【Fate槍弓】レッドライン【軍人パロ】
本館(自サイト)にアップしていたものをこちらにもあわせてアップ。
Fateで槍弓、軍人パロです。タイバニ関係ないです。
槍弓ストや槍弓に興味のある方だけどうぞー。
- 149
- 74
- 8,231
痺れるほどの痛みを感じている。
発生源は指。ひきつりながら折り曲げれば、痛みも同じく折れ曲がる。
「どうした、アーチャー」
「いや別に」
背後からかけられた声に、振り返ることもなく返事を返す。
ぎゅっと力を篭めた握りこぶしには、まだ痛みが残っている。
だが気にしている余地はない。
「作戦時刻が迫っている、行くぞ」
ばさりと外套を翻し、天幕を払ってテントを後にする。
これ以上言わなくとも、相手がついてくることは経験上わかりきっているから、わざわざ命令しなかった。
「イェス・サー」
仰々しく返事しているが、顔を見なくても明らかに笑っているだろうことがわかる。
本当に忌々しい男だ。
「黙ってついて来い。お前は私の副官だろう」
「仰せのままに、大尉」
「黙れといったぞ、准尉」
言いながら足早に陣地を横断すれば、すれ違った兵士たちが強張った顔で敬礼をする。
それに軽く返礼を返しながら、自分の部隊が待つ場所へとたどり着いた。
非常に体格のいい男たちが横一列になり、自分に対して一斉に乱れなく敬礼をする光景はとても美しいものだ、といつ見ても思う。
「ご苦労諸君。既に作戦は把握していると思うが今一度言おう。我々の役割は霍乱と情報収集だ。もちろんこれは通常ありえない二重任務であり、死兵である」
そこまでいって一区切りし、呼吸をすると共に、部下たちの顔を見る。
どいつもこいつも、困ったことに悲壮感の欠片もない顔ばかりだ。目を輝かせてこちらを一心に信じてくる部下なのだから、馬鹿ぞろいなのだろう。
だがその馬鹿が愛おしい。今隣で静かに立つ副官と同じくらいに。
「だが私の部下たちをそんなことで奪われるつもりはない。そして、普通では出来ないことも、諸君らなら可能だと私は確信している。信じているのではない、知っているのだ」
言葉の裏までは説明しなくともわかるだろう。証拠に、一気に男たちの顔が輝いた。不敵な笑みを一様に浮かべ、全身から湧き上がる闘志を感じる。
「恐らく傷は負うだろう。分断されることもあるかもしれない。だが私が全てを引き受ける。諸君らは生き延び、生きて帰り、各々の任務を全うせよ。以上だ、何かあるか? なければ開始だ」
「サー、イェスサー!」
一斉に男たちが動き出す。自分たちもまた、ここを急いで発ち、彼らの後を追う。総括と指示が自分の仕事だ。伝達は副官である背後の男の仕事。
だがそれだけではすまない場合もある。そういう時は、自分も男も共に飛び出さねばならない。
そのためには、少しでも戦場の近くへ。
たとえその途中で引き離されたとしても。
「お前に命令はしない。必要だと感じたら、自分で判断しろ」
「それはオレを信用してるから?」
試すような言葉に、初めて背後を振り返った。
赤い目が爛々と輝きながら自分を見つめている。そこに浮かぶ微かな感情を読み取ると、軽く鼻で笑った。
「なんだ、嫉妬か?」
「いいから答えろよ。気になって仕方ないじゃねえか」
「上官に対する口の聞き方ではないな」
不機嫌さを装って体を翻すと、強い力で肩をつかまれ、強引に口を塞がれた。
「……いいから、答えろって」
「一分一秒を争う。体を動かせ。話はそれからだ」
冷ややかに濡れた唇を袖で拭えば、舌打ちして突き飛ばされる。
他人の目がなかったことは認識していたが、それでもやはり誰に見られるとも分からぬ屋外でのこういったことは罰が悪い。
わかっているくせに、我慢できなかった男に少し腹は立つが、それでもやはり、愛しいのに変わりはないのだ。
足音も荒々しく機材を背負い向かってきた男から荷物を受け取ると、相手の苛立つ視線をものともしないで手を伸ばした。
「いだだだ!」
引っ張ったのは耳だ。
そのまま顔を寄せて、息が掛かるほど近くから囁く。
「お前は私の一部だし、私はお前の頭なのだろう? ――――自分の体を信じられなくてどうする」
「は」
ぽかん、と口をあけた馬鹿面を叩き、行くぞと声をかけて走り出す。
もう振り返ることはない。
次に顔を見るのは、作戦終了後に、全員の無事を確認してからになるだろう。
「おい、なあ!」
「口よりも足を動かせ、准尉」
「帰ってきたらもう一回、ちゃんと聞かせていただきますよ、大尉殿!」
「了解した。あとでな、ランサー」
ああ左手の指が痛い。引きちぎられそうだ。戦場に赴くたびに感じるこの痛みは、まるで糸で括り引っ張られているような。
戦火の中で結んだ縁が、私の全てを薬指から引きちぎる。