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インタビューWithサーヴァント+α

10,225 character(s)20 mins

こんにちは。皆様ご健勝でしょうか。
気を使うことも多い日常ではごさいますが、よろしければ皆様の暇潰しになればと思います。

n番煎じの内容で特に変わったこともありません。どっかで読んだような内容だと思います。なんだよこんなもんと思われるのであれば、ごめんなさい。
自分が楽しくて書いただけです。癒しでした…。

HA空間で凛がみんなに話を聞きに行くだけのどうってことない内容です。
エロくもドキドキもしないです。
凛が渡したペーパーナイフですが、この後騒動を起こします。やっぱりね。
でもここでは何も起こりません。
続きを書くのかどうかは微妙です。

ちなみにこれ、「パンツを買いに」の話の一つです。シリーズ化はしてません。
ペーパーナイフのネタとは別に「私のエプロン」というネタもありますが、これはR-18です。ふふふふふ。

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ある麗らかな日、凛はかねてからの疑問を解消すべく、あるアパートに向かいました。己のサーヴァントに会うためです。お土産だって用意しました。食べ物ではありません。家事万能の男ですから、食べ物なんて持って行こうものなら何を言われるかわかりません。どうせ”さすが我がマスター。腕が上がったな、だがここをこうすればもっとよくなるぞ”
そんな小言は聞きたくありません。が、少し位は見栄を張りたいものです。凛は地下室から出てきたペーパーナイフを手に、目的地へ歩いて行ったのです。


