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僕と君とあいつの日常/Novel by 木村理真

僕と君とあいつの日常

8,981 character(s)17 mins

旧剣五次弓←旧槍話です。ひたすら新婚さんな旧剣弓です。ついたーで投下したネタに乗ってくださったお二方に感謝を込めて!そして旧剣弓の新婚さんなシーンは全て鷹ツ木さん(user/261584)のお陰です。こちらも本当にありがとうございます!

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僕と君の日常


「ん……」
 朝の清浄な光の中で目を覚ます。
 隣へ手を伸ばしてみてもそこは空っぽで昨夜、同じベッドで一緒に眠りについた愛しい人はもういない。
 けどそれが逃げられたとか、嫌われたとかそうではない事を微かに香るスープの匂いで判った。
 ──それ以前に僕があの人を嫌う事も、あの人が僕を嫌う事もあり得ない話ではあるが。
 もぞもぞと布団に包まれながら、ふんわりとした幸せに笑顔にならずにはいられない。
 さぁそろそろ起きようか。
 昨日から我がマスターは外出許可の降りたライダーのマスターの所へライダーと一緒に見舞いを兼ねて遊びに行き、明日の夕方まで帰ってこない。折角渋るマスターを説き伏せ手に入れた、期間限定の二人きりのこの甘い時間を無駄にする訳にはいかない。
 シャワーを浴びようとぺたりと床に足を下ろし、立ち上がろうとして思い出した。
 そう言えば昨夜、二人して「そのまま」寝てしまった事に。
 二人しかいないとは言え流石に全裸で家の中をうろつく訳にもいかないからと、下着とパジャマのズボンだけをはいて部屋を出た。


 シャワーを浴び、着替えてキッチンへ行けば今度はバターの香り。食欲をそそる匂いにくぅ、と小さくお腹がなった。
「おはよう、エミヤ」
「あぁ、おはようセイバー」
 エミヤは僕の事を真名では呼ばない。もちろん知らない訳ではないし、僕以外のサーヴァントは殆ど真名で呼んでいる。当然最初はそれを不満に思ったけど『セイバー』という音の響きが好きだと言われた事と、こういう関係になってからベッドの中でだけ真名を呼ぶその特別感がたまらなく嬉しくて以降、エミヤの好きにさせている。
「今日の朝食、何?」
 言いながら僕より少し高い肩に顎を乗せ引き締まった腰に腕を回す。綾香がいる時には絶対にさせてくれないけど、今日は大人しく腕の中に収まってくれた。──火を使ってるから、なんて言い訳は聞かない。
「天使のスープとバナナブレッドとチーズ入りのスクランブルエッグだ。付け合わせはハムとウィンナーどっちがいい?」
「ん〜ウィンナー」
「了解した」
 天使のスープとは綾香命名のエミヤオリジナルのスープ。細かく切った色々な種類の野菜とコク出しのハム類とチーズに塩胡椒ブイヨンだけで味付けをした、シンプルで優しい味のスープ。最後に入れる溶き卵のふわふわ感がまた美味しい。
 スクランブルエッグに付け合わせる野菜のソテーを二人分のお皿に盛り、ウィンナーを炒める為にだろう軽くフライパンを洗おうと身じろぎした体を邪魔にならないよう手を放す。そしてまたコンロの前に戻ったエミヤを同じように腕に納めて、鼻先をその首筋に擦り寄らせれば微かに香るエミヤの体臭に満足する。
「僕のは3本ね」
「あぁ」
 エミヤの手から放たれてジュワ、と油を引いたフライパンの上でウィンナーが踊る。

 なんて事ない朝の風景。
 でも二人だけの特別な朝。

 だから、こんな可愛いイタズラくらいしたってバチは当たらないよね?

 ふと目線を向ければ、そこに昨夜付けた鬱血の痕。
 褐色の肌にその痕はこんな至近距離からでなければ判らない程目立たなく、それがつまないと思うと同時に目立たないなら幾ら付けてもいいよね、とエミヤが嫌がるのを余所に昨夜も思う存分その肌に所有の印を刻んだ。
 チュ、と耳のすぐ下の痕に重ねてキスをした。
「セイバー…」
 突然の僕の行動を咎める声なんて気にすることなく、今度はその少し硬い頬にもキスをする。と、そこまでしてしまえば、次も次もと欲求が沸き上がってくるのは男として当然なのでその欲求に素直に従う事にした。
 腰に回した手の片方をそっと上げ、エミヤの逞しい胸をエプロンの上からそっと手の平全体を使って撫でる。その時に指先で乳首の辺りを突つくのは忘れない。
「っ!やめ、ないか…」
「ねぇ…エミヤ…朝食もすごく美味しそうだけど、エミヤの方がもっと美味しそう…」
 びく、と腕の中のエミヤの体が震えた。
 エミヤは僕の声に弱い。
 口唇で耳朶を食みながらそう囁けば、少し体温が上がったのが判る。
 コンロの火を止めてもう一度胸を弄りながら、逃れようと捩る体を抑え込み子供が甘いお菓子を強請るように「ねぇ」と囁く。

