1.個人金融資産(25年12月末):前年比118兆円増、前期末比64兆円増
次に四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(9月末)比で64兆円増と7-9月期に続いて大きく増加した。例年、10-12月期は一般的な賞与支給月を含むことから資金の純流入が進みやすい傾向があり、今回も21兆円の純流入があった。さらに、この間に株価が大きく上昇し、円安も進んだことで、時価変動の影響がプラス43兆円(うち国内株式等がプラス24兆円、投資信託がプラス10兆円)発生し、資産残高を大きく押し上げた(図表1~4)。
足元の1-3月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年、資金の純流出が進む傾向がある。一方、足元の株価は年末よりも高い水準にあり、円安も進んでいることから(図表4)、時価変動の影響は明確なプラスに寄与しているものと推測される。トータルでは時価変動のプラス影響が資金の純流出をやや上回っている可能性が高い。
従って、3月末にかけて株価やドル円が足元に対して横ばい圏で推移すれば、3月末時点の個人金融資産残高は12月末時点の残高をやや上回るとみられるが、イラン情勢の緊迫化を受けて、株価が大幅に下落すれば、12月末の残高を割り込む恐れもある。
1 今回、2025年7~9月期の計数が改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
2.家計の資金流出入の詳細: 投信・国債・社債への流入目立つ
現預金の内訳では、例年同様、賞与の支給等を受けて流動性預金(普通預金など)への純流入(15兆円)が進んだ。
一方、定期性預金(定期預金など)は0.1兆円の純流出となり、3四半期ぶりの純流出に転じた。4~6月期および7~9月期には純流入が続いていたことに加え、この時期は日銀の追加利上げが意識されていた局面でもあった。そのため、利上げ後の預金金利の上昇を見込んで預け入れを控える家計が存在した可能性がある。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が0.1兆円の純流入となった。純流入は3四半期ぶりとなる。もともと個人投資家は逆張り志向が強いことから、株価の上昇を受けた利益確定売りが重石になったものの、先高観を背景とする流入が若干上回ったと推測される。
その他資産では、確定拠出年金内の投資信託(0.4兆円の純流入)で堅調な純流入が続いているほか、国内預金よりも金利水準が高い国債(0.7兆円の純流入)や外貨預金(0.1兆円の純流入)、事業債(0.6兆円の純流入)への資金流入が目立つ。
高インフレによる資産の目減り圧力が続く中、(1)新NISAを活用して高いリターンが狙える投資信託、(2)低リスク資産の中で金利が相対的に高い国債・社債等への資金流入が続いている。
なお、現預金が個人金融資産全体に占める割合は、12月末で48.5%(9月末は49.1%)と引き続きやや低下した(図表10)。5割を割り込むのは2四半期連続となる。近年、株高・円安が進み、時価の上昇を通じて資産残高が大きく押し上げられたことが主因だ。また、インフレなどを受けて現預金への資金流入が伸び悩み、投資信託等へのシフトが発生したことも影響している。
3.その他注目点:家計の資金余剰は横ばい、日銀の長期国債保有割合は50%割れ
政府部門の資金不足は1.9兆円(前期は1.6兆円の資金不足)へとやや拡大したが、不足は従来よりも小幅に留まっている。好調な企業業績やインフレを背景とする税収の増加を受けたものとみられる。
なお、海外部門は8.2兆円の資金不足(前期は9.6兆円の資金不足)と引き続き大幅な資金不足であった。
最大の保有者である日銀の国債保有高は12月末時点で503兆円と9月末から21兆円減少した。日銀が段階的に長期国債の買入れ減額を進めているうえ、金利上昇による時価減少が9兆円発生したことも押し下げに働いた。
この結果、日銀の国債保有シェアは43.1%と9月末(44.2%)をやや下回った(図表12)。日銀の保有シェアは2023年末をピークとして緩やかな低下基調にある。また、1年超の長期国債に限ると、日銀の保有シェアは49.0%(9月末は50.005%)となり、ついに過半を下回った。過半割れは2022年6月末以来である。
日銀が長期国債のほぼ半分を保有する圧倒的な存在である点に変わりはないが、その存在感は徐々に後退しつつある。