対米投資第1弾、脱炭素に逆行 日本の温室ガスの2割相当を排出か
日米関税合意に基づく5500億ドル(約87兆円)の対米投資の第1弾として発表されたプロジェクトの投資額の9割超を化石燃料関連施設が占める。これを実施すると、日本の年間排出量の2割に上る温室効果ガスを排出する恐れがあることが、朝日新聞の試算でわかった。政府はあと25年で排出を実質ゼロにする目標を掲げて脱炭素に取り組むが、国外ではそれに逆行するような施策を進める形だ。
対米投資第1弾の投資額は約5.7兆円で、対象として発表されたのは、人工ダイヤモンドの製造(ジョージア州)▽ガス火力発電所(オハイオ州)▽原油輸出インフラ(テキサス州)の3件。化石燃料関連施設のガス火力と原油輸出インフラの2件で投資額の9割超だ。
記事のポイント
①対米投資第1弾の9割超が化石燃料関連
②実施した場合の排出量は日本年排出の2割規模
③気候変動の「1.5度目標」に逆行、批判相次ぐ
使った燃料や電気の量に、燃料を燃やしたり、電気を作ったりするときに出る単位あたりの排出量(排出原単位・排出係数)をかければ、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)の想定排出量が算出できる。発表資料を元に2件について、直接・間接の排出量を試算した。
オハイオ州のガス火力は出力計9.2ギガワットで「世界最大のガス火力プロジェクト」(米商務省)。東芝やソフトバンクグループといった日本企業の参画が想定される。この発電所が現在最新鋭の設備を導入し、60%の稼働率で発電した場合、排出量は年間約1550万トンになり、ネパールやプエルトリコが一国で1年に排出する量に相当する。
テキサス州の原油輸出インフラには、商船三井や日本製鉄などが機器の供給に関心を持ち、年間200億~300億ドル分の原油の輸出を見込む。米国とイスラエルによるイラン攻撃前の原油価格(1バレル=66ドル)で換算すると3億~4億5千万バレルになる。この設備で、直接原油を燃やすわけではないが、最終消費まで含めたライフサイクルでの気候影響を評価する観点から、供給先ですべて燃焼された場合を想定しすると、年間約1億3千万~2億トンが排出される。世界の年間排出量の0.5%、パキスタンやアラブ首長国連邦に匹敵する膨大なCO2排出につながる。
将来にわたり大量の排出が続く
二つを合わせると1億4550万~2億1550万トンに上り、日本の年間排出量、約10億1700万トン(2023年度)の14~21%に達する。加えていずれの施設からも、CO2より数十倍も温室効果の高いメタンの漏出が懸念される。
これらの施設はいずれも30~40年程度の稼働が見込まれ、単年にとどまらず、将来にわたり大量の排出が続くことになる。
22年の主要7カ国(G7)首脳会議(エルマウサミット)では、「排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を22年末までに終了」するという、首脳声明が作られ、日米も合意した。「限られた状況」以外の例外を認めていない。例えば、国家安全保障に関わる場合や、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が掲げる、産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5度までに押さえるという目標に沿っているという場合などだ。
国際エネルギー機関(IEA)は、パリ協定の1.5度目標の下では新規の化石燃料インフラは不要だと指摘。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも、既存の化石燃料インフラからの排出だけでも1.5度以上の温暖化につながるとしている。
「汚染に彩られた投資」
こうした気候変動への影響から米ブルームバーグ通信は、対米投資第1弾について「汚染に彩られている」と論評している。
日米の29の環境NGOは「日本を含む世界中で気候変動災害が激甚化する中、新規ガス火力発電所や原油輸出インフラに公的資金を投じることは許されない」との共同声明を発表。日本政府や、民間企業への出資や融資を行う国際協力銀行(JBIC)や、融資保証を行う日本貿易保険(NEXI)に支援検討をただちに撤回することを求めている。
米国務省の上級顧問として米国の気候変動政策に携わった、メリーランド大のネイサン・ハルトマン教授は、現在のトランプ政権との関係づくりの難しさに理解を示した上で、「科学に基づく長期的な(気候変動の)現実と、化石燃料インフラへの投資を続けることを両立させるのは難しい」と指摘する。
「短期的には利益を生む投資でも、長期的なエネルギー転換の流れの中で、その妥当性は慎重に見極める必要がある」と日本政府の姿勢にも注意を促した。
日本政府「日本企業が機器納入、日本の利益に」
日本の経済産業省の担当者は取材に対し、今回の投資は「政府として全体で、エルマウサミットでの首脳声明の『限られた状況』にあたると判断した」と回答。「JBIC、NEXIとも環境ガイドラインにのっとって適切に判断する。いずれも日本企業が機器を納入することで、日本の利益になる」としている。
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- 【視点】
地球温暖化のペースが加速していると専門家が警鐘を鳴らす中、それにますます拍車をかけることに日本国民の多額の税金が使われる。日米安保や対米関税と引き換えにこんなディールに手を染めなければならないなら、もはやどの世代の何を守ろうとしているのか、わかりません。「エルマウサミットでの首脳声明の『限られた状況』」ということは、対米投資の内容を議論する余地は日本にまったく残されていないのか、今までどういう協議があったのか、高市首相、赤沢大臣に徹底的に追及してもらいたい。
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