なぜイラン戦争は第三次世界大戦の序章ではなく終章なのか
はじめに
「イラン戦争は第三次世界大戦の始まりなのか」。
テレビやネットでは、ここ数日この言葉があふれています。
しかし、私は大阪でニュースを眺めながら、少し違う感覚を抱いています。
第三次世界大戦は「これから始まる」どころか、すでにウクライナ戦争の時点から静かに始まっていたのではないかと感じるからです。
ウクライナ侵攻、ガザ戦争、イラン核施設攻撃、ベネズエラ侵攻、そして今回のイラン本土空爆とホルムズ海峡封鎖――この数年の戦争の連なりを、後世の人びとは一つの大戦としてまとめて学ぶことになるはずです。
その大戦の余波は、ウクライナやガザだけでなく、日本のガソリン価格や電気料金、工場の立地、そして東京と大阪の力関係にまで及んでいると私は見ています。
本稿では、イラン戦争を入口にしながら、LNG備蓄と電気料金、第三次世界大戦、世界の覇権構造、日本の東西格差、そして大阪の行方について論じます。
読者の皆様の参考になれば幸いです。
第1章 イラン侵攻はいつまで続くのか
トランプという政治家は、一度「やる」と決めたことは、タイミングを見ながら必ずやりきるタイプだと私は感じています。
今回のイラン本土空爆と、それに続くホルムズ海峡をめぐる一連の作戦も、単発の報復ではなく、「イランの体制転換」という彼自身の長年の執念の延長線上にあると見てよいと思います。
アメリカとイスラエルは、イランの最高指導者ハメネイを含む指導中枢に対して、徹底した斬首作戦を仕掛けました。
革命防衛隊の施設や司令部、高級聖職者層の一部が精密誘導兵器で立て続けに狙われ、最高指導者死亡が公式に報じられるところまで踏み込んでいます。
それでもテヘランという首都の体制はすぐには崩れません。革命体制の中枢機構は、短期の空爆で瓦解するほど柔ではなく、首都防空も厚いからです。
トランプとイスラエルの狙いは、おそらく「テヘランを一気に占領すること」ではなく、「地方からの反乱を引き起こすこと」にあると私は見ています。
イランは多民族国家であり、地方ごとの経済格差や不満も大きいです。
ペルシャ湾沿岸、クルド地域、バルチスタン、アラブ系住民の多い南部など、火種はいくらでもあります。
ここに、サイバー戦や衛星放送、亡命勢力支援を通じて長年仕込んできたヒューミント(人的情報)が重なっていると考える方が自然です。
斬首作戦は、単に将軍や指導者を殺すためだけではありません。
「中枢はすでに崩れかけている」「この体制は長くもたない」という印象を地方と市民に刷り込み、治安部隊や地方エリートの忠誠心を揺さぶるためでもあると私は見ています。
その意味で、斬首と情報戦、経済制裁とホルムズ封鎖はセットです。
ただし、だからといってアメリカがイラン本土に大規模な地上軍を送り込むことはないと私は考えます。
トランプはブッシュではなく、イラク戦争の泥沼化を散々批判してきた本人です。
やるとすれば、空爆と特殊部隊、サイバーと心理戦の組み合わせであり、「内部から崩壊させる」方向に持っていくはずです。
それでも、イランという国家は簡単には崩壊しません。
革命と戦争を何度も生き延びてきた政治体であり、今回も短期のショックの後に、体制を維持しながら長期の消耗戦に構える可能性が高いと思います。
イラン側のミサイルやドローンの在庫、発射機と発射要員の数を考えれば、現在のような大規模な反撃を数カ月単位で維持するのは現実的ではなく、ホルムズ完全封鎖も数週間〜1か月が限界でしょう。
つまり、トランプのイラン戦争は、「短期の空爆と斬首」と「長期の経済・情報戦」を組み合わせたレジームチェンジ作戦として設計されているように私には見えます。
目先のホルムズ危機は1か月前後でいったん終息しても、その後数年にわたって、イランの体制と中東秩序を内側から変えていくプロセスが続くはずです。
それは、単独の「イラン戦争」ではなく、第三次世界大戦の一つの局面として見た方が本質に近いと私は感じています。
