『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』小島秀夫監督&ドールマン役・杉田智和さんインタビュー|「僕が好きなのは杉田さんが演じている杉田さんなんです」小島監督のこだわりが光る“杉田さんらしさ”
数々の名作ゲームを手掛け、今なおゲーム業界の最重要人物の一人である小島秀夫監督。2025年6月26日には小島監督が手掛けるPlayStation 5用ソフトウェア『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH(以下、デススト2)』が発売され大ヒットを記録。2026年3月19日にはPC版も発売されるなど、まだまだ話題に事欠きません。
小島監督作品と言えば、出演俳優の豪華さだけでなく、その俳優たちの日本語吹き替えを担当する声優陣が錚々たるメンバーなのも注目のポイント。その中でも、杉田智和さんは外せないひとりです。
これまで小島監督と杉田さんのふたりの関係は、SNS等でも散見されていましたが、実は対談インタビューはそこまでなかったとか。今回はそんな貴重な瞬間に立ち会うことができました。
旧知の仲になったふたりだからこそ生まれる空気感をぜひお楽しみください。
【写真】『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』小島秀夫&杉田智和インタビュー
いかに杉田さんを出すか
ーー小島監督の作品は、シリアスな中にユーモアを取り入れることも多い印象です。本作ではドールマンがその部分を一部担っていました。監督は作品づくりにおいて、そのバランスをどのように考えていらっしゃいますか? 特に今回はドールマンの台詞が多かったようですが。
小島秀夫監督(以下、小島):サム役の津田健次郎さんも台詞が多いんですけど、ドールマンの台詞量も多いです。台本のライン的には全体で約2000ライン。収録日程は27日間。収録時間は60時間です。吐息の収録無しでこの時間です。これは出演者の中でも1位の長さです。
津田さんは吐息の収録を抜くとそれよりちょっと少ないくらいで2位。3位にフラジャイル役の水樹奈々さんです。杉田さんは台詞のライン数が一番多くて、一番辛いピンでの収録も多かったですね。出演者数は計66名で、吹き替えの作業には10ヶ月ほどかかりました。収録日数で103日間です。
ドールマンはプレイヤーが緊張しているときに緩和させるという狙いもありますけど、プレイヤーをサポートする役割ももっています。
これが最初は猛烈に喋っていたんですよ。例えば川があったとすると、サムが川を見つけるより前に「ここは流されるぞ」と言ったり。懇切丁寧にやっていたんですけど、すべて事前に言い過ぎるとプレイヤーの自由度がなくなってしまう。それにドールマンの位置も、TPS視点でドールマンを見せようと思い、最初はお尻に付けてたんですが、この辺りも調整に悩みましたね。
ギャグもカットシーンはいいんですけど、ゲーム中に注力してやっているものに対して注意を逸らされるとプレイヤーのダメージになったりするんです。その調整は最後まで悩みました。
それに収録した台詞でも、途中でゲームの仕様変更があると録り直しするんです。なのでなかなか終わりませんでした。
ーー杉田さんは、そんなドールマンを演じる上で心がけたことは何でしょうか?
