パンツを買いに
連日投稿
モブ視点です。
HA空間です。
デリヘルさんのシリーズにしようと思ったけど、それだとこの話番外編になっちゃうし、趣旨から外れるんで、別の短編にしました。
単純に萌えを詰めただけ。
エスカレーターに縦に乗るの、萌えるんですよ。思い付いたら吐き出したくてたまらず、すごい勢いで書きました。
シリーズモノを上げる前から書きたくて書きたくて。
瞬発力が命、中身は特にありません。
私がこのシチュエーションを好きってだけ。
趣味全開のネタ話です。
気に入っていただけた方、趣味合いますね。好き。
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その前日、ランサーは一日中考えた。頭が痛くなるくらい考えた。考えたが、結論はどう転んでも一つだった。これ以上のシミュレーションはやっても無駄だ。第一考えているだけで行動しないのは性に合わない。
「よし」
ランサーは立ち上がった。
この日梅雨には珍しく、とても天気の良い日だったので、アーチャーはご機嫌だった。恐らく本人は気づいて無いだろうが、鼻歌を歌っている。
切り出すなら今しかない。
「おい、アーチャー」
「何だね」
今奴の頭の中はいかに効率よく家事を片付けていくかでいっぱいだろう。本当にちょっぴりの罪悪感と、だがどうしようもない欲望がランサーに次のセリフを言わせた。
「パンツ買いに行くぞ」
「…………………………は?」
「だからよ、お前のパンツ、買うんだよ」
「………………………なぜだね」
先ほどまで薄めだったアーチャーの眉間のシワが増えたが、ランサーは一度口に出してしまったものを引っ込める訳にはいかなかった。
「手触りが悪いから」
「…………………………………………………………………………………………」
アーチャーの表情が険しいまま固まる。
「オレ一人で買いに行ってもいいんだけどよ、どれが手触りいいか聞き回ったら、お前嫌がるじゃねぇか。だからよ、お前が選べ。オレが金出すから」
「……………………………………私が何故嫌がる、と、わかる、……のかね」
「あ?だってよ、前にお前にエプロン買ったらえっらい怒っただろうが」
アーチャーの目が虚ろになった。
「………………それは、貴様が、裸に着けるのに着心地がいいものをくれと言ったからではないか」
棒読みだった。
「用途を正確に言った方が正しい買い物が出来るだろーが」
「その上、エプロンが小さい、相手はオレと同じ位の背丈の男だから、と大声で」
アーチャーの声が小さくなる。ランサーはそんなアーチャーに切々と訴えた。
「サイズよかったろ?お前、すっげえエロくってよ。それに手触り最っ高によかった!胸の形もバッチリだったしよ。最後に風呂場で濡れたエプロンがまとわりついたお前がよー、マジやらしかったよなあ」
「……………I am the born of………」
「へ?」
「爆ぜろ、螺旋剣!」
その日、快晴の空に青い人が飛んで消えた。
「痛ってーじゃねーか!!」
「早いお帰りだな」
「やかましい!オレだったから死ななかっただけだからな!フツーに一瞬座が見えたぞ!」
「帰ればよかったではないか。その世迷い言を二度と口にしなくて済むぞ」
「ふざけんな!オレは言い続けるぞ!お前が!パンツを!買いに!行かない!限り!」
「たわけ。どうしてそんなに拘るんだ?」
「お前のゴワゴワしたパンツがムードに欠ける」
「………………君のノーパンよりましだと思うが…………」
「こう、せっかくお前が程よく蕩けてよ、さあ、どうだ、やる気漲ってんだろ、て時によ、ゴワッとモサッとしてよ、こう、生地が手に絡んでくんだよ。そりゃな、あのトランクスっての、下から覗けんのはいいけどよ、こう、胡座かいた時とか、チラ見えすんのもいいんだけどよ、正直それより手触りが欲しいんだよ。だからよ、ほら、ツルツルした生地でお前の形がくっっきりわかるようなの欲しいんだよ」
「………………………………………………くっっきり」
「そう、クッッッッキリ」
ランサーが真剣に頷き、赤い瞳を真っ直ぐ寄越す。アーチャーは半分魂が抜けかけていた。頭の中はエロの十段活用が渦巻いている。そのうちエロが文字として認識できなくなる、ゲシュタルト崩壊が始まるに違いない。このままでは、多分。
眉間のシワをさらに深めながら、アーチャーは諦めて目を瞑った。
「わかった。君の言うとおり、パンツを買いに行こう」
螺旋剣が爆ぜようが、固有結界で瀕死になろうが、望む結果がそこにあれば、男の本懐を遂げられると言うものだ。不可能を可能にしてこそ、英雄。ランサーは間違いなく英雄だった。
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モブ子1の証言。
その日は新都に買い物に行ったんです。バスに乗ろうとしたら、すごくカッコいい外国人の男の人が二人いて、思わず見ちゃいました。背が高いから天井に頭が着きそうだったし、つり革を上から持つ感じが私的には萌えポイントで。横を通るときに、大きな体を端に寄せて「どうぞお嬢さん」なんて言われちゃったからもう、ガン見ですよ。
バスはそこそこ空いていて、座れるけど探す感じでした。ほら、二人掛けの椅子は誰かの隣に座る感じ。私は座ってからもずーっとその二人しか見てませんでした。白髪で褐色肌の男の人は、青髪で白人の上機嫌な様子に時々頷いたり、眉をひそめたりしていて、白髪の人は青髪の人に怒ってる風でした。でもね、仲良さそうなんですよあの二人。何でかって?だってホラ、話すときに近いの。顔が近いんです。
バスの中はうるさいから耳を傾けたりすることはあるけど、それでも隣同士でつり革に掴まっていれば聞こえないほどじゃないはず。なのに、あの青髪の人が白髪の人に話しかけるとき、まるで耳に囁くみたいに話すし、それに答える白髪の人は顔をそちらに向かせるから、もう、キスしそうな距離だし。妙にドキドキしちゃいました。あれが外国人のパーソナルスペースなのかなあ。
て言うか、腰に手を回してますよね、青髪の人!んで、耳に口をつけそうなほど近づけて、話した後肩に顎のせてますね!これ出来上がってますよね!完璧ですよね、出来てますね!もしかしなくても恋人ってやつですね!