第2章 なぜ原油よりもLNG備蓄が先に尽きるのか
日本のメディアは「石油危機」「ガソリン320円」といったショッキングな数字を好みますが、本当に危ないのは石油ではなくLNGです。
日本の石油備蓄は、国家備蓄と民間備蓄を合わせて240〜254日分、約8か月前後と言われています。
ホルムズ海峡が1〜2か月止まったとしても、物理的にガソリンや灯油が枯渇する状況には直ちには陥らない水準です。
一方で、LNGは事情がまったく違います。
LNGはマイナス162度で液化・貯蔵される燃料であり、大量・長期保存には巨大なタンクと冷却設備が必要です。
そのため、日本全体で平時に持てる在庫は、せいぜい2〜3週間分にとどまります。
今回、木原官房長官自身が「日本全体のLNG備蓄は消費の約3週間分」と認めました。
石油の8か月と比べれば、ほとんどゼロに等しい数字です。
さらに厄介なのは、「日本のLNG輸入に占める中東の割合は1割程度だから影響は限定的だ」といった説明です。
確かに統計上、日本のLNG輸入元は豪州・マレーシア・ロシア・米国が大きく、中東の比率は一見小さく見えます。
しかしホルムズ海峡を通るLNGは、世界全体のLNG貿易の約2割を占め、その多くがカタールからアジア向けに出ています。
この“世界の2割”が止まると、何が起きるでしょうか。
中国や韓国、インドなどのアジア諸国、ロシア依存を減らしたい欧州諸国が、一斉に豪州・米国・東南アジア産のLNGを取りに来ます。
2022年の欧州エネルギー危機のとき、欧州がロシア産ガスの代わりにLNGを大量調達した結果、アジア向けスポットLNG価格は一時50ドル/MBtuを超え、一部の新興国は購入を断念せざるを得ませんでした。
同じことが、今回は「ロシアの穴埋め」ではなく「カタール分2割の穴埋め」として起きます。
世界のプールから2割分の水が抜けたとき、残り8割を巡って全員が殴り合うのです。
「日本のLNGは中東1割だから関係ない」という説明は、世界市場全体がタイトになったときの価格と数量の変化を無視した、危うい安心ストーリーに過ぎないと私は思います。
LNGはまず高騰し、その次に「買いたくても買えない」状況が来ます。
そして日本のような輸入依存国は、その高値競争と不足に必ず巻き込まれます。
石油は備蓄で時間を稼げても、LNGは3週間で壁に突き当たる。
日本のエネルギー安全保障の「本丸」は、まさにこのLNGだったのだと、ホルムズ危機は残酷な形で教えているように思います。
第3章 なぜ東日本で計画停電が起きるのか
私は、今回のホルムズ危機の本当の恐ろしさは、「ガソリン価格」ではなく「東日本の計画停電リスク」にあると感じています。
しかも、そのリスクは、偶然ではなく、日本の電源構成と政治的選択が積み上がった必然の結果です。
まず、東電と中部電力の電源構成を見ます。
東電は福島事故後、柏崎刈羽原発を長く止め、その穴をほとんどLNG火力で埋めてきました。
中部電力も浜岡を止めたまま、LNG火力と石炭火力に頼る構造を続けてきました。
その結果、直近の公表値で見ると、東電エリアでは発電量の4〜5割をLNG火力が占め、石炭が2〜3割弱、原子力はゼロかごくわずかという「LNG偏重+原発ほぼゼロ」モデルになっています。
中部電力ミライズも、LNG火力が4割強、石炭が2割前後、原子力は数%という構成です。
2026年に入り、柏崎刈羽原発6号機は再稼働プロセスに入りました。2月9日に原子炉を起動し、2月中旬から送電を開始、3月18日に営業運転入りの予定とされています。
首都圏にとっては14年ぶりの原子力電力であり、「東日本原発ゼロ時代」にようやく終わりが見え始めたと言えます。
しかし、1基の再稼働でLNG依存が劇的に下がるわけではありません。
東電のLNG比率は依然として高く、LNGショックのリスクを相殺するには程遠いのが現実です。
次に、LNG備蓄の制約を見ます。
日本全体のLNG在庫は、平時の消費の約3週間分しかありません。これは木原官房長官自身が認めた数字です。