ドールマン役・杉田智和さん(以下、杉田):収録しながら作り上げていくうちに、少しずつ変化が訪れるものです。今回ドールマンを収録してみて、画が出来上がってから実際にゲームでテストプレイをしてみると「こういう反応になるのか」と気付きがありました。そうなると、「ここを変更したらどうだろう」という判断も出てきます。ゲームの中に込められている情報をどれだけ学び取って、感じ取って日本語吹き替えに落とし込むかが重要になります。
日本語吹き替えの正解って原音を立てることです。こちらがそれを超越してはいけないというのがあるんです。「このちょっとある間はなんだろうな」といったものを自分で探って、ある程度答えを出して、それをテスト収録の段階で提案する形で進みます。なので作り上げていく作業にはなりますが、特に苦には感じません。
演者が楽しく自由に演じているように思わせたほうが、プレイヤーは余計な力が入らないと思います。ゲームを遊ぶのに座学を履修し、精神的な心構えが必要となると疲れてしまうので、そこはドールマンというキャラクターが間に入ることによってゲームをわかりやすく、入りやすい空気にしている。
自分自身で「こうしてやろう」と思わなくてもドールマンというキャラクターは完成しているので、そこに込められた情報から何を学び取って演じられるかが大事だと思います。
小島:カットシーンもそうですけど、英語版が先に出来上がるんですよ。他の言語は、その画に合わせてぴったり声をあてないといけないので、これは申し訳なかったですけど。
杉田:いえいえ。
小島:英語版ドールマンの声を担当したのはジョナサン・ルーミーさんという俳優です。『The Chosen(※)』というドラマでイエス・キリストの役もやっていましたけど、彼はコメディアンでもあって。
※The Chosen:2017年から放送されているキリスト教の歴史を描いたアメリカのドラマシリーズ。ジョナサン・ルーミーはこの作品で一躍有名に。
小島:そんな彼の尺に合わせて、いかに杉田さんを出すか。英語版のドールマンと日本語版の杉田さんのドールマンはけっこう変えましたね。
ジョナサンに「アドリブOK」と言った途端、ずっと喋ってしまってシーンがどうしても長くなって大変でした(笑)。そこからいろいろ試しながら、最終的にいまのドールマンができあがりました。
ドールマンは重要な役です。プレイヤーとともに旅をする、一番近くにいる存在なので。杉田さんと旅をしたということにもなります。ルーも含めて。
ーー収録はストーリーの順番で行ったのですか?
小島:なるべく収録もストーリーの順で録るようにしているんですが、すべてではないです。ピン録りのときは他の声優さんがいないので、どうしてもテンションが揺らぐんですよ。前に収録したファイルを聞きながら調整したりするので、なかなか難しいです。
ーー収録の難しさもあると思います。
杉田:基本的にはアドリブというものはほぼなくて、柔軟な発想を元に収録しています。各声優さんたちが持ち寄ったものをお互いで感じ取り進めていきます。例えば今回、ドクター役は小林ゆうさんでしたが、事前に「彼女がこう来るだろうな」とある程度予測はするんですけど、『デススト2』の小林さんの演技は小林さんにしかわからないんです。小林さんならではの『デススト2』の演技をするので。それは予測がつかないんですよね。
小島:小林さんはすごいですよ。最初、別人で現れるので(笑)。あの人はアドリブというか、違う台詞を喋ってましたよね。あれはすごかったですよ。あのバージョンで出したいくらいです。
加えてお話しすると、今回のように杉田さん、津田健次郎さん、水樹奈々さん、大塚明夫さんといった「一流の声優の方々」に参加していただける場合、僕が何も指示を出さなくても、ある程度は完璧に収録してもらえるんです。でも、それだけだと面白くないので、みなさんの仲間入りをさせてもらっている感じですね。
小島監督は「遊んで面白いゲームを作る」
ーーお二人の対談は実は珍しいですよね。
小島;初めてですかね? ステージではよく会いますけど。
杉田:そうですね。雑誌はあるかもしれませんけど、WEB媒体だと初めてかもしれません。
ーーそこでお聞きしたいのですが、お二人の付き合いももう長くなってきていますが、その中でお互いに好きなところや尊敬しているところを教えて下さい。
小島:もう出会って18年くらいですか。2009年からなので。うちの息子が杉田さんのファンで。水樹さんも大塚芳忠さんもですけど(笑)。息子にはキャスティングで協力してもらいました。
