いじめ調査の提出資料をコピペ? 委員があきれた学校と市教委の対応

白木琢歩
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 和歌山県海南市の小学校に通っていた女子児童がいじめを受け不登校になった問題で、学校側がいじめ問題調査委員会に提出した資料が、2年連続で同じ記載内容だったことが分かった。調査委は、他にも国のガイドラインに従っていないなど多数の問題点を指摘しており、市教育委員会の対応が問われている。

内容が全く同じ

 14日に海南市内で開かれた調査委の会見。池田忠・副委員長が「資料の内容が全く同じでがくぜんとした。どう考えてもコピペ(コピー&ペースト)だ」と憤った。

 やり玉に挙がったのは、学校側が提出した「いじめ対策会議」の資料。2021年11月~22年1月の資料が、その前年度の同じ期間の資料と記載内容が同一だった。

重大事態ではない?

 調査委は2023年、報道や前知事の発言などを受けて市が制定した条例に基づき発足。市教委は「いじめ重大事態が発生したものとして調査委員会を設置する」と市議会に説明したが、委員の聞き取りに対して、「重大事態であると認定していない」と繰り返し主張しているという。

 文部科学省のいじめ重大事態調査に関するガイドラインにはこうある。

 〈児童生徒や保護者から、『いじめにより重大な被害が生じた』という申立てがあったとき(中略)は、(学校側が)『重大事態とはいえない』と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる〉

 弁護士の沢田裕和委員長は「ガイドラインに従えば当然率直に認めるべきなのに、認めないのでがくぜんとした」と首をかしげる。調査委は自らの判断で報告書のタイトルを「いじめ重大事態調査報告書」とした。

他にも多数のいじめの訴え「見逃した」

 調査委は、被害児童が通っていた小学校で、いじめの認知件数が全国と比べて著しく低かったことも明らかにした。

 今回の児童が1年生だった2017年度に同校が実施したいじめアンケートでは、「今の学年(学期)でいじめられたことがある」と答えた児童が129件、さらに「今も続けていじめられている」が46件あった。

 しかし、同校の17年度のいじめ認知件数は2件で、1千人あたりの認知件数は5・08件。同じ年の全国の小学校では49・1件だった。

 京都市教委などで生徒指導に長年携わった池田副委員長は「いじめが今でも続いていると訴えた子どもがこれだけいる。これを見逃したということについては、厳しい指摘をせざるを得ない」と話す。

 そのうえで、学校教育関係者にこう呼びかけた。「いじめの認知件数が増えるのは、学校現場がそれだけ頑張っているということ。決して教員や学校の評価を下げるものではないということを、市教委や県教委はしっかりと言ってもらいたい」

視点 子どもの立場で動く公的第三者機関が必要

 児童が最初にいじめを訴えてから9年近く。現在、中学校に通う元児童は「私の小学校時代は何もなかった」と振り返る。通いたかった学校に、ほとんど通えなかった。子どもの思いを置き去りにした責任の大半は、周囲の大人たちにある。

 いじめ防止対策推進法や国のガイドラインを踏まえ、保護者は学校側に重大事態として扱うよう再三申し入れたが、拒否され続けた。指導する立場の海南市教委も、学校と一体化してしまった。

 今回の事例を踏まえると、学校でも行政でもない、子どもの立場で問題解決に動く公的な第三者機関が必要だ。「子どもの人権オンブズパーソン」(兵庫県川西市)の先行事例がある。国や県が推進する「こどもまんなか社会」の実現のためにも検討してほしい。

海南市立小学校のいじめ問題の経過

●2017年 被害児童(以下A)が小学校入学。1学期ごろから「同級生にいじめを受けている」と学校に訴える

●18年 学校はAと加害児童を同じ場に呼んで、いじめについて指導。Aはその後徐々に不登校に。Aの保護者は学校に「いじめ重大事態」として認定するよう求める

●19年 市教委に対し、県教委は「いじめ重大事態として取り扱うべきだ」と助言

●23年1月 故・岸本周平知事が定例会見で県教委の対応を支持し、第三者委員会の必要性に言及

●23年8月 海南市いじめ問題調査委が初会合

●26年3月 調査委は「重大事態と認定しないのは不適切で誤り」などとする報告書を市教育長に提出

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この記事を書いた人
白木琢歩
和歌山総局
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