「こんにちは、元気?ちゃんと人間みたいに暮らしてる?」
「凛」
迎えたのは、エプロン姿も凛々しい屈強な男です。凛はにっこり笑って言いました。男は、己のマスターのご機嫌良さそうな様子に眉間のシワが1つ減りました。それを見てマスターは更ににっこり。少しは人生楽しんでもいいと思うのです、今くらいは。
「ちょっと話があるのだけれど、いいかしら?」
「散らかっているが、良ければ。用があるなら呼び出せばいいものを、すぐに駆けつけた」
「どうかしら?私には滅多に姿を見せないじゃない?衛宮君には何度か姿を見せたみたいね」
「致し方なくだ」
背中を向けている凛にも聞こえるようにため息をつきます。全くいい加減諦めればいいのに、と凛は思いました。士郎は、あなたには絶対にならない。どんなことがあっても、私が道を正すと決心しているのだから、嫌味も当て擦りもいらないのに、心配性なんだから。
でも、それが凛のサーヴァントでした。あらゆる可能性の中の最悪も最上も予測して対応する、アーチャーのスキルの1つは勝つために磨かれ捲って今やオカンレベルにまでなりました。ホント、しょうがないわ。
「はいはい、そうやって私に姿を見せないから、こうして来たんじゃない。久しぶりの対面にもっと喜べば?素直じゃないんだから」
「君と会うことが喜ばしいとも実感はできかねるが、厄介な事に巻き込まれていないのであれば上出来だな」
「失礼ね、私がいつそんな……と」
相手の口車に乗って口論になり、本当の目的を見失ってはいけません。アーチャーのペースに嵌まったら、なかなか自分のペースを取り戻せません。ここは、話題を変えるべきです。そう、前の私とは違うんだからねっ!
「ちょっと聞きたいことがあって」
「何だ」
アーチャーが真剣な目で凛を見つめました。一瞬だけ心臓の鼓動が跳ね、すぐに元に戻りました。そう、前とは違うのです。あの頃は若かったわ……。
「どうしてランサーと同居してるの?」
かろうじて同棲とは言いませんでした。危ない危ない。
そう、凛には、何故自分にすら頼らない、この頼りないんだか頼れるんだか分かりにくいサーヴァントが、あの犬猿の仲だったランサーと同棲もとい同居しているのか理解できなかったのです。今日アーチャーを訪ねたのも、それを聞くためでした。
「何で同居しているかだと?………何故だったかな。思い出せない。思い出せないのであれば大した事ではないのであろう。あれが好きかだと?考えた事もない。
……む、ならば何故同居しているのか、と。む、確かに、不思議だな。私も知りたい。自分の事なのに他人事のようだと?まあ、あれとのことになるとどうも、曖昧と言うか、疑問が浮かばないと言うか。何か言おうとすると誤魔化されると言うか…」
そりゃあんた、しゃべる前に口を塞がれて、その後は考えられないような状態にさせられたりしてるからでしょう。
凛の視線がとても生ぬるくなりました。
「何だ、その、君が気になるならランサーには教会に帰ってもらえばいいことで、それはいつでも、…え?やらなくていい?なら何故そんな目で私を見るのだ?恐らくランサーは屋根と壁と食事があるからここにいるだけだ。特に意味はないだろう。
もちろん、立場は対等だ。ランサーは稼いでくるし、私だっていつも家にいるわけではない。それなりに忙しくしている。主夫みたいだなどと言われる筋合いはない。お互い出来ることはしているとも。共同生活しているぞ、ちゃんと」
そうでしょうね。ええ。
「愛情が無いのに同棲するのはどうかと思うと言われてもだな、私は、ランサーにそう言った気持ちを向けたことは一度もないし、向こうも望んでいなさそうなのだが。というかだな、人の事情に踏み入るのは、あまりよろしくない。君の場合、人が良すぎるから余計な苦労を背負い込む。そうなる前に手を引くことを覚えたまえ」
ランサーがアーチャーの体目当てでこの面倒くさい男に付きまとうとは全く思えません。
アーチャーは何を誤魔化そうとしているんだろう、凛は興味が湧いてきました。
だってもしかしたら、誰かを好きになって、この生活を楽しく思っているから、ランサーと一緒に暮らしているのかもしれないからです。アーチャーにとって、楽しく暮らすと言うことがどれだけ難しい事か、アーチャーのマスターである凛にはよくわかっていました。ですから、却っていい方に興味が湧いたと言いますか、恋ばな聞きたくなったのです。