杉田さんのいいところはいっぱいあると思いますけど、もちろん声優さんなのでひとつは七色の声が出せることですね。最近は映画の吹き替えを見ていても、渋い声で最後まで杉田さんとわからない役もあるくらいです。
それでも僕が好きなのは「杉田さんが演じている杉田さん」なんですよ。例えばドールマンの声をあてている時も、その声のニュアンスや喋り方からは自然と杉田さんが出てきます。声優さんにそういうことを言うと怒られるかもしれませんけど(笑)。
ドールマンに関しては、尺は変えられないんですけどジョナサンを崩していいと最初から伝えていたので、そこで自由にやってもらいました。けっこう英語版と違うことを言っているんですよ。
ーー杉田さんが演じるドールマンは声の振れ幅が広いように感じました。
小島:僕が子供の頃に見ていた洋画の吹き替えは、ほぼ違うことを言っていたんです。そんな感じを出したいと思いながらも、尺も合わせないといけないので難しかったですね。カットシーンで声のトーンを決めるんですけど、そこでも決まらず。最初はかなり試行錯誤しました。
ドールマンは会話の間に入ってくるので、あまりにもキャラが立ちすぎているとドールマンに意識が持っていかれてしまうんです。
ーーその部分は杉田さんだからこそできたところですね。
小島:最後は杉田さんで行きましょうと。みんなが欲しい杉田さんですよね。「すぎた話だ(※)」ってね。
※ドールマンの初登場シーンで、ドールマンが「今となっては すぎた話だ」と言う。この「すぎた」のイントネーションが絶妙に「杉田」にも聞こえるとファンの間でも話題に。
一同:(笑)。
小島:あれは僕がやってくれと言ったので杉田さんには罪はありません(笑)。
杉田:最初にあのシーンを録って方向性が固まりましたね。
小島:他にもいろんな方向性でやりましたよね。もうちょっと人形っぽいやつとか、原音に合わせるとか。
杉田さんは前作ではちょっとしか出なかったんですよ。合う役がなかったんですけど、杉田さんには毎回出てほしいんです。
ジョナサンの声が杉田さんかと言われたらそうでもないんですけど、「杉田さんでええやろ!」と(笑)。英語版と日本語版の両方をやった人からするとテンションが全然違うという話は聞きますね。まぁそれもそれでいいじゃないですか。
ーー確かに。逆に杉田さんは監督のお好きなところや尊敬しているところはどこでしょうか?
杉田:幼少期の頃から……。
小島:幼少期(笑)。
杉田:(笑)。小学校高学年か、中学校低学年かのころに小島監督の作品を遊ぶことが「大人としてのステータス」だと、勝手に思い込んでいたんですよね。まだ子供だったので。知らない世界がいっぱい広がっていたんですよ。その中に、パチンコのパの字が消えていたり(※)……(笑)。
※パチンコのパ:1988年に発売された小島監督作品『スナッチャー』にて、街のパチンコのネオンのパの字が消えていて、主人公ギリアンの相棒のロボット・メタルギアmk-IIが「おやっ? パチンコのパが消えて危ない言葉になっています」と発言する。
小島:あれは向田邦子さん(※)のオマージュなんですよ(笑)。
※向田邦子:日本のテレビドラマ脚本家、エッセイスト、小説家。数多くの作品を手掛け、シナリオライター御三家と呼ばれるほどの名脚本家だった。
杉田:そういった映画やドラマがベースだったりしますが、「遊んで面白いゲームを作る」というのが常に念頭にあるなと。小島監督の作品はたくさん遊んできましたけど、自分が出演する側になったときに、存在をリスペクトするものが常にあるわけで。
今回の収録でも、監督が『RRR』(※)の限定版を買ったと話してきて。「買った……!? ありがとうございます……!」って(笑)。やっぱりちゃんとチェックしているんだなと思いました。
※RRR:2023年に公開されたインド映画。主人公のひとりであるビームの日本語吹き替えは杉田さんが担当。インドや日本だけでなく世界でも大ヒットし、数々の賞を受賞。
杉田:次は『私がビーバーになる時(※)』の吹き替えで出ておりますので、ご興味ありましたら……(笑)。
一同:(笑)。
※私がビーバーになる時:2026年3月13日公開のディズニー&ピクサーの最新映画。杉田さんは爬虫類の王役で出演。
杉田:監督はいつもどのようなところに着想を得ているのか気になっていますね。お話を聞いていると、いろんなところから吸収しているなと感じます。インスパイアのやり方も小島監督のやり方で、こういうふうになるんだと思わせられるものばかりです。同じことは他の人にはできないですよ。
