シンデレラ
シンデレラの槍弓√です。
こちらも、尻叩きの為に公開します。
1/18 更新しました。あの日が再び
1/30 やっと書けた…まだまだ続きます
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桜がおどる春
アーチャーは担任に頼まれて、配布するプリントを両手に抱えて階段を上っていた。
あともう一息、という所で上履きがするりと右足から逃げてしまい、上履きを迎えに上った階段を降りようと体を反転させると、視界に綺麗な青色が飛び込んできた。
(…美しいな。染めたのだろうか?でも、傷みもない。地毛なのか?)
自分が、片足だけ上履きが脱げているという、間抜けな格好をしているにも関わらず、男子生徒の青い髪に見とれていると、青い彼が自分の落とした上履きを拾ってこちらに来た。
「ほら」
「すまない、感謝する」
足元に置いてくれると思った矢先、彼が不意に跪いてアーチャーの右足を手に取った。
そして、丁寧にアーチャーの上履きを履かせたのだ。
その姿はまるで、あの絵本に出てくる王子様のようで───
「って、何を、、、!?」
「あ?これ、お前さんのだろ?」
「いや、そうだが…」
あっけらかんと言い放つ彼に戸惑っていると「次は気をつけろよ、シンデレラ」と笑いながら青い髪を揺らしてその場を去っていった。
「…美しかったな」と思わず口に出してしまったところで、自分が何故ここにいるのかを思い出した。
早くプリントを教室に持っていかねば。
抱え直したプリントがやけに軽いので、腕の中を見てみると嵩が半分くらに減っていた。
そう言えば、「気をつけろよ」と言った彼が現れた時は手ぶらだったのに、去る時に何か持っていた気がする。
まさか、と思い教室まで駆け上がってみると、先程の青い髪が自分の教室に入って行くところが見えた。
「お、来たな。」
「プリントまで手伝ってもらって、すまない。」
「そういう時は、すまないじゃないだろう」
「え、あ。ありがとうございます」
よろしい、と笑いながらじゃあな、と教室を出ていく背中にぽかんとしていると「衛宮さん、あいつに何かされたのか?」と声をかけられた。
振り返れば、そこにも美しい青色。
「君は確か、クーフーリン・A・プロトさんだったか?」
「ああ。プロトでいい」
「私もアーチャーでいい。ところで君は彼とは兄弟なのか?」
「そうだぜ。二つ上の兄貴は双子でな、あいつはランサーだ」
(らん、さー、か)
確かにあの真っ直ぐな背中にピッタリな名前だと思った。きっと彼自身も、槍のように一直線で、無駄に飾ることのない人なのだろう。
チャイムが鳴り、プロトとの話もそこそこに席に着く。
授業が始まり、ノートを取ろうと集中するも頭を占めるのは、あの青い髪、、、───ランサーの事だった。
*
学校にも慣れ、そろそろ中間テストが始まろうかという頃、アーチャーは放課後の教室でプロトに勉強を教えていた。
スポーツ推薦で入った彼は、日頃部活に没頭しているせいで、勉学の方が少しばかり疎かになっていたのだ。
「〜であるから、ここはこの公式を」
「…。」
「理解できるか?」
「日本語で話してくれ」
「…少し休憩しようか」
十分ほどの休憩を与えると、彼は「飲みもん買ってくる」と足早に教室を出てしまった。
疲れているのは彼だけではなく、自分もだった。
昨日も夜遅くまで勉強をして、朝早くに三人分の弁当と朝食を作り、ずっと授業を受けていたのだ。さすがに、少し眠くなってきた。
彼が戻ってくるまで、少しだけ眠ろうと机に伏した。
どれ位眠っていただろうか、彼は戻ってきただろうか。なんだかいい匂いがする。それに、頭を撫でられている、気がする…。
ゆるりと目を開ければ、赤い瞳がこちらを見ていた。
「あ、起こしちまったか」
「…らん、さー?」
「おう。」
おはよう、と笑う彼に目が冴えた。
「な!な!なぜ、ここにいる!?」
「覗いたらお前さんが寝てたんでな」
「寝てッ!!!」
寝顔を、見られた。しかも、ランサーに。
恥ずかしい、死にそうだ。
いや、なぜ、寝顔を見られて恥ずかしいと思うのか。プロトには見られたところで何も思わないのに。
そこで、肩にかかる重さに気づいた。
自分のものより、一回りは大きいジャケット。
「これは」
「俺のだ。いくら春だからって、窓際で寝てちゃ風邪引くぞ?」
「あ、ああ。すまない。」
少しいい匂いのするジャケットを彼に手渡す。
その際に少しだけ、彼の指が私の指と触れ合った事に、また顔が熱くなる。
「だから、こういう時は?」
「ありがとう」
「よろしい!」
いつかのような会話に自然と頬が緩む。
あの時は、鮮やかな青にしか目がいかなかったが、よく見れば顔も、どこぞのアイドルかのように整っている。
なるほど、プロトの顔も綺麗だとは思っていたが流石兄弟だ、と一人納得する。
「待たせたな、アーチャー!」
「よう、プロト」
「ランサーがいるなんて珍しいな」
「ちょっとな。」
プロトが買ってきてくれたカフェオレを受け取りつつ、立ち上がるランサーを横目に見る。
「先に帰るのか」
「ああ。あいつが来たしな」
そう言われ、入口を見てみると、ランサーと同じ顔の男がひらひらと手を振っていた。
「俺ももう少ししたら帰るわ」
「おう。じゃあな、プロト、アーチャー」
「ああ。」「おう」
*
帰り道、同じ顔をした男が今にも踊り出しそうだった。
「一目惚れってすげぇな」
「なんか言ったか、キャスター」
「お前の顔が気持ち悪いって言ったんだよ」
「ンだと〜?」
「まぁ、アーチャーって奴はお前らの噂どうり綺麗だったな」
褐色の肌に雪のような白い髪。
影をつくる長い睫毛に縁取られた、鋼色の瞳は意思が強そうに見えて、それも良い。
まぁ、有り体に言うと、俺らの理想のタイプの女だった。
「キャスター」
「あ?」
ランサーが不意に足を止める。
「今回は、アーチャーは、だめだ。」
「…。」
「俺は、ちゃんと俺として、あいつと向き合いたい。」
両親も友だちも見分けがつかない、俺達は
全てのことを二分割してきた。
ランサーに告白した女にキャスターが返事をしてもバレたことはなかった。
デートの度に入れ替わったし、授業でも、バイトでも。
全てが二人のものだったのに、こいつは、今回だけは、俺と分けるつもりはないと、ランサーとして、一人として向き合いたいと、本気で言っているのだ。
「…そんな事して意味があるのか?あいつだって、俺とお前の見分けなんて、プロトしかできなかろうて。」
「それでもいい。」
「ほう?」
「見分けられなくても、何でもいい。これは俺の我儘だが、この思いは俺だけのものにしたい。」
「…。」
「ダメか?」
双子の片割れが、こんなにも本気になっているのに、それを応援できなくて何が相棒だろうか。
「せいぜい頑張れよ」と瞼にキスを贈れば
嬉しそうに「ありがとう」とキスを返される。
「じゃあ、今日の飯は豪勢にしないとな」
「なんでだ?」
「お前の初恋を祝って」
「!そだな!!」
「まぁ、金がねーから、うどんだけどな」
揚げを一つ多くしてやる位はしてやろうと
足元に影を伸ばしながら、同じ足並みで歩いていく。