石油の備蓄が240〜254日分、約8か月あることと比べると、LNGの脆弱さは際立っています。
ホルムズ海峡が事実上封鎖された今、中東発のLNGそのものが止まるだけでなく、世界全体のLNG供給の2割が宙に浮き、豪州・米国・東南アジア産LNGを巡って欧州とアジアが奪い合う構図が現実味を帯びています。
この「LNG3週間」と「東電・中部のLNG依存4〜5割」が重なったとき、何が起きるでしょうか。
電力会社は、まずLNG火力の燃料使用を絞らざるを得ません。
出力を抑え、石炭火力や一部の石油火力、再エネの活用を増やして全体のバランスを取ろうとします。
しかし、ここで東日本にはもう一つの制約があります。
老朽火力の休廃止がこの十年で進み、「設備はあっても常用前提ではない」状態が多く、休止中の石炭火力を短期間で戦力化することは現実的にほぼ不可能だからです。
私は、「休止中の石炭火力を動かせばいい」という言説を聞くたびに違和感を覚えます。
3週間で点検・補修・要員確保・燃料手当てを済ませ、フル出力で回すことは、机上では書けても、現場では無理です。
経産省の資料でも、休止火力の再稼働には数カ月〜年単位の準備が必要だとされています。
つまり、LNGが詰まったからといって、東電と中部が「石炭を総動員して一気に埋め合わせる」ことはできません。
そうなると、電力会社に残されたカードは限られてきます。
まずは節電要請。
次に「需給ひっ迫注意報」「警報」。
それでもピーク需要をさばけないとき、最後に出てくるのが計画停電です。
2011年の震災直後、首都圏は実際に計画停電を経験しました。
あのときは原発事故と地震による設備損壊が直接の原因でしたが、今回は「LNGという燃料の不足」が引き金になります。
私は、LNG備蓄が3週間分しかないことを政府が認めた以上、そのカウントダウンのどこかで、東電と中部電力が何らかの「需給見通し」と「値上げ」を発表せざるを得ないと見ています。
その中には、間違いなく「節電のお願い」が含まれます。
そして、ギリギリのバランスで夏や冬を乗り切るためには、「最悪の場合、計画停電を実施せざるを得ない可能性がある」と、どこかで言わざるを得ない局面が来るだろうと感じています。
西日本でも電気代は上がります。
しかし、関電や九電、北海道電力は、原発と石炭という“戦時電源”を抱えているぶん、LNGショックを料金と供給の両面で分散させる余地があります。
それに比べて、東日本と中部圏は、LNG依存4〜5割という「細い一本の橋」の上に立っています。
この非対称性は、エネルギーだけでなく、企業の立地や人口の流れにも、じわじわと反映されていくでしょう。
第4章 なぜ第三次世界大戦は既に始まり、終結に向かい始めたのか
多くの人が今、「イラン戦争が第三次世界大戦に発展するのかどうか」を心配しています。
しかし私は、時間軸を少し引いて眺めると、「第三次世界大戦はすでに始まっている」と同時に、「今回のイラン攻撃を境に終結フェーズに入り始めた」と考える方が現実に近いのではないかと感じています。
これまで私は、ウクライナ侵攻、ガザ戦争、イラン核施設攻撃、ベネズエラ侵攻、今回のイラン本土空爆とホルムズ封鎖を、「第三次世界大戦」として一括してきました。
しかし、ハメネイ爆殺という一点で、状況は少し違う局面に入ったように見えます。
この一撃で、いちばん震え上がっているのは、おそらくプーチンです。
イランは、ロシアにとって単なる友好国ではありません。
シリア内戦ではアサド政権を支える同盟国であり、武器とドローンを相互に融通し合う軍事パートナーであり、カスピ海と黒海を挟んだ「南側の盾」でもありました。
イランという盾があるからこそ、ロシアは黒海とコーカサスの背後をある程度安全圏と見なし、ウクライナに大きく兵力を割くことができた面があると思います。
そのイランの最高指導者が、米・イスラエルの連携攻撃で殺害され、中枢が直接叩かれるところまで来た。