『リコリス・リコイル(※)』も押さえている……!? なるほど! こうなるんだ……! 著名なVTuberさん!? なるほど! みたいな(笑)。そういう柔軟な発想とハイエンドなクリエイションが同居している稀有な存在だなと。幼少時から変わらずリスペクトしています。
※リコリス・リコイル:2022年に放送されたオリジナルアニメ。略称は『リコリコ』。犯罪を未然に防ぐ秘密組織「DA(Direct Attack)」に所属する少女エージェント「リコリス」たちを描いた作品。井ノ上たきな役の若山詩音さんは『デススト2』でトゥモロウ役を演じている。
ーー監督が『リコリス・リコイル』のフルグラTを着ていたのはびっくりしましたよ。
小島:(笑)。レフン監督(※)の娘さんに『リコリス・リコイル』のキャラクターが着ている制服をプレゼントしたんですよ。でも、大きくなって入らなかったっていう(笑)。
※ニコラス・ウィンディング・レフン監督:小島監督と親交が深い映画監督。代表作に『プッシャー』『ドライヴ』などがある。『デススト』ではハートマン役で出演。『デススト2』ではご家族もカメオ出演した。
小島監督がアニメイトに!?
ーーお互いに人としての印象に変化はありますか?
杉田:柔軟に映画やアニメから幅広く見られているという印象はずっとあります。そのうえで、今でもインプットを絶やしていないんだなと。
小島:杉田さんは変わらないですよね。お互いに年は取りましたけど、出会ったときと変わらないような感じです。杉田さんに初めてお願いしたのは『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER(※)』(以下、『ピースウォーカー』)でした。
※METAL GEAR SOLID PEACE WALKER:2010年に発売された小島監督作品。『METAL GEAR』シリーズ屈指の人気作のひとつ。携帯機のPlayStation Portableでプレイできることもあり、若年層に大ヒットする作品となった。杉田さんはカズヒラ・ミラー役で登場。
ーー杉田さんをキャスティングされた理由は?
小島:大人になると映画は吹き替え版を見なくなって、新しい声優さんを探せなくなってきます。昔はTVで吹き替え版の海外ドラマも多くやっていましたけど、今では字幕版になっていますよね。
そんな中でも子供と映画を見に行くと吹き替え版を見るんです。ディズニーとかピクサーとかマーベルとか。それだけだとあまり吸収できないので、深夜アニメも見ようとしたんですが、なかなか見られなくなってきて。
その時にうちの息子がアニメに詳しかったので、「誰が好きなん?」って聞いたら杉田さんと水樹さんと大塚さんって言って。水樹さんのCDも一緒に買いに行きましたからね。当時、息子が中学生のころかな。アニメイトに行って買いましたよ。
ーーありがとうございます……!
小島:杉田さんに関しては、息子が『銀魂(※)』見ていたので知りました。
※銀魂:週刊少年ジャンプで連載されていた漫画作品。SF、バトル、ギャグなんでもありの展開が売りで原作者の空知英秋先生によると本作のジャンルは「SF人情なんちゃって時代劇コメディー」。2006年にアニメ化され、杉田さんは主人公の坂田銀時を演じている。
小島:それでキャスティングしたら大成功でした。
気に入った人とはずっと一緒にやりたいと考えていて、その人のために役を作ったりもしたんですけど、最近は海外の俳優さんを起用するので吹き替えになるんです。なので、杉田さんのための役は作りにくくなっています。そこはさみしいところですね。
昔は日本語を先に録って、英語版は半分くらいしかアフレコに行かないこともありました(笑)。『リコリコ』はたまたま見ていましたけど、この次、新しい声優さんを探すのが難しいんです。常に新しい人を探しています。
信頼のできる方々と一緒に仕事をしつつ、新しい人を取り入れることで活性化させる。これはノーマン・リーダスやレア・セドゥさんなど、海外のキャストにおいても同様です。ずっと一緒の人だけだったらみなさんも面白くないと思うので。
昔は、日本語版だけカットシーンも台詞も長くしたりしていたんですよ。ただ今では発売の都合上、尺の決まりがあって、そこに合わせないといけないんです。そこがけっこう難しい。ドールマンでありながら杉田さんを出せと。無茶なこと言っていますけどね(笑)。
ーー杉田さんから見て、収録現場の小島監督はどんな様子ですか?
