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【槍弓】どうせ一緒にいるのなら/Novel by 日月

【槍弓】どうせ一緒にいるのなら

2,675 character(s)5 mins

Twitterの「#クーエミライフ」様にお邪魔したくて書いたものです。
カルデアの槍弓。煽り合ってる槍弓も好きなんですが、いちゃいちゃしてるのを書きたい気分だったので。

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 カルデアの廊下を歩いているとしょっちゅう声を掛けられる。大半はアーチャー宛の伝言だ。夕飯のリクエストだの備品の場所を聞きたいだの修理をしてほしいものがあるだの手伝ってもらった感謝の言葉だの。サーヴァントが増えて来たからという理由でアーチャーと同室になってから数ヶ月経つが、最初の頃はあまりにも部屋にいないから訝しんだ。当時はまだ今のようにアーチャーを思うことなんぞなかったが、なんとなくアーチャーの不在を気にしていたら通りすがりのサーヴァントだのスタッフだのに呼び止められるようになってアーチャーがやたらと動き回っているのを知った。以来、オレで済ませられるものは手を出しているし、感謝についてだけは本人に直接言ってやれと伝えている。まああいつは人の世話を焼くのが趣味のようなものなので、仕事を奪うようなことはしないが。なおカルデアには男女問わずアーチャーに惚れ込んでいるのもいるが、オレに対して想いを代弁してほしいなどと言う者だけはいない。当然だ。オレはアーチャーと同棲しているんだから。
「ただいま」
 部屋の扉を開けながら声を掛ける。今日のアーチャーは床に座り込んで何やら機械を分解していた。視線は手元に落としたまま、おかえり、とだけ返される。
「今日は何直してんだ?」
 覗き込むと大きく広げた布の上に扇風機の羽のようなものとネジなんかのこまごました部品が置いてある。
「キッチンのファンだ。動きは問題ないんだが、異音がするのが気になってな」
「ふうん」
 のしっとアーチャーの後ろに背中合わせで座り込む。本当は抱き込んで手捌きを見たいが作業の邪魔になるだろう。
「……重い」
 文句を言いつつもはねのけはしないことに顔がにやける。
「直りそうか?」
「ああ。汚れているだけだった」
「そりゃ良かった」
「ああ」
 カチャカチャと部品を組み立てる音だけが部屋に響く。間もなく完成したようでアーチャーが振り返る。手元に出来上がったものはピカピカに磨かれている。
「お疲れさん」
 直ったか、とは聞かない。こいつが手を止めたってことは問題ないってことだろうからな。代わりに黙って腕を広げる。
「手が汚れているから少し待て」
「気にしねえけど」
「私が気になる」
 洗面所に向かう後ろ姿について行くと、ふふ、とアーチャーはおかしそうに笑った。
「なんだよ」
「いや、嘲笑ではないから気にするな」
 ったく、どうせ犬っぽいとでも言いたいんだろう。ご機嫌なアーチャーを壁にもたれて待つ。丁寧に拭いて来たのだろう、水気の全く残っていない手を今度はアーチャーが広げる。腕を広げ返すとアーチャーの方から寄って来た。同室でいなければならないのならばそれなりに友好的な関係を築くか、という程度のつもりからなんとなく気になり始め、惚れているから目で追うのだと気づいてからは早かった。アーチャーの方もオレといるのが満更でもなさそうだというのも言動の端々から感じたしな。同棲なのか同居なのかという認識の違いでもめたこともあったが、押しに押して今では「同棲」ということで落ち着いているし、恋人らしいことは滅多にしないものの抱き締める程度のことはしている。最初はオレの言動を許している、という体を取っていたアーチャーも最近は部屋でならば自ら近づいて来るようなことも増えた。
「今日もお前のこといろいろと聞かれたぞ」
 抱き合ったまま伝言を一通り伝えてやると、アーチャーは一つ一つの言葉に頷く。
「ったく、引っ張りだこだな」
「君に話し掛けたくて私の話をしているだけでは?」
「オレに話したいなら別の話題でも良いだろ」
「ならば君が気さくだからつい言ってしまうんだろうな」
 アーチャーは人に好かれているという実感が薄すぎるんじゃないかと事あるごとに思う。好意を無下にするつもりはないんだろうが。ま、オレが本気で好いているということが伝わっていればいいか。
「なあ、今日は一緒に寝ようぜ」
「明日は君も私もレイシフトの予定だろう」
 気のない返事をされることには慣れている。寝る、の意味も分かってるんだかいないんだか。
「添い寝だけ」
「狭いだろう」
 ベッドは極端に大きいサーヴァントを除いて同じ大きさのものを一つずつあてがわれている。比較的大きく作られているとはいえ二人で寝るには確かに窮屈だ。
「くっついて眠ればいいだろ。ほら」
 手を引いてベッドに誘えば抗うことなくついて来る。口では気のないフリをしつつもベッドには自分で上がり、しかし背を向けた。
「抱き合って眠りたいんだが」
「無理だ」
「何でだよ」
「何でも」
「なあ」
「……顔を見ているとどうしていいか分からない」
 拒否の言葉ではないものの、意味が分からない。
「なんでだよ」
 今度は努めて優しい声を出すと、アーチャーは余計に身を固くする。
「武器を取って戦うのが私達だろう」
 顔は壁を向いたまま、ぽつりと零す。
「顔を見てると殺意でも湧くか?」
「いや、そんなことは」
 否定して勢い良くこちらを向いたもんだから、ようやく目が合う。アーチャーは動きを止めて、逸らすことなく視線を交える。
「戦うのは戦うので良いけどな。抱きてえから抱く、で良いだろ」
「君は自由だな」
 抵抗するだけムダだと分かったのか単に素直に触れられなかっただけなのか。考えていることははっきりとは分からないがまあ良い。溜息を零しつつもアーチャーはオレを抱き込んだ。ずり上がるようにするもんだから、アーチャーの胸元しか見えない。表情を見られたくないんだろうが、オレにとっちゃサービスみたいなもんだが良いのか。ぐりぐりと自分の頭を押しつけてやる。
「ほら、寝るぞ」
 アーチャーはオレの頭を押さえ込む。
「はいはい」
「返事は一回」
「はーい」
 ふざけて子供のように返事をすると、アーチャーはくすくすと笑う。食事は食堂で取るし、どちらかが不在にしていることも多い。寝に帰るだけの場所みたいなもんだが、どうせ一緒にいるのならば、存分に甘えて、甘やかしてやるのもありだろう。などと考えていたら。
「添い寝以上は、また今度な」
 アーチャーから予想外の言葉が出て来る。
「はっ?」
「おやすみ」
「いや、おい、アーチャー!」
 寝る、の意味やっぱり分かってんじゃねえか! 向き合って寝るのさえ葛藤してたくせに! 離れることはしないまま、無理な姿勢でどんなに揺さぶってもアーチャーは目を開けようとはせず、ただ満足そうに微笑んでいた。


Comments

  • 月城 紗弥
    October 1, 2023
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