これはプーチンにとって、「次は自分たちがこのレベルで狙われてもおかしくない」という冷や汗もののメッセージになっていると私は見ています。
しかも、イランが長期的に弱体化すれば、黒海・コーカサス・中東におけるロシアの安全保障環境は一気に悪化します。
南側の盾が抜かれれば、ロシアは、黒海周辺とカフカスを含めて「がら空き」の感覚を持たざるを得ません。
そのため、プーチンはここに来てウクライナ停戦に応じるようなサインを出し始めているように私は感じます。
自分の背後を守ってくれていたイランという駒が盤上から消えかけている以上、ウクライナでもこれ以上の長期消耗戦を続ける余裕はない、と理性的に判断し始めたとしても不思議ではありません。
同じことが習近平にも言えると思います。
中国にとって、ベネズエラとイランは、アメリカに対する「遠方の駒」でした。
南米のベネズエラは、アメリカの裏庭に対する圧力点であり、原油と鉱物の供給源です。
イランは、中東と欧州のエネルギー秩序を揺さぶるための重要なパートナーであり、「アメリカを二正面作戦に引きずり出す」ためのカードでした。
そのベネズエラがすでに軍事的・政治的に揺さぶられ、イランがハメネイ爆殺と本土空爆で大きな打撃を受けた。
中国側から見れば、飛車と角が一気に落ちた将棋のような状態です。
これ以上アメリカとの全面対決を続ければ、本土に火の粉が飛ぶ前に、遠方の駒がすべて刈り取られてしまう。
習近平にとって、今回のイラン攻撃は、「自分の城ももう安全ではない」というシグナルとして響いているはずだと私は思います。
だからこそ私は、「イラン戦争は第三次世界大戦の始まりなのか」という問いに対して、少し違う答えを出したいと感じています。
イランが落ちれば、中国もロシアも、大戦を続ける余地を急速に失っていく。
イランという盾と駒を失ったロシアは、ウクライナでの停戦を受け入れざるを得なくなる。
イランとベネズエラという飛車角を落とされた中国も、対米対立のテンションをどこかで下げざるを得なくなる。
この意味で、私は今回のハメネイ爆殺とイラン本土空爆を、「第三次世界大戦の初期段階」ではなく、「第三次世界大戦を終戦方向に向けるための決定的一手」として捉えています。
戦争が直ちに終わるわけではありません。
しかし、ロシアと中国の側から見て、「ここから先は負け戦になる」と悟らせる境目として、2026年のイラン戦争は機能しているように思えるのです。
第5章 なぜ世界大戦で沈む国と昇る国が生まれるのか
世界大戦は、単に多くの国が戦う大きな戦争ではありません。
それは、古い秩序とレジームを壊し、新しい覇権と勢力図を作り直す装置でもあります。
第一次世界大戦は、ドイツ帝国やオーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国といった旧来の王朝体制を崩壊させ、イギリスの覇権に影を落としつつ、アメリカを新たな中心に押し上げました。
第二次世界大戦は、ナチスと日本帝国、植民地帝国を終焉させ、米ソ二極と戦後リベラル秩序を生み出しました。
では、第三次世界大戦は誰を沈め、誰を浮かび上がらせるのでしょうか。
私は、「平成=プレ大戦期に勝ち組だった国や地域」が、この戦争を通じて地盤沈下していくと見ています。
その象徴が、ドイツと韓国です。
ドイツは、自動車と機械を中国という巨大市場に売り続け、エネルギーではロシアのガスに深く依存してきました。
韓国も同じく、自動車や半導体、スマホ、造船などの主力産業を、中国市場と中国のサプライチェーンに強くつなぎ込んできました。
平成期、このモデルは見事に成功していました。
ドイツも韓国も、「輸出立国」として高付加価値製造業を回し、雇用と賃金と社会保障を支え、EUやアジアの優等生として讃えられてきたと言えます。
しかし第三次世界大戦期に入ると、この「成功の構造」がそのまま「致命的な弱点」に変わります。
ロシア制裁によってドイツは安価なパイプラインガスを失い、中国との距離は安全保障上のリスクに転じました。