「アーサー…っ!」

 それは僕から理性を奪うに値する一言。
 朝の光の元で褥の中でだけ呼ばれる僕の真名が耳を震わす。

 首筋に噛み付きながら布の上から探り当てた乳首を重点的に攻め、もう片方の手でエプロンの紐を解くとまだ何の反応のないエミヤ自身をスラックスの上から擦り上げる。
「ホントに君は可愛いんだから…ねぇ、いいよね?」
「ぅ、く…ほんと、にやめ…」
 そう言うくせに抵抗が弱いのはエミヤも期待してるのが判るから。
 ここしばらく綾香がテスト勉強の為に夜遅くまで起きていたせいで、こうした行為は久し振りだった。それもあって昨夜は『ほんの少し』度の過ぎたモノになっても仕方なかったし、今だってまだまだ心も体も足りていないのも当然。
「エミヤ…ここでする?それともベッドに戻る?」
 驚いたように振り返るエミヤの口唇に触れるだけのキスを落とす。
「選ばせてあげる」
 にっこりと笑えば、途端に目を見開いて傍目でも判るくらいに真っ赤になったその顔。
 本当に彼は僕に対して弱いものが多すぎる。
 ──けどそういう僕の方もエミヤに対して弱いものが多すぎる。
「…………でなら…」
「ん?何?」
 聞き取れない程の小声で呟いた内容を聞き返そうと、頬に寄せていた顔を上げると──

 むぐ。

 口の中に押し込まれた何か。
 細長くジューシーな肉汁が溢れて表面が油ぎってるそれ。──あ、ウィンナーか。

 もっもっもっもっ……ごくん。

 突然の事に頭と体の動きは停止し、ただ押し込まれたウィンナーを反射的に咀嚼し飲み込む事しかできなかった。
 その隙に僕の腕から逃げて非難するようにこちらを睨みつけてくるエミヤ。
 少し潤んだ瞳で睨まれても怖くないなー、とまだ動き出さない頭の隅でそんな事を考えていた、が──

「ちょ、朝食はキチンと食べなければいけないと常日頃言ってるだろうが!だからっ……だから…そ、その後でなら…」


 ──────

 ぷ。

「あはははははっ!」
「何がおかしいっ!!」
 あーもう、何でこんなに可愛いかなぁ〜。
 涙目で怒って詰め寄ってくるエミヤを正面からぎゅうぎゅうに抱きしめる。
「うん、ゴメンね。美味しいエミヤの朝ご飯食べよう」
 そう言うと腕の中の体がホッとしたように力が抜け、恐る恐る背に腕を回してきた。
 あまりのいじらしさに額にキスをしてしまったのはご愛嬌。

 それからエミヤは残りのチーズ入りスクランブルエッグを作り始めた。
 その後ろで僕は先程と同じく、肩に顎を乗せ腰に腕を回す。エミヤも最初はまた何かされるんじゃないかと体が強張っていたけど、本当に僕が何もしないと判ると受け入れてくれた。

 出来上がった朝食を一緒にテーブルに並べ、向かい合って「いただきます」と手を合わせる。
 いつもより静かな食事。でもその料理の美味しさは変わらず、食べながら綻ぶ顔をエミヤも嬉しそうに目を細めて見遣る。
 一緒に後片付けをして、エミヤの淹れてくれた紅茶で一息をつく。

 おかわり貰おうかなぁ〜と、思っていたら、つん、と小さく引っ張られるシャツの肩口。
 何だろうと思って肩口を掴む褐色の手から視線をあげていけば、ポットを手に何か困ったそうなエミヤの顔。
「いるかね?」
 ポットを差し出され「ん」と頷き手にしていたカップを差し出す。こぽこぽと注がれる香り高いアールグレイ。そのベルガモットの芳醇な香りを楽しんでいる横で、エミヤはポットを手にしたまま立ち尽くしていた。
「エミヤ?」
 どうしたんだろうと、小首をかしげ名を呼べば困惑気味なその顔に一気に薄紅が引かれた。

 ──あぁ、そっか。
 律儀に待ってくれてたんだ。

 知らず浮かんだ笑みに、エミヤの肩が揺れる。
 カチャ、と小さな音を立て、カップをソーサーに戻す。

「ねぇ、こことベッドどっちがいい?」

 数瞬彷徨った視線。
 その視線が合わさらないまま、エミヤが口を開いた。

「ベッド、が…」



 おやつの時間を過ぎた頃、スーパーへ一緒に買い出しに出かける。
「じゃ行こうか?」
 と、エミヤに向けて手を差し出したら、ペチンとその手を払われた。けど、そんなに赤い顔してたら逆に構いたくなるじゃないか。
 だから強引に払った手を取って、指を絡めて歩き出した。
「セイバーっ!離さないか!」
「いいじゃない。綾香がいるときは3人で手を繋いで歩く事だってあるんだから、それの延長だよ」
「そんな訳あるか!」
「あるある♪」
 スーパーまでの道すがら、ギャーギャー言い合いながらも繋いだ手は離さない。

 ──そして僕は一人スーパーの外で待ちぼうけ。

「何やってんだ?」
 と、掛けてきた声は──

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