萬燈の指が、比鷺の舞衣の襟元に掛かった。 絹のような光沢を帯びた生地は、闇夜衆の衣装らしく重いが、萬燈の指先一つで容易く滑る。
比鷺の表情を見つめながら、萬燈はゆっくりと、襟を左右に開いた。 布地を掴む萬燈の指の関節が白く浮き、繊維一本一本が月光を反射して煌めく。布が擦れる音が響き、比鷺の白い胸が晒される。
衣は、萬燈の手によって剥がされることで、ようやく比鷺という一人の男を愛でるための、正しい役割を得たのだ。 それはもはやカミに捧げるための装束ではない。萬燈だけが触れ、萬燈だけが剥ぎ、その奥にある熱を独占するためだけの、贅沢な包み紙だった。
比鷺のうなじの化身が熱を帯び、金色の粒子が舞いながら胸元へと流れ落ちる。
萬燈はさらに腰の帯に指を掛け、一気に引き解いた。 比鷺の細い腰と腿を露わにする。 布が肌を滑る、すうっ……という音が、比鷺には酷く長く聞こえた。早鐘のような心音に、呼吸を押し殺す。
萬燈の瞳が獣のように細まり、比鷺の肌に唇を寄せた。
冷たい月光を遮って重なる萬燈の体が、比鷺の意識を支配していた。
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