韓国も米中対立の板挟みのなかで、中国との貿易・投資を以前のような形で続けることが難しくなっていきます。
平成の勝者は、令和の第三次世界大戦において、「中国とロシアに賭けすぎた側」として沈み始めていると私は感じます。
その一方で、イタリアのような、平成期には「EUの問題児」「停滞国」と見られてきた国が、じわじわとポジションを変える余地を得ています。
イタリアは成長率こそ低かったものの、エネルギーと産業のポートフォリオは比較的分散しており、ドイツのようにロシアガスと中国市場に首根っこを押さえられてはいませんでした。
北部の工業地帯、中部の中小製造業、南部の観光と農業。
どれも派手なモデルではありませんが、戦時経済のなかでは、「あまりにも一極依存になったドイツ」より柔軟である可能性があります。
第三次世界大戦のあと、ドイツが「平成型成功モデル」の限界とともに大きな調整を迫られるとき、イタリアのような“周縁の中堅”が、欧州のなかで相対的に浮かび上がるシナリオは十分に想定できます。
同じことがアジアでも起きるはずです。
中国と韓国、東京圏といった平成の東アジアの主役が、エネルギーと安全保障のリスク、デカップリング、人口減で逆風を受ける。
その一方で、これまで“周縁”だった西日本や台湾、インド、ASEANの一部が、工場再配置とエネルギー再編の受け皿として浮上していく。
世界大戦は、国境だけでなく、産業構造とサプライチェーン、そして心理的な「信用マップ」まで書き換えます。
ドイツと韓国は平成の成功によって、あまりにも中国に寄りかかりすぎました。
イタリアや西日本は、むしろ平成の停滞と敗者感ゆえに、「中国に賭けすぎなかった」。
その差が、第三次世界大戦後の世界で、「沈む側」と「昇る側」の差として現れてくると私は見ています。
第6章 なぜトランプの敵は習近平だけなのか
第三次世界大戦期において、トランプという人物がどの国を敵と見なし、どの国をカードとして扱うのかは、日本にも直接影響してきます。
トランプが公然と敵視してきたのは、中国と習近平です。
関税戦争、サプライチェーンの再編、「チャイナ・ショック」の是正といった一連の動きは、バイデンではなくトランプが先に本格化させたものでした。
これに対して、金正恩やプーチンへの態度はまったく違います。
金正恩とは複数回の首脳会談を行い、「ラブレター」と呼ぶ書簡を交わし続けました。
プーチンについても、「優れたリーダー」「強い指導者」と評価する発言を繰り返してきました。
私は、トランプの世界観では、
最大の敵は習近平の中国、
金正恩は演出と取引の相手、
プーチンは条件付きで組める「文明的ライバル」
という位置づけになっていると見ています。
北朝鮮は、戦後日本にとって「脅威」であると同時に、アメリカにとっては「日本に米軍を駐留させ続ける口実」であり、日本を日米同盟の枠内に閉じ込めておくための便利な存在でした。
北朝鮮のミサイルと核があるから、在日米軍基地が必要になる。
北朝鮮の暴発があるから、ミサイル防衛や日米安保の強化が必要になる。
そう考えると、「北朝鮮は日本封じ込めのためにアメリカが利用してきた影の同盟国だった」という見方も、あながち荒唐無稽ではないと私は思います。
トランプにとって北朝鮮は、倒すべき敵ではなく、「見せ場を作れる交渉相手」です。
ロシアも、対中国戦略のなかで、完全に敵に回すより「条件付きで距離を取らせたい相手」に近い。
従って、トランプの戦争は中国を中心とした戦争であり、北朝鮮とロシアはそのためのカードとして位置づけられます。
第7章 なぜ平成の勝者が沈み、平成の敗者が浮かぶのか
ここで、「平成」という日本ローカルの年号が、なぜ世界レベルの話に関係してくるのかを少し整理しておきたいと思います。
私は以前、「平成は本当に失われた30年だったのか」という記事で、日本の元号と世界史のリズムの不思議な符合について書きました。
