雄同士だからこうなった
原稿してたらパロディではない槍弓を書かねばならない衝動に突き動かされた。
最初は格好良い槍弓ですよ。
槍弓というか腐的要素がほとんど無い罠。
最後の方までは。
オチはまあ、いつものことです。
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走る、走る。
暗闇の森の中、僅かな星明かりを頼りにただ走る。
追ってくるはクランの猛犬、気を抜けばあっという間に捉えられてしまう。
森の出口はあと少し、そこから先は逃げにくいが同時に狙撃もしやすい。
ランサーとの推定距離は約500m。
サーヴァントであれば数秒の距離だが、森の中では多少なりとも速度は落ちるだろう。
視界が開ける。
目の前の建物の屋上に向かって飛びながら弓矢を投影。
身体のバネだけで森の方角へ振り向き、ランサーが出てくるであろう場所を見据える。
あの男には矢よけの加護があるが、それは狙撃者が彼の視界に収まって居る場合のみ。
ヤツが私を見つける前に射ってしまえばいいだけのこと。
要するに、かくれんぼだ。
見つかる前に鬼を倒してしまってもかまわんのだろう?
「仕合おうぜアーチャー」
「断る」
もう何回言われたか分からない誘いを、毎回同じ言葉で断る。何でだよいつになったら受け付けてくれるんだよと言われるが、そんな無駄なことにかまけたくないと何度言ったら分かるのだ。
「オマエにゃ戦闘衝動とかそういうモンはねえのかよ」
「無い。……とまでは言わないが、貴様のように発散したいとも思わん程度だ」
サーヴァントである以上敵を倒せという戦闘衝動があるのは事実だが、それを消化しようという気にはさらさらならない。第一、今現在聖杯戦争は中断中だというのに何故こうも戦いたがるのか。
「だって、オレの願いは思う存分戦うことだし」
「趣味か貴様」
そしていい年をした男がだってとか言うな。尚更付きあえん。
「いい加減無視続けるならオレにも考えがあるぞ」
「馬鹿の考え休むに似たり、という諺を知っているかね?」
「知らねえが貶されてるのは分かったぞコノヤロウ。聞く前から否定しやがるんじゃねえよ」
どうせ否定するのだから無駄は省いた方が良かろう。いや、もっと良い方法があった。
「ではなランサー。君が中断を破ろうとしていることは 監 視 役 の言峰神父に忠言しておこう。ルールを守らないサーヴァントが居るのは彼にとっても問題だろう」
ランサーのマスターが言峰綺礼なのは最早暗黙の了解なのだが、敢えて監視役と強調する。立場上、形だけでも各サーヴァントやマスターにルールを守らせなければいけない言峰綺礼の立ち位置を利用する訳だ。
案の定、それを聞いたランサーの顔がうっ、と引きつった。仲が良くないのは知っているが、この様子では大分虐待(?)されているのかも知れない。
が、私には関係ない。
「オイ待てアーチャー、ちょ、止めろよマジで!」
「ふむ、では今回は見逃してやるが、今後の君の態度次第では問答無用で通報するから、覚えておきたまえ」
だからその手を放せランサー。痛い痛い肩が痛いぞこの馬鹿力が!!
その会話から数日後、突然奇襲をかけられた。
あの会話は何だったのだ貴様。言峰綺礼に言われても良いのか。
「どうせ我慢できなくなってオマエに喧嘩売る羽目になるんだから、早めにやっちまったほうがオレもストレス溜まらないし上手くいったらアーチャーさんもストレス発散になって許してくれるかも知れませんよ、って小英雄王が」
「余計な入れ知恵を……!!」
剣戟を交わしながら語られた事情に、ちっ、と舌打ちする。小さくて性格が良くなったように見えても根本的には変わらないなあの男……!
