街中で見かける「あのポスター」の正体
突然ですが、皆さんは鉄道駅などでこんなポスターを見かけたことはありますか?
主に首都圏を中心に見かけるこのポスターは、一見役所が作成したような絶妙なデザインのイラストによく見ると不穏な文言と素性の不明な団体名が記載されており、その見る者を不安にさせるクオリティから時折SNS上でも言及されます。
今回はこの謎のポスターを貼っている人たちについて簡単に解説してみたいと思います。
集スト界隈とは
ポスターに記されている「集団ストーカー」とは、特定個人に対し複数人が組織的に日常生活を妨害する嫌がらせを指します。外出すると必ず何者かに付きまとわれる、特定の時間やタイミングで声をかけられるなどといった内容が多く、大抵の場合、電磁波を脳に照射して思考をどうのこうのするという「テクノロジー犯罪」とセットで語られます。
後述するようにそういうことをする人たちが存在しないわけではないと思われますが、インターネットの悪い人たちが想起するであろう「助けてー!集団ストーカーに襲われてまーす!」というシャウトを発したaiueo700氏のように妄想性の疾患を抱えた人が引き寄せられやすいフレーズでもあり、一般にはあまり真剣に受け止められていません。
もともとこうした考えを持つ人は世の中に一定数存在しましたが、90年代ごろから次第に「被害者」同士でコミュニティを形成する動きがみられるようになり、インターネットの普及に伴って様々な団体が現れ、現在では一種の界隈を形成しています。
表立った活動ではあまり言及されませんが、こうした界隈では「集団ストーカー」を行っている主体は創価学会であるという暗黙の前提が存在します。かつては特定の企業や国内外の政府機関を想定する人も多かったのですが、2006年の奈良騒音傷害事件や2008年の元公明党委員長矢野絢也によるいわゆる「手帳強奪事件」の告発をきっかけに発生した陰謀論の影響を受け、現在では創価学会が圧倒的に人気となっています。
実際のところ、創価学会は支部によっては教団に内部から背いた人物や、反創価学会運動を行う活動家を組織的に尾行することもあり(皆さんも信濃町の学会エリアで悪ふざけをすると体験できます)、全く根も葉もない話とは言い切れないのですが、集スト界隈では先に「集団ストーカーを受けている」という認定があり、あとから犯人を特定しようとする例が跡を絶たず、実態以上に想像が膨らんでしまっているきらいがあります。
なお、創価学会が怪電波を発信する技術を持っているかどうかは筆者にはわかりません。
界隈の歴史
集スト界隈を社会運動へと組織する動きは1998年の「テクノロジー犯罪被害ネットワーク」に遡ることができますが、現在の界隈の直接のルーツは2010年前後にかけて確立したと思われます。
きっかけになったのは保守活動家の瀬戸弘幸で、2008年頃から彼が元々行っていた反創価学会運動に集スト界隈の人々を取り込む動きを見せました。そこからさらに黒田大輔の「日本を護る市民の会」がより発展的な活動を行い、集スト界隈に政治運動のノウハウが伝授されます。
2010年、こうした人々を中心に任意団体「集団ストーカー被害者の会ネットワーク」(GSTI)が組織され、各地域での街宣やデモ行進を開始します。2011年設立の「組織ストーカー電磁波犯罪被害の会」(SDH)も同様の活動を行いました。
そして、GSTIがデモ活動と並行して行っていたのがチラシの配布でした。ポスティングや街頭での配布の他に、公共施設に赴いて管理者を説得しポスターとして貼ってもらったり、スタンドに置いてもらったりする活動がなされ、熱心な会員によって全国各地の郵便局などに謎のポスターが見られるようになります。
GSTIの影響を受けた集スト界隈の団体は多く、2015年ごろから活動を始めた押越清悦による「Targeted Individuals Japan」(TIJ)は選挙への立候補の他、一時期は街宣の場でポケットティッシュを配布していたことがありました。