いや、ほ~、はーぁぁ。も~~。
バスの皆釘付けにしてますよ。お兄さんたち。
いいもん見せてもらいました。
モブ子2の証言。
その二人を見かけたのは、新都のショッピングセンターで買い物をしようと思ってた時です。そのショッピングセンターに入る時、ほんの数段なんですが、階段があります。その日旦那さんが仕事でいなくて、一人でベビーカーと荷物を抱えてしかもお腹も大きかったものだから、その数段の階段がとても大変に見えました。スロープはあるけど、その入り口は正面入り口から遠く、スロープは狭くて一人だと苦労するんです。いつもなら旦那さんが上げてくれるのにな、と思ったけれども、いない人を当てにしても始まらない。諦めてスロープまで行こうとしたときです、男の人が声をかけて来ました。
「上るのかい?オレが手伝ってやろうか?」
見ると背の高い、とてつもないイケメンの外国人のお兄さんが、素敵な笑顔で立ってました。立てた髪と後ろに流した長い髪が似合っていて、ちょっとぼうっとしてしまいました。
「あ、は、はい。あの……」
「大丈夫、万が一にも落としたりはしない。安心してください、奥さん」
そしたらその後ろから、イケボな男性が声をかけて来ました。プチイケメン祭り。どうしよう。いえ、どうしようもなにもないのだけれど。
「ありがとうございます」
声がうわずってしまったのは、本当に残念でした。階段は数段だから、その人には全然大したことなかったみたいで、
「着いてんぞー」とすぐに声が上がりました。
後から声をかけて来た白髪の男性が、私の足元を確認しながら着いてきてくれてるのがわかって、お姫様みたいだわ、なんてチラッと思いました。手を取られなくてよかった。そんな事されたらしばらく夢を見そう。
上まで着いて、頭を下げました。
「本当にありがとうございました。助かりました」
「いいってことよ。じゃーな」
二人の後ろ姿を見送ってホッコリしていると、回転扉に入る時にもめているのが見えました。回転扉の脇には普通の自動ドアもあります。回転扉は数人ずつ入る仕様で、ゆっくり回転していますから、使う人は少ないんです。その前で言い争っていました。聞きたくなくても耳に入ってしまいます。
「二人で行けんだろ?!」
「定員は三人だが、何もそんなにくっつかんでも!」
「オレは!お前と回転してぇんだよ!」
「たわけ!」
えーと、ええ、人それぞれですから。そう、人それぞれですから。昨今は偏見を減らそうと社会が努力してますし、私は特に。
そうですね、狭い回転扉に前後密着して通り抜ける大きな外国人の男の人達を見るのは、眼福でした。新しい扉を開いてしまったみたいな気分です。
ありがとうございます、ごちそうさまでした。
モブ子3の証言。
ショッピングセンターに友達と来てました。セールではなかったので、わりと空いてました。だから、その二人は本当に目立っていたんです。だってイケメン×2だし。背も高いし、イケメンだし。それに雰囲気がなんかこう、ん?て感じで。よくある友達同士の雰囲気じゃなくて、もっと近い感じがしました。何でかって言うと、親しげにしてるのを見ちゃったから。
このショッピングセンターはビルの中央に長いエスカレーターがあるんです。そのエスカレーターに乗っている時の事です。ほら、今って片側開けますよね。だから、この二人も当然一列になって乗ってたわけです。それだけなら別にどうってことないんですが、ホラ、色々話しますよね、縦列で立つと、どっちか振り向くわけですよ。この時は下りのエスカレーターに乗っていたので、下の人が振り向くんですよ。斜めにね、顔を上げて白髪の男性が後ろに立ってる方に。
確か後ろの青髪の男性が話しかけたんだと思います。で、白髪の男性が振り向いたんです。そしたらですね、後ろの男性が前に身を乗り出したんですよ。一段開けて立ってたので、片足一段下ろして、ベルトに手を置いたまま答えを聞くために前のめりで。長い脚がいい角度で曲がって、ベルトに手を置いたままだから、こう、前の人を抱え込むみたいになってですね、あああああ。近い近い近い。ちょっと待って!顔近い!それに、今、白髪の男性、青髪の男性の胸に頭着いてますよ!セット乱れるって!気にしてないのかな、そんなのどうでもいいんですかね、いいんですね!あああ、青髪の人!肩に手をやって、その手を胸元までずらしてるぅぅ!やだー、完っ全に囲んでますね、仲見せつけてますね!白髪の男性が平然としてるところがまた、これが日常なんだなあ、と。