杉田:小島監督は現場を作り上げる雰囲気づくりから才能が発揮されているんです。例えば、以前の作品の現場では、その舞台に合わせてコスタリカ産のコーヒーが用意されていたりと、なにか一つとっても意味があって、それが自然と馴染んでいる。それはなかなかできないことかなと。
誕生日を祝うイベントシーンを収録した際も、出演者全員で収録したんですよ。いない人がいるとかわいそうだなと思っていたので監督に聞いたら「全員です」と言ってくださって。そのおかげで映像を見ても誕生日をお祝いしている空気にちゃんとなっているなと思いました。
小島:10ヶ月一緒に収録するので、ドラマシリーズで2クールくらいです。自然と仲良くなりますよね。
杉田:『デススト2』以外でも共演者のみなさんとお会いしますが、話す機会がとても増えて、津田さんとは一緒にオリジナルのコンテンツを動かすくらいに距離が縮まっています。
ーー実際に『デススト2』をプレイされてどうでしたか?
杉田:遊んでいて面白いし、サプライズがあると知っていてもびっくりして嬉しかったし、そういう感情を常に持ちながらプレイしました。考えさせられる設定も興味深かったです。ドールマンの人間だった頃と人形化したあとの設定もそうですよね。
自分も年齢を重ねてきて、若い頃は主人公やその周囲にいるメインの役に近い視点で物語を見ていましたが、今では親や師匠などの役を演じているとその視点も追加されていくんです。そういった心境の変化はキャラクターから受ける印象にも影響しますね。
ただ根本的にあるのは、グラフィックが美麗になって良い音がついたことだけではなく、「遊んで面白いもの」を作るのが小島監督であるということです。それはこれからも変わらないと思います。
杉田さんかわからんやつはあかんでしょ
ーー「杉田さんらしさを出す」というお話もありましたが、具体的にはどんなことを収録で行っていましたか?
小島:僕が考えたアドリブをやってもらう場合もありますし、「杉田さんならどうします?」と聞いてみたりもしています。どちらも良ければ採用ですね。それはすべての人がそうです。津田さんもそうでしたけど、みなさんもっとやりたがるので(笑)。「こんなのどうですか?」って(笑)。
ーー(笑)。最初のタイミングでは、「とりあえずやってみてください」とお試しでやったりするのですか?
小島:それはないですね。こちらの計画があるので、この役はこういうふうにやってくださいと伝えます。それはパフォーマンスキャプチャーも一緒です。
そこから何テイクか録ってみて、やりながら「こう変えましょうか」と話し合っていきます。「こうしたい」というものが声優さんにあればやってもらって、良ければ採用です。アフレコの場合はいっぱい録って、良いのを選ぶことができるメリットはあります。
ーーなるほど。声優さんは「こういうキャラクターである」というのは事前にどのように知れるのでしょうか?
