謎の古代巨大貝の形を復元
沖縄県出身で、現在は福井県立恐竜博物館の研究員として活躍する安里開士さん。子どもの頃から貝に熱中、小学1年の時には既に「貝類学者になって、新種をみつける」という夢を抱いていたほど。大学では貝殻の形がどこから来たのか知るために化石の研究を志し、大学院時代に謎の化石として知られたペルム紀の巨大貝「シカマイア」の形を復元するという業績を成し遂げた。今年1月の沖縄への帰省時に、共に北名城ビーチを歩きながら「貝さえあれば幸せです」と笑う安里さんの話を聞いた。
物心ついた時から貝に夢中だった。きっかけは4歳の時、浜辺で「シマイボボラ」という貝を拾ったことだった。
「シマイボボラはちょっと変な巻き方をしている貝で、『これが生き物なの?』と衝撃を受けたんです」と安里さんは振り返る。
以後、浜に通って貝拾いに熱中。図鑑でカタツムリも巻貝の一種であることを知ってからは、公園でカタツムリを探すことにも夢中になった。化石にも興味を持ちはじめ、後の研究テーマとなる謎の貝「シカマイア」について最初に知ったのもこの頃だ。
化石から貝の謎に迫る
安里さんの貝への好奇心の原点は「なぜ貝はこんな巻き方をしているのだろう?」という驚きだ。
高校生の時、約5億年前のカンブリア紀(古生代前期)に、既に巻き貝のような形の生物がいたことを知った。「これを調べたら、なぜ巻いたか分かる!」。興奮した安里さんは古生物の研究を志し、筑波大学に進学した。
3年生の終わり頃、研究テーマを模索する中で、ふとシカマイアのことを思い出した。「シカマイアを研究できたらいいなと思って。そうしたら、いてもたってもいられず、気が付いたら夜行バスで岐阜県の金生山に来ていました」
金生山は、ペルム紀(古生代後期)の巻貝や二枚貝を豊富に産出する「古生物のメッカ」として知られる場所。シカマイアも発掘されていたが、断片しか見つかっておらず、全体がどんな形だったかは不明だった。
安里さんは大学院でシカマイアの研究に没頭。石灰岩の中に埋まったシカマイアを取り出すには、削岩機で長い時間をかけて丁寧にクリーニングする必要がある。「朝の7時から夜の9時まで、食事も忘れるぐらい熱中しました」。倒れそうになり、友人から強制的に食事をさせられることもあったと苦笑する。
そうして取り出したシカマイアの断片をパズルのように組み合わせ、その形を復元。1メートルを超えるサーフボードのような形の二枚貝であったことが判明し、その成果を博士論文にまとめた。安里さんの研究は、日本古生物学会論文賞を受賞し、多くのマスメディアでも紹介された。
変わらない好奇心
大学院修了後は福井県立恐竜博物館に採用され、恐竜発掘の現場で産出される貝の化石の研究や、博物館の展示、教育普及に取り組む。昨年1月には、沖縄県立博物館・美術館でシカマイアに関する講座も開催した。4月から、福井県立大学恐竜学部客員研究員も務める。
多忙な日々を送るが、少しでも時間があると、頼まれなくても採集に出かけるのは少年時代と変わらない。
取材がてら北名城ビーチを歩いた後、糸満市内のロンドンの杜園で、安里さんが子どもの頃、初めて「実物を見てみたい」と衝撃を受けた貝であるアオミオカタニシ(写真参照)の観察にも同行させてもらった。公園や森林などに生息する陸生貝類の一種で、殻径は1センチほど。葉の裏でアオミオカタニシを見つけては笑顔を見せる安里さん。「緑色の貝が大好きなんですよ。世界中の緑色の貝を集めるのもライフワークとしての目標です」と話してくれた。その目の輝きには、子どもの頃の純粋な好奇心がそのまま残っているように感じられた。
(日平勝也)
(2026年3月19日付 週刊レキオ掲載)