キスしちゃうかも、と期待しました。でもその前に着いちゃったんですよね。残念。
うふふ、おいしかったです。
モブ店員の証言。
休日前の快晴日、そこそこお客様もいらしてくださっていて、売上も雨の平日よりはましでした。下着専門店のうちは、女性ものから男性ものまで広く取り扱ってます。カップルで同じ柄の物を買うことも出来たりして、ちょっとしたデートスポットでした。ええ、男女のカップルはよく来ますよ。ええ。
男性カップルはとても珍しい、と言いますか、私は初めてでした。何でカップルだと言うのかって?だって、初めから肩組んで入ってきたんですよ。そう言うの、出来上がってるカップルか、お客さんと同伴で来る水商売の方くらいですよ。まあ、それだけじゃなかったんですけどね。
白髪の男性の肩を組んだ青髪の男性が、私にこう言ったんです。
「なあ、こいつのサイズ探してくんねーか?」
「サイズ、ですか?」
言っても男性ですから、下だけですよ。うちはメンズブラは取り扱ってないですから。上から下まで眺めますと、かなりがっしりした体型が見てとれます。肩幅の割にはウエストが括れていて、下半身はスリムに見えてます。けれども全身筋肉のある方は、見た目より中身のボリュームがあるので、安易に小さいサイズは勧めません。
「LL か、XLではどちらが良いですか?」
「む、いつも履いているものなら、XLだが」
「そうですね、男性用下着はメーカーによって全然サイズが違うので、一度計りましょうか」
と、肩に掛けているメジャーを外したら、
「こいつ、96センチ」
と青髪の男性がそう言いました。何故知ってるの?と言う言葉が口から出そうになりました。普通、男性は、女性よりサイズを気にしたりしませんし、自分のサイズすら知らない人の方が多いです。ましてや他人のサイズなんて、興味も無いでしょうに。即座に言うところなんて、すごいと言いますか何と言いますか、ええ、触らせたくなかったのね、としか。
ほら、ヒップサイズを計るには、ヒップの頂点を計りますから。当然そこら辺は中央ですし。ええ。別に通り過ぎるだけで触るわけではありませんけど、まあ、良いです。
「わかりました。どんなタイプをお望みでしょう?」
と、その青髪の男性の視線はマイクロビキニに釘付けでした。生ぬるい視線になったのは仕方ないと思います。でも一瞬だけです、私、プロですから。白髪の男性におもいっきり叩かれていたのも見て見ぬふりをしました。言い争っている言葉も黙して聞かない振りをします。
「これ、毛が見えるギリギリじゃねぇ?エッロ」
「貴様が履けば好かろう!」
「なんだお前、こういうの好み?」
「貴っ様!私がノーパンでブラブラしてるのを咎めた事があったか?!」
「いつでも弄れるもんなあ」
ええ、聞かなかったことにしたいです。二人ともイケメンなのに、残念なイケメンを絵に描いたような残念さ。地蔵のように大人しく待ちました。
「手触りいいのはどれだ?」
しばらくして落ち着いたのか、聞いてきました。ようやく出番です。でも、ちょっと引っかかりました。履くものを選ぶ時には、肌触りのいいもの、と指定するのが一般的です。
手触りのいいものって。
ここでもアルカイックスマイルで乗りきりました。もう、何を言われても聞き流さないと。
結局いくつかお勧めして、絹の混紡商品を買われて行きました。明らかに青髪の男性は上機嫌で、白髪の男性は虚無な目をしていました。気持ちはわかります。頑張って、と後ろ姿に視線を送りました。
張り切るんだろうなあ、あの青髪の人。
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新都で買い物を済ませ、上機嫌のランサーとどんよりしたアーチャーは家に帰った。あんまり早く帰りたがるので、バスではなく足で走った。家々の屋根を飛び、英霊の速さで出来うる限り。途中アーチャーが姿を眩ませてもおかしくなかったが、そこは最速の英霊、アーチャーを逃すことなく、きっちり家に(持ち)帰った。
その夜、ランサーがどれだけハッスルしたかはアーチャーしか知らない。ただ、ランサーは次の朝も大変機嫌が良く、アーチャーの落ち込みは地を這うようだった。
梅雨の空は暗黒で、ざあざあと雨が降っている。梅雨の晴れ間を台無しにされたアーチャーの機嫌はしばらく直ることはないだろう。