アートと生成AIに関する生きているのが嫌になってくる程のクソすぎる現状
先日このような記事を見つけた。
2023年の記事であるが、状況が全然改善していないどころか悪化していることを残念に思う。彼女たちは今どうしているのだろうか?
こういった記事を利用するのは倫理的にあまり良くないとは感じるが、無ければ苦しんでいる人がいるという事実も疑われかねず、知っている具体的な人の話を出すわけにも行かないため有難く使わせてもらうことにする。
記事には、省かれているのか記者が理解していなかったのか彼女達が語っていないのか、そもそも私の認識している苦痛が一致しているかは不明ではあるが、AIの導入による影響や背景の説明が不足しているように思われる。
そういった部分にも触れながらAIと呼ばれるもの(この呼び名もそもそも適切ではないため不快である)の出現の、ビジュアルアートに関わる人への悪影響について認識している範囲で書いていきたい。
ネガティヴを撒き散らすような文章であるが、自分は本業があるため美術系に進学した人やそれを本業にしている人よりもまだ遥かにマシな場所にいる。
作品を利用されてしまうという現状
「描こうと思ったテーマを入力するだけで簡単に素晴らしい絵が描かれてしまう」と記事にはあり、それはその通りではあるのだが、単にこれだけの記述では問題が矮小化されて伝わってしまわないか懸念した。
現在の生成AIでは「素晴らしい絵」を出力するには必ずその特徴を持った誰かの絵がデータセットとして必要である。そしてそれらは絵を描いた人が知らないうちにインターネット上から収集されており、拒否もできなければ適切な対価もない。
過去に絵を描いて発表した人は、この絵を描く人達に不利益をもたらすツールの開発に強制的に「ご協力」させられてしまっている上、今後「AIに負けないクオリティの絵」を描いた所で発表すればAIを改良する餌にされる。これは絵以外でも同様である。
質を高めても生産量を増やしても良い餌として利用される。
世に作品を出したことがあれば、「何年もかけて磨いた技術で何時間もかけて描いたお前の絵を、お前の人権を無視して勝手に使います、だからお前はもう用済みです」という状況なのである。
放置される違法な成り立ち
国によって法は異なるが、著作物をデータ解析に使うためには「研究目的であれば良い」という条件があったり、日本やアメリカのフェアユースでは「著作者の利益を不当に害さない」というような条件がある。
こちらは読めたら読んでいただけると面白い内容であるが、chatGPTの内部告発者である筆者が、このようなデータの集め方をした生成AIがアメリカのフェアユースに該当しないことを丁寧に示している。
ベルヌ条約という世界の大半の国が加盟している著作権の条約のスリーステップテストの条件も満たさない。
そもそもが著作権という人権の侵害で成り立つツールである。世界人権宣言の第二十七条から私は人権だと認識している。
しかし、この違法行為を全て暴いて「素晴らしい絵」を出力できるAIをすぐに全て止めることは現在の仕組みでは困難であり、制度の整備も特に日本ではあまり進んでいない。
責任の所在も曖昧である。
例えば「A氏が、アップロードした画像を企業Bが自由に利用できるという規約のサービスに他者の著作物をアップロードし、その画像を利用して企業Bが生成AIを作り、C氏が企業Bの生成AIを利用したことで著作者の利益が害される」ケースではA氏、企業B、C氏の誰の責任になるだろうか。
利益を害された著作者に突き止めることはできるだろうか?A氏もC氏なんの悪気もなく、なんの悪い事をしている意識もなく無邪気だったりもする。
不理解、味方がいないように感じられる
大企業が堂々と宣伝するもののことを普通の人は悪いものだと普通は思わない。いくら筋の通った問題提起をした所で、下手すれば変な陰謀論者のように捉えられてしまいかねない。
