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眠れる森/Novel by ひなか

眠れる森

1,674 character(s)3 mins

大きな弟と小さな姉の話。でっかくても弟!ちっちゃくても姉!素晴らしい! もうホロゥの冬の城のお話はもう…もう…!もう!何度見ても泣きますね。私も冬芽探しに行きたいです…ホロゥほんとに素晴らしい…! アーチャーさん愛しすぎてそろそろ泣くレベル。イリヤとアーチャーってかわいい… / 04月16日付の小説ルーキーランキング 48 位に入りました!ブクマ評価閲覧本当にありがとうございます!

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「イリヤスフィール、君はこの世界をどう思う」

錬鉄の英雄が静かに問うた。
そんな筈はないけれど、どこか頼りのない子供のような響きを帯びた声だとイリヤスフィールは思う。

ダメね。やっぱりいつになっても弟は弟のまま。わたしが守ってあげなくちゃ。錆びた色をした自分より随分大きな英霊を見上げ、イリヤスフィールは慈愛に満ちた微笑みを零した。


――それは真実を知るものの残酷な問いだった。
なぜならば本来のイリヤスフィールはもう、この世界にいない筈なのだから。聖杯は失われた。彼女の愛すべき人の手によって。本来その過程で自分はもう損なわれているのだ。しかし、今彼女はここにいる。
ありえないことがいくらでも起こる奇跡のような繰り返しの世界。小さな箱庭に自分たちは入れられて、日々を演じ続けている。とっくに気付いていた。それでもよかった。仮初めの日々は温かくて優しい。叶わなかった願いも望みも今なら叶う。
しかしそんな日々ももうそろそろ終わりが近い。それは分かっていた。了承もしている。そもそもが間違いだ。ありえない筈のステージなのだから。終わることを悔やんでも仕方がない。優しい日々は彼女を満足させていた。

「この世界はすっごく素敵よアーチャー。ずっとこうしていたいくらい」
「そうか」

そう答えたイリヤスフィールに、アーチャーは少しだけ笑んで見せた。シロウが見せるものとは違ってどこかぎこちない笑みだが、それはとても優しい色をしていた。
変わってしまったとはいえ、彼の本質はとても優しい。もしかしたらシロウ以上に。

でもね、とイリヤスフィールは言葉を続けた。

「でも、死者は蘇らない。本来ならあなたもわたしももういない。でもいいの。この日々が終わるのはイヤだわ。でも、終わるのが当然なのよね。幕引きがない舞台なんてない。それでもアーチャー、こうしてあなたと話せてわたしは嬉しいのよ」

そういってイリヤスフィールは笑った。常冬の城で育った少女のその笑みは、しかしさながら春に花が綻ぶようなそんな晴れやかで華やかな笑みだった。

馬鹿な問いをした。
アーチャーが内心で苦く思っていると、イリヤスフィールが彼を呼んだ。

「ねえ、アーチャー。お願いがあるの」
「なんだね」
「抱っこしてちょうだい」
「……何?」

思ってもいなかった彼女からの申し出に、アーチャーが反応を返すまで暫く間が空く。眉を顰めながら何とか返事をするが、彼の目の前の少女は腰に手を当て胸を張って笑っている。

「言い方が悪かったかしら? わたしを抱き上げてっていったんだけど」
「何故だ」
「お姉ちゃんのいうことが聞けないのかしら。そうでなくても女の子には優しくってキリツグに教わったんでしょ?」

首を傾げて意地悪く笑うその姿は、アーチャーにとってどこか懐かしいもので、暫く黙りこくった後やれやれと溜息を吐きながら、彼は小さな姉を軽々と抱き上げた。

「バーサーカー程じゃないけど高いわ!シロウよりずっと」
「あれと比べてもらっては困るんだがね」
「あら、ごめんなさい」

腕の中で笑う悲しいほど軽く儚い少女の体温に摩耗した心が疼く。
愛しさと、それ以上の苦しさがアーチャーの胸を満たした。遂に自分が守れなかった存在が今腕の中にいる奇跡とは、どれほどの物だろう。ありえない世界の起こらないはずだった出来事。それが今確かにここにある。
望めばこの幸せはいつまでも続くだろう。しかしこの世界の鍵となるあれは、それを是とするような性格をしていない。認めたくはないが元は同じひとつのモノなのだから。

「ねえ、アーチャー」
イリヤスフィールがアーチャーの胸に頬を寄せながら囁いた。

「あなたは今幸せ?」
「……ああ」

それだけ返すと、少女は優しく微笑んだ。
「それならよかったわ」

それは真実、姉が弟に向けるような。
慈愛に満ちた笑みだった。

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