「同居のきっかけ……?それは、まあ、何となくだ。一度ランサーのテントに行ったことがあってな、その堕落した暮らしに思わず黙っていられなくて。考えてみれば、器用に何でもこなすが、あの男基本王子様で召し使いが何十人もいる城に住んでいたんだ。サーヴァントになったからと言ってその習慣が変わるわけでもなく、……そのわりに何でも自分でやると?いやいや、騎士としての嗜み、野戦に強いことと生活をきちんとすることは別だぞ。大体、あの男には常に従者が付き添っていたではないか。だらしなくて当然と言えば当然なんだ」
よく知っていること。凛はちょっと呆れ気味でした。聞けば聞くほどこの男が昔からランサーの事を調べて知っていたことがわかります。きっとセイバーにもやたら詳しいに違いありません。記憶が無いとかなんとか言い訳しそうですが。
「ランサーの暮らしぶりを見てられなくて家に招いたの?」
ドストレートに凛が聞きます。アーチャーが眉を顰めました。
「そういう訳では……ああ、いや、そうか?コホン、それは偏に冬木の為だ。何をするかわからんし、実際既に釣竿の盗難はあの男のせいだとわかっている。被害者はそれを頑なに否定し、譲渡したと主張しているが、被疑者に確認したのだ。貸してくれって言ったらくれた、と。これは脅しによる強奪だ。町を守るものとしては看過できんし、あの男には監視役が必要かと思ってな」
いえいえ、ランサーはあなたよりずっと馴染んで暮らしているわよ。凛は心のなかで何度目かのツッコミをしました。この町の出身だったあなたよりもね。胸がチクりとしたので、アーチャーの言い訳に集中しました。何かおかしいのよね。
「監視役はカレンが適任だと思うけど?」
「ランサーに逃げ回られて捕まえられる人間はいない。カレンはランサーを縛ることは出来ても捕らえる事は出来んだろう。同じサーヴァントの方が何かと便利だ。もちろん、大きな戦闘をすることは出来ん。そこもきちんと押さえているぞ。つまり?あー、つまりだ、町をパトロールしながらランサーも監視下に置けるんだ、同居と言うか、監視にはうってつけだろう。ん?それなのに理由が曖昧だと言ったのは何故かだと?いや、うむ、何度か話をだな、しようとしたのだ。それなのに気づくと有耶無耶になっていてな。………むう、なぜだ。ん?奴の交渉術に負ける程度の心眼なの、だと?いやいや、そんな事はない。結局は、奴が物理で黙らせると言うかだな、黙らされると言うか、………何だその、うまく言えんな」
そうでしょうとも。ええ、よおくわかったわ。物理で黙らせる、ねぇ。ものは言い様だわ。ホント。
「楽しそうね、アーチャー」
にっこり笑って凛は言いました。それを見てアーチャーの眉が更に顰められました。
「楽しいなどと考えた事もない。常に戦いだ」
何の戦いよ。ここはつっこまない方が良いと判断した凛は、話題を変えることにしました。
「これ、あなたにお土産よ。うちの地下室から持ってきた物だけど」
「ペーパーナイフ?」
「ええ、良かったら解析してもいいのよ」
凛がテーブルに置いたペーパーナイフは、柄に細かい装飾があるものの、薄くて小さく、刃と柄が一体になった、特に目立った所の無い普通の物でした。
「特に魔術礼装という事もないな。どうしてこれを?」
アーチャーが不思議そうに凛に聞きました。
「何もない物がこれだけだったのよ」
「……なるほど。それは良かった」
凛の家は魔術師の家系です。その辺に妙な魔術道具やら礼装やらがきちんと整理されずに転がっていたりします。アーチャーがある程度きれいにしましたが、それは人の居住するところまで、魔術師の工房など他人が触れる物ではありません。何があるか分からないからです。凛が何もない物を持ってきたと言うのなら、魔術道具ではないでしょう。アーチャーはつい習慣で解析を行いました。確かに、間違いなく、魔術を帯びていません。
「ありがたくもらっておく。それで、凛、用件は済んだのか?」
済んだのでしょうか、済んでないのでしょうか、凛にもまだ釈然としません。何故同居しているのか。アーチャーに聞いても結論は出ないのかも知れません。だってこの男、唐変木ですから。
「そうね、今は。帰るわ、美味しい紅茶ありがとう。さすがね」
そつなく来客をもてなす腕もまた、さすがです。どうしてこれが恋愛やら楽しむやらに結び付かないのでしょう。彼は”嬉しい”と表現するのです。”喜んでもらえて嬉しい”と。凛はどうしても、この、どうにもならない成れの果てを”己を殺す”以外で楽しませたいと思うのでした。


