【時代の正体取材班=田崎 基】 翠玉(すいぎょく)色にきらめく海面に涼やかな風が吹き抜ける。小さな漁船から半身を乗り出し、箱めがねで水中をのぞき込むと、大きく成長したオキナワハマサンゴが陽光を受けてきらきらと輝き、空色の小さな魚が泳いでいた。
「この美(ちゅ)ら海を土砂で埋め立てて、米軍の基地を造る。こんなことが許されますか」。問われ、私は返す言葉もなかった。目の前では止まることなく、砕石が投入され続けている。見る間に埋まり、今にも護岸の両端が接する。浜を失ったウミガメがさまよい、時折波間に顔を出していた。
新基地建設の埋め立てが本格的に進む沖縄・辺野古。滑走路が建設される計画地の洋上に私はいた。
舵(かじ)をとる仲本興真さん(70)=沖縄県名護市=は沖縄で米軍基地反対を訴えて半世紀になる。
「辺野古の岬から北側に広がる大浦湾を挟んだ三原で生まれました」。新基地が建設されれば、輸送機オスプレイや戦闘機が上空を行き交う。
この海には絶滅危惧種のジュゴンが生息し、アオサンゴやヒメサンゴなど希少なサンゴの大規模な群集が見つかっている。
仲本さんがマイクを手に、洋上から工事現場に向かって訴える。
「1度埋めてしまった海は元には戻りません! 沖縄県が何度も指導しているこの工事は違法です」
抗議の意志を示すため、仲間たちがカヌーを駆ってオイルフェンスを越える。だが、その度にウエットスーツに身を包んだ海上保安官がボートから飛び降り、カヌーを取り押さえ、岸へ引っ張っていく。
「海上保安庁はなぜ米軍基地建設のガードマンをするのか」。訴えは国家権力の末端に向かうばかりで、中枢には届かない。海上保安官は何も聞こえていないかのように「ここは規制区域です。離れてください」と繰り返す。
何をやろうが無駄、諦めろと言わんばかりに反対の声を黙殺する。捕らえ、拘束し、岸へ連行する。法的根拠は乏しいが、その不条理さえも丸のみにして言うことを聞かせる暴力。抗(あらが)うことさえも許さない、むきだしの国家権力がますます先鋭化している。
一体何のために、誰のために-。そうした疑問さえも蹂躙(じゅうりん)することをいとわない。
横 暴
仲本さんは言う。
「こんなに小さな沖縄に在日米軍専用施設が集中して73年になり、いまも7割を占める。私にも子や孫がいる。もうこんなことは終わりにしなければならない」
ここ数年の国家権力の暴走はかつてと比べものにならないと実感する。2016年7月の参院選。沖縄では基地建設反対派の国会議員が当選した。その投開票日の翌日、抗議が続く高江でヘリパット工事を再開した。辺野古でも反対する市民に対し、暴力的な排除が止まらない。
「国会で3分の2以上の議席を持っていることをいいことに、安倍政権が一気に戦争へ向かっているように思えてならない」
祖父の代から沖縄の地で暮らしてきた。先の大戦では多くの親戚を失った。軍事基地があるからこそ、他国からの攻撃の標的になる。沖縄の歴史が証明し、自身も肌身で感じてきた。
「沖縄の人はみんなつらい思いをしている。だから戦後教育を受けて、憲法を学び、再び戦争することのない平和な日本を願い、がんばってきた。それが今やこんな状況になり、この国の将来に不安を感じます」
その沖縄で上がる声を圧殺する国家権力の横暴に直面し、思いを強くする。
「今こそがんばらなければいけない。辺野古で起きていることを踏まえれば、もはや単に沖縄のためだけではない。日本のためにがんばらなければいけない。
そういう思いでたくさんの人がここに来ているし、私もその思い一つでここにいる」