特に性格が悪いわけでも頭が悪いわけでもない普通の人たちが、誰かの財産を掠め取って作られた生成AIで無邪気に遊び、搾取に加担する。
すでに楽しく「AI活用」に勤しんでいれば、自分が使ったものに問題があると認めたくなくて理解を拒んだり、都合の良い認識を信じようとしたり、水を差すようなことを言う相手を攻撃したりもする。
また、問題を完全に理解した上で「困る人がいようが自分には関係ないし、みんなやっているし、ただのユーザーが責任を負うことはないだろうし、楽しいし便利だから使う」と開き直る人もいる。
ある属性の人に偏在するある属性の財産を搾取して分配しており、マジョリティは短期的にはそれで得をする。
盗んだ野菜を煮たスープが安売りされていて、農家は困っても農家以外は安くスープが飲めて嬉しいというようなものだ。より厄介なのはスープの作り方が複雑で著作権の侵害も物の盗難よりも直感的ではないため、構造のおかしさが理解されづらい点だ。
今の世界には大きな問題が多くあるが、他者の人権の軽視やルールの形骸化が引き起こすものは地続きである。しかし他のそういった問題に声をあげる人でも、おそらくは無理解から、平気でAI画像を利用したりもする。
美味しいスープがお気に入りになれば理解していないフリをし続けることも容易だ。
IPを扱う企業も著作者の味方であるとは限らない。自社のIPのみ保護して他から搾取したいというような方針であったり、経営層にとってはアーティストはコストカットできれば嬉しい存在であったりすることもある。
また、特に日本では国も味方ではない(問題視して下さる政治家もいらっしゃり応援したいが、全体的には味方ではないような状態になっている)。
これも問題を追っていない人には俄には信じてもらえないかもしれないが、日本よりもこの件に関して著作者が弱い国は私が知る限り主要国の中には無い。国の方針として生成AIを推進していて、極端なほどに規制が進まない。
良ければ署名活動を応援しましょう!
性的ディープフェイクのような明らかに規制するべきものにさえまだ規制がなく、「技術を規制するべきでは無い、しょうがない」という旨の発信をしていた党首の党が議席を増やした。
また、2026年4月から未管理著作物裁定制度というとても危険に見える制度が始まるのだが、生成AIへの著作物の利用推進を意図するものではないかと懸念を抱いている。ただの懸念で終わる事を祈るが、悪い想定が当たった場合状況はより悪くなるし国外のアーティストにも悪影響が及びかねず、日本の市民として申し訳ない。これも陰鬱な気持ちをもたらす。
人の悪意、下に見られる目線を浴びる
生成AIが世に出て以来、絵を描く人への悪意のこもった発言を目にすることも増えた。
もう用無しで要らないから云々、というようなことを嬉々として言うような連中がSNSを開けばいくらでもいる。
生成AIが存在する前から絵を描く人というものをなんとなくバカにするような目線はあった。感性で生きている、遊んでいるといったような。どちらもそんなことはないし、個人的には絵で食べられるような人はむしろ知性の高そうな傾向がある印象であるが、そういった偏見を持つような奴はいる。
「絵描きは視覚的にものを考えていて言語化能力が低く、生成AIを使いこなせないから生成AIが嫌いなんだ!」というような発信を目にした時は目が飛び出すかと思った。信じ難いだろうからソースを探した方が良いだろうか?晒しになってしまうだろうか。
イラストレーターがクライアントと仕事をすればやり取りは基本的に言語で行われるので、言語化ができないなどということがあるはずがない。本気で言っているのか悪意を持っていっているのかよく分からないラインであるが見下しは含まれている。
また、自称エンジニアや情報系の「絵描きは理解ができていないから生成AIを悪く言うのだ」というような文脈の発信もよくあった。内容は大体トンチンカンである。生成AIを是が非でも肯定したいから言っているのか、絵や制度について知識が乏しいことに自覚が無く、根拠の無い自信を持って言っているのか、複合型なのだろうか。