「何だよ嬢ちゃん、今日もべっぴんだな。で、何か買ってくかい?」
アーチャーのアパートを出て向かったのは、深山の商店街です。今日は花屋にいました。本当に器用な男です。
「花を買いに来たんじゃないの。話があるのよ」
「おお、そうか。美人の頼みは断れねぇなあ。ここでの仕事は後一時間ほどあるが、どうする?」
「公園で待ってるわ。あまり待たせないでね」
「こりゃ参った。すぐにでも行ってやりたくなるわな。ちーとばかり待たせるが、終わったら最速で向かうぜ」
ええ、あんまりおかしな事はしないでもらいたいけど。凛は曖昧に笑ってウィンクするランサーの下を離れました。
一時間あるなら、と凛は骨董品屋を訪れました。
「これは珍しい。何でしょう?今のところ怪しげな出物はありませんが」
メガネを掛けた髪の長い美人が応対してくれます。
「いいの、骨董を探しに来たんじゃないのよ、話を聞きたいの。ほんのちょっとなんだけど、いいかしら?」
ライダーはちら、と奥を見て、それから優雅に頷きました。
「十分ほどなら。話と言うのは?」
「アーチャーとランサーの事なんだけど」
「彼らが、何か?問題は起こしてないと思っていましたが」
「違うの、いつ仲良くなったのかしらって」
「ああ、……確かにあのラブラブっぷりは見ているものを脱力させます。はた迷惑な喧嘩が無いので放置していますが、そうですね、いつから、と。
アーチャーが町で見かけられるようになったのは最近です。彼らが目に見える形で絡むようになったのは、それからですね。ただ、どうもその前からランサーはアーチャーと付き合いがあったようです。どういう縁かは知りませんが。私はさほど興味がありませんでしたから、あの二人に関してそう詳しくは無いです。知っていることだけでも、と言われても。一度だけ、夜の町でアーチャーがパトロールしているところに会いました。何をしていたかですか?ビルの上で何かを見ていました。多分、あれは、シロウを見ていたのでしょう。アーチャーがパトロールしていると、夜大橋を使う事が出来ませんでしたから、私は引き返しました。その時、ちらっと青い影が見えた気がします。それがランサーかどうかはよくわかりません。その時、……そうですね、アーチャーは警戒をしていなかったように見えました。となると、あの時にはもう親しくしていたのでしょうか」
アーチャーが町で見かけるようになる前に既に仲良くしていた、でも、あれ、アーチャーは釣竿の事を何とか言っていたような。
「釣りはランサーがかなり前からしていましたね。もちろん、初めはランサーだけで。今でもよくやっているようですよ、釣りが好きなんですね、彼は。その頃はまだアーチャーの姿は見られませんでした」
「と言うことは、ランサーが釣りを始めてからアーチャーが町で見かけるようになる間に何かあったと考えるべきかしら?」
「どうなんでしょうか。私がどう考えてるかですか?彼らがどういう関係でもさくらに害がなければそれで、何をしていても構いません。ああ、そうですね、気になるのですね。あなたも色々大変ですね。私自身は、何もないからこそ、何かになってしまったように見えているのだと思っています」
冷静なライダーの表情と、当然のような口調に凛は少し困惑してきました。アーチャーはああ言っていたけれども、実はアーチャーの方もノリノリだったということでしょうか。確かに、今はそうですが、初めから?ここでも今一釈然としません。
骨董屋を出て公園に向かおうとしている時に、八百屋で真剣にキャベツを吟味している男子高校生を見つけました。あの成の果ての元、衛宮士郎です。凛は士郎をからかうことが大好きです。間の”からかう”は無くても通じるかもしれませんが、この空間ではそれをはっきり言うことは出来ません。あくまでも全ての可能性を内包した空間なので。なので、他のルートよりかなり大きめの好意を持って、(悪い)笑顔で挨拶しました。
「こんにちは、衛宮君。何してるの?今日の夕飯の買い物?主婦が板に付いてるわね」
「と、遠坂。なんだよ、その主婦って。今はそういう男女差別いけないんだぞ」
「あら、差別なんてしてないわよ、ただ事実を言ってるだけ。それで、今日は何人でご飯食べるの?」
「え、あ、いや、セイバー、藤ねえ、さくら、俺、それに、そうそうランサーが久しぶりに来るって言ってたな」
「え、どこでその話をしたの?」
「え?さっき花屋の店先でご婦人の対応してたときに声かけられたんだ。”今日飯奢ってくれよ、庭の掃除すっからよ”って」
「どういう事よ。そんなのおかしいじゃない」
「は?ランサーたまに家に飯をたかりに来るぞ。そんなに珍しくない」
だってランサーの家には目の前の男子高校生のスキルを磨きに磨いたオカンサーヴァントがいるんです。それなのにわざわざ衛宮家にご飯をたかりに来るなんて、信じられません。凛はアーチャーとランサーの同棲を疑い始めました。まさか、本当にランサーはアーチャーの体目当てなのかしら?けれどアーチャーの証言から体目当てと言う単語はこれっぽっちも浮かびませんでした。どっちかって言うと、バカップル、ラブラブ好き好きカップルに思えたのです。
まさか、アーチャーだけがぞっこんて事は……?
それはそれで、アーチャーが幸せでランサーがアーチャーを騙し続ければ丸く収まります。あのランサーがどこまでアーチャーを騙していられるか、チキンレースのようですが。
「信じられないわ……」
「ランサーを家に入れるのがか?まあ、最初はちょっと警戒したけどさ……」
ちょっと待って、こいつ照れてる。凛は、己を一度殺している相手にこうまで無防備に対応する士郎が、未だに信じられません。ちょっと警戒。2度目に殺されそうになってセイバーを呼んだのに、ちょっと警戒。ああ、そうだった、味方になると申し出られて、平気で背中を向けるような阿保だった。知ってたけど、知ってたけど!
凛はこれからの前途多難を思うと頭が痛くなりました。けれど、平行世界の私みたいに、こいつを問題児のまま放り出すつもりはないわ。凛は更に気を引き締めました。
「まあ、いいわ。そういうところが士郎の良いところでもあり、悪いところでもあるけれどもね。でも、そうね、ランサーが士郎の家でご飯を食べることが珍しくない、てのは驚きだわ」
「ランサーさ、時々釣った魚をくれるんだよ。そのついでだな」
なるほど。釣った魚を渡して料理してもらうのが目的なのね。凛はそこについては合点がいきましたが、それでもまだ釈然としません。だって、絶対この男子高校生より美味しい料理を作るわ、あの唐変木。なのにランサーが衛宮邸を選ぶのは何故かしら。
「余って困るってさ、釣れ過ぎるんだって言ってたな」
凛は士郎の顔を改めて見つめました。
「な、何だよ」
赤く動揺した表情が堪らなく(愛おしい)面白いです。凛は笑いを堪えて冷静に答えました。
「何でもないわ。あんたって、本当、全然変わらないのね、いくつになっても」
「遠坂はそんなに長い付き合いじゃないだろ!何を知ってんだよ。全く」
動揺したまま男子高校生は叫びます。凛はそれを背中で聞きながら、公園で作戦を練ろうと思いました。
どうしても、自分が不快になったとしても、それでも、他人だけを思いやるあの唐変木を何がなんでも幸せにしてみたい。バカみたいに他人から疎まれて蔑まれて恨まれても、それでも他人の為だけに生きているような、そんなバカ野郎を幸せにしてみたい。
「ランサーはどこまで出来るのかしら」
お手並み拝見と言うところです。


