比鷺は萬燈の胸元の布を必死に掴み、ぶら下がるようにして、かろうじて立っていた。
指先が震える。涙が、瞼の裏に熱く溜まる。
萬燈は比鷺を壁に押し付けたまま、その細い腰を支え、自らの体温で包み込むようにしてゆっくりと畳へ誘った。
二人の膝が折れ、衣が擦れる音が静寂を乱す。唇は体勢を変える動きに合わせて柔らかく角度を変え、比鷺は逃げ場を失ったまま、萬燈の舌を受け止めていた。
「……ん……っ、はぁ……」
甘く震える喘ぎが漏れるたび、萬燈はさらに愛おしげに唾液を吸い取っていく。
至近距離で見つめ合う瞳。萬燈の眼差しには、比鷺ただ一人を焦がすような情熱だけが湛えられていた。
「お前が愛しいよ」
掠れた、熱を帯びた囁きが、比鷺の鼓膜を震わせ、心へと溶け込む。
比鷺は萬燈の胸元の布をさらに強く握りしめた。震える指先は、溺れる者が最後の浮き輪に縋るように、萬燈の体を引き寄せた。
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