卒業シーズンも最盛期を過ぎつつあるなか、お子さんの進学準備に追われているという保護者の面々もさぞや多いことだろう。
「東京都教育委員会によりますと、令和8年度の都立全日制高校の志望人数は 4万4704人で前年度より1016人減少したといいます。この結果は、昨年閣議決定された『高校授業料無償化の拡充』が影響していることも大いに想像されます」
こう話すのは、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏。
「高校授業料無償の所得制限撤廃は、お子さんの進路の選択肢を広げることになる画期的な施策と言えますが、私立高校は授業料以外の『学費』も公立より高額になる傾向が強いため、志望校を決める前に費用面のリサーチも十分にしておくことが重要です」
今回取材に応じてくれたのは、パート従業員のHさん。Hさんの娘は昨年11月に県内のある私立女子高校に合格し、先月開催された、合格者のための「入学説明会」に親子で参加した。その際、「もしかすると、わが家は、ここにいる人たちとは住む世界が違うのではないか」とにわかに緊張を強いられたという。どういうことか。
「説明会の日、ウチは電車と徒歩で学校まで行きました。土曜日だったせいか、パパさんが母子を送迎しているご家庭も多く、目にする車の多くが高級車で、特にレクサス率がやたらと高くて引いてしまいました。『レクサスや外車ばかりだね』と娘も目を見開いてましたね。
説明会は講堂で行われましたが、周りのお母さんたちはブランドもののバッグを持っている方や、いかにも富裕層といった身なりの方が目立ちました。そう見ているから余計に目に付いただけだろ、と後で夫に言われたのですが、それが特徴的であったことは事実です」
Hさんの娘が高校を選んだ理由は、その高校と同程度の学力の公立高校よりも、知名度・ブランド力もあった点や、進学にも有利な点にあった。
「ウチは、夫の手取り収入が300万円ほど、私のパート収入と合わせても世帯の手取り収入は400万円程度です。
ただ、私たちが住む自治体では、かなり前から所得制限付きで私立高校も無償化されていました。だから、前々から本人が行きたい高校であれば、たとえ私学でも行かせてあげようと決めていたんです。本当にありがたい制度です」
しかし、お金にまつわる「安心」は、娘の合格以降「不安」に変わった、とHさん。
「合格通知をいただくと、すぐに入学金30万円以上を納める必要がありました。さらに制服・指定品代や個人で所有するタブレットなどで30万円弱かかったんです。それはもちろん事前にわかっていましたし、蓄えで賄いました。それなりに貯めてきたつもりですが、わが家にとって60万円はやはり大金で、残高が目減りした感はありますね。
それに、説明会に行っただけで周りの人たちとの生活水準の違いを感じて、娘にこれから月々あげるお小遣いの額とか修学旅行の積立金、保護者間のおつき合いで話が合うのか、お金の価値観を共有できるのか…などなど不安でいっぱいになり、すでに弱気です」
高校生活に必要な費用は授業料だけではないこと、「校風」とは目に見えない価値観や「生活感覚」で覆われていることなども、お子さんの志望校選定では事前に考慮しておくと良いのかもしれない。
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※本記事で使用している写真はイメージです
【取材協力】平塚俊樹:危機管理コンサルタント【聞き手・文・編集】笹塚茉奈美 PHOTO:Getty Images【出典】東京都教育委員会:令和8年度 都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査の結果について