「よ、待たせたな」
私服のランサーが手を上げて凛に挨拶をしながら公園に入って来ました。凛は笑顔だけで答えます。ランサーは遠慮なしに隣に座り込みました。
「で、話って何だよ」
笑顔が眩しいです。ランサーは伝説に残る程の色男です。それに、凛はランサーが気に入っていました。ランサーのマスターだったら勝ち抜けられたかもしれないと、今でも思っています。作戦次第では恐らく、相性からもかなり良かったと思います。性格的に問題がありすぎる金ぴかに次いで相性抜群でしょう。とても惜しい事をしました。お金がないのが悪いのよ。遺物を用意しなかった自分を責めても今は何の意味もありません。
「あなた、アーチャーが好きなの?」
まるで160キロオーバーのストレートを投げる豪速球ピッチャーのように聞きました。ランサーはそれに目をしぱしぱさせています。考えもしなかった質問だったのでしょう。
「どうしたどうした。嬢ちゃん、何だってそんな事聞くんだよ?」
「あなた達が同棲してなければこんな質問しないわよ。それで、答えは?」
「オレは嬢ちゃんが好きだけどな。あの赤い野郎の事をそんな風に思ったことは、………うーん、………うん?……うーん」
凛はランサーをずーっと見て観察していました。考えている風で特に考えてはいなさそうです。どうやら言葉を選んでいるみたいでした。ランサーは意外に繊細な心配りが出来るのです。まあ、相当珍しい事ではありますが。あのアーチャーがこの男に珍しい事をさせているのだ、と思うとなにやら不思議でした。
気遣いの出来るランサーと、ランサーに誤魔化されて平気なアーチャー。凛は考えれば考えるほどバカバカしくなってきました。
なるほど、ライダーが言っていたラブラブっぷりのはた迷惑さが見えてきたのです。
「なあ、オレはそんなに上手く言葉を選べねぇ。あんたにゃどうかしてると思うような話し方になるが、それでも聞くかい?」
そもそも話を聞きに来たのに、聞かないと言う選択肢はどこから来たのでしょう。凛は即答しました。
「もちろん、聞くわよ」
「わかった。後悔するなよ。んじゃ、順を追って話させてもらうよ。そうだな、まずあいつに興味を持ったのはだな、あいつが夜邪魔して大橋が通れなかったせいだ。文句を言いに言ったんだが、何だかんだ理由付けて人の話を聞きゃしねぇ。だからよ、あいつのピーをピーピーピーピーして押し倒してよ、ピーピーーーーーーーー、…………」
10分後、凛がランサーの前から逃げたいと100回位思った頃、漸く話は終わりました。
「……って訳でな、嬢ちゃんどうした。顔真っ赤だぞ。具合でも悪いのかい?」
ランサーが額に手を当てようとしたので、凛は立ち上がりました。
「や、やややや止めてよね、この変態!!!触らないで!」
「んだよ、具合悪そうだったからよ、わかったわかった、触らねぇよ。だから後悔するなよって言ったろうが」
「あ、あんたが言ったのは、単なる下ネタよね!ゲスい下ネタよ!」
「ああ?」
ランサーがタバコを咥えながら口の端で笑います。
「聞きたいって言ったのはそっちだろうが。ま、あいつとの事を話せば他に言うことねぇからな」
ニヤニヤといやらしく笑いながらランサーはタバコに火を着け、ふーっと吐きました。ふと、その煙を見て凛は正気に戻りました。
あいつとの事を話せば他に言うことはないですって?ならやっぱりランサーはアーチャーの体目当てなの?
凛の頭の中にアーチャーが浮かびます。戦闘礼装を着ているときのアーチャーを見れば想像ができますが、アーチャーは屈強な男でムッキムキなマッチョです。時々大元の男子高校生が自分の細さにがっかりするくらいにマッチョです。どこにランサーの言うエロさがあるのでしょう。理解不能でした。それに、まだ一つだけ確認しなくてはなりません。
「私の質問に答えて。あなた、アーチャーが好きなの?」
ふー、と、タバコの煙が空に立ち上りました。