凛に知らせようと思ったが、彼女が今大きめの魔術のために工房に籠もりっきりで、緊急事態以外声をかけるなと言われていたのを思い出し踏みとどまる。
これは緊急事態ではないだろう、多分。
「一つ聞くが、君は戦いたいだけであって、殺す所まで行かないように手加減をするつもりはあるのだろうな」
間合いを取って呼吸を整えながらの問いに、ランサーは勿論だと答えた。これはあくまでも仕合いで、殺意はないと。
「結果的に死んじまうことはあるかも知れねえけどなぁ」
「たわけ」
折角こうやって交われるんだし、オマエ相手に手加減なんてもったいねえ事したくねえよ、等とたわけたことを言うランサー。どうせテメエもそうだろう、か。
「ふん、全力の貴様に手加減する必要などあるまい?」
ランサーがこちらを殺す前に、私が彼を止める。又は、上手に停戦に持ち込む。
「おら、考え事してよそ見してるんじゃねえよ……!!」
突き出された槍をいなして、私は自らのアドバンテージを確保すべくランサーに背を向けた。
「逃がすかよ!!」
逃げているつもりはないのだがねランサー。これは戦術的後退という物だ。
しかしまあ、こちらの狙いを教えてやる必要もあるまい。
そして、ステータス的に敏捷度の勝るランサーから逃れるべく、私は障害物の多い近くの森へと走り込んだのだ。
周りに被害を出さないように可能な限り威力を絞り込んだ一撃は、命中こそしなかったがその爆風で少なからず相手の動きを止めることが出来た。
間髪を入れずに一射、二射と連射する。土煙で視界が遮られている間、彼の矢よけの加護は無効になる筈。その隙を狙っての射撃であり、土埃が収まったら近接戦に持ち込まなざるを得ない分少しでもヤツのダメージを狙いたい所だ。
もう一射、と弓を引いたところで、土煙の中から何かが飛び出すのが見えた。
急いで弓を消し双剣に持ち換え、影が頭上から飛んできたのを反射だけで防ぐ。
武器のぶつかる甲高い音がして、青い影が地面に降り立つ。まずい、長槍の間合いだ。
「やりたい放題やってくれたモンだぜ。今度はこっちからの行かせて貰う……!!」
ランサーの手から繰り出される、赤い閃光に等しい神速の突き。
戦闘経験に因る予測でそれを捌くが、このままでは確実に押され負けてしまう。
あれだけ弓で行ったのに大してダメージを受けていないなどと、流石にアイルランドの大英雄様は基礎能力が高くていらっしゃるものだ!
「本っ当に、貴様はどうして私などにこだわるのか意味がわからんな……!!」
「何の話だぁ?!」
「私などより余程、セイバーやライダーの方が君の相手に相応しいだろうに! ああ、クランの猛犬殿は女性とは戦わないのだったかね!」
主君と女は殺さなかった、というのが彼の逸話に置ける定説だ。ならばサーヴァント同士とはいえ、女性であるセイバーとライダーにこういった泥臭い仕合を申し込むのは気が引けるのだろう。
実力・知名度・霊格全てにおいて、彼女たちならばランサーの相手に申し分ない。私では彼の相手に役者不足甚だしいというものだ。
ぴたッ、と、何故かランサーの槍が止まった。
「オマエそれ、本気で言ってるのか」
「何がだね?」
何故か無表情に私を見つめるランサーに首を傾げる。何かおかしいことを言っただろうか。
「テメエがオレの相手に相応しくないとか本気で思ってるのかよ」
「事実だろう。彼女たちに申し込めないか申し込んでも交わされるから、私にこうして突っかかってくるのだろう?」
いい迷惑だが、彼女たちに迷惑が掛かるよりはいいのだろうな。
そう付け加えると、ランサーは更に無表情になった後、一気に肩を落として脱力した。何だその溜息は。
「いや、オマエ前から鈍いとは思ってたが、そうか、そうきたか」
「鈍いとはなんだね。それより、もう戦わなくていいのか? ならば帰るぞ」
かなり魔力も消費してしまったが、これならば凛に特別に供給して貰うまでもない。マナの多いところで休んでいればそれなりに格好も付く。
帰るぞ、と踵を返そうとしたところで、ランサーに腕を掴まれた。
「放せ」
「まあ、オレの話聞いてけって、な?」
何故そんなしょぼくれた顔をしているのだランサー。
青い髪の中に倒れた犬耳と腰辺りにしょぼくれた尻尾が見えた気がするのだが気のせいか。
「オレはだな、オマエがいいの。セイバーやライダーの代わりじゃなくて、オマエがいい」
「そ、そうか」
赤い瞳を真っ直ぐに向けられて真摯に言われる。近い顔が近いぞランサー。
「女なら花とか服とか贈ったり、無理矢理奪うとか出来っけど、オマエは男だからそんなことしても意味ねえだろ」
花? 服? 確かにあまり興味はないが、いったい何の話だランサー。戦闘に花も服も必要ないだろう。
「だから、オマエと戦って勝って、オレがオマエより上で力があるって証明すんのが一番納得されるんじゃねえかって考えたの、オレは! 敗者が勝者のものになるのは当たり前だろ?!」
「いや、私は凛のサーヴァントだから負けたら消えるだけで君のものには」
ならない、と最後までいう前に、ランサーの近すぎた顔が更に近づいてぶつかった。
魔力の供給。
「オレは! オマエが好きなんだっつーの! 毎日オマエの顔見て飯食って一緒に寝てえっちなこともしてオマエと二人で幸せになりてえ! 分かったか!!!!!!」
「言葉の意味は理解できるが文章が理解できない」
衝撃的すぎる展開に頭が動かない。
ついでに筋力Bに掴まれてるせいで逃げることも出来ない。
心も体もフリーズ状態の私に、再びランサーの顔が近づく。
またまりょくきょうきゅうされるたすけてじいさんーーー!!!