元号とは、もともと中国で発達した「時代に名前を与える統治技術」であり、王朝交替とともに時代の空気をリセットする装置でした。
現代でも独自の元号を使い続けているのは、日本だけです。
明治、大正、昭和、平成。
この四つの元号を並べると、激動と安定、陽と陰がほぼ交互に現れていることがわかります。
明治と昭和は「陽」、大正と平成は「陰」。
そして令和は、明らかに「陽への再転換」の時代のように、私には感じられます。
平成という年号は、日本人の頭の中だけの区切りではなく、日本の社会意識と政治・経済の判断そのものを縛る“フレーム”として働いてきました。
バブル崩壊からデフレ、少子高齢化、中央集権と既得権の固定化。
日本は平成の30年間、「陰」の時代として、変化よりも現状維持を選び続けてきたと思います。
一方で、世界から見れば、この平成期はまさに「グローバル化と中国台頭の時代」でした。
アメリカも、欧州も、中国も、日本も、平成という時間帯の中で、「中国を世界経済に組み込み、そこに成長の期待を賭ける」戦略を共有していました。
ドイツと韓国は、そのゲームで最も大きな果実を得た国です。
日本の中でも、東京と名古屋は、平成の勝者側にいました。
だからこそ私は、「平成の勝者」と「平成の敗者」というカテゴリを世界的なレベルで使っています。
平成の勝者とは、グローバル化と中国市場、安いエネルギーに乗って伸びた場所のことです。
ニューヨーク、カリフォルニアとテキサス、ロンドンとドイツ、北欧とオランダ、中国沿岸部と韓国、東京圏と名古屋。
反対に、平成の敗者とは、そのゲームに乗り切れなかった、あるいは乗る前に疲弊した場所です。
アメリカのラストベルト、日本の地方と西日本、欧州の南欧や東欧。
第三次世界大戦は、この平成の座標をひっくり返す戦争だと私は感じています。
中国台頭と安価なロシアガスを前提にしたモデルが壊れれば、平成の勝者は直撃を受けます。
金融とITとサンベルトだけに賭けたアメリカは、ラストベルトの再工業化なしには持たなくなります。
ドイツは中国とロシアに寄りかかりすぎました。韓国も同じです。
東京と名古屋も、「中国とグローバル化の中心」に居続けたという意味で、平成の勝者側にいます。
一方で、平成の敗者たちは、実はリスクを取っていなかったがゆえに、今回のショックで「そこまで失うものがない」立場にいます。
アメリカのラストベルトは、工場回帰の本命になります。
イタリアや南欧は、ドイツほどの中国・ロシア依存ではなかったので、ほどほどの位置から浮上する余地があります。
日本でも、西日本は、東京ほど中国中心の金融・サービス経済に乗っておらず、エネルギー構造もLNGではなく石炭と原発に多くを残しました。
日本人は、「昭和」「平成」「令和」というラベルで時代を直感的に捉えます。
昭和=戦争と高度成長、平成=グローバル化と停滞、令和=動乱と再編。
日本人が平成を「失われた30年」と呼ぶとき、世界はそれを「中国とグローバル化が最も輝いた30年」として記憶するだろうと私は思います。
そして令和の第三次世界大戦は、その30年を清算する戦争になるのだと感じています。
平成の勝者が沈み、平成の敗者が浮かぶ。
その転換点に、私たちは今立っているのだと思います。
そして私は大阪で、「平成は本当に失われた30年だったのか」と自問したあの感覚の続きとして、令和=第三次世界大戦期の地殻変動を見つめています。
第8章 なぜ西日本が浮上し東日本は沈むのか
最後に、話を日本の東西に戻します。
私がこの論考全体を通じていちばん言いたいのは、「第三次世界大戦後、日本の重心は東から西へ移動する」ということです。
戦後日本は長らく、「東京こそが日本である」かのように振る舞ってきました。
政府・官僚・日銀、メガバンク・商社・大企業本社、キー局・大手新聞社が集中し、アメリカから見ても「日本政庁」として扱いやすい都市でした。
しかし私は、東京はあくまで「アメリカ時代の日本政庁」であり、日本の国富を吸い上げるためのハブだったのではないかと感じています。
