1月28日付のNatureに、「持続感染性EBウイルスのDNAの遺伝的決定因子を集団規模のシークエンシングにより解明する」と題する米国の論文が掲載されましたので、翻訳してご紹介します。
要約
エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)は、自己免疫、がん、神経系疾患に関与する風土性ヘルペスウイルスである。初期感染は無症状であることが多いが、持続的なEBV感染は免疫の調節異常や長期的な合併症を引き起こしうる。ヒトの遺伝的変化がこの表現型スペクトラムに部分的に寄与しているが、感染は至る所で起きているにもかかわらず、最初の暴露後のEBVの持続感染性の決定因子は不明なことが多いままである。
ここでは、ヒト集団の既存の全ゲノムシーケンス解析(WGS)データを使用することで、持続感染性EBV のDNAを定量化できることを実証する。英国バイオバンク(n=490,560)及びAll of Us(n=245,394)のWGSデータと健康記録データを用い、血液由来EBVのDNA定量値と呼吸器疾患、自己免疫疾患、神経系疾患、循環器疾患との再現性のある関連性を明らかにした。ゲノム関連解析により持続感染性EBVのDNAの遺伝的決定因子を評価し、免疫関連調節領域及び148遺伝子中のタンパク質変異バリアントにおける遺伝率の上昇を明らかにした。
これらの遺伝子座の単一細胞解析及び経路レベル解析は、変動する抗原処理がEBVのDNAの持続感染性の主な決定因子であることを暗示している。さらに、関連する遺伝子プログラムはB細胞及び抗原提示細胞で強化されており、ウイルスの貯蔵や除去におけるそれらの役割と一致している。ヒト白血球抗原遺伝子型決定と予測されたウイルス・エピトープ提示の親和性は、主要な組織適合性複合体クラスIIの変異がEBVの持続感染性の主な調節因子であることを暗示している。まとめると、人間集団規模のWGSデータの再解析がウイルスのDNAの持続感染性の遺伝的構造、すなわちより広範なヒトの生体内ウイルス集団の一般化を可能にするフレームワークをどのように解明し得るかを、我々の解析は実証している。
本文
EBVが誘因となったがんは最も深刻な兆候(manifestation)であるが、世界中の年間死亡者の13万~20万を占めている。一方、免疫が正常な人では末梢メモリーB細胞内に休眠中のEBVが隠れている可能性があり、この場合、ウイルスは最小限しか遺伝子プログラムを発現しない。他のヘルペスウイルス感染症と同様に、EBVは散発的に、あるいは急性ストレス因子や宿主の免疫抑制に反応して再活性化し、その結果、ウイルス貯蔵量が拡大し、致命的な臨床的合併症に至る可能性がある。
急性及び慢性感染症後のこの広範な表現型スペクトラムは、宿主の遺伝的な多様性に部分的に起因しえる広範な個体間変動性を明確に示している。しかし、EBVのような複雑な表現型を伴う一般的な感染症の遺伝的関連の研究は、コホートのサイズが小さいために力不足であり、感染、ウイルスの持続感染性、宿主と表現型の関連性を研究する新たなアプローチを促している。
複雑な形質との関連
国際疾病分類第10版(ICD-10)コードで分類された体系的なアウトカムをエクスポージャーとしてEBVのDNA血症を用いてマッピングするために、フェノムワイド関連解析(PheWAS)を実施した。二値の形質において、脾臓疾患やホジキンリンパ腫との確立された関連を含む、271の顕著なICD-10コードを見つけた。また、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデスとの顕著な関連も認めたが、これらはそれぞれ直交的アプローチを用いて以前からEBVと関連付けられていた。
過去の症例研究では、我々の集団規模コホート研究と比較して小規模な研究において、EBV感染と様々な疾患との関連性が逸話的に報告されてきた。我々の解析は、慢性虚血性心疾患、急性腎不全、うつ病のエピソード、脳卒中を含む、これらの関連性のエビデンスを補強した。これらの関連性は免疫抑制の一般的な状態を反映している可能性もあり、これらの関連性のどれが相関ではなく原因であるかを確定するためには追加研究が必要であることを強調する。
統計的に有意な定量的関連には、白血球数、好中球の割合、喫煙のたばこの箱年数、テロメアの長さ、オメガ3脂肪酸組成が含まれ、EBV感染後の脂質生成誘導に関する過去の観察所見と一致している。体調不良や疲労との関連性も検出しており、長年EBVは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)のリスク因子と仮定されてきたことを付記する。さらに、ホスファチジルコリン及び総コリンのレベルの減少との有意な関連性も同定したが、ME/CFS患者における代謝研究結果と一致している。この結果はEBVとME/CFSの潜在的な関連性を補強するものであり、さらなる調査が必要である。