押越は2023年、つばさの党の黒川敦彦による団体「新しい国民の運動」に合流します。同じくつばさの党に参加している杉田勇人は集スト系反創価学会団体「日本の未来を取り戻す会」(日未会)を主宰しており、黒川とともに信濃町で街宣を行うなどしていました。
ちなみに、日未会の活動には一時期三浦春馬陰謀論勢が協力していました。三浦春馬勢の中には「三浦春馬はTBSのドラマスタッフにガスライティング(※"無意識下に働きかける嫌がらせ"を意味する集スト界隈用語)を受けていた」と信じている人たちがおり、彼女らを取り込んだ黒川が「三浦春馬再捜査・集団ストーカー撲滅合同デモ」なる奇怪な催しを行っていたのです。
2023年11月19日、梅田駅前の大阪阪急ホテルの窓から集スト界隈のビラが大量に撒かれるという衝撃事件が発生しました。この事件の犯人は「楯の會」という集スト系団体のメンバーでした。なぜかは知りませんが日未会と仲が悪いらしく度々小競り合いを起こしているようです。豊饒の海を漂う三島も脱力していると思います。
集スト界隈のざっくりとした歴史を辿ったところで、本題の「あのポスター」を貼っている団体について解説します。
「あのポスター」を作った団体
このポスターを貼っているのは、ポスターに記載されている「集団ストーカー組織犯罪撲滅推進連合会」という団体です。設立者は平山弘知という人物で、元々は先述したGSTI作成のチラシを各所に設置する活動を行っていたようです。
活動を開始したのは2020年ごろとみられ、SNSで界隈とつながるようになり、4月に団体を設立、交流のあった人々と協力して活動範囲を拡大していったとみられます。各地の支部は地元のまちづくりボランティア団体として登録していることが多く、ポスターを貼る際の説得材料としている可能性があります(ボランティア登録という手法は先述のSDHも行っていました)。
実は現在のポスターは2代目で、初代のポスターは2021年3月頃から掲示されるようになった侍のイラストの描かれている独特なインパクトのあるもの。同年12月に現在の落ち着いた絵柄のものが誕生しています。その後もポスターは複数制作されていますが、最もよく見かけるのは2代目のもののようです。
平山は元々れいわ新選組の支持者だったようで、ボランティアスタッフとして参加している他、2022年4月は山本太郎代表と面会し「あのポスター」と共にツーショットを撮っていました。なかなかパンチのある絵面です。
単なる風評被害かというとそういうわけでもなく、山本代表は以前から"おしゃべり会"などの場で「創価学会による集ストは存在する」とたびたび主張していたりします。
初めにそれ聞いた時に「あ、ちょっとお疲れの方なのかな」っていう風に思ったんですよね。見られてる!とか誰かにつけられてる!っていう。ちょっと疲れすぎてそういう状況になっちゃってんのかなと思ったんですけど、あ、それ違うんだってわかったのが、公明党支持で創価学会だった人が、逆にその集団ストーカーを(中略)やったことがありますってことを信者の人から聞いたんですよね。え、そんな、本当にあるんですかそれ!?っていうところが入口だったっていうことです。
山本が聞いたという話はおそらく上記の身内に対する嫌がらせとして行われているものではないかと思われますが、結果として一部の「お疲れの方」を焚き付けてしまっており、こうした質問が時々見られるようになっています(ちなみに山本は電磁波についても思わせぶりな内容を発言しています)。
2025年8月には、反ワクチン系極右団体で川口のクルド人排斥運動にも関わっている日防隊と交流、石濱哲信代表による応援メッセージまで送られました。これもウォッチャー的には衝撃の絵面です。
現時点でポスターの普及活動以外の目立った動きはあまり見られませんが、少人数ながら勢力的に手広く活動している団体という印象があります。
貼っている人に話を聞いてみた
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?



購入者のコメント