エネルギーの視点から見ると、東日本と中部圏は非常に脆い構造にあります。
原発は長く止まり、発電の4〜5割をLNG火力に依存し、石炭火力は気候政策の名のもとに休廃止が進みました。
ホルムズ海峡が詰まり、LNG備蓄が3週間分しかないことが明らかになったとき、電気代と停電リスクに真っ先に晒されるのは、東京と名古屋を抱えた東電・中部のエリアです。
これに対して、西日本は違う構造を持っています。
関電と九電は、原発と石炭火力という“戦時電源”を抱えつつ、LNG比率を相対的に低く抑えてきました。
北海道電力も原発ゼロながら石炭依存が高く、LNGショックに対して一定の耐性を持っています。
中国沈没と第三次世界大戦期の工場回帰が重なれば、「中国から引き上げた工場」を日本に戻すにしても、電気代が高く停電リスクのある首都圏ではなく、電源が多様でコストも比較的抑えられる関西・九州・北海道に置きたいという企業の判断はごく自然なものになると私は見ます。
政治の面でも、東京の自民党本部と霞が関が「日本政庁」としての統合力を失いつつある中で、奈良の高市早苗と大阪の吉村洋文という、「畿内に根を持つ権力ブロック」が台頭しています。
自民と維新の連立は、ある意味で「畿内政権」の東京出張所に過ぎないのかもしれません。
私はこう考えています。
西日本こそが本来の日本であり、東京はアメリカの日本政庁として、国富を吸い上げてきたに過ぎなかったのではないか、と。
第三次世界大戦のただ中で、この構図がようやく反転し始めています。
エネルギーでも、産業でも、政治でも、「日本の本体」は東ではなく西にあったという事実が、遅れて可視化されつつあるのだと私は感じています。
終章
イラン戦争がいずれ終わり、ウクライナの戦線がどこかで固定され、この長い第三次世界大戦が一段落したとき、歴史教科書にはおそらくこう書かれると思います。
「2020年代前半、ウクライナ、ガザ、イラン、ベネズエラなどで連続した紛争は、後に第三次世界大戦の初期〜中期段階と位置づけられた。
この戦争で、中国・ロシア・中東・韓国など平成期の勝者は没落し、アメリカと、その周縁にいた西日本、ラストベルト、南欧などが浮上した。」
その片隅に、日本について次のような一文が添えられていてもおかしくないと私は思います。
「この戦争を通じて、日本の重心は東から西へと移動した。」
電気料金の請求書、LNG3週間のニュース、ホルムズ海峡封鎖のテロップ。
それらは一見、日々の暮らしの不安でしかありません。
しかし私には、それらが「東京の時代の終わり」と「西日本の始まり」を告げる小さなサインに見えます。
私は大阪で、この世界大戦の始まりと終わりを、東日本の停電リスクと西日本のエネルギー構造、そして東京と畿内の権力の揺れを通して見ていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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副首都構想に繋がりますね
そうですね! あらゆることが大阪に追い風になっているように感じます。 大阪も電気代は上がるでしょうが、政府の補助もあるのではないでしょうか。
大丈夫ですよ、さすがに日本人も日本政府も電力会社も馬鹿じゃないので、OCCTOという機関を作って隣の地域に電力融通するだけじゃなくて、日本全土で見ています 結構、関西電力、夏は融通してもらってますよ https://www.occto.or.jp/houkokusho/2025/denryokujukyukensho_20251024.html https://ww…
「OCCTOがあるから全国で見ていて大丈夫」というご指摘ですが、そこには二つ大きな前提抜けがあると思います。 第一に、日本は「一つの電力網」ではありません。東日本は50Hz、西日本は60Hzで、周波数の違いをまたぐには周波数変換設備が必要です。東京電力が直接やり取りできるのは、同じ50Hzの東…