杉田:まずはキャラクターの資料があります。そして原音もありますので、収録前にトレーラーやカットシーンの映像を見て、収録ブースに入り、原音を聞きながらテスト収録を行います。
小島:声の方向性を決めるのは最初の収録の1回目か2回目くらいですね。最初が難しいところで、そこで決まらないと長引くんです。1回録ったものを録り直したりもします。
もっと言うと、俳優さんの撮影は(収録を重ねていくと)後半の途中でキャラクターが変わったりもすることもあるんですよ。そうなるともう一度撮り直しですよね。昔はよくやっていました。
過去のタイトルで喜久子さん(井上喜久子さん)なんか、最後にもう一度来てもらって全部録り直ししたこともあります(笑)。みなさん録り直したいと言うんですけどね。
ーーなんと……! となるとやはり映画の吹き替えに近い収録方法なんですね。
小島:今回はそうですね。その中でもドールマンは特殊で、カットシーンは映画の吹き替えと一緒なんですけど、ゲーム中にも台詞があるので。どういう状況でその台詞を言うのかが想定できない場合があるんです。音楽が鳴っていてその台詞を言っているのか、音楽が鳴っていないのか、いろんなパターンがあって。けっこう難しいんです。
録ってゲームに入れたのは良いけど、変なところで話してしまっていたらカットするのか、もう一回違うテンション感の声を録るのか、そういう選択が出てきます。
例えば「何だこれは!?」という台詞があったとして、複数のパターンの声を録ったとしても足りない場合が出てくるんです。英語だったらふたつだけ収録しておけば大丈夫だったものが、日本語だと変わってくる。かといって、多言語で展開する際に僕らが管理できないところもあって、日本語だけ音声ファイルを増やすと怒られるんです(笑)。
でも杉田さんが演じるなら、杉田さんかわからんやつはあかんでしょ。
一同:(笑)。
小島:でもそんなに無茶苦茶はしていませんよね?(笑)
杉田:そうですね。
小島:本当は最初、めちゃくちゃにしてやろうと思っていたんですけどね。
杉田:そうなんですか?(笑) 知らなかったですよ!
一同:(笑)。
ーー確かに、『METAL GEAR』のカズ(カズヒラ・ミラー)なんかはめちゃくちゃなのもありましたしね(笑)。
小島:カズは人気があるんですよね。
杉田:いろんな経験がありましたね。ドラマCDとか。ありがとうございました。
小島:あんな体でハンバーガーが好きですからね。
一同:(笑)。
小島:あれは対象年齢を下げたのでああいうノリだったんですよね。そこから『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES(※)』でストーリーが暗くなったので、もしかしたら最初が『ピースウォーカー』ではなく、『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』だったら、カズは杉田さんじゃなかったかもしれません。
※METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES:2014年に発売された小島監督作品。8作品目の『METAL GEAR』シリーズで、『ピースウォーカー』に連なるストーリーが展開される。小島監督が言うように暗いストーリー展開で衝撃を受けたファンも少なくない。
ーー最後に『デススト2』のPC版が発売されますが、ファンやこれから遊ぶ方々に向けてメッセージをお願いします。
小島:PC版のユーザー層は非常に幅広いですし、コアなプレイヤーも多いです。そんな方たちのためにフレーム数の調整やその他の細かな設定をすべて搭載して、コアな遊び方ができるようにしています。キーボードでも遊べますし、DualSenseにも対応していて振動も体感できます。楽しみ方も幅広いので、いろいろな入口から遊んでほしいですね。
発売してから時間が経っているので、不具合にも対応していますし、「悪夢」などの新要素も足しています。あとはプレートゲートを通るときに流れる寿司を握っている映像も増やしました。PS5版発売前になんとか入りそうだったんですけど、間に合わなかったんです。それも今回追加されています。
そういった細かい要素がいっぱいありますので、ディレクターズカットではないんですけど、快適に遊べるようになっています。PS5版もアップデートが来ますので、もう一度遊んでみて、そしてPC版も買っていただきたい! と(笑)。
一同:(笑)。
杉田:「知っていても楽しい」が詰まっているのが小島監督の作品であるし、『デススト2』です。PC版から遊び始めてもよし、PC版からプレイして改めてPS5版で遊んでもよし、どの順番でも楽しめると思います。『デススト2』から『デススト1』を遊んでもいいと思います。遊び方に制限はないとそう信じています。みなさん、今後ともよろしくお願いいたします。
[インタビュー/石橋悠 撮影/小川いなり]