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なぜ私はアメリカの入国審査で「不法移民」あるいは「テロリスト」と疑われ、「別室」に連行されたのか?
2026年3月15日、2か月にわたる「世界周遊ひとり旅」の初日。メンタルが崩壊しかける信じがたい出来事が起こった。
羽田からニューヨークのJFK国際空港に到着するまでは何もかも順調だった。カナダ上空では、幻想的な緑色のオーロラを眺めることができ、その感想を隣のアメリカ人とシェアするなど、「さっそく旅しちゃっている自分」に心は踊った。
日本を飛び立ってから13時間後、空港に降り立ち、イミグレの行列に並ぶ。審査官からの質問を、何度も脳内でシミュレーションする。
何も問題ない。
英検4級の僕は、海外旅行をするとき、いつも入国審査でテンパってしまう。でも今回の旅のために、半年以上にわたって英語の勉強をしてきた。だから何も問題ないはずだ。
しかし、まさかの大問題が発生したのである。
審査官とのセッションを経て、僕に下された結論は「別室」での取り調べであった。
「なぜ、善良な市民である僕が!」「犯罪歴もない小市民の僕が!」「半年も健気に英語を勉強して、今回の貧乏旅を心待ちにしていた僕が!」どうしてこんな目に……。
いま思うと、その理由は4つ考えられる。

■理由1:世界一周の理由を明確に伝えられなかった

審査官から「いつ日本に帰るのか? 帰りのチケットを見せろ」と言われたとき、僕は今回の旅程の全チケットを提示せざるを得なかった。日本に帰るのは2か月後であり、その間、20か国ほどをめぐるチケットである。
すると審査官から、「なんでドーハに2回も行くんだ?」「ボリビアに何しに行くんだ?」みたいなことを聞かれ、僕はひたすら「バケーション!」「サイトシーング!」と連発していた。
その結果、ものすごく不審がられてしまったのである。「こいつはアメリカで不法滞在するつもりでは? あるいはテロリストでは?」と。
ドーハはトランジットで利用するだけだし、ボリビアで革命を起こそうなんてしていない……ただ、ウユニ塩湖に行きたいだけなのに泣。
現在の中東情勢、そしてアメリカの不法移民へのスタンスを見るに、「42歳という年齢」の「アジア人」で、「片言の英語」しか話せず、「中東を含めた謎の世界旅行」をしようとしている男は、不審者以外の何者でもなかったのである。
よく「日本のパスポートは世界最強」とか言っている人がいるが、それはもはや過去の話なのかもしれない……。いや不審者は、何人であろうと不審者なのだ。

■理由2:滞在先がエアビーだった

疑惑に拍車をかけたのは、僕の滞在先がホテルではなく、エアビーだったこと。
2023年から、ニューヨークでは、民泊が事実上禁止されている。民泊のせいで家賃が高騰し、住宅不足を招いているからである。滞在者の民度、治安の問題もあるだろう。日本でも同様の問題は起きているが、ニューヨーカーにとっても民泊は迷惑な存在なのだ。
僕が滞在するのは隣のニュージャージー州の民泊だったが、「42歳のおっさんが民泊に泊まる」=「貧乏」=「不法移民の可能性あり」という図式が成り立つのだ。

■理由3:現金をほとんど持っていなかった

さらには、キャッシュの額を聞かれた際、チップ程度の額しか持っていなかったので、そのまま「30ドル」と伝えたら、「やはり貧乏。こいつはやはり不法滞在」とさらに怪しまれた可能性がある。

■理由4:ルックスから漂う、そこはかとなき貧民感

世界を旅する人たちの多くは、学生か若者だろう。
彼ら彼女らが貧しいのは当たり前だが、42歳にもなって汚らしい恰好をして旅をしていたら、「怪しい」と思われるのも仕方がない。
実際、僕は見た目からして、貧乏そうである。
旅の前、妻に「スリを警戒している」と相談したら、「いやあんた、どう見ても貧乏そうに見えるから大丈夫でしょ」と言われた。
そのくらい私の風貌からは、そこはかとなき貧しさがにじみ出ているのである。

■「別室」で起きたこと

別室に連行された僕は、別の審査官から「事情聴取」された。
「バケーション!」「サイトシーング!」では怪しまれるだけなので、「僕は本を書くのが仕事だ。世界を旅して、その経験を本にするんだ!」と、ますます怪しまれかねない話をすると、「え、そうなの? 本って何? もしかしてマンガとかアニメ関係? ワンピース関係?」などと、眼光鋭い審査官の瞳が、マンガのようにキラキラ輝き始めたのである。
「マンガではないです」「じゃあどんな本?」「知らないと思いますが、中村天風の本とか」「てんぷー?」みたいな会話に移行し、アマゾンで自分の本を見せて、「これあんたが書いたのか。ライターなのか」と納得してもらえた。最終的には、「Have a nice trip!」と言われて、ようやく解放されたのだった。
別室で気づいたのは、「ライター」という職業が、意外にも信用度が高かったことである。いまの日本だと、「ライター」と名乗るのは怪しさが付きまとうが、アメリカでは社会的地位として認められているようだった。

■世界に拒絶されても、世界を愛したい

今回の件は、自分の歳、自分の老い、自分の風貌、自分の英語力のなさ、そういったもろもろのコンプレックスを突きつけられた気がして、空港の外に出ると、涙があふれてきてしまった。
僕は幼いころから、アメリカ映画や小説が好きで、ずっと憧れていた国だ。
その国から、「お前は入国できない」と言われることは、愛している人に拒絶されたような、心の痛みをともなう出来事だった。こんなに好きなのに、どうして……と。
心を落ち着かせようと、空港の外の端っこのほうでしょんぼり体育座りをし、加熱式タバコを隠れて吸っていたら、パトカーがサイレンを鳴らして近づいてきた。僕は走って逃げた。メンタルは崩壊寸前だった。
3日後の今、この文章をニュージャージーの民泊で書いている(3月18日AM5時)。
今回の旅の経験は、1冊の本として出版することが決まっている。
途中で逃げ出すことはできない。
この3日間だけでも、さまざまな「トホホエピソード」を経験した。
旅の素人の僕が経験した、恥ずかしい話を、包み隠さず書きたいと思う。
Xで旅のことをつぶやけないほど、メンタルは病んでいたが、僕の旅を応援してくれている人たち(数人の編集者、旅行系ユーチューバー)の励まし、そして旅先で出会ったフレンドリーなアメリカ人のおかげで、どうにか立ち直ることができた。
世界に拒絶されても、世界を愛し続けたい。
これからXでは、本のための備忘録として、写真やメモ書きをどんどん投稿していきます。応援してくれる人がいたら、とてもうれしいです。
長文を読んでくださり、ありがとう!
Have a nice day!
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