スキルを持っていない人は誰かのスキルの価値が減ずると嬉しかったり、単に追い詰められている相手を叩くのが楽しいタイプもいたりするのかもしれない。
絵を取り巻く環境の悪化
「他にない絵がある」ということの価値が、不当なやり方で既にかなり毀損されてしまった。また、マスターピースと呼ばれるAIユーザーに好まれている絵柄の特徴や、手が込んでいて凝っている絵が目を引き付ける力も大きく失われてしまった。
一度制作すれば何年も使えるという想定でお金を払ってもらったかつての仕事に対して、ちゃんと想定されていた価値を提供できているだろうかと嫌な気分になる。
仕事は既に減っている。
この先この状況がいつ解消するのか不透明である。
発表する環境も悪化している。
大量に生産されたそれらしいものに埋もれてしまい、特に新人が作品を誰かに見てもらうことは困難になっている。
それまでの実績がなくクオリティが高いとAIを疑われ誰も興味を持たない。
そして、作って発表すれば端からAIに利用されるリスクが付きまとう。
対応の難しさ
どのような行動を取るべきかもとても難しい。
絵を描いていきたいと思った時に生成AIを(特にメインの名義で)使ってしまうことは論外であろうと思われる。AIを使いたい所にとっては人間は要らないし、人間を使いたい所にとってはAIを混入させられるリスクがあるAI使用者は要らない。
AIを推進したいステークホルダー等は当然ポジティブに勧めるが騙されてはいけない。美術系の学校の授業にまでそういうのが出る。
作品を発表するかしないか、どういった画像保護やウォーターマークをどれくらい強くかけるべきかなど、確実な答えがなく後になってみないと最適解が分からないことまで考える必要と余計な手間と心配も生じている。
また、生成AIの問題を訴える発信をすることも簡単ではない。AIに規制が欲しいという声やAIに作品を使わないで欲しいという程度の発信に対してさえ、攻撃をする過激な人たちが存在する。
殺害予告等をされ活動停止に追い込まれた方もいる。
活動しているアカウントで発信された方に対しては作品をAIで改変した嫌がらせもある。作風やキャラクターを性的な物や暴力的な物に改変したり、他の人の作風と組み合わせてAIが描いた方が良いと言ってみたり向こうはやりたい放題である。
問題から離れることの困難さ
街に出ても家にいてインターネットを見てもテレビを観ても雑誌を読んでも人と話しても、どこにでも生成AIの話題やAI生成の画像が溢れており、このストレス源を完全に避けることが難しい。
美術系でも情報系でもない友人であれば安泰かと思いきや、私は本職がエンジニアであるためか「AIの使い方教えて」などと来られてげんなりする。
美術系の人も画像生成の話のみでなく、デジタルアートをする人は相当PCに詳しい部類でそういう扱いを受けるであろうため、同様のケースがあるだろうと思う。
日本が特に悪そうな状況だとはいえAI brosは世界中にいるため、頑張って脱出すれば全てめでたしという訳にもいかない。
しばらく嫌なことは忘れて絵でも描いているか、としようにもこの問題はずっと付き纏い続けてくる。
それでも死んでしまうのは損だと思う
「アーティストが死ねば訴えられる心配なくその人の作風を使える!」と喜ぶような連中が世の中には居るのである。
死ぬと向こうが喜ぶだけなので、死ぬよりはなるべく長生きしてアイツらを邪魔し続ける方が良いと思う。やられっぱなしよりは怒った方が良い。
少なくともここには味方がいるし、より精力的に情報発信をなさっている方々も対抗策を考えて下さっている方々も世の中にはいらっしゃるし、アンケートを取れば規制はすべきだという意見の方が多い。
一緒にやっていきたい。


>> 責任の所在も曖昧である。 大いに首を縦に振りました。 最近だと著作権ロンダリングなんて言葉も生まれましたね。 そのほとんどが検知出来ないと考えると、頭が痛くなるばかりです。