人を見下し、上司にセクハラ通報を仕掛けた30代「現場クラッシャー」の末路…会社の意外な判断とは
労務相談やハラスメント対応をおもな業務としている社労士の私のもとには、じつにさまざまなご相談が寄せられています。なかでも近年とくに感じるのは、単純な「ルール違反」や「加害・被害」の枠組みだけでは整理できない事案が増えていることです。
今回は、そうした背景が複雑に絡み合った事例として、障がい者福祉施設で起きたハラスメントの一件をご紹介します。表面上は「女性上司によるハラスメント通報」でしたが、実際には体調の問題、指導方法の受け止め方の違い、利用者対応をめぐる価値観の衝突など、いくつもの要素が折り重なっていました。
(なお、本件は個人や法人が特定されないよう、複数のご相談事例をもとに再構成したものです)
ハラスメントでの裁判所の判断基準
近年、女性上司に男性の部下という構図も珍しいものではなくなりました。これまでは男性が女性に行うものだと思われてきたセクハラも、女性から男性、同性同士、ストレートからそうではない人へと、様々なバリエーションを見せています。
セクハラについても重要になるのは、「行為の目的」と「態様」です。
裁判例でも、違法性の判断は、たんに“触れたかどうか”ではなく、(1)業務目的の有無 (2)必要性・相当性 (3)反復性 (4)周囲の状況といった、具体的事情のつみ重ねで判断が分かれることが示されています。
例えば、休憩中に職場の浴室で入浴していた男性社員が、脱衣所に入ってきた女性上司に全裸を見られ、「ねえねえ、何してるの」と声をかけられたとして訴えた裁判があります。(参照:近畿郵政局事件 地裁判平成16年9月3日、大阪高裁判平成17年6月7日)
この事件では被害者側の男性が被害の程度を“盛った”こともあり、一審では女性上司の過失が認められましたが、二審ではそれが覆っています。
裁判所は、職務の一環とはいえ、女性上司がノックもせずに浴室の扉を開けたことは「礼儀に反する不用意な行動」であり、言葉遣いにも不適切な点があった可能性を認めました。
しかし、その行動が職務上の正当な目的のために行われ、その目的に沿った必要な範囲内であったこと。方法としても基本的には妥当であったと判断され、セクシャル・ハラスメントに当たるというような評価をすることはできないとされました。