「………どうなのかね、オレにも分からん。オレはもともと誰がどうしようとそいつの選んだ道をオレがどうにかしようなんてこれっぽっちも思わねぇ。ただな、あんたと同じだ。不思議なもんだ。あいつを一人にしちゃいけねぇ、と思ってるだけだよ」
凛はランサーの横顔をじっと見つめました。夕日に赤く染まるランサーの表情は、満足そうに笑っているようにも見えました。
「やっぱりあなた、いい人ね」
「さっきまで近寄るな、変態!とか言ってた嬢ちゃんとは思えねぇな。全く、あんたみたいないい女にいつまでも心配かけるようじゃ、男として一人前とは言えねぇよなあ」
「ふふ、人のこと言えないくせに。ねぇ、ランサー」
「何だ?美人の頼みは断らねぇぞ」
「アーチャーが少しでも楽しいと感じてくれたら、それで私は満足。それがランサー、あなただとしても、いいえ、あなたなのだとしたら、私は協力を惜しまないわよ」
「そりゃありがたいねぇ。美人の力添えありってわけだ」
「それでね、ランサー。あなた、アーチャーの体目当てなのよね?アーチャーはそれで満足だと思うの。むしろ恋愛問題にしたら逃げそうだもの。だから、あなたの戦略は正しいわ。でもね、私それでは嫌なの」
ランサーは表情を崩しません。微笑んで凛を見ています。
「どうしてだ?」
「アーチャーはあなたの事が好きだからよ」
「あいつとの事を誓えと言うのか」
ランサーが真剣な眼差しで凛を見ました。ケルト人にとって誓い”ゲッシュ”と言うのはとても神聖なものです。命を脅かそうとも何があっても破れない約束なのですから。凛はその言葉を出してきたランサーに驚かされました。そこまで言うつもりはなかったからです。
「ランサー、あなた、とんでもなく真剣じゃないの」
「ガリア戦記に曰く、ガリアの戦士は男との同衾を名誉と共にとても大事にしたと書いてあるだろ?」
「あなたは大陸のケルトとは違うじゃない。でも、まあいいわ、そういう事にしておいてあげる。恋愛感情がなくても上手く騙してくれていれば良かったのだけれど、それも心配なさそうで良かったわ。じゃ、これからもよろしくね、ランサー」
凛は清々しくベンチから立ち、公園を出て行こうと歩き始めました。公園の出口でふと振り返り、ランサーにこう言いました。
「今日、あなた夕飯を衛宮君の家でとるのよね。なら、代わりに私がアーチャーのご飯食べて行ってもいいかしら?」
「え、あいつ今日は作らねぇって言ってたぞ!嘘だろ、嬢ちゃん!」
「私が頼めばすぐ作ってくれるわよ、どんな事情があってもね。残念ね、ランサー。あなたはまだそこまでじゃないのよ」
ショックと絶望を顔に貼り付けたランサーを公園に置き去りにして、凛は再びアーチャーのアパートへ向かいました。唐変木ご飯を食べるためです。
きっと。と凛は思いました。きっと明日のランサーの誕生日には、アーチャーご謹製の豪華ディナーが並ぶわ。今から少しだけつまみ食いしたってバチは当たらないわよ。ええ。楽しみにしてるといいわ、ランサー。胃薬に相談して溺死すればいいのよ。
凛の足取りは大層軽く、気持ちはウキウキでした。結局、本人達はどうか分かりませんが、端から見たらラブラブバカップルでした。
凛が心配することもなく、きっとランサーは上手いことアーチャーを乗りこなすだろう、そう思えたのでした。
「あら、はしたない」
アーチャーを乗りこなすとは。まあ、あれだけ下ネタ聞かされたんですから、ちょっとは洩れても仕方ありません。凛は久々に鼻歌を歌いながら、己のサーヴァントに再び会いに向かいました。

Comments

  • ゆんこ
    July 18, 2023
  • ねいねい
    May 1, 2020
  • さんたろ

    ペーパーナイフの続き・私のエプロン…。いつかお話を読めるのでしょうか?ふふ、楽しみ…。

    April 12, 2020
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