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【3/20新刊サンプル】森で拾った魔王に懐かれている件【狂王弓】/Novel by らーよ

【3/20新刊サンプル】森で拾った魔王に懐かれている件【狂王弓】

2,213 character(s)4 mins

3/20 第60次ROOT4to5 発行予定の新刊サンプルです
なんちゃってなろう風異世界パロの続き、森で拾った現代人オルタ改め魔王と、お姉ちゃんシトナイの冷戦が勃発して……?
説明回なので特に話は進みません。CP未満&未完。

ゲスト出演は前回に引き続きシトナイ+イリヤ。

3/20
南2 す38b ACF
「森で拾った魔王に懐かれている件」
B6/オンデマンド印刷/20P/イベント価格300円

書店通販(とら):https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031307113

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「ねえ。魔王なんて、どこで拾ってきたの?」
 鈴を転がすような、それでいて多分に冷気を含んだ声が響く。まったく笑っていない紅い瞳が、色合いの違う紅い瞳を捉えていた。
 姉であるシトナイと、被保護者であるオルタ。かち合う視線は火花が散っているようで、殺意は乗っていない。互いに警戒と不審は抱いていても、害意は抱いていないように見えた。
 まあ、どう見ても雰囲気が一触即発なので、害意があろうがなかろうがさほど関係はないのだが。あまりの空気の悪さに頭を抱えかけて、アーチャー・エミヤはふたりともが紅い瞳の持ち主であることにいまさら気づく。
(いや、そうじゃなくて)
 今は、この冷たすぎて凍傷でも起こしそうな現実をどうにかしなければならない。
「ひぇぇ……」
 アーチャーにくっついていたイリヤスフィールが、顔を真っ青にしながらしがみつく力を強くした。ぶるぶると震える頭を撫でながら、アーチャーは必死に頭を働かせる。
 ――その結果、なにもかも素直に白状するのがいちばん、という結論に達した。なにしろ他意もなければ悪意もなく、すべてが単なる偶然の積み重ねなのは事実なので。
「そこの森でだが」
「…………あのねえ」
 ずいぶんと深いため息と共に、ぴたりと冷気の放出が止まった。どうやら、当たりを引いたらしい。
 目を眇めたシトナイが、じっとアーチャーを見上げてくる。後ろ暗いところはないので、真っ直ぐに見つめ返した。
 ――ないはずだ、たぶん。
「いや、本当にそうなんだ。それに……そう、なんなら倒れていたのも結界の中だった。間違いない」
 シトナイが小屋の周囲に張ってくれている結界はそれなりの広さを保っていて、その範囲は森の中にも及んでいる。そのかわり、アーチャーへの害意がなければ誰でも、それこそ獣だって出入り自由だ。
 オルタが倒れていたのは、その結界の中だった。森に入ってすぐの場所、小屋からそんなに離れていないところだ。オルタにもしアーチャーへの害意が少しでもあったら、そんなところに無傷でのんきに倒れていられないはずだった。
 なにしろ結界を張った主が、なんというか……かなりの勢いで、過保護なので。
「……はあ。まあ、いいわ」
 シトナイのため息とともに、威圧感も消えた。シトナイが警戒心を解くと同時に、オルタも警戒するのをやめたようだ。一気に辺りの空気が穏やかになる。
「よ、よ、よかった……何も起こらなくて」
「まったくだ」
 イリヤが漏らした安堵の声に、同意しかできない。寿命がだいぶ縮んだ気がする。当のシトナイは、アーチャーとイリヤからふいと視線を逸らして、不満そうにオルタを眺めていた。
「…………」
 なお、一瞬とはいえシトナイとやり合ったはずのオルタも平然としている。シトナイへと向けられた視線には、わかりやすい感情が乗っているようには見えなかった。
「ところで、倒れていたってどういうこと? ひとつ残らず、隅から隅まで説明して」
 顔はオルタの方へ向いたまま、ちらりとシトナイの視線だけがアーチャーに寄越される。
「了解した」
 誤魔化したところでなんの意味もないことだけはわかるので、またしてもアーチャーは何ひとつ隠さず白状することにしたのだった。


「そのふざけた元魔王とやらを半殺しにしに行ってもいいかしら?」
「止めねぇが、あっちの世界に行けんのか?」
「行けないに決まってるじゃない。腹が立つわね」
「あわわわ……」
 というわけで。
 話が長くなるからと場所を小屋の中に移して洗いざらい白状した結果、またしてもイリヤが泡を食う事態に陥っている。なお、シトナイとオルタは最初こそ互いに剣呑な雰囲気だったが、話しているうちにそれなりに意気投合したように見えた。
「とりあえず、あなたによろしくない意図がなさそうなことはわかったわ。理性より本能が発達してる系統みたいだし」
「めんどくせぇことは勘弁だからな」
「そう言ってる本人がいちばん面倒くさい立場にいること、さすがに理解してくれないかしら?」
「オレの知ったこっちゃねえ」
「あのねえ」
「魔王がなにかも知らねぇのに、勝手に押しつけられてたまるか」
「……アーチャーを巻き込むのはともかく、消えない傷でも残してごらんなさい。ただじゃおかないわ」
「巻き込むのはいいのか」
「仕方ないでしょう、自分から首を突っ込んでいくんだから……!」
 ――ただの気のせいかもしれないが。いや、なんというかアーチャーの信頼度が低いせいかもしれないが。
 なお場所を移動したといっても、アーチャーの小屋はそもそも来客を想定していないので、応接家具などというものは存在しない。食卓用の椅子も二脚しかないので、それを寝台の近くまで引っ張ってきて寝台をソファ代わりにした。一応、オルタを拾ってから寝台はもう一台追加している。そこの森から切り出してきた木で作った、アーチャーお手製のものだ。
「お兄さん、運が悪いのに自分から揉め事に関わりに行くもんね」
「言わないでくれ……」
 シトナイとオルタのやり取りにびくびくしながら耳を傾けていたイリヤが、納得したように頷いている。何ひとつ言い訳ができなくて、アーチャーはそっと視線を逸らした。
 自覚はある。一応、自覚はしているのだ。
 ただ、悪癖というのは自覚していても直らないから悪癖なのであって。

(続く)

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