今週のジャンプには、『キングダム』の出張読み切りが!
そして、『LIGHT WING』の先生による新連載吹奏楽マンガ『SOUL CATCHER(S)』もスタート。
『めだかボックス』や『スケットダンス』などが終わって行くのは寂しいですが……今後に期待したいですね。
と、特に関係ない前置きをしつつ。

Self-Reference ENGINE
円城塔
夭逝されてしまった伊藤計劃先生と同時期にデビューし、遺作『屍者の帝国』を引き継いだ円城塔先生。
『屍者の帝国』を読む前に、円城塔先生の作品も追っておきたいと思い、まずはデビュー作から入ることに。
結果的に、最近、いえここ数年で読んだ中でも最も私のツボにハマった小説といっていいでしょう。
美しい、と思いました。
テーマ性を取り込んだ作品構造も、それを見事にシンプルに表した装丁も目次も。
さて、この小説がどんな物語かといえば……
あらすじを語る事のそもそもの意味性と難しさがある事を指摘した上で、裏表紙の説明が過不足なく分り易いので抜粋すると
彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。
老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。
そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める――
軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。
そんな感じの小説です。
意味が解らないと思います。
私も最初何を言ってるのか解らないポルナレフ状態でした。
特に、床下から大量のフロイト(勿論、精神分析学者のジグムント・フロイトその人です)が大量に出て来るという辺りは謎に過ぎました。
しかし、「読めば床下からフロイトが出て来る話」としか言いようがないのも事実です。
20の独立した短編とプロローグ・エピローグに分かれていますが、短篇集ではなくあくまで一冊の長編小説です。
その理由は最初の短編で出て来るのですが、通常の一方通行で流れる時間という概念がなくなる「イベント」によって何でも起こり得る世界だから、という事になります。
一つ一つのお話はそれ自体が固有の面白味を持ちながら、それら20の話とプロローグ・エピローグが総体となって描き出す巨大な事象の影。
少しずつ有機的な連関を為して紡がれて行くその巨像に、比類なき興奮を与えられます。
短編の一つ一つも様々な奇想で満ちています。
家・家具が毎日生えてくるので、バールのようなものやチェーンソウを常備して伐採して暮らす「Ground256」のような、異常な世界の日常感が堪りません。
吹っ切れたかのような、「Yedo」のやり過ぎ感も大好きです。
シリアスな普通のSFではこうは行きません。
筒井康隆先生を髣髴とさせる、稀有な才能です。
又、私が『最果てのイマ』を人生史上でも至高のAVGと礼賛する理由がこの『Self-Reference ENGINE』にはありました。
140億個の脳細胞では想像すら及ばない、超高次の現象の明滅が、そこでは鮮やかに色付いています。
四次元空間を四次元の太陽が通過する様子や、それ以上の超次元的現象や高位の存在など、何が起きているのか理解し切る事はできずとも心が踊ってしまいます。
この圧倒的なスケールに呑まれる感覚が、果てしない悦懌です。
物凄く真っ当なsense of wonderを感じさせてくれるSFでもあります。
そして、お話の内容と文章と構造で以って、ヴィトゲンシュタインにも似た言葉の意味、メタフィクションの可能性を問い叫ぶ物語でも有りました。
私が哲学を専攻していた頃に至った結論、一言で言えば「全ては全てであり、全てでない」をより解りやすい形で体現してくれていました。
神林長平先生などとの絡みも含めた事情は20ページを超える熱のこもった後書き解説に詳しいので省きますが……
絶対に万人向けではありませんし、難解な物やシュールな物が苦手な人には辛いと思います。
逆に、さほど数学が得意でなくとも読めるとは思いますが。
デビュー作としての熱と尖り具合が最高で、深々と私に突き刺さりました。
他の作品も読まねばならない使命感すら芽生えています。
この作品の素晴らしさを陳述するには、私の筆力と時間が足りてないのが残念でなりません。
ただ、それでも今作がものすごい作品であり、極めて貴重な才能である事は間違いないでしょう。
90点。
そして、『LIGHT WING』の先生による新連載吹奏楽マンガ『SOUL CATCHER(S)』もスタート。
『めだかボックス』や『スケットダンス』などが終わって行くのは寂しいですが……今後に期待したいですね。
と、特に関係ない前置きをしつつ。
Self-Reference ENGINE
円城塔
夭逝されてしまった伊藤計劃先生と同時期にデビューし、遺作『屍者の帝国』を引き継いだ円城塔先生。
『屍者の帝国』を読む前に、円城塔先生の作品も追っておきたいと思い、まずはデビュー作から入ることに。
結果的に、最近、いえここ数年で読んだ中でも最も私のツボにハマった小説といっていいでしょう。
美しい、と思いました。
テーマ性を取り込んだ作品構造も、それを見事にシンプルに表した装丁も目次も。
さて、この小説がどんな物語かといえば……
あらすじを語る事のそもそもの意味性と難しさがある事を指摘した上で、裏表紙の説明が過不足なく分り易いので抜粋すると
彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。
老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。
そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める――
軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。
そんな感じの小説です。
意味が解らないと思います。
私も最初何を言ってるのか解らないポルナレフ状態でした。
特に、床下から大量のフロイト(勿論、精神分析学者のジグムント・フロイトその人です)が大量に出て来るという辺りは謎に過ぎました。
しかし、「読めば床下からフロイトが出て来る話」としか言いようがないのも事実です。
20の独立した短編とプロローグ・エピローグに分かれていますが、短篇集ではなくあくまで一冊の長編小説です。
その理由は最初の短編で出て来るのですが、通常の一方通行で流れる時間という概念がなくなる「イベント」によって何でも起こり得る世界だから、という事になります。
一つ一つのお話はそれ自体が固有の面白味を持ちながら、それら20の話とプロローグ・エピローグが総体となって描き出す巨大な事象の影。
少しずつ有機的な連関を為して紡がれて行くその巨像に、比類なき興奮を与えられます。
短編の一つ一つも様々な奇想で満ちています。
家・家具が毎日生えてくるので、バールのようなものやチェーンソウを常備して伐採して暮らす「Ground256」のような、異常な世界の日常感が堪りません。
吹っ切れたかのような、「Yedo」のやり過ぎ感も大好きです。
シリアスな普通のSFではこうは行きません。
筒井康隆先生を髣髴とさせる、稀有な才能です。
又、私が『最果てのイマ』を人生史上でも至高のAVGと礼賛する理由がこの『Self-Reference ENGINE』にはありました。
140億個の脳細胞では想像すら及ばない、超高次の現象の明滅が、そこでは鮮やかに色付いています。
四次元空間を四次元の太陽が通過する様子や、それ以上の超次元的現象や高位の存在など、何が起きているのか理解し切る事はできずとも心が踊ってしまいます。
この圧倒的なスケールに呑まれる感覚が、果てしない悦懌です。
物凄く真っ当なsense of wonderを感じさせてくれるSFでもあります。
そして、お話の内容と文章と構造で以って、ヴィトゲンシュタインにも似た言葉の意味、メタフィクションの可能性を問い叫ぶ物語でも有りました。
私が哲学を専攻していた頃に至った結論、一言で言えば「全ては全てであり、全てでない」をより解りやすい形で体現してくれていました。
神林長平先生などとの絡みも含めた事情は20ページを超える熱のこもった後書き解説に詳しいので省きますが……
絶対に万人向けではありませんし、難解な物やシュールな物が苦手な人には辛いと思います。
逆に、さほど数学が得意でなくとも読めるとは思いますが。
デビュー作としての熱と尖り具合が最高で、深々と私に突き刺さりました。
他の作品も読まねばならない使命感すら芽生えています。
この作品の素晴らしさを陳述するには、私の筆力と時間が足りてないのが残念でなりません。
ただ、それでも今作がものすごい作品であり、極めて貴重な才能である事は間違いないでしょう。
90点。
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