全国「◯◯前」鮨がアツい!「ご当地江戸前鮨」の魅力
江戸前鮨をもじって「◯◯前」鮨と言い始めたのは、どこが最初なのでしょうか??
個人的には北海道の「蝦夷前」が初めてなのではないかと思います。
僕は25歳の頃に友人が誕生日プレゼントで連れて行ってくれた「回らないお店」で江戸前鮨に惚れ込んで以来、19年ほど鮨を愛してきました。
薄給な頃でも鮨だけは定期的に食べて自分を鼓舞してきました。
たった一口で感動を与えてくれる鮨は偉大です。
そして、19年の間、東京だけでなく全国の鮨店を訪問しています。
10~15年ほど前の「鮨の激戦区」と言えば札幌、福岡、金沢でしたが、今や全国に激戦区が点在しています。
食べ歩く過程で「ご当地江戸前鮨」の魅力にハマりました。
「ご当地江戸前鮨」とは、ご当地の地魚を江戸前鮨の仕事=調理法で仕上げる郷土の江戸前鮨です。
もともと存在した鮮魚を用いた寿司とは異なる存在です。
僕は「これぞ日本各地を旅する目的になる!」と実感して、「ご当地江戸前鮨」の隠れた名店を探し続け、お店の応援のために発信し続けています。
この記事では、全国の魅力的な「◯◯前」鮨、「ご当地江戸前鮨」を紹介します。
最近では、魚にとどまらず、お米や酢、醤油などの原材料もご当地のものを使用する職人さんが増えていて本当に面白い。
さらに、地酒と合わせたら最高です。
ぜひとも鮨と酒のために旅をしてみてください!
※以下、店舗名の敬称を省略させていただくことをご了承ください
北海道の「ご当地江戸前鮨」(蝦夷前)
「蝦夷前」で知られる北海道は、「洗練されたご当地江戸前鮨」が全国でもトップクラスに多い土地です。「蝦夷前」という言葉が生まれた時から進歩し続けてきた結果でしょう。福岡県とともに日本ツートップの「鮨県」であるのは間違いありません(北海道は「県」ではなく「道」ですが、「道」は一つしかないし「鮨道」と書くと別の意味になりそうなので…)。
もともと知名度を得たお店としては、「鮨菜 和喜智」、「すし宮川」、「ひでたか」があります。
そして、近年腕を上げている中堅が「東雲」、「たな華」、「鮨こいせ」です。有名店がひしめき合う中、僕は「東雲」、「たな華」を「北海道で行くべきお店」として数年前から紹介しています。
また、旭川の「鮨みなと」や函館の「鮨おおね田」など、札幌以外の都市にも魅力的なお店があり、北海道の強さを実感します。
宮城県の「ご当地江戸前鮨」(伊達前)
宮城県ももともと鮨店が多い土地で、塩釜の「すし哲」や「亀喜寿司」といった上質な漁港寿司(仕事よりもフレッシュな魚主体で地魚を売りとする寿司)が強い土地でした。近年、洗練が増していて、「伊達前」を定義しようとする動きもあります。
そして、鮨店がひしめく仙台で突出した技術を誇るのが、「鮨 徳」です。
そして、宮城県でユニークなのが各地に点在しているところ。気仙沼で江戸前鮨の古典的な仕事を追求する「鮨おがた」、登米市でカツ丼も出す食堂からブレイクした「氏金寿司」、大崎市で昼だけ二代目が握る「寿し扇」といった街場の鮨店が奮闘されていたり、東京の名店で修行して故郷の加美町で独立した若き俊英が唯一無二の鮨を握る「笠聖」など、個性派ぞろいです。
「笠聖」は洗練された味覚に仕上げているので、今後飛躍されると推察します。
福島県の「ご当地江戸前鮨」(浜通り前)
福島県には全国から訪問すべき、卓越したご当地江戸前鮨のお店があります。「鮨いとう」さんは相馬からいわきの前に広がる常磐沖までの広範にわたる海域の魚を用いて、唯一無二の鮨を編み出しています。福島県の浜通りエリアの海の魅力を伝えてくれる貴重な一軒です。
茨城県の「ご当地江戸前鮨」(常磐前)
「常磐前」を謳う鮨店は一軒のみですが、その一軒がパワフルです。友部というマニアックな地にある「鮨 松榮」は常磐沖の上質な魚介を駆使するお店です。常磐沖の魚の美味しさを伝えてくれます。
新潟県の「ご当地江戸前鮨」(佐渡前!?)
「佐渡前」とは謳っていませんが、佐渡周辺の魚介類は抜群に美味しいです。今や知らない人がいないほどの名店となった「登喜和鮨」、「兄弟寿し」の親方が、漁業者や生産者と連携を取った証です。このツートップは全国の鮨職人と鮨好きに希望を与えてくれる存在です。
また、新潟の魚介の鮨と新潟の日本酒を見事にペアリングする「すしあらい」も鮮烈な印象を与えてくれます。全国でもトップクラスの「鮨と日本酒ペアリング」を実践するお店です。
モダンよりもクラシックな方向のお店が好きな方なら、地元のグルメな方のファンが多い「はつね寿司」も良店です。
富山県の「ご当地江戸前鮨」(富山前)
行政主導で「寿司といえば、富山」というキャンペーンを行い、認知度をグングンと高める富山県。行政のキャンペーンは表層的かつ短絡的な結果に終わることが多々あるところ、富山県の勢いと実現度は凄いと感じています。
中でも群を抜いて高い技術を誇るのが、高岡の「柳緑」です。移転前の「和香奈」の屋号の際に訪問したところ、記憶に残る鮨でした。
また、富山市内の「鮨 難波」も富山湾の地魚を漫喫させてくれる良店です。
石川県の「ご当地江戸前鮨」(能登前)
もともと鮨の激戦区だった金沢。結構な数のお店を訪問した結果、「木場谷」、「小桜」、「鮨いくた」が金沢で訪問すべき鮨店の筆頭です。
また、最近訪問した「飛」も名店「太平寿し」を継ぐお店で、甘味が強めのクラシックなシャリながら炊飯技術が高いので、途中でもたつくことなく楽しませてくれます。
【記事は鋭意執筆中】
福井県の「ご当地江戸前鮨」(福井前)
福井県は鮨だけでなく飲食店の数が少ない県ですが、「鮨 十兵衛」、「鮨処 海月」が存在感を放っています。「鮨 十兵衛」は長らく再訪したいものの今までに3回も振られていて、予約のハードルの高さが困りものです。長らく一強だったので人気が集中してしまっているのでしょう。今後、福井に鮨店が増えることを願います。
「鮨処 海月」
また、小浜市の「寿し島川」も訪問してみたいお店です。
愛知県の「ご当地江戸前鮨」(三河前)
愛知県、名古屋には東京都同じスタイルの江戸前鮨店が多いですが、地魚の個性を強く感じさせてくれるお店が、「鮨 功」です。味覚も洗練された方向性なので、リピートしています。
また、「鮨 功」ほどに三河湾の魚を前面に出していないものの、強い個性を持つお店が「すし 弥助」です。僕の訪問はかなり前になりますが、東京にあった名店「與兵衛」を継ぐ貴重なお店なので言及いたします。
京都府の「ご当地江戸前鮨」(宮津前!?)
京都は京都でも、宮津には「飯尾醸造」という銘酢蔵があり、各地の江戸前鮨の名店でお酢が使われています。蔵でお酢用の酒を造る極めて珍しい蔵で、【赤酢プレミアム】は伝統的な静置発酵で仕込み15年も熟成させる逸品。ポルトガル人職人のリカルド・コモリ親方が握る「西入る」では、宮津の魚と「飯尾醸造」のお酢の魅力を満喫できます。
参考情報:「飯尾醸造」と「世界シャリサミット」のレポート
岡山県の「ご当地江戸前鮨」
中国地方の中でも昔から洗練された鮨が強い土地、岡山県。名店「魚正山本淳」や老舗「松寿司」、予約難易度が最強クラスの「鮨 縁」など、技術と個性をあわせ持つ鮨店が多数存在します。
広島県の「ご当地江戸前鮨」
もともと江戸前鮨は強くない土地でしたが、ほぼ独学で一流店へと昇華させた「壮士」の成功を機に、良いお店が増えています。若き俊英の「鮨 松」、漁師との連携で特に地魚が強い「鮨 稲穂」など、魅力的なお店があります。そして、東京の名店「きよ田」出身の「吉鮨」はかつては「知る人ぞ知る名店」でしたが、近年は訪問する人が増えている印象です。
香川県の「ご当地江戸前鮨」
うどんが強すぎるためか鮨店は限られているものの、一軒のために旅行する価値がある鮨店が「鮨 舳」です。独学で卓越した技術を体得された親方の鮨は粋で質実剛健。地魚を用いて見事な江戸前鮨を握られます。香川の地にあって古典的な江戸前鮨の仕事を深化させているところが卓越の証。
愛媛県の「ご当地江戸前鮨」※今最もアツい県
ここ数年の鮨の加熱っぷりが凄い県です。一躍スターダムに躍り出た鮨と魚の変態「くるますし」の高平親方と、全国に知られる漁業者・藤本さんの連携はもはや芸術と言っても過言ではありません。
そして、高平親方と共に「愛媛食材研究会」を作った「鮨いの」の猪野親方、お弟子さんの「鮨たか山」、2色のシャリを操る「鮨かわなか」、伯方島に食通を集める「あか吉」など、アツい鮨店が増え続けています。
「いま、ご当地江戸前鮨と言えば、愛媛」と断言します。
「あか吉」さんと藤本さんは東京の一流料理人と定期的にコラボイベントを開催されています。島を起点にした非常に魅力的な活動で、今後はオーベルジュも稼働する予定です。
参考情報:「愛媛食材研究会」のレポート
福岡県の「ご当地江戸前鮨」
福岡県は北海道と並んで「ご当地江戸前鮨」が強い雄県です。レジェンド級の職人さんから若手職人さんまで幅広い年齢層の名職人がいるところが特長。一度訪問するとまた訪問したくなるのが福岡県です(鮨以外にも美味しいものが多数ある福岡県、北海道は本当に悩ましい土地です)。
レジェンド級の職人と言えば「きよ田」出身の「安春計(あすけ)」です。また、同じく東京の名店「奈可田」で修行された後に福岡で仲買人を経て独立された「鮨 田可尾」も福岡が誇る名店。
また、今や誰もが知るモダンな名店としては、「鮨さかい」、「近松」、「菊鮨」があります。
そして、福岡で職人を多く輩出する「 やま中」で修行をされた親方の「鮨 香坂」、名門と呼ばれる「吉冨寿し」出身で24歳の時に独立した実力派の「鮨処 石ばし」、東京の名店「日本橋 蛎殻町 すぎた」出身で一躍予約困難店となった「枯淡」、老舗の寿司割烹「河庄」で修行された「鮨 幸仁」など、さまざまな系譜から腕利きの職人さんたちが鮨シーンを盛り上げています。
また、北九州には「二鶴」と言う非常に素晴らしい江戸前鮨店もあります。
北九州と言えば「天寿し」が編み出した「北九州前」も有名です(江戸前鮨の仕事よりも、鮮度と味付けなどの足し算を意識する方向性の創作寿司です)。
そして、唐津の鮨店も紹介します。唐津は佐賀県ですが、文化的に福岡の方が近いので、こちらの項目で。唐津と言えば「つく田」が有名ですが、総合的に考えると「鮨 笑咲喜(えさき)」がオススメです。こちらは唐津産に絞って提供する、魅力的な街場の優良店です。
長崎県の「ご当地江戸前鮨」
長崎県は長らく「江戸前鮨不毛地帯」でしたが、一軒のお店がブレイクスルーを果たしそうなので紹介します。「鮨政」あらため「鮨 白雲」。長崎県の魚介類の美味しさを、江戸前鮨の仕事で伝えてくれる「ご当地江戸前鮨」の期待の新星です。こちらの親方も日本酒ペアリングの技術が非常に高い方です。
熊本県の「ご当地江戸前鮨」
「鮨 仙八」が福岡に移転された後、熊本で鮨好きが訪問すべきお店は「鮨 中村」と、人吉の「すしみむろ」です。ともに親方のお人柄が良く、美味しくて楽しい時間を過ごせる優良店です。
鹿児島県の「ご当地江戸前鮨」
唯一無二のキャラクターと仕入れを誇る名店が「鮨匠のむら」です。型破りな親方が放つ鮨はトークと相まってエンタメ性があり、特に蝦蛄と海胆の鮨は記憶に残る美味しさです。
沖縄県の「ご当地江戸前鮨」
沖縄県北部の本部町のペンションなのに江戸前鮨を出して、しかも本山葵を仕入れるクレイジーなお店が「ペンションびせざき」です。「寿司迎人」を名乗る沖縄出身なのに名前が熊本な熊本やすみ親方が唯一無二のおもてなしをしてくれます。
「海なし県」もアツい!
「◯◯前」と聞くと海あり県を前提に考えがちですが、海がない県でも美味しくて個性的な江戸前鮨を食べられるようになっています。魚の手当、物流、職人さんの技術とセンスが合わさって鮨をさらなる高みへと昇華させています。
長野県の「ご当地江戸前鮨」
長野県の「ご当地江戸前鮨」としては、長野市の「すし崇」さんが突出しています。僕がお伺いした頃から結構変えられたと聞いているので、再訪せねばと思っているお店です。
岐阜県の「ご当地江戸前鮨」
岐阜県は郷土料理が非常に魅力的な土地ですが、江戸前鮨と言えば大垣の「寿司 松岡」が鮮烈な個性を放っています。
滋賀県の「ご当地江戸前鮨」
滋賀県は発酵、淡水魚、ジビエとグルメならば胸が踊る要素が多い県。長浜の「京極寿司」は街場に馴染む老舗で、当代親方が琵琶湖の恵み「湖魚(こぎょ)」を用いたご当地江戸前鮨を握っています。
奈良県の「ご当地江戸前鮨」
最後に紹介するのが、奈良県橿原の「鮨かわしま」です。江戸前鮨と奈良の郷土料理を融合する試みをする職人さんで、小鰭の新子で柿の葉寿司を作るなど非凡な鮨を編み出しています。
まとめ:鮨は旅の目的になる!
いかがでしたでしょうか?
ご当地江戸前鮨のバリエーションの凄さを実感いただけたならば望外の喜びです。
鮨は間違いなく旅の目的となり、旅の満足感を大きく高めてくれます。
お米と魚という和食の根源的な食材を用いて複雑な味覚を生み出し、感動へと導いてくれる鮨は日本が世界に誇る素晴らしい文化です。
ぜひとも鮨のために旅に出てみてください!
きっと、「日本に生まれて良かった!」と心から感じる良い旅になりますので。
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