、美琴……
美琴「好き……好きなのプロデューサー……! 私と結こ……
P「ち、違う違う! 勘違いだ美琴!!」
美琴「……?」
P「謝りに行くっていうのはその……あ、改めて付き合うことを報告に行きたいということで……!」
美琴「……え?」
P「……んん”っ! え、えっと……み、美琴! 順番が前後して……というか、なんか流れで言うみたいで申し訳ないんだが……
美琴「! う、うん……!」
P「……好きです。結婚を前提に付き合ってください。」
美琴「……はい……!」
P「……ちょっとベタすぎるか?」
美琴「ふふっ……かっこいいよ、やっぱり。」
P「はは……!」
◇
後日、事務所 社長室
社長「……それで、めでたく結婚となったわけか。」
P「はい。」
社長「緋田は……活動のほうはどうする。」
美琴「できれば、このまま続けたいと思います。」
社長「……お前はどう思う?」
P「美琴が続けたいと言うなら、それが良いと思います。」
社長「……なるほど。ならば私からとやかく言うことは無い。お前たちの関係については表には出さないように。」
P・美琴「はい。」
社長「……それで、どうなんだ?」
P「……何がですか?」
社長「まぁ、今の時代、ハラスメントだなんだと言われかねないから直接的な表現はできないが……俺もお前を息子のように思ってるからな……"孫"の顔も見たくなるというものだ。」
P「"孫"……って、ああ、子どものことですか。それならまだ……
美琴「もう一ヶ月になります。楽しみにしててくださいね、社長。」
P(!?)
社長「おお、そうか! いやぁ、めでたいな……! しかし、式もまだだというのに気の早いやつだお前は。はっはっはっ!」
P「いや……美こっ……!?」
美琴「ね、プロデューサー。」
P(ま、マジか……。)
美琴((大丈夫だよ、プロデューサー。2、3ヶ月くらいなら遅れても気づかないと思うから。))
P(そういう問題じゃ……いや、まあいいか……。)
美琴「ふふっ……!」
外堀からガンガン